その183 「プロポーズ」
悠馬君良かったねぇ
夕方、ロンドンのオフィス。
窓の外はもう暗い。
冬の街灯がふんわりと灯る。
社員はほとんど帰っている、静かなフロア。
エレノアは書類をまとめていた。
そのとき、ノックが聞こえる。
「どうぞ」
ドアが開き、悠馬が入ってきた。
エレノアは少し驚く。
「佐伯さん?」
悠馬は少し頷く。
「こんばんは」
手には花束、緊張した面持ち。
エレノアはそれを見る。
そして笑う。
「それは…?」
悠馬は少し困ったように言う。
「少し」
「お時間をいただけますか」
エレノアは椅子から立つ。
「ええ」
オフィスは静かだった。
悠馬は花束を持ったまま立っている。
少し間。そして、
ゆっくり片膝をつく。
エレノアは目を丸くする。
悠馬は言う。
「エレノア嬢」
花束を差し出す。
「お互いの生存確認のために」
少し間。
「一緒に暮らしませんか」
エレノアは数秒黙る。
それから、エレノアは思わず吹き出した。
声を上げて笑う。
悠馬は少し困る。
「……おかしいですか」
エレノアは笑いながら言う。
「それって、プロポーズのつもり?」
悠馬は真面目に言う。
「そのつもりです」
エレノアはまだ笑っている。
それから花束を見る。
そして言う。
「可愛い人ね」
少し間、それから優しく言う。
「はい」
悠馬は少し黙る。
「……はい?」
エレノアは笑顔で言う。
「承諾、よ」
悠馬はゆっくりと立ち上がり、
少しだけ安心した顔をする。
エレノアは花束を嬉しそうに受け取り、
それから言う。
「でも…」
悠馬が聞く。
「はい」
エレノアは笑う。
「生存確認って何?」
悠馬は少し考えて、それから言う。
「重要ですから」
エレノアはまたクスクス笑う。
そのとき、背後からカタンと音がした。
物陰で小さな声がした。
「よし!!!!」
思わず悠馬が振り向くと…ノアだった。
壁の陰からスッと出てくる。
エレノアは呆れて言った。
「……あなた」
ノアはニヤニヤ笑う。
「見届け役だよ!」
悠馬は真顔で言う。
「なぜここに…」
ノアは肩をすくめる。
「兄さんがさ、今日絶対やる!って顔してたから!」
エレノアはまだ笑っている。
悠馬は小さくため息。
ノアは言う。
「まあ、、」
満足そうに頷きながら言った。
「成功!ほんとによかった!」
それからエレノアを見る。
「大歓迎するよ?」
エレノアは少し笑う。
「ありがとう」
ノアは言う。
「これで兄さん…」
悠馬を見る。
「やっと落ち着くな!」
悠馬は静かに言う。
「元から落ち着いています」
ノアは笑う。
ロンドンの夜、オフィスの灯り。
そして、新しい家族が一つ決まった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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