幕間 「まさか」
雰囲気が伝わるかなぁ。。。読んでくれてる方、どうでしょうか・・?
打ち合わせの合間。
廊下に出たほんの数分だった。
男がエレノアさんに、少しだけ声を落として言った。
「エレノア」
「なに?」
そしてちらり、と。
僕を見る。
ほんの一瞬。
確認するような視線。
「……彼は、今の?」
心臓が跳ねた。
今の。
何が。
今のって。
僕は動けない。
呼吸すら変に意識してしまう。
エレノアさんは即答した。
「まさか」
一拍もない。
「仕事よ」
きっぱり。
淡々と。
それで終わり。
男は小さく笑った。
「そうか。悪い」
「気にしないで」
軽い。
軽すぎる。
僕だけが勝手に固まっている。
胃がきゅっと縮む。
(仕事ですから)
昨日も今日も、そればかりだ。
それなのに。
今の一言が、妙に刺さった。
安心なのか、落胆なのか。
自分でも分からない。
分からないまま、怖い。
男は話題を変えるように言った。
「週末のガーデンパーティは、完全に個人的なものだ」
「仕事ではないのね」
「そうだね」
エレノアさんは少しだけ目を細める。
「……珍しい」
「ロッテも友人を連れてくるよ」
ロッテ。
その名前に、エレノアさんの表情がほんの少しだけ変わった。
柔らかくなる。
けれど踏み込みはしない。
「久しぶりだろう?」
「ええ」
短く。
それだけ。
男は穏やかに笑った。
「シャルロッテも、もう十七だ」
十七。
娘。
その単語が遅れて頭に落ちる。
僕は息を呑んだ。
(娘……)
エレノアさんの過去は、噂ではなく現実だった。
僕の知らない時間が、確かにそこにある。
男は続ける。
「君も来るといい。昔の知り合いも多い」
エレノアさんは一拍置いて答えた。
「……考えておくわ」
考える。
その言葉が、なぜか胸に残る。
僕はただ、黙って立っていた。
ビクビクしながら。
自分が今どこに立っているのかも分からないまま。
仕事だ。
仕事のはずだ。
なのに。
僕は初めて、
彼女の“仕事じゃない部分”に触れてしまった気がした。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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