その153 「夏の客人XV(シャーロッテ)」
先が長い・・・
夕方。
庭は少し静かになっていた。
子供たちはまだ芝生にいるが、さっきほど騒がしくはない。
ロッテはテラスの端に座っていた。
本。パンフレット。
大学案内。
でも、読んでいない。
視線は少し遠くの庭。
悠馬がいる。
紅茶。書類。
そしてまた何か考えている顔。
ロッテは思う。
(遅い)
そのとき。
横から声。
「また見てるね」
イーサンだった。
ロッテは視線を動かさない。
「何を?」
イーサンは笑う。
「叔父さん」
ロッテは言う。
「観察よ」
イーサンは隣に座って庭を見る。
「進んだかもね」
ロッテが聞く。
「何が?」
イーサンは言う。
「検討」
ロッテは小さく息を吐く。
「遅い…」
イーサンは笑う。
「ほんとそれな」
少し沈黙。
庭ではルイスとマックスが何か話している。
イーサンが言う。
「でもさ」
ロッテが聞く。
「何?」
イーサンは言う。
「うまくいくと思うよ」
ロッテは振り向く。
「なんで」
イーサンは肩をすくめる。
「分かるから?」
ロッテは言う。
「雑ね」
イーサンは笑う。
「だってさ、叔父さん」
「分かりやすいもん」
ロッテはまた庭を見る。
悠馬はまだ同じ場所にいる。
少しだけエレノアの方を見る。
そしてすぐ視線を外す。
ロッテは言う。
「確かに」
イーサンは続ける。
「それに、君のママも」
ロッテが止める。
「違うわ」
イーサンが振り向く。
「違う?」
ロッテは言う。
「まだ」
イーサンは言う。
「まだ?」
ロッテは肩をすくめる。
「分からないわよ?」
イーサンは笑う。
「分かってるくせに」
ロッテは言う。
「観察中だから」
少し沈黙。
風が吹く。
庭の芝生が揺れる。
イーサンが言う。
「僕はさ」
ロッテが聞く。
「何?」
イーサンは言う。
「まとまった方がいいと思う」
ロッテは少し眉をひそめる。
「どうして?」
イーサンは言う。
「だって」
庭を見る。
悠馬。
エレノア。
「叔父さんさ、」
「ちゃんと人の中にいるから」
ロッテは少し黙る。
その言葉は分かる。
前より確かに。
ロッテは言う。
「だからって…」
イーサンは言う。
「だめ?」
ロッテは少し考える。
それから言う。
「別に…だめじゃないけど」
イーサンは笑う。
「じゃあいいじゃん」
ロッテは庭を見る。
悠馬。
真面目な顔で、何か考えている。
相変わらず遅い。
ロッテは小さく言う。
「でも」
イーサンが聞く。
「何?」
ロッテは言う。
「まだ……」
少し間。
「観察する」
イーサンは笑う。
「厳しいな」
ロッテは肩をすくめる。
「当然よ」
夕方の風が吹く。
庭ではまた子供たちが走り出す。
夏はまだ続く。
そして。
観察もまだ終わらない。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
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