観戦する二人
「ふっふっふ。圧倒的ではないか我が騎士団は」
高台から戦いを観戦していたエリックは笑いながらそう評価した。
隣にいるカッカリコをエリックは横目で見つめた。
「どうだサイオン卿、卿はずいぶんと心配していたようだが、平民など所詮はこの程度のものだ」
「は。私が間違っておりました」
カッカリコは素直に自分の間違いを認めた。
確かに杞憂だったようだ。
門外漢であるカッカリコから見ても、プリンスナイツの実力が非常に高いレベルでまとまっていることはわかる。
それをなんとか凌いでいるスティーグもまた、歴戦の戦士であることは疑いようがない。
しかし、カッカリコはより高くスティーグの力を見積もっていた。
やはりエリックの言った通り、多くの武勲は誇張した噂でしかなかったということだろう。
取り合えず一安心。カッカリコは胸をなでおろした。
だが、しばらく観戦していたエリックはどうやら不満があるらしい。
「・・・あと一歩の所で止めが刺せんな」
「時間の問題でありましょう」
「無論だ。だが、我が名を冠した騎士団であるならば、平民相手に手こずる事自体あってはならん」
「は。確かに」
「・・・やはり、私が自ら指揮を取るべきかもしれんな」
「・・・殿下が直々に、でございますか?」
カッカリコは視線を完全にエリックに向けて問い返した。
「あの男、平民にしてはなるほど、少しはやるようだ。我が騎士団とあれほど渡り合うとはな。そのあと一歩足りないわずかな差を、私の指揮で埋めようという訳だ」
「はは!」
『指揮』というのは先ほどから呟いていた「そこだ」「いけ」「やれ」などの事だろうか? そんな声を間近でされても場が混乱するだけだろう事は素人のカッカリコにもわかることだが、エリックはそうではないらしい。
「しかし、危険ではありませんか?」
「まだ卿はそんな事を言っているのか? 見よ。奴はただ逃げ回っているだけではないか!」
「しかし・・・」
「もうよい。臆病者めが。そこで我が勇姿をとくと見ているがいい」
そう吐き捨てるとエリックはさっさと高台から降りて、戦いの場へと向かっていった。
「ふん。何が勇姿だ。自分では何もできぬ若造が」
誰も聞いていないことを確認した後、カッカリコはそう呟いたのだった。
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ゴーゼンは苛立っていた。
先ほどから精密な連携から必殺の一撃を何度も繰り出しているというのに、その全てをスティーグはことごとく躱していた。
しばらくは黙って様子を見ていたゴーゼンだったが、一向に止めをさせないことに痺れを切らして、今は細かく指示を出していた。
だというのに、スティーグはその指揮さえも読んでいるかのように、実に巧みに回避を務める。
あと一歩。あと半歩の差で傷をつけられない。
一度仕切り直して、体制を立て直すべきかと思案し始めた時、後ろからエリックの声がした。
「お前達、何をしている。それでも誇り高き王国騎士か!」
「お、王子」
驚いてゴーゼンはエリックのそばに控えた。
「ゴーゼン。卿ともあろうものが、平民相手にいつまで手こずっているつもりだ?」
「は! 面目ありません」
エリックの登場で騎士達の動きが一時的に止まった。
エリックはスティーグを見つめると、顎を上げ、尊大に言葉を放つ。
「久しぶりだな、平民」
「よお、ボンクラ王子。会いたかったぜ」
スティーグもまた傲岸不遜な態度でこれに応じた。
「っつ! 相も変わらず、身の程を弁えぬ下賤な民め!」
エリックは顔をしかめてスティーグを罵倒した。
実は自分が登場することで、スティーグが泣きながら命乞いをするであろうと予想していたのだ。
その上で自らが止めを刺す。それこそがエリックの立てたビジョンだったのだが、それはあっさりと打ち砕かれた。
「殺す。殺すぞ。貴様は絶対に殺してくれる!」




