子供たちと商隊と
--子供たちと商隊と
「そういえばいつ俺は商隊に混ざることになったんだろう?」
「まぁ細かいこといいなさんなって。どうせ王都の方向に向かうんだろう」
はめられた…
事実を作るには周りから、ってことか。
「まぁいいですけどね…」
子供達のほうを見ると俺のことを観察しているのか、なにやらヒソヒソ話している。
なになに。おじさん気になる。
「ねー、おじさん」
よくある魔道士風の帽子をかぶってローブを着た男の子が近寄ってきて声をかけてくる。
「ん?どうした?」
「おじさんってどうやって戦うの?戦力に考えていいの?」
後ろでひそひそ話していた子供達も気になるのだろう、耳を傾けている。
「んー、今は武器がないから魔術かなぁ。今回のは依頼じゃないからこっちから先んじて手を出すことはしないよ。さすがに自分の身が危ない時は手出すけど」
「へー、魔術使いなんだ!属性は?得意な術は?どれくらい魔術使えるの?」
おう、落ち着け。
「まぁいろいろ、冒険者として必要な程度は使える。だからあまりアテにしないでくれ。」
この魔道士っ子だけはもっと話を聞きたいのかものすごい食いついてくるけど他の三人(一人は無口で何を考えてるのかわからないけど)は向こうのテーブルでまた護衛任務についての話に戻っていった。
「さぁさぁおじさんも困ってるし質問はそこらへんにしておきな。明日の準備もあるんだからいっといで」
おかみさんが手を叩きながら解散を促すと子供達は食べた分のお金をおかみさんに渡して店の外に出て行く。
残った俺のところに女将さんが来てさっきと同じように椅子に座る。
「ごめんねぇ、勝手に決めちゃって」
「ほんとですよ。ビックリしました。まぁもういいですけどね」
「あはは、ほんとごめんね」
「商隊の出発は明日の朝でしたっけ?商隊主に挨拶しておかないとと思うんですがどこにいるか知ってます?」
「そうそう、たしか明日の朝だよ。商隊主は今隣の村に行ってるはずだから夜には戻ってくるはず。そしたら紹介するよ」
今は村にいないのか。
「ならここに一晩お世話にならないといけないですね。」
「そうしてくれるかい?宿代はなしにしてあげるからあの子達のこと頼むよ」
「あはは、前向きに善処します」
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あの後おかみさんに部屋を用意して貰って商隊の主が戻ってくるのを待つことになった。
戻ってきたら声をかけてくれるらしい。
それまで一眠りしておきますかね。と思って寝転んだベッドがものすごく寝心地がいい。
スプリングが入ったマットとかそういうものではないんだけど、中の綿がぎっしり詰まっていて適度な弾力。
掛け布団もモコモコしててとても気持ちがいい。
寝っ転がると疲れてもいないのにすぐに眠気に負けてしまったのはしょうがないことだろう。うん、しょうがない。
気がついたらもう夜になっていて扉をノックされていた。
「お客さん、もう夜だよ。夕食がてら商隊主を紹介するから下に降りてきておくれ」
「あ、はい」
服装を整え、軽く髪を手櫛でとかして部屋を出て食堂へ移動する。
そこには昼に一緒にいた子供達とすらっとした白髪のダンディがいた。
執事服とか着せたら似合いそう。そうなったらセバスチャンとか呼ばれてそう。とか思っているとおかみさんに空いている席に座れと視線で促される。
「ではお集まりいただけたようなので明日からのお話をさせていただきます。」
ダンディが席を立ち周りを見回しながら話し始める。
「私はロタラ商会の主人をしております、ロタラと申します。以後お見知りおきください」
ロタラと自己紹介をしたダンディは軽く頭を下げ挨拶をしてきたので軽く頭を下げておく。
「今回の商隊は3台の馬車です。商人の人数は4人。護衛はそちらにいる3人です。その他に村からの依頼で子供達4人を王都まで連れて行きます」
周りを見回すようにロタラさんが話をしていると、たぶん護衛の男なのであろう男が立ち上がり挨拶をし始める。
「今回護衛の任についている『深紅の斧』のモスだ。他のメンバーはリシアとグラスという。前衛2、後衛1のパーティだ。」
軽く頭を下げて挨拶をしているのでこちらも軽く頭を下げておく。
モスとグラスはドワーフっぽい体格でリシアってのが人族かな?
背中には両手斧が担がれている。モスの両手斧は刃から柄まで深紅に染まっている事からこれがパーティ名の由来なんだろうな。
そしてモスがリーダー…と。
その次に子供達のリーダーっぽい子が立ち上がって挨拶をする。
「僕はルブラと言います。あとの3人はウォート、ウィステリア、マヤカです。王都までの同道お願いします。多少ですが戦闘もできます。前衛2後衛2です。」
「「「お願いします」」」
子供達の挨拶も無事に終わり椅子に座ったのを見てロタラさんがこちらを見る。
「あとお一人、子供達の世話役という形で一緒にいらっしゃる方がいらっしゃいます」
あぁ、俺世話役って認識なのね…
「一二三と申します。冒険者家業からは離れて久しいですが今回王都まで一緒に行くことになりました。よろしくお願いします」
立ち上がって挨拶をし、軽く頭を下げる。
するとモスと言っていた男が俺に向かって声をかけてくる。
「にいさんは戦闘はできるのかい?」
値踏みするような目で見てくるモスをおかみさんはにやにやしながら見ている。
おかみさん、そのにやにやはなんですか。
「できなくはないです。獲物がないので後衛として、ですが」
「ほう。万が一の時は戦闘に参加してもらう事は可能か?」
「問題ありません。ただ積極的に手は出しませんよ」
「十分だ。ただ自衛用として近接武器もあったほうがいいだろう。短剣でいいなら後で渡す」
「ありがとうございます」
モスとの会話のやりとりも終わって無事一息。
その様子を見ていたロタラさんがまた席を立ち食堂にいるメンバーに声をかける。
「ではこれで顔見せ及び挨拶を終わりとします。出発は明日の日の出と共に。門の前に集合してください。」
「了解した」
「わかりました」
深紅の斧はそういって2階に。子供達は食堂を出てたぶん自分達の家へと向かった。
そして食堂に残ったのはロタラさんとおかみさんと俺。
「唐突に一人ねじ込んじゃってすまなかったね」
「いえいえ、ロベリアさんの頼みなら。その代わり明日のお弁当期待していますね」
「まかせておきな」
笑いながら会話している二人を見ているが…おかみさん、ロベリアって名前なのか…
「あんたもよろしくね。悪い子達じゃないから面倒みてやってくれると助かるよ」
「はぁ、もうそういう流れになっちゃってるんだからしょうがないです。適度に頑張りますよ」
「ヒフミさんでしたか。しばらくの間ですがよろしくお願いいたしますね」
「こちらこそ」
ロタラさんとおかみさんはこれから一飲みするそうなので俺はとっとと部屋に戻る。
ロタラさんのおかみさんを見る目がなんというか…ね。
早く席を外して二人きりにしてくれと言わんばかりの目だったわ。
…奥の厨房に旦那さんいることを忘れるなよー?
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