66話 第三予選、開始
「もう第三予選かー。この前第二予選があったばかりな気がするのになー……」
第三予選当日の朝、リリィこと私はベッドの上で凝り固まった身体をほぐしながらひとりごちます。
ここ数日、日中は仕事をして帰宅してからは第三予選に向けてチームで練習のサイクルで動いていました。
日々が早く過ぎ去るように感じるのは同じような日々が続いたからか、それとも大人になったからか。
「マモル君やアカネちゃんを見ていると後者な気もするなー」
毎日練習するごとにめきめきと成長する若い子達を見ると過ごす時間の密度が違うんじゃないかと思ってしまう。
まあもっと年上のジイクさんからすれば私に対して同じようなことを思っているのかもしれないけど。
「第三予選か。みんなは楽勝だと思っていそうだけど……」
組み合わせが発表されて、私たちが戦う58ブロックに強敵がいないことが分かって、それでもマモル君は気を引き締めようと言った。
負けたら終わりのトーナメント戦だ、もちろんみんな油断なんてしていないはずだ。
それでもふとしたときに現れる楽観的な雰囲気は……おそらくみんな今度の第三予選は勝てると思っているからだろう。
逆に負けるかもしれないと悲観的になるよりはよっぽどいいと思う。
「………………」
それはそれとして私にはとてもそう思うことが出来なかった。
私以外のみんなは強者だ。
全てを破壊する前衛、全てを把握する後衛、そして全てを支配するオーダー。
それぞれ突出した才能を持つ私の自慢のチームメイト。
強者故の余裕を持っても仕方がない。
対して私はどうか?
これまでの予選でいつもみんなの後を付いて回るだけで、特にこれといった活躍をしたことがない。
極論、私の代わりにSSS初心者がチームに入ったとしても、みんなはこれまで同様に勝ち進んで来れただろう。
「私だけ合宿の課題達成出来てないもんね……」
SSSプレイヤーの突出したプレイヤースキルを指す『技能』。
合宿の際に私に課せられたのはその『技能』の習得であった。
ジイクさんが難しいだろう、と言いながらも設定したこの目標を私は未だに達成出来ていない。
マモル君に言わせれば『技能』とはその人にしかない強みであるらしい。
SSSで私にしか出来ないこと……これだけは負けないってこと……。
「何かあるかな……」
自分の心の内に問うが、答えは返ってこない。
合宿の日からほぼ毎日この問いは投げかけているんだけどね……。
こうしていればいつか答えに辿り着ける日は来るんだろうか?
……いや、そもそもなんで答えがある前提なんだろう。
『技能』なんて、強みなんて、私にしか出来ない事なんて…………そんなもの無い可能性の方が高いのに。
「……そろそろ準備しないと本番前の最終確認に間に合わないか。急がないと」
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『さあさあ! SSS全国大会アマチュア部門第三予選、もうすぐ開幕です!』
『58ブロックの解説を担当させていただきます』
『注目のチームはやはり『APG』でしょうか!?』
『そうですね。第一予選で有名チームをなぎ倒し、第二予選では遠距離、近距離、それぞれの達人を大逆転で撃破。実力も勢いも一番乗っているチームでしょう』
『くじ運の妙か、他にアマチュア大会常連といったチームはいませんね。これは順当に『APG』が勝つのか!?』
『さあどうなるでしょうか』
『……さてまだ少し時間があるようですね。ええと……今回選ばれたマップについて解説してもらってもいいでしょうか』
『はい。58ブロックに選ばれたマップは『港町』ですね。
碁盤の目のように綺麗に整備された石造りの街。『大聖堂』や『バザール』などのスポットもありますが、高い建物は少ないですね。
どんな試合展開でもここを抑えておけば勝てるというような強いスポットがあまり無いですが、その逆弱いスポットも少ないです。
100回試合すれば100通りの試合展開になるため、型にはめずにそのときそのときの状況を判断出来るかが勝負を握ります。
一つギミックとして街中を流れる水路は専用の乗り物を使うことで高速で移動できますね。もちろん敵に気付かれると陸から撃たれるので使用には注意が必要ですが』
『なるほど解説ありがとうございます! 西洋的で雰囲気が良いマップですね!』
『まあそんな街中で銃でドンパチやるんですけどね』
『そ、それは言わない約束ですよ』
『ふふっ、意地悪言いましたか』
『っと、こうして時間を稼いでいる間にどうやら準備も完了したようです!』
『そうですか、それでは第三予選――』
『スタートです!!』
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第三予選、開始。
プレイヤーはマップを横切る飛行船からそれぞれ戦場の好きな地点に降下していくことになる。
マモルこと僕たちは練習通りマップの西南、閑静な住宅街に進路を向けた。
そうしながらも視点を切り替えて後方、今降りてきた飛行船の方を見る。
プレイヤーがどの方向に降りるのか確認するのはオーダーとして必須の行動だ。
敵が大体どこに降りるのか分かるし、もし一緒の地点に降りる敵がいるなら着地すぐに戦闘が出来るように身構えないといけない。
初動の戦闘は敵より先に武器を拾えるかなど運要素がかなり高い。負けたら終わりのトーナメントで避けたいところだ。
そういう意味では今回、僕らと同じ方向に向かっている敵部隊はいないため良かっただろう。
「敵は来てなさそうです」
「了解!」
「分かった!」
「承知しました」
敵がいるなら固まって行動して戦闘するべきだが、敵がいないなら散開して漁った方が効率が良い。
空中で分かれてそれぞれのポイントに降りていく最中、僕は最後にもう一度だけ後方を確認して…………違和感を覚えた。
この辺りに敵は来ていない…………いやでも、これは…………来なさすぎじゃないか…………?




