その61 「仕事に戻る」
全然関係ないんですがね、うれしいことにランキングの端っこにぶら下がってましてね。
とても嬉しいんですが全く感想が来なくてですね。ほんとに人間が見てるのかなってですね。
最近は実はこれは自分の見ている幻かなってですね・・・
爆弾は回収された。
廊下は静かになった。
世界は平和に見える。
見えるだけだ。
悠馬はオフィス棟に戻った。
ホテルの一室ではない。
仕事の部屋だ。
机。
資料。
数字。
理解できる世界。
それだけが救いだった。
(……仕事だ)
悠馬は深く息を吸う。
胃薬を一錠。
水で流し込む。
儀式。
起動。
アンドロイドが戻る。
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会議室。
ドイツ側の役員。
資料の束。
空気が硬い。
だが硬いほうがいい。
柔らかい噂話よりずっといい。
「佐伯氏」
レオンが向かいに座る。
昼の観察者ではない。
取引先の頂点だ。
「午後から条件を詰める」
「承知しました」
悠馬の声は平坦だった。
感情は不要。
ここでは。
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数字が並ぶ。
条件が交差する。
論理が走る。
悠馬は迷わない。
迷う必要がない。
「この条項は修正が必要です」
「理由は?」
「こちらのリスクが偏ります」
「代替案は?」
「二案あります」
淡々。
正確。
容赦がない。
総ボスの顔だった。
ドイツ側が小さく笑う。
「噂と違うな」
悠馬の手が止まる。
「……何の噂ですか」
レオンがさらりと口を挟んだ。
「冗談だ、佐伯氏」
冗談にするな。
胃が痛い。
会議は続く。
夕方まで。
条件は収束する。
仕事は前に進む。
悠馬の世界は、ここでだけ整う。
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休憩。
廊下の窓から外を見る。
夏のドイツ。
空が高い。
静かだ。
静かすぎると、余計なことを考える。
(エレノアさんの所用は……)
思考が滑った瞬間。
悠馬は額を押さえた。
(関係ない)
(仕事だ)
仕事しかない。
そういうことにしておく。
背後から足音。
レオンだった。
「佐伯氏」
「はい」
レオンは一拍置いて言った。
「君は仕事をしている時が一番わかりやすい」
「……そうですか」
「感情が消える」
「感情は必要ありません」
「必要ないのか」
悠馬は答えない。
答えられない。
レオンは小さく笑った。
「面白い男だ」
悠馬は理解できない。
理解できないものが増えていく。
世界は早い。
悠馬は遅い。
胃だけが正直だった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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