32話 スター杯予選 2マッチ目
ギルバートが今回のチーミングに集めた19人は普段からチートやチーミングなど違反行為で、真面目にゲームをしている人たちを馬鹿にして楽しむような人種だった。
しかし、彼らが普段プレイしているのはSSSではない。
界隈では一番人気のSSSだが、違反行為が見つかると運営によってすぐにBANされるため行いにくく、そのため運営の対策がそこまで回っていない違うFPSゲームを主戦場としている。
その者たちにギルバートが勧誘をかけて、『面白そうだな』と了承したことで今回SSSをプレイしているのだった。
そのためFPSに共通している銃の扱いなどについては分かるものの、SSS特有のキャラごとに設定されたスキルの扱いなどの知識は全くない。
それらの知識を覚えるような真面目さがあれば、そもそも違反行為などをするはずがない。
そのためチーミング集団は誰もスキルを使うつもりが無かった。スキルなんか使わなくても勝てるっしょ、という雰囲気もその一因だろう。
「(1部隊に同じキャラを選択することは出来ないから、5部隊で同じキャラは5人まで。
5人の罠師で罠を置いたり、5人の巫女の焔化で突っ込ませることが出来ればもっと面白かったんだけどしょうがないか。……まあそんなことしたら目立っちゃうし、そうでなくても勝てたからね)」
ギルバートは思い返す。
実際1マッチ目の強襲は完璧だった。
今回のチーミングにおける5部隊にはアルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ、そしてギルバート部隊と呼称している。
そのアルファからデルタまでの4部隊が手榴弾を投げ込み、逃げてくるだろうルートにギルバート部隊が待ち伏せする完璧な包囲体制だった。
一つミスがあったとしたら、自らの手でマモルを狩ろうとギルバートは早走ってしまい、ジイクフリートの捨て身のヘッドスナイプでダウンさせられたことだろうか。
ギルバート部隊の残りの三人でマモルまで倒したため目的は達成されているが、それでもギルバートとしては少し鬱憤が溜まっていた。
「(あれはうぜえ反抗だったな。雑魚が、オレ様の邪魔をしやがって。ちっ、次こそはオレの手でキルして煽りまくってやる)」
アカネの配信にマモルのアンチコメントを書き込みながらギルバートは暗い情念を燃やす。
ギルバートにとって今回の戦いはマモルによって不当に貶められたと思いこんでいる自分の評判を取り戻すためにやっている。
マモルの評判を貶めれば騙されていたみんなが目を覚まし、自分を見直すのだと本気で思い込んでいる。
そのような自分の見たいようにしか現実を見れないギルバートが配信を見て思うことは。
「くくっ、こいつ馬鹿じゃねえのか? こっちがチーミングしていることにまだ気付いていないでやがる」
本気で悔しがり次こそはやってやると意気込むアカネに、ギルバートはそのように判断した。
1マッチ目の決着が付き、スケジュールの都合で2マッチ目をすぐに迎える。
ギルバートは全部隊に通達した。
「おまえら、さっきと同じ要領で行くぞ!!」
そして始まった予選2マッチ目。
ギルバートたちは『忘れ去られた住宅街』の周辺に降りる。
物資を漁りながら3分が経過するのを待って配信画面を確認。
「やつら、やっぱりさっきと同じところに降りたようだな」
練習でずっと同じ場所に降りていたとはいえ、絶対にそこに降りないといけないというわけではない。チーミングに狙われているなら、違う場所に降りるという選択肢もあったはずだ。
しかしマモルたちはまたも同じ『忘れ去られた住宅街』に降りた。つまり自分たちが狙われているのに気付いていないということ。
『安全地帯が先ほどとは違って中央寄りですが、第一収縮の範囲内ではあります。ひとまずここで待機しましょう』
配信内のマモルの言葉を聞いてギルバートは全部隊に通達する。
「さっきとは潜伏する家を変えたようだが関係ねえ。おまえら囲むぞ!!」
アルファからチャーリーまでの配置を決めて、足音を立てないようにゆっくりとじっくりと包囲を狭めていく。
そして総員が配置に付こうとしたそのとき、配信内の、3分前のマモルに動きがあった。
『場所を変えます、音を立てないように付いてきてください』
『え!? な、何、ここで潜伏するんじゃなかったの?』
いきなりの方針転換にあたふたするアカネ。
ギルバートとしても同じ心境だった。
「(ああん? 第一収縮まで動かないって話だったじゃねえか。っていうか動いたんだったらこいつらは今どこに……?)」
『こちらブラボー!! 配置先に対象が潜伏、奇襲を食らった!! 応戦するが……くそっ……うわぁぁぁっ!!!』
VCから流れてきたブラボー隊長の報告。
それと同時にゲーム画面に四つのキルログが流れる。やられたのはブラボー部隊の四人、やったのはマモルたちの部隊だ。
「まさか……あいつら……!!」
そのときになってギルバートは自分たちが罠にハメられたことに気付いた。
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「先制攻撃成功……しかしここまで上手く行くなんてなあ」
マモルこと僕は予想以上の戦果に驚く。
奇襲が完璧に刺さり、敵四人をほぼノーダメージで倒すことが出来た。
今回の作戦一番の功労者を上げるとすると。
「ぷぷっ、私たちのいるところにノコノコと近づいてきてばっかみたい! あんたらの物資ありがたくいただくわね!!」
大喜びで棺桶を漁るアカネだろう。
緊急作戦会議から外されていたアカネには、今もまだ敵がチーミングしていることを伝えていないし気付いていない様子だ。
SSSのプレイ歴も長いアカネだが、そのプレイIQはどうやって突撃するか、どうやって敵の守りを崩すか、どうやって生き残るか……といったような分野に突出している。
良く言えば前線の鬼、悪く言えば脳筋なのだ。
それでもこれまでやってこれたのは戦略的なことは全てジイクさんに任せてきたからだろう。
そのアカネが配信でいつもの調子で喋っているのを見て、おそらく敵はこちらがまだチーミングに狙われていることに気付いていないと思ってしまった。
これみよがしに潜伏すると発言すれば1マッチ目と同じように敵は包囲するだろうと読み、その後急に移動すれば3分の遅延のおかげで良いように奇襲出来た。
「リリィさん、お願いします」
「うん、行って!!」
合図をするとリリィさんは鳥使いのスキルを発動。
少しして周辺の敵の位置が判明する。その数は想定通り16だ。
「今の戦闘に釣られた漁夫かしら。やけに多く集まってきたわね」
チーミングを知らないアカネの感想。
「物資も揃いました。ちょっと強引かもしれませんが、ここでポイントを稼がないと予選の突破も難しいですし仕掛けますよ」
そのアカネに合わせて、配信で声が流れることも鑑みて、僕も敵がチーミングをしているなんて知らないという体で指揮していく。
とはいえ内心では強く燃えるものがあった。
チーミングになんか頼る卑怯者どもめ、ここがおまえたちの墓場だ……!!




