67話 違和感
SSS全国大会、第三予選、1マッチ目。
練習通りマップ『港町』の南西端に降りたマモルこと僕たち。
同じ場所に降下する部隊がいなかったことは幸いだが……しかし違和感を覚える。
「見た感じ自然公園にも部隊降りてない感じね。漁り放題じゃない!」
スポット『自然公園』
マップ端にあるこの閑静な住宅街よりマップ中央に近い位置にある、南西方面では一番広いスポットだ。
その分物資も多く落ちており、カジュアルマッチだとよく激戦区にもなっている人気スポット。
そうだ、普通ならこんな絶好の場所に部隊が降りないわけがない。だから僕は違和感を覚えたんだ。
大会だから初動ファイトを避けるため……だとしても自然公園は広く2部隊くらいなら争わずに物資を漁れる。
「自然公園で戦っている部隊を漁夫するのが黄金パターンだよね。でもいないってことは漁りにいく?」
漁りの手を止めないままVCでリリィさんが聞いてくる。
「いえ。発表された安置は北東方面、ジイクさんの祈祷師のスキルによって分かるその次の安置もさらに北東……僕たちの現在位置とは完全に真反対です」
「あ、ほんとだ」
「なので移動を早めます。装備が整い次第、水路を使いますよ」
物資や装備が潤沢にあるが遮蔽のない平地に展開する部隊と標準的だが高台に陣取った部隊が戦えば、ほとんど後者が勝つ。
SSSにおいて重要なのは装備より場所だ。対等な場所で戦って初めて装備の差が出てくる。
大会ともなると誰しもが負けられないという思いで挑むため場所の奪い合いとなる。
となるとマップの真反対の位置に安全地帯が設定された僕たちが一番出遅れている形だ。その遅れを取り戻すために一秒でも早く動きたいところである。
「………………」
この辺りに降りた部隊は不利となった……そしてこの辺りに降りた部隊は僕らだけだった。
ただの偶然……なのか?
漠然とした不安を抱えながらもチームで集合して物資を交換して装備を固める。
ジイクさんはスナイパーライフル、アカネはマシンガン、リリィさんはアサルトライフル、僕もアサルトライフルと共に手榴弾を多めに持つ。
完璧な装備ではないが、ひとまず戦っても遅れは取らないだろうというレベルには達した。
「では水路を行きましょう!」
港町の至る所を流れている水路はここ住宅街の外れにも続いている。そこに停泊しているボートを使えば高速で移動することが出来る。
SSSにおいては珍しいマップに備え付けられている移動手段というわけだ。
仕様としてまずこのボートは操縦出来ない。最初に設定した目的地点まで自動で航行してくれる。
これは一長一短で操縦に人員を割かなくていい代わりに目的地点の途中変更が不可というところがある。
そして船の上には遮蔽がない。見つかれば陸から撃たれることは必至だが、結構なスピードで動くためダウンまで行くことは少ない。
最後に乗り降り出来る地点は決まっておりさらには開けた場所であるということ。
つまり総合すると降りる場所を予想されて待ち伏せされると、途中で変更できないし、船の上で撃ち合いするのは厳しく、遮蔽に移動するまで滅多撃ちにされて全滅する危険性がある。
チームメンバー全員がボートに乗る。目的地点設定はオーダーである僕の仕事だ。
「………………」
最速で準備を整えたおかげで、まだ1マッチ目が開始してから3分ほどしか経っていない。
他のチームはようやく物資を漁り終えて装備を整えているくらいの時間帯だろう。
今の内にマップ北東に近づけるだけ近付く。待ち伏せされる危険性も少ないはずだ。ちまちま移動するくらいなら最初から水路を使わないで走って移動すればいい。
だから行けるところまで行くべきで…………。
「奥から一個手前の地点に設定します」
宣言して僕はボートの航行を開始させる。
「どうかされましたか、マモル様?」
ボートの上でそれぞれ四方を警戒しながら、ジイクさんが問いかけてくる。
これまでこのマップで練習してきた中で、多くは無いながらも同じような状況になったことはある。
そのときはいつもボートで行けるところまで移動していたわけで、今回はそうしなかったことがジイクさんは気になっているのだろう。
「すいません。上手く説明出来ないんですが……こう、何か悪い予感がして」
「ふむ、そうですか」
「ジイクさんは何か感じ取っていませんか?」
「私が把握できるのは戦場に目と耳の範囲で実際に起きていることだけです。今感じ取れるのはこうして水路を移動していること、快適な旅を送っていることくらいです」
「…………」
「故に何か起きているのだとしたら未だに形を成していない思惑、すなわち策謀の方面でしょう。
それらに関しての探知能力はマモル様の方が鋭敏です。そのマモル様が悪い予感がするのであれば、従うのが吉だと思われます」
「……ありがとうございます」
要するに自分の判断に自信を持て、と励ましてくれているようだ。
「失敗したとしてもこのアカネ様がドーンと帳消しにしてあげるから大船に乗った気持ちでいなさい!」
「力及ばないかもしれないけど私もフォローするからね」
アカネとリリィさんにも励まされる。
「………………」
僕は……本当に良いチームメンバーを持ったな。
感傷に浸りそうになるが今は戦場、さらにもうすぐ目的地点だ。
頭を振って思考を戻す。
「着いたらすぐに移動開始ですからね!」
「承知しました」
「分かってるわよ!」
「はい!」
ボートを降りて水路沿いの陸を進む。
そうすると当然だが、本来降りるはずだった一つ奥の地点も通ることになる。
その近くを通る時になって――僕は愕然とした。
「敵部隊、視認。どうやらボート到着地点の方を警戒しているようですね」
そう、つまり僕らが本来降りる地点を待ち伏せしているわけだ。
悪い予感は当たった。
危険を避けることが出来て『してやった』という喜びが沸き起こり――。
それ以上の『一体この戦場に何が起きているのか?』という黒い不安に胸が押し潰されそうだった。




