スティーグの危機
ゴーゼンの掛け声で騎士達が一糸乱れぬ隊列を組みあげスティーグに迫る。
まず前列の数人がスティーグに刺突を繰り出した。
これをスティーグはバックステップで躱す。
すると、今度は横から騎士が割り込んできて、またもスティーグに突きを繰り出した。
「お!」
スティーグは短く感嘆の声を上げた。
隙のない見事な連携であった。
スティーグの動きを読んでいるかのように、後ろに飛んだ場所には背後から騎士が待ち構えていた。
まだ、完全に包囲される前に、蹴りを入れ、その僅かの隙をついてスティーグは包囲網から脱出した。
「驚いたな。大した練度だ」
スティーグが素直に称賛すると、ゴーゼンは喉を鳴らして笑った。
「くっくっく。今さら怖気づいたか。だがもう手遅れだぞ」
「そういえば、肝心のボンクラ王子はどうした? あの性格からして俺の死に際は直接見たいと思ってたんだけどな」
「言葉に気を付けろよ、青二才が。王子は後ろの高台から我らの勇士をご覧になっておられる」
ゴーゼンは後ろの高台を指さした。
あそこからエリックは見ているのだろう。
「なるほどな。安全な場所から高みの見物って訳だ」
「口の減らぬ平民が! かかれぇ!」
怒りの声を轟かせるゴーゼンの声に応え、再び騎士達がスティーグに襲い掛かった。
展開は先ほどと同じだ。
スティーグが躱せば、その先には誰かがいる。
洗練された動きには一切の無駄がない。
『群』が『個』の様に一体となって、スティーグを追い詰めていた。
スティーグは的確に騎士達の実力を分析する。
冒険者のランクで測るなら、彼ら一人一人がAクラスからダブルAクラスと高い次元でまとまった実力者揃い。
且つ、集団訓練で積み上げた練度は相当高い。
彼らと同じ力量の冒険者が同数集まったとしても、間違いなくプリンスナイツが勝利するだろう。
それほど、彼らの連携は見事なものであった。
「っと!」
バックステップで回避を試みたスティーグは、石に躓いて転んでしまった。
この絶好の好機を見逃す騎士団ではない。
素早く剣を突き下ろしてスティーグの顔面を狙った。
「あっぶね!」
横の転がってこれを回避。
間一髪。後コンマ数秒遅れていればスティーグの頭蓋は割られていただろう。
「ぐふふ。よく躱すものだ」
スティーグを誉めながらも、ゴーゼンは笑う。
確かによく凌いでいるが、それも時間の問題だろう。
勝利は目前。彼はそう確信していた。




