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第5話_エクストリーム魔王転生!(5)

 〈球体〉の全身にひび割れが走り、剥がれ落ちた殻が次々と海へ落下する。中から現れた黒

い皮膚。そして、金色の眼球がぎょろっと露わになった。

「あらぁん、カワイイ! 一つ目怪獣だったのぇん♪」

 爆乳を揺らしてベルははしゃいだ。

 ついでにこいつも。

「カッケー、怪獣だぜ怪獣!? うぉ〜燃えてきたぜ!」

 勝手に闘志を燃やすハルキ。

 怪物を見ても舞桜は冷静な表情を崩さなかった。

「生物だったのか……すると今目覚めたと言うことか?」

 合成音のアナウンスが流れる。

《謎の飛行物体から生体反応を検出。生き物であることが確認されました。さらにこの生物か

ら分離する生体反応を確認。画面拡大します》

 黒いミミズが蠢くような怪物の皮膚から何かが次々と産み落とされている。

 思わず夏希は、

「グロッ!(イカスミスパゲティ食べられなくなりそう)」

 産み落とされたそれは球体で、生肉のような色をしており、中心には眼球が一つあった。ま

るで親を小さくした2Pカラーキャラだ。

 突然、舞桜がこめかみを押さえて眼を瞑った。

「(なんだこの痛みは……?)」

 頭の中でキーンと響く音。

 何者かが夏希の耳元で囁く。

「間違いない、〈マガデスタの黒い眼〉だ」

 ハルキが辺りを見渡す。

「誰かしゃべったか?」

 慌てて夏希は取り繕う。

「えっ、気のせいじゃない?(今のきっとピンクさんだ……ピンクさんは何を知ってるんだろ

う)」

 そんなことを考えていると、また声がした。

「部屋の外に出ろ」

 言われたとおり、

「ちょっとトイレ」

 夏希は部屋の外に飛び出した。すると、夏希の体がふっと持ち上げられた。

「え、ちょっと……」

「人の来ない場所まで移動する」

 夏希はピンクシャドウに抱きかかえられて廊下を走っていた。

 人気のない教室に入り、夏希は下ろされた。

 ピンクシャドウは窓辺に立ち、遠く空を眺めて重い口を静かに開いた。

「あれは〈マガデスタの黒い眼〉という怪物だ」

「なんでそんな怪物が? どうしてピンクさんがあれを知ってるんですか? わたしたち助かりますよね? ピンクさんっていったい何者なんですか?」

 怒濤の質問攻め炸裂!

「あれは暗黒集団マガデスタの魔術師たちが召喚した怪物だ。それを私が封印した」

「封印したって、だってあそこにいるのは?」

「召喚が行なわれたのも、それを封印したのも、こことは違う世界の出来事。時間も空間も違う、君たちにとって物語の中に存在するような世界」

「違う世界って?(舞桜ちゃんの近くにいるだけあって、言うことが似てる)」

《大量の敵が接近。バリアモード2に切り替えます》

 突然のアナウンス。

 アトランティスの周りを覆うバリアに群がる怪物ども。

 バリアにぶつかった怪物が次々と破裂していく。

 ピンクシャドウが呟く。

「雑魚は防ぐことはできだろう。あれでいてベルフェゴールは天才だからな」

「(ベルフェゴール?)」

「しかし、〈黒い眼〉が本気を出せば一夜でこの都市は壊滅する。〈ベルラーナの最期〉を思い出すな……」

「どうすればいいんですか? 前にも封印したんですよね?」

「まだ目覚めて間もない奴なら……舞桜様のことを頼んだぞ!」

「えっ!?」

 ピンクシャドウは窓を開け外に飛び出した。

 夏希は瞳を丸くする。

「あっ、飛んだ……」

 なんとピンクシャドウは空中を浮遊して星のように高速で飛び去ってしまった。

 なんだかよくわからなかったが、とにかく夏希は生徒会室に急いだ。

 生徒会室に戻ると、なにやら様子がおかしかった。

 畳の上で横になり苦しそうな顔をしている舞桜。

「どうしたの舞桜ちゃん!?」

 夏希はすぐに駆け寄って傍らに膝を付いた。

 大量の汗を掻きながら舞桜はうなされていた。夏希の声にも反応せず、おそらくそこに夏希がいることさえもわかっていないだろう。

 夏希はハルキ……には訊かずにベルに訊く。

「なにがあったんですか?」

「アタクシの頭脳を持ってしても不明よ(可笑しいわぇん、いなっちの匂いがしない。なっちゃんと出てってから帰ってきてない?)」

 ベルも気付いているのか――存在に?

 《緊急事態発生! バリアの一部が破壊された模様》

 ついに敵に侵入を許したか!?

 いや、違う。

《バリアは内部からの力によって破壊された模様》

 予想していなかった事態にベルは唖然とした。

「中から……そんなカバな……(敵がすでに中に侵入していて手引き……そんなわけは……まさか!?)」

《高エネルギーを感知しました。画面に映します》

 テレビ画面に謎の飛行物体が映し出された。

 まばゆく輝くそれは〈黒い眼〉に向かって飛翔する。

 夏希はすぐにわかった。

「(ピンクさんだ)」

 ベルもまた、

「(いなっち……まさか舞桜を置いていくなんて)」

 独りだけ仲間はずれ、

「なんだよアレ!? 新手の敵か味方か?」

 ハルキは画面に釘付け。

 〈黒い眼〉の眼にエネルギーが集中する。

 夜が一瞬にして昼に転じる閃光。

 〈黒い眼〉から放たれた光線を迎え撃つピンクシャドウの前に、巨大な魔法陣が盾として出現した。

 テレビ画面がストロボを焚いたように光り、何度も何度も激しく点滅した。

 あの[観覧規制]事件以降、アニメでは絶対にやってはいけない手法だ。

 今ではしっかりとしたガイドラインに基づき、しっかりとしたアニメ製作が行なわれているのだ。

 画面に釘付けだったハルキが急に吐き気と頭痛に襲われた。

「うぇえっ!」

 テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見よう♪

《緊急事態発生! 何者かがメインコンピュータに……きゃっ、ちょっと……ザザザザザ》

 夏希は『えっ?』という表情でベルを見た。

「人がしゃべってたんですか? てっきりあたしはコンピューターの声だと」

「コンピューターの合成音よ。人工頭脳を搭載しているスーパーコンピューターだから疑似感情を持っているの――なっ!」

 突然の揺れでバルがバランスを崩して爆乳から夏希の顔にダーイブ!

 ぼよよ〜ん♪

 さらにそのまま揺れは続き、ベルは夏希の頭をぎゅっと抱きしめたもんだから、パイ圧で窒息死させられる寸前だった。

「ぐるぢ〜!」

「あらぁんごめんなさぁい♪」

 ぼよよ〜んとさせながらベルは後ろに下がった。

 今の揺れも敵の攻撃だったのだろうか?

 アナウンスが流れる。しかし、その声は今までとは似ても似つかぬ邪悪な男性ボイスだった。

《浮遊システム起動。これより学園はアトランティスから切り離され浮上する》

「はい?」

 と夏希はベルを見つめた。

「あらぁん、そのシステムはまだ開発中だったハズなのだけれど……誰かが完成させてくれたのね、ラッキー♪」

「浮遊ってどういうことですか、もしかして今空飛んでるんですかぁ〜っ!?」

「オーイエス。この都市の電力を確保するために電気だけじゃ足りないから、魔導発電を取り入れる予定だったのよね。その副産物で浮遊システムの開発をしていたのだけれど……いったい誰が動かしたのかしらね!(笑)」

「なんだか雰囲気的に乗っ取られた気がするんですけどぉ」

「この学園は最強の要塞と言ってもいいものね。目を付けて乗っ取るなんてお目が高いわぁん」

 どうやら敵はすでに内部に侵入していたらしい。

 学園の外ではピンクシャドウと〈黒い眼〉が戦い続けている。

 舞桜は未だ意識を朦朧とさせている。

 ハルキは部屋の隅で気持ち悪そうにしている。

 夏希が大声で叫ぶ。

「どうすればいいんですかぁ〜っ!」

「どうするもこうするも、誰かが学園の中枢に行って、メインコンピューターをいじってる誰かをどーにかこーにかしなきゃだわね」

「誰かって誰ですか?」

「アタクシかアナタ。最初はグー、ジャンケンポン!」

 突然のじゃんけんに思わず乗ってしまってグーを出した夏希。

 もちろんベルはパー。

「アタクシの勝ちね」

「だって最初はグーって言った!」

「つべこべ行ってないでさっさと行きなさいよ。場所はアタクシの部屋に入って、寝室のクローゼットの先に隠し通路があるから。舞桜のことならアタクシが責任を持って看ててあげるわよぉん」

 なんだか強引だが、夏希は仕方なく行くことにした。

 部屋を出る前に夏希が振り返った。

「ところで鈴鳴先生?」

「なぁに?」

「さっきから変な英語混じりのしゃべり方あんまりしてませんよね?」

「そんなことナッシングよぉん、おほほ」

「やっぱり演技なんですね。めんどくさいならやらなきゃいいのに……」

 夏希はベルに反論させる前にさっさと部屋を出た。

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