11話 イーサの苦労
このままなにもしないで手をこまねいているだけ
では何も変わらない。
イーサはすぐにファルマン公国に親書をしたため
たのだった。
それと同時にアネスタ王国にも同盟も申し出と、
今まで取引きに出さなかった魔鉱石の輸出も視野
に入れて話し合いたいとしたためたのだった。
これには父、マーロは反対するだろうが、今はそ
んな事を言っている場合ではないのだ。
「父上、アネスタ王国との交渉は私に任せてもらえ
ませんか?」
「構わん。好きにしなさい。ただ、やると言った限
りはやり遂げるようにな」
「はい、もちろんです。これが失敗すればナニス公国
からの進軍を止める手立てが無くなりますから」
「な〜に、ナニスくらい、わが国だけでも耐えられるわ」
「…………」
この軽い考えが国を滅ぼす気がしてならなかった。
後日、ファルマン公国からは、全面的に支援してくれる
趣旨の返信があった。
たぶんだが、ロザリアにでも泣きつかれたのだろう。
イーサの計算通り運んでいる。
「あとは、アネスタ王国か……」
「難しいですか?」
「あぁ、そうだね。あそこは女王だからか、なかなかに
骨が折れそうだ」
「魔鉱石とそれを使った魔道具を見せてはいかがですか?」
「魔道具だと?何かいいものでもあっただろうか?」
イーサが疑問に思うのも無理からぬ事だった。
そもそも、魔鉱石は魔力を多く含む鉱石で魔力を注いで
投げれば爆発するという性質から、敵に投げつけて使う
事が多いのだ。
取り扱いも危険なのでそれを加工して魔道具にしよう
などと考える者はいなかったのだ。
「師匠の作った魔道具で、今は宝物庫にあるかと」
「なるほど、メルバルト・ファオニンか!なるほど、
それなら向こうも飛びつくかもしれないな」
タヒソが師匠の作品を好きではないのはわかっている。
あまりに目標が高すぎて、追いつけない自分が惨め
になるからだろう。
だが、今はそれをも使わねば交渉のばすら持ってもら
えない状況なのだ。
使えるものはなんでも使う。
それは、かつての師匠の教えなのだと言っていた。
そういえば、メルバルト・ファオニンが唯一気に入
っていた弟子は今どうしているのだろうか?
自分の命より弟子を助けた老人に思いを馳せると
ふと、どのような人物なのかと気になったのだった。
「あの老人の最後の弟子はどのような人物であった
んだ?」
「師匠のですか?そうですね。まだ若く幼く見えま
したね、牢にいたのをチラリと見ただけですが、
姿は師匠がなりすましているの見た程度でしたし
…………ですが、あの師匠が褒める人物など滅多に
いないので、才能は師匠以上かもしれないですね」
「あの天才以上か………それは勿体無いことをしたな。
もう、この国には帰ってはこないだろう」
「まだ捕まえられないという事は、もしかしたらアネ
スタ王国の方に行った可能性もあります。あそこは
受け渡し条約もないので、指名手配も難しいですか
ら………」
「そうだな……」
イーサは苦笑いを浮かべると、タヒソの話を聞きなが
ら書類整理に勤しんだのだった。




