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29話 スター杯予選 1マッチ目


 スター杯予選当日、早めに起きたユリこと私は改めて大会の概要に目を通す。


 定期的に開かれているスター杯は、今回150のチームが参加するらしい。

 午前中に行われる予選では全体を6つのブロックに分けて行う。ルールはSSSではオーソドックスな4人1組25チームによるバトルロイヤルだ。

 3回のマッチを行い、キル数と順位にそれぞれ設定された点数の合計を競い合う。この前アカネちゃんとやった交流戦と違って、生き残ることにも大きな意味がある。SSSの大会では定番のルールだそうだ。

 そして各ブロックの上位4チームが午後からの本戦に進出できる。




「チームの目標は優勝……もちろん予選じゃ負けられないよね!!」


 今一度気合いを入れ直す。

 各ブロックの4位までが本戦進出。まずはそこに入らないと……って、あれ?


「予選って6ブロックだったよね? だったら本戦って24チームでやるのかな……?」


 気になった私は大会の概要を隅々まで読むと、シード枠として本戦から出場する1チームがいます、と記載されていた。『正体はシークレット、乞うご期待!』とも書かれている。

 シード枠な上、ここまで煽るってことはすごいチームでも来るのだろうか?


「……あ、そろそろ時間だ」


 気にはなったがチームで決めた集合時間が近づいたため、私はヘッドセットを付けてチームのVCボイスチャットルームに入るのだった。






 初めて参加するSSSの大会。

 大会というと私が思い浮かべるのは、開会式から始まり偉い人がお話しして選手宣誓や準備体操を…………あれ? これは運動会な気がする。

 とりあえず私の印象には当たりと外れの部分があった。


 外れの部分は特に開会式など行わないこと。まあ選手はみんなオンラインで自分の部屋から参加しているし式を行うという雰囲気にもならないだろう。

 当たりの部分は始まるまでに時間がかかること。大会はカスタムマッチで行うため、参加する150チームにカスタムキーを送って、それぞれがちゃんと待機できているかなど確認しないといけない。

 私たちは早々に準備が完了したが中々始まらず。


「あーもう暇ね」

「同感。ロビーで待機してないといけないから、射撃場にもいけないし」


 アカネちゃんとマモル君が焦れたような声を上げる。


「まあまあ、大会の運営も大変だろうし、もう少し待とうって」

「……何ていうか、リリィって大人っぽいわよね。本当に高校生?」

「そ、そんなことないよ!? 私だって本当はうずうずしてるんだよ!! あー早く始まらないかなー!!」

「……? 変なの」


 大人っぽいことを指摘されて、慌てて子供っぽいことを言う私。アカネちゃんにも私は高校生で通している。




「ふぉっふぉっ。微笑ましい光景を眺めていたいですが、皆さまどうやら準備が完了したようですぞ。まもなく始まると思われます」

「そっかじゃあ配信に遅延を設定して……みんな3分後に会いましょうね!」


 アカネちゃんが配信を見ている視聴者に向けて発言する。大会本番ということで配信を見ている視聴者の数はいつもより多い。

 遅延をかけるのは同じブロックにいる敵が私たちの配信を見て隠れている場所などを覗き見るということを防ぐためだ。




 予選1マッチ目が始まる。

 スター杯予選ではブロックごとに決められたマップで3連戦行うことになっている。


 私たちDブロックは『黄昏』ステージだ。


 『崩壊した都市の成れの果て』というコンセプトで、特徴としてはどの建物も複数のひび割れや亀裂が入っていて立てこもるのが困難ということ。崩れ落ちた柱などがあちこちに散乱していて、身を隠しやすく不意討ちをしやすいこと。

 総じて乱戦が起きやすいのでアカネちゃんは『喧嘩上等!』と好きらしいが、マモル君は『盤面のコントロールが難しいんですよね』と、ジイクさんは『高い建物が無く、射線も切りやすいので狙撃がやりにくいですな』と苦手なようだ。

 あとゲームに直接関係ないけど、空が常に黄色く明るいためちょっと見にくかったりもする。雰囲気は好きなんだけど。




「練習通り『忘れ去られた住宅街』に向かいます!」


 飛行船からマモル君が代表者となって、マップ左端にあるスポットに向かう。


「被っているパーティーはいないようですが、付近にはまあまあ降りてますな」


 敵部隊降下の軌跡を監視するジイクさんの言葉。


「だったらさっさと漁りましょ」

「そうだね」


 そして私たちは着地すると四方に散らばって物資を回収していく。

 予選のマップが『黄昏』と決まって以来、私たちは『黄昏』マップで練習を重ねてきた。降りる場所は毎回『忘れ去られた住宅街』に固定して、降りる場所が被った敵がいる場合ひとまとまりになって行動、敵がいない場合は誰がどの辺りを探索するかまで決めている。


 そうして私の割り当てられた場所を探している間に、システムが最初の安全地帯をアナウンスする。

 どうやら私たちのいる場所は最初の収縮、そしてジイクさんの『祈祷師』のスキルによって分かるその次の収縮でも範囲内に入っている絶好の場所のようだ。




「よし、一戦目から幸先良いな」


 マモル君はご満悦だ。このマップでは安全地帯に向けて移動する最中に、不意討ちを食らう危険が付きまとうため、動かずジッとしていられるこの展開はありがたい。

 3分ほど経って、全員が探索を終えたので集合してお互いに必要な物資を交換する。ジイクさんにはスナイパー関連の物資を、マモル君は手榴弾を多めに、アカネちゃんはマシンガンを、私は余ったアサルトライフルを持つ。


 ふと画面右上に表示される残り部隊数を見ると25部隊、生存人数も100人でまだ誰も死んでいないようだった。


「本当にまだ戦闘が起きてないんだ」

「まあ大会ならではですよね。第一収縮が終わるまで人数が減らないってこともありますし」

「展開早いときは人数が4分の1になってることもあるのに……すごいなー」


 いつもやるSSSの普通のマッチでは戦いたがりな人たちが同じ場所に被せて降り立って戦闘を始めてすぐに人数が減っていく。

 しかし予選とはいえ大会本番。みんな慎重になっているみたいだ。




「さて今回の方針ですが物資も悪くないですし安全地帯が良いので、しばらくここに潜伏します」


 オーダーのマモル君が指揮を取る。

 私たちがいるのは放棄された住宅の一つだ。立てこもるにはひび割れや亀裂があってそこから敵や銃弾の侵入を許してしまうため心許ないが、『黄昏』ステージではどの建物も同じ条件なので仕方ない。

 そして私たちは安全地帯の内側にいる。わざわざ移動する意味も無いどころか、敵がこちらに向かってくるわけで移動する方が危険だ。




「なので……少し肩の力を抜いてくださいね、リリィさん」

「え?」

「そのさっき物資を交換するときもかなり手間取っていましたし。この様子だと第二収縮が始まるまでは戦いも起きなさそうですし、リラックスしてください」

「……ありがと、マモル君。うん、ちょっと……いや、かなり緊張していて……」


 手汗がすごいことになっていたのでタオルで拭う。


「大丈夫よ、アカネがいるんだから。どーんと構えてなさい」

「そういうときは深呼吸をするといいですな」

「アカネちゃんとジイクさんもありがとうございます。すぅー……はぁー……。すぅー……はぁー……」


 ジイクさんのアドバイス通り深呼吸を行うと、緊張で高鳴っていた心臓が少し落ち着いた気がする。

 初めての大会だ。緊張するのは当然。でも恐れすぎるのも良くない。

 大丈夫、私には心強い仲間たちがいる。きっちりポイントを稼いで、本選に出場するんだ……!




「よしっ!」


 大会中とは思えないような穏やかな一幕。

 私は気合いを入れて気持ちを入れ替えた――――そのとき。








 コロン、コロン、コロン、コロン。


 家のひび割れや亀裂を通って、私たちの潜伏する住宅に手榴弾が四方から投げ込まれた。




「…………え?」



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