28話 スター杯予選 前日
SSS非公式小規模大会『スター杯』。
その前日のこと。
マモルこと僕はチームの連携の最終確認がてら、SSSのマッチに潜っている最中だった。
「よし今だ!」
眼前で戦っている2部隊を見下ろす形で待機していた僕たち。現在の残り部隊数8から一つ減った瞬間、つまりその戦いが終わった瞬間を狙って漁夫行為を仕掛ける。
「はいはーい、っと。待ちくたびれたわよ、暴れるからね!」
うずうずしていたアカネが真っ先に突っ込む。
「私も続きます!」
リリィさんも遅れて付いていく。
「私はこの場所で他部隊の牽制……で良かったですね?」
「はい、お願いします。援護は僕が回ります!」
今僕たちがやっている他部隊の戦闘に横槍を入れる行為、漁夫はバトルロワイヤルの基本戦法だ。戦いを経て弱っている敵を叩くことで手軽に戦果を上げられる。
しかしその理屈で行くと漁夫のために戦闘を仕掛けた瞬間から、また他の部隊から漁夫られる立場となるわけだ。
なのでジイクさんがスナイパーライフルで牽制することで、他の敵を近づけさせないようにする。
「っと、そっちには逃げられると困るかな」
敵の部隊は、先ほどの戦闘で一人がダウンしていたようだ。
アカネとリリィさんはまず一人に集中放火することで更にダウンさせる。
これで残りの敵は二人。
一人はその場で応戦しようとしていて、もう一人は建物の中に逃げていくようだ。
立てこもられて戦闘が長引いても面倒、ということで僕はその逃げるルートを読んで先に手榴弾を放り込む。
仕方なく足を止めてその爆発をやりすごしている間に、アカネとリリィさんは応戦した敵をダウンさせて接近。
「ナイス援護よ」
「まあこれくらいはね」
そしてアカネが残り一人も倒しきって、一部隊を壊滅させる。
「ジイクさん、他の部隊の動向はどうですか?」
「ええ、敵が顔を出す度に撃ち抜いてやったら静かになりましたね。おそらく漁夫は諦めて別の場所に向かったのかもしれません」
「なら十分に漁る時間はありますね」
付近には2部隊分、8個の棺桶が転がっている。
今回は少々運が悪く、チームみんなが物資や武装が貧弱だったため、ここで補充できるのはありがたい。
「あ、EXマシンガンあるじゃん。もーらいっと」
「ジイクさん、こっちにEXスナイパーもありますよ」
「ほほう、それはありがたいですな」
「詰め込めるだけ手榴弾を持って……では行きましょうか、最終決戦へ」
そうして僕らは移動を開始。残りの敵も上手く立ち回って倒して、無事スターを獲得するのだった。
「明日は待ちに待ったスター杯! みんな見に来なさいよね!!」
アカネが視聴者への別れの挨拶と共に配信を切る。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまー」
僕とリリィさんがVCで労う。
チームを組んでアカネのchに出演しているわけだが、僕とリリィさんは声だけで参加していた。ネットに素顔を晒すのはどうにも抵抗感がある。
アカネは有名になりたいという願いからかバリバリに顔を出していて、ジイクさんもそんなアカネと一緒に暮らしているからふとしたことで映っている。
「お疲れー。アカネはちょっとSNSの更新しないといけないからしばらく黙るね」
動画での派手な言動が目を付くアカネだが、人気になるためにありとあらゆることをこなす貪欲さがある。おそらくこれからSNSで今日の配信のハイライトを短い動画にして投稿するつもりだろう。
「お疲れさまでした。私も少し気になることがあるので少々時間を頂きます」
ジイクさんも何やらすることがある様子。
明日はこれまで準備をしてきたスター杯だ。最終確認等をしてから寝たかったので、終わるまで待つべきだろう。
「そういえばだけどさ、マモル君」
「何ですか、リリィさん?」
手持ちぶさたになったのかリリィさんが口を開く。
「今日最終マッチ途中の漁夫についてなんだけど」
「どうかしましたか?」
「いや、あのタイミングで仕掛けるなんてマモル君にしては珍しいなーって思って。あのときはもう安全地帯の収縮も2回していて、狭い範囲に8も部隊が残っていたから。漁夫を仕掛けても漁夫られるからあの場面だと見過ごすかなーと思っていて」
「あのときならちょうど直前に鳥使いのスキャンを入れて、近くに部隊がいないことが分かっていたので。
アカネの突破力なら時間をかけずに敵部隊を壊滅させられると、もしこじれても近くに格好のスナイプポイントがあって、ジイクさんなら他の部隊の接近を阻止出来ると踏まえて仕掛けたんです」
「なるほど……そこまで考えて」
「確かに二人で戦っていたときだったらスルーしていたかもしれませんが、アカネとジイクさんがチームに入ったことで、二人の強さはもちろん、VCで連携できることから、あの程度の戦闘はローリスクで拾えるものとなりましたからね。
逆に物資も武装も貧弱でしたからあそこで戦わない方が、最終的に勝つことを考えたときにリスクが高いです」
なるべく戦わない、消極的な立ち回りといえど、1位を取ることを考えた場合はやはりどこかでリスクを負って戦闘をしないといけない。
「実際ナイス判断だったと思われますよ、マモル様」
ジイクさんが話に入ってくる。
「ありがとうございます、ところで気になることってもう大丈夫なんですか?」
「ええ、少々今日の配信で新たなアンチが暴れていたためブロックを行っておきました」
「アンチ……ですか」
アカネにはそのプレイスタイル故に元々アンチが少なからずいる。それ以外にも僕とリリィさんがチームに入ったことで少々荒れた側面もあった。
最終的にはアカネがビシッと言ったことで騒動は収まった、と聞いていたが……。
「何やら単発ではなく、少々集団めいた動きが……それも、その……」
「時折コメント欄見てましたけど、僕に対するヘイトが散見されましたね」
「……気に病むことはありませぬ、悪いのは100であちらの方です」
「まあ僕もFPS界隈には長くいますし別に今さら気にしませんよ」
FPS界隈の民度の低さは身に染みている。自分を倒した、味方の自分の足を引っ張ったなんて、勝ち負けの出るチーム戦としてしょうがない要因でもヘイトを向けられることがある。
『銀鷲』で活動していたころからあって、それらをスルーするスキルは身についている。
ただ……集団めいた動きというところは気になる。突発的なヘイトならば単発的に起こるわけで集団となると…………。
「よし、投稿っと。……まっ、気にする必要ないわよ。それよりも明日はやっとスター杯予選よ!! ここで優勝するところからアカネのスター街道が始まるんだからしっかり役に立ちなさいよね!」
懸念も不安も含めてアカネが一蹴する。まあ実際考えても仕方ないし、ならば前向きに考える方が建設的だろう。
「アカネのために、なんて気持ちはさらさら無いが、まあ負けるより勝つ方がいいよな」
「何よそれ! あんた自覚が足りないんじゃないの!?」
「うっせえな。っていうかおまえが勝手にチーム名を『アカネ様と親衛隊』で登録したの許してねえんだからな!!」
「いいチーム名じゃないの!!」
「もう二人とも……。私は初めての大会、緊張もありますが楽しみです!」
「ふぉっふぉっ、年甲斐もなく血沸き肉踊って来ますなあ」
その後アカネとひとしきりぶつかりあったところで現実的な話に移る。
明日は予選開始の一時間前に集合。予選も配信する予定なのでそのチェック、射撃場でコンディションを確かめてから挑むということに決まった。
「………………」
このチームで挑む初めての大会、もちろん勝ちたいけど、負けたとしても良い経験だったと言えるようになりますように、と願いながら早めに寝ることにして。
――当然このときの僕にはその先に悪意が渦巻いて待ちかまえているなんて知る由も無かったのだった。




