31話 スター杯予選 違反行為
時を遡る。
チート使用がバレて全てを失ったギルバートが、マモルに目を付けてスター杯で復讐すると決めた後のこと。
ギルバートは早速スター杯の主催者にメッセージを飛ばした。
『久しぶり、少し話をどうかな?』
『ギルバート……何の用だ? 忙しいんだが』
『そうツレない態度は止めてくれよ。昔一緒に暴れた仲じゃないか』
『……ちっ、埒が明かない。コールするぞ』
『どうも』
少しして主催の男からコールが鳴り、ギルバートが応答する。
「チート使用がバレて大騒ぎになった渦中の男から連絡が来るとは思わなかったな」
主催の男は不機嫌なことを隠さずに話す。
「まあそれはオレのミスだ。弁解するつもりはないよ」
「……おまえがわざわざ連絡するってことは禄でもない用件なんだろ。こっちはようやく大会運営が軌道に乗ってきて、次の大会のために必死で準備している状況なんだ。手短に頼むぞ」
「そうそう、用件っていうのがその大会に関することなんだ。スター杯、そこで復讐したい人がいるんだ」
「ふん、だったらチートでも使えばいいじゃねえか」
「チートは駄目だ、あれは運営にすぐバレるからね」
「分かってんなら使わなきゃ良かったのに……いや使ったから分かったのか?」
「まあだから今回は正々堂々と数で潰すよ。予選ブロックの振り分けを操作して、そいつと同じブロックに10チーム混ぜてくれ」
「『チーミング』のどこが正々堂々なのか……嫌だと言ったら?」
「そのときは君が昔やんちゃしてたころの証拠をところ構わずバラマく事になるかな?」
「ちっ……」
ギルバートは『銀鷲』を立ち上げてから実力はともかくとして、真っ当な配信者として活動していた。
しかし、それ以前は様々なFPSゲームを渡り歩いては迷惑行為、違反行為を繰り返す害悪プレイヤーだった。
そのときに一緒に活動していた中の一人がこのスター杯主催の男であった。
今は真っ当にゲームをプレイして、真っ当に大会を運営している男にとって、ギルバートに過去を掘り返されたらイメージダウンは必死だ。
そこを分かっていてギルバートは男を脅しているのである。
「……分かったよ。予選ブロックの組み合わせくらいは実際操作するのも簡単だしな。だが10チームは無しだ。多すぎるし目立ちすぎる。運営の関与が透けて見える。3チームで十分だろ」
「少なすぎる。じゃあ7チームだ」
「……5チームで手を打て。これでもかなり譲歩だぞ」
「5チームか……まあいいだろう。そもそもあんな雑魚オーダーが率いるチームなら十分か」
「ああ、そうだ聞いてなかったな。その復讐したいやつの名前は何だ?」
「マモル、だ。以前は僕のチームにいたけど、追放された腹いせで色々と嫌がらせされててね」
「嫌がらせ……か。まあいいけど。調べたらそのマモルとやらはDブロックだな。5チームの人選については出来ているのか?」
「いや、まだだ。これから昔のメンバーに声をかけるつもりでね」
「決まったらねじ込んどいてやるから早めに連絡しろよ」
「了解」
「それと……改めて忠告しておくが、あんまり目立つなよ。スター杯はようやく軌道に乗ってきて、今回ようやく大手のスポンサーが付いたし、シークレットの目玉チームも呼べるほどになったんだ。
あまりにもな場合はこっちも手段を選ばないからな」
「分かってる、分かってる。それじゃよろしく」
通話が切れる。
「ふっふっふっ。舞台は整った。後は諸悪の根元、マモルを成敗してやるだけだ……!!」
そうしてギルバートは5チーム、20人を集めて大会に登録。
ちなみにギルバート自身は今まで使っていたアカウントが凍結されているため、全くの別名で新しくアカウントを作り直している。
迎えた予選1マッチ目。
マモルたちが『忘れ去られた住宅街』に降りることは練習配信で分かっていたため、その周辺に降りて物資を漁り、詳しい潜伏場所はを配信を見ることで特定、VCで20人が連携して倒した……というのが裏側だった。
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「『チーミング』と『ゴースティング』……」
リリィさんがは僕に言われた単語を復唱する。
「『チーミング』とは本来自分以外全てが敵のバトルロイヤルルールで複数チームが結託する違反行為です。単純に2チーム結託するだけでも、その人数は8人になります。8人対4人で撃ち合えば、よほどのことが無い限り8人の方が勝つのは明白です」
「それが今回は20人……5チームが結託していたってマモル君は思っているわけ?」
「はい。完全に連動した襲撃でしたからね」
「それと『ゴースティング』っていうのが……配信を覗き見る違反行為だったよね? でもそれをされないために3分間の遅延をかけてたんじゃないの?」
「そうですが、僕たちはあの場所に3分以上いましたからね。遅れた配信を見てもその辺りにいることが分かりました。なので忍び寄り実際に見つけたので強襲をかけた……というのが事の次第でしょう」
「そっか……でもそもそも何で遅延って3分なの? もっと大きく遅延を……いやそもそも全部終わってから録画を流せば……」
「動画の盛り上がりのためですよ。スポーツとかの中継だって生で見るのが普通で、後から結果が分かってるのに録画を見るという人は少ないですから。
やっぱり生で流すのが盛り上がる……けど本当にリアルタイムにすると配信を見られて不利益を被ることがある。その折衷案として3分の遅延で配信していたわけです」
「なるほどー」
アカネの目的は人気になること。
実際今日のスター杯の予選は多くの人が見ている。
それは大変喜ばしい。
悪いのは配信する事じゃない、それを悪用する人たちの方だ。
「ジイクさん、今回の強襲って僕たちを狙ったものですよね」
「そうでしょうな。『チーミング』だけなら目に付いた敵を倒しただけという可能性も考えられましたが、アカネ様の配信を見ていないと出来ない『ゴースティング』も併用していますからな。
そもそもあれだけの速さで襲撃できたのも、私たちの練習配信を見て毎回『忘れ去られた住宅街』に降りることを知っていて、その周辺で物資を集めてから攻撃したというところでしょう」
「やっぱりそうですよね……」
「あと……包み隠さず申しますが、部隊が全滅してから配信のコメントの方にマモル様を責めるようなコメントが連投されております。曰く『こんな襲撃も気付かなかったのか』とか『雑魚オーダーw』とか……本当見るに堪えない物ばかりで」
「ここ最近僕に向けられていたヘイトが噴出しているというところですか。……ここまで計画的な襲撃を見るに、ヘイトを向けている人物がチーミングによって僕を潰しに来た、と考えた方が良さそうですね」
「マモル君冷静だけど……その、怖くないの? そんなに人から恨みとか妬みとかを向けられて」
「別に気にしませんよ。……あ、強がりとかじゃなくて本当にですからね。そんなのいちいち気にしてたらやってられませんし」
「マモル君は強いね……」
感情自体は気にならないが、一体誰がこんなことをしているのかは気になるところだ。
最近そこまで大きな恨みを買うようなことをした覚えは無い。
『銀鷲』を追放されたことは……そもそも追放された僕の方が恨むものだし関係ないな。
そういえば今『銀鷲』はどうしてるんだろうか? 追放されてすぐのちょっとむしゃくしゃしてたときに、『銀鷲』をNGワードに設定して情報を遮断してしまったから、追放された後を全く知らないんだよな。
まあでもわざわざ僕を追放して新しいオーダーを入れたくらいだし上手くやっていることだろう。
とにかく『銀鷲』関連だとは思えないのでそれ以外だと心覚えがないし……まあSSSの対戦で僕にこっぴどくやられた誰かが逆恨みしたとかそんなところだろう。だとしたら誰なのかは絞りきれない。
貴様はこれまでに倒した敵の名前を全て覚えているのか、って話だ。一日に何十マッチもして、チーム全体で考えれば何十人も倒しているんだ。覚えられるわけがない。
「ねえ、違反行為だったらどうしてゲームの運営は気付かないの? 確かSSSってそういう対策が結構整っているんだよね?」
「整っているのはチート対策ですね。データを弄るチートは使ったらすぐに検出されてBANされるらしいですが、チーミングはデータ上は普通のプレイヤーですから検出が難しいんですよね。もちろん証拠を集めて通報すれば対応してBANしてくれるらしいですが、スキャンに映ったの一瞬でスクショ取れてないんですよね……」
「それに対応するといってもそうすぐには動けないでしょう。しかし予選スケジュールは午後から本選があるため詰まっています。1マッチ目が終わればすぐに2マッチ目が始まるため時間もそこまでありませぬ」
「だったら次もまた同じようなことされる可能性があるってことだよね……そんなことされたら本選出場は絶望的に……」
「確かにこれだけ僕らを狙っての行動ですから、次も同じようなことをされる可能性は高いでしょう。
……いやそうしてもらわないと困ります、と言うべきですか」
「……え?」
「チーミング集団のせいで1マッチ目のポイントが0でしたからね。2マッチ目で大きく稼がないと、4位までに入賞は難しいです。ですからチーミング集団を返り討ちにしてがっぽりポイントを稼ぎますよ」
やられっぱなしでいるつもりはない。
これまでスター杯で優勝するために練習してきたんだ。
こんな予選なんかで負けるわけには行かない。
悪質なチーミング集団を成敗してやる。




