その196 「二月の終わり」
エレノアさん、大丈夫かよ。。。
朝、ハミルトン邸の本邸。
小さな朝食室。
お茶と簡単な食事
焼きたてのパン。
静かな会話、六月の結婚式の予定。
その話をしている。
エドワードが言う。
「六月、だ」
悠馬が頷く。
「はい」
ジェシカが微笑んで言う。
「庭がいいわね、季節的に」
蘭も言う。
「ハミルトンの庭は綺麗だものね」
拓海がまじめな顔で言う。
「招待客は多くなりそうだな」
ノアも言う。
「絶対多いね、間違いない」
ーーーーーーーーーーーーーーー
その時、突然エレノアが言う。
「そういえば……」
全員、エレノアを見る。
落ち着いた声で彼女が言う。
「子供ができました」
少し間、それから続ける。
「今、二か月です」
シン……と、静かになる。
完全に静か。
蘭、止まる。
ジェシカ。、止まる。
拓海、止まる。
ノア、止まる。
ルイス、止まる。
そして、全員がゆっくりと、
悠馬を見る。
ーーーーーーーーーーーーーーー
悠馬はパンを持ったまま固まっている。
動かない。完全に動かない。
ガタッ!
椅子からノアが勢いよく立ち上がる。
「兄さん?!」
悠馬は動かない。
パンを持ったまま。
ノアがもう一度大きな声で言う。
「兄さん?!」
悠馬がやっと言う。
「……はい」
ノアは叫ぶ。
「聞いてたの?!」
悠馬は茫然として答えた。
「今……聞きました」
ノアが叫ぶ。
「今?!」
ーーーーーーーーーーーーーー
その二人を完全に無視して。
ジェシカがエレノアの手を取る。
「おめでとう」
蘭も嬉しそうに笑う。
「ほんとに?」
菜摘も喜んで聞く。
「予定日は?」
エレノア。
「十月です」
拓海もニコニコと聞く。
「体は大丈夫か?」
エレノア。
「ええ」
菜摘。
「体を大事にね」
蘭。
「きっとすごい子が生まれるわね」
拓海は笑いながら言う。
「結婚式、急がないとな」
エドワードも頷く。
「急ぐとしよう」
ルイスは目を輝かせる。
「赤ちゃん?」
エレノアは笑う。
「そうよ」
ルイスは少し考える。
「男の子?弟みたいな??」
エレノアは笑って言う。
「まだ分からないわ」
ーーーーーーーーーーー
その横で悠馬は、まだ固まっている。
パンを持ったまま。
ノアが言う。
「兄さん」
悠馬。
「はい」
ノア。
「今知ったのか」
悠馬は少し考える。
それから言う。
「そのようです」
ノア。
「そのようですじゃないよ!」
エレノアは静かに悠馬を見る。
悠馬がやっとパンを置く。
それから言う。
「……おめでとうございます」
ノア。
「お前の子だろ!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
食事室。まだ騒がしい。
蘭が聞く。
「予定日は十月って言ったわよね?」
エレノアは頷く。
「ええ」
菜摘が少し考える。
「じゃあ、ドレスは早めね」
拓海が笑う。
「結婚式は?」
エドワードは即答する。
「四月だな」
ノア。
「早いよ!」
エドワード。
「遅いくらいだ」
「基準おかしいよ」
と、ノア。
ジェシカが穏やかに言う。
「お腹が目立つ前がいいわ」
蘭も賛成する。
「そうね」
菜摘も。
「四月なら準備できるわ」
拓海は悠馬をのぞき込んで聞く。
「大丈夫か?」
悠馬。
まだ少し固まっている。
「……努力します」
ノア。
「まだ理解してない」
エレノアは悠馬を見る。
そして少し笑う。
「四月でいいわよ?」
エドワードが頷く。
「決まりだ」
ノアがため息をつく。
「ルイスの誕生日から二ヶ月で結婚か」
悠馬が静かに言う。
「そのようです」
ノア。
「他人事だなおい」
ハミルトン邸。
二月の午後。結婚式は、四月になった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
感想・フォロー等とても励みになります!




