その165 「秘密基地」
夏が長いよーー
夏の午後。
今朝振っていた小雨は上がっていた。
芝生はまだ少し湿っている。
テラスの端で、
イーサンは椅子に座って本を読んでいた。
そこへタイラーが来る。
「なあ、兄さん」
イーサンが顔を上げる。
「何?」
その後ろにマックス、さらにリリー。
少し遅れてルイス。
四人。
イーサンは本を閉じる。
「勢ぞろいだな、どうした?」
マックスがまじめな顔で言う。
「相談があるんだよね」
タイラーが続ける。
「俺たち、森に行きたいんだ」
イーサンは少し考える。
「森?何するの?」
リリーが元気よく言う。
「秘密基地!みんなで作りたくて!」
マックスが勢いよくうなずく。
「面白そうだろ?」
タイラーが肩をすくめる。
「屋敷だとすぐ見つかるしさ」
イーサンは庭園の向こうを見る。
遠くに広がる森。
ハミルトン邸の敷地の奥。
「許可はとった?」
タイラーが聞く。
「許可?いるの?」
イーサンは答える。
「いるに決まってるだろ」
マックスが言う。
「誰に?」
イーサンは少し考える。
それから言う。
「悠馬叔父さんかな」
ルイスが小さくうなずく。
「悠馬叔父さんか」
タイラーが笑う。
「ノア叔父さんじゃなくて?」
イーサンはまじめな顔で答える。
「屋敷の管理は悠馬叔父さんだからね」
マックスが言う。
「なるほど、確かに」
イーサンは立ち上がる。
「聞いてくるよ」
四人は芝生に座って待つ。
少しして、イーサンが戻ってくる。
マックスがすぐ立つ。
「どうだった」
イーサンが言う。
「条件付きだけどいいってさ」
タイラーが大声で騒ぐ。
「出た!条件!」
イーサンは静かに指を折る。
「森の奥は行かないこと」
「屋敷が見える場所にいること」
「夕方までには帰ること」
リリーが嬉しそうに笑う。
「やった!」
マックスは大喜びする。
「許可がでた!!」
タイラーは少し驚いていう。
「意外だな。もっと厳しいかと思った」
ルイスが聞く。
「悠馬叔父さんが言ったの?」
イーサンは答える。
「そうだよ」
マックスが笑いながら言う。
「ノア叔父さんだったら?」
タイラーがニヤリとして言う。
「森の奥まで一緒に行く、だな!」
イーサンも頷く。
「たぶん、間違いないな」
少し笑いが起きる。
イーサンが続ける。
「あともう一つ」
四人を見る。
「僕が監督役だな」
マックス。
「監督?」
リリー。
「監督!」
タイラー。
「責任者ってことだな」
ルイスは小さく言う。
「それでいいと思うよ」
マックスが手を叩く。
「じゃあ決まり!」
「早く森行こう!」
五人は芝生を走る。
庭園を抜ける。
森の入口。土の匂い。葉の影。
マックスが周りを見る。
「ここ!!」
タイラー。
「適当すぎだよ」
イーサンは屋敷を見る。
まだ見える。
「この辺なら大丈夫だね」
リリーが枝を集める。
「材料よ!」
マックスが枝を組み、
タイラーが支える。
ルイスが少しずらす。
「そこ、倒れそうだよ」
マックス。
「ほんとだ」
位置を直す。
イーサンは少し離れて見ている。
作業は少しずつ進む。
枝。葉。
小さな屋根。
マックスが満足そうに言う。
「基地だな!」
リリーは手をたたく。
「完成したね!」
タイラーは中を覗く。
「まあ悪くないな」
イーサンも少し笑う。
「ほんとに秘密基地っぽいね」
五人は中に座る。
少し狭い。
森の風が中に入る。
マックスが言う。
「最高だな!」
タイラーはぼそっと言う。
「虫多いなぁ」
リリーが笑う。
「気にしないわよ!」
少し沈黙。
森は静かだった。
遠くに屋敷が見える。
ルイスはそれを見ている。
マックスが聞く。
「何見てるんだ?」
ルイス。
「屋敷……」
タイラーが言う。
「伯爵の城、だね」
マックスは言う。
「まだ子供じゃん」
リリーも続く。
「そうよ!」
イーサンはルイスを見る。
「ルイスはどうするの?」
ルイス。
「何が?」
イーサンが聞く。
「これから先の話かな」
ルイスは少し黙る。
森を見て、それから言う。
「まだ分からないな…」
マックスが笑う。
「アメリカに来いよ!」
ルイスは小さく笑う。
「いけたら、楽しそうだね」
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風が吹いて、小さく葉が揺れる。
小さな秘密基地。
子供たちはしばらくそこに座っていた。
『ハミルトン・ホールの夏はまだ終わっていない』
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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