33話 スター杯予選 反撃
私は緊急作戦会議で語られたマモル君の言葉を思い返していた。
今回の『黄昏』ステージは隠れられる場所が多い。
それを利用して包囲奇襲しようとする敵を逆に奇襲。
一部隊壊滅させたら私がスキルを使用して敵の位置を確認してから突撃する。
ここから先は不確定要素が多いので臨機応変が対応が求められる。
『先に一部隊倒せても、残りは四部隊いるんでしょ? かなりきついんじゃない?』
『まあそれはその通りです。……一応やつらチーミング集団にも弱点が二つほどはあるんですが』
『弱点? そんなのあるの?』
『はい。そもそもなんですが、やつらはどうして一戦目あんな奇襲を仕掛けてきたんだと思いますか?』
『……? 何かおかしいかな? 手榴弾で潜伏先を攻撃して、逃げてくるだろうところに待ち伏せを置く。良い奇襲だと思ったけど』
『それはお互いが対等な場合の話です。普通に考えたら20人で僕たちの潜伏先になだれ込んだ方が早いように思えませんか?』
『それは……確かに』
『5倍なんて人数差があるんですから、策を弄する必要もなく脳死で突撃すれば勝てる状況のように思えます。しかしやつらはそれをしなかったし、実際あまり上手く行かないでしょう。そこに弱点があるんです』
『つまり……どういうこと?』
『おそらくですがやつらは自分たちがチーミングをしているという明確な場面を見せたくないのだと思います。
チーミングが発覚すればBANされる、大会から失格されるという理由の他に、やつらは僕を馬鹿にしたいという目的もありますから。
普通に敵と戦って負けた、ってなれば馬鹿に出来ますが、チーミング集団に負けたってなればそれは当たり前だろ、ってことになります』
『何か……聞いてて気分悪くなってくる話だね』
『僕も話してて気分は良くないです。ですから2マッチ目もやつらは4人以上、部隊を越えてまとまり行動することは無いと思われます』
『4人と4人でこちらを挟んで攻撃する、といったような部隊同士の連携はあっても、8人が横並びになって攻撃してくるようなことはない、ということですな』
ジイクさんがマモル君の話を補足する。
『そしてもう一つは単純な話。やつらはゲームの裏で手を組んでいても、ゲームシステム的には敵同士なんですよ』
『システムでは敵同士…………あ、そっか。SSSは撃った銃弾が味方に当たってもダメージを食らわないから、味方が敵に突っ込んでいても、気にせず援護射撃が出来る。
でもチーミングしている敵は自分の部隊の人なら大丈夫だけど、他の部隊の人に銃弾を当ててしまったらそのままダメージが入ってしまう』
『そうです。四人を越えての団体行動が出来ず、自分の射撃が味方に当たるか常に考えないといけない。総じてチーミング集団は乱戦に弱いんです。
ですから基本方針としては奇襲で一部隊潰せたら、そのまま敵に向かって突撃して乱戦に持ち込むつもりで行きます』
=====
「こんな……こんなはずじゃなかったのに……」
ギルバートは狼狽していた。
チーミングによって余裕で勝つと思っていたところに、奇襲を仕掛けられブラボー隊は全滅。
その後マモルたちは近くにいたデルタ隊に突撃を敢行した。
応戦している間に残りの部隊が駆けつけるも、その瞬間マモルたちは忽然と姿を消す。
この『忘れ去られた住宅街』には潜伏場所以外にも抜け道などが多く、地面の穴から地下の偶然崩れずに済んだというような通路を通って別の場所に出たりすることも出来る。
マモルたちはここを降下場所として練習していたから当然マップを熟知していたが、ギルバートはほとんど知らなかったし、他のチーミングメンバーは普段SSSをプレイしていないのだから尚更分からなかった。
再び姿を現したマモルたちにギルバート隊は攻撃しようとしたものの、チャーリー隊がその間にいて上手く行かない。明らかに盾にしているような素振りさえあった。
チーミングの証拠を残さないように部隊同士が横並びにならないようにしないといけないため、移動経路や展開場所を気にしないといけない。
そうやってる内にマモルたちは移動していて振り出しに戻される。
そのように翻弄された結果、チーミング集団は個々人がそれぞれの判断で動き出した。そもそも普段から好き勝手しているような輩だ、協調性などあったものではない。
結果、マモルたちにとって集団ではなく、ただ16人の敵がいるだけとなり、少しずつ人数を削っていく。
既に残ったのは半分、アルファ部隊とギルバート部隊の8人だけだ。
どちらもメンバーが集まり直して部隊としての機能を取り戻したものの、現在アルファ部隊がマモルたちの攻撃を受けている。
「すぐに援護に行かないと!!」
部隊の一人がギルバートに進言するが。
「いや、待つんだ。もうアルファは助からない。だからオレたちだけでやつらを倒すしかないんだ。タイミングを窺うぞ」
ギルバートはそれを押し留めていた。
思い切った判断のように見えて、ギルバートの内心は。
「(ちっ、役に立たないやつらめ。だったらせいぜい囮として使ってやる!!)」
仲間を仲間とも思っていないものである。
とはいえ戦略としては悪くないものだろう。
マモルたちはアルファ部隊に銃弾を叩き込み殲滅。
その後リロードをする瞬間、絶対的に隙になるタイミングを狙って、背後からギルバート部隊は襲撃。
――しようとして、その動きが突然遅くなった。
「っ……これは!?」
=====
「読めていたよ、そう来ることは」
敵が残り2部隊になって、その位置はどちらも把握できていた。
だから乱戦の合間を縫って、敵が通るだろう場所に『罠師』の罠を仕掛けた、ただそれだけのことだ。
「リリィの索敵で映ったのは4部隊だったし、これが最後ね」
アカネはリロードを終えた銃を罠にかかった敵に向ける。
その高い前線能力はこの乱戦でとてつもない輝きを放っていた。
「いやはや、大漁でしたな」
ジイクさんは楽しげな様子だ。最近分かってきたが好戦的な爺さんである。
その索敵能力によって僕が見落としていた敵を警告してくれたりした。
「これで終わり? 良かったあ、もうヘトヘトだよ」
対照的にリリィさんは疲れ切った様子だ。確かに乱戦で一番振り回されたのはリリィさんかもしれない。
メンバーの中で特筆する役割はなかったけど、それでも献身的にみんなを支えてくれてとても助かった。
「これで周辺の敵は全滅でしょうが、まだまだ2マッチ目は始まったばかりですから気を抜かないようにお願いしますよ」
僕はオーダーとしてチームに釘を刺す。常に先を見続けること、それが僕に求められた役割だ。
三人が罠にかかった敵部隊に銃撃する中、僕は手榴弾を敵の中心に放り込む。
必死に逃げようと、応戦しようとする敵だが、罠によってかかったスロウ効果の中ではそれもままならない。
結果、3人によっていい感じに体力が削れたところに手榴弾が爆発して、僕が4キルまとめていただく。
その後も順調に進み、2マッチ目僕たちの部隊はスターを獲得。
順位ポイントとキルポイントを大きく積み重ねて、1マッチ目と2マッチ目を合わせた結果でもDブロック3位に、本選進出圏内に入ったのだった。




