第9話 男アーティス
お読み頂きましてありがとうございます。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
「ストーカーかよ。」
「ストーカーですね。」
ツェンランさまから紹介された教育係の魔術師とは、アーティスだった。
「お、おまえ、王様は、どうしたんだ!」
「信頼できる者に任せてきた。これで、セナに付きっ切りで貼り付ける。必ず、ツェンランさまに手を出される前に口説き落としてみせる!」
熱い眼差しを向けてくるアーティスに思わず、目を逸らせてしまう。
「えっ・・・。なぜ目を逸らす?ま・・まさか・・・。」
「そのまさかだ。」
そうなのだ。『不老不死』で自分の理想とするセックスとは、縁遠い生活になると思っていたのだが、思いのほか簡単にチャンスが巡ってきたこともあり、即座に受け入れてしまったのだ。
だが、こんなに簡単にバラれてしまうとは・・・。
「ツェンランさま!」
思わず恥かしくなって叫んでしまった。
「それでも、男アーティス、必ず口説き落とすからな!」
アーティスは、それだけ言うと恥かしくなったのか、部屋から出て行ってしまった。
「はぁー。」
思わず溜息がこぼれる。
「あやつは、解かってないのかの?お主がそういう人間だということを。」
「はぁ。一応説明はしたのですが・・・。そういう人間が居るということが解からないらしくて・・・。」
「お主は、どうなんだ?あやつが女役をすると言えばできるのかの?」
「普通に考えればキスさえもできないと言うところですが。セナの記憶があるので・・・。」
セナの時は、結婚をしていなかったため、肉体関係は無かった。そのためか、死ぬ前に一度でもいいから、抱かれたかったという悔いが残っているのだ。
「お主を手放す気はないからの。」
「そう言って頂けるのは、嬉しいですけど、なぜ私なのですか?王の伴侶になりたいと言う者は、たくさんいるでしょうに。」
「いやいや、皆ビビって、俺を抱けと言っても抱ける奴が居らんのじゃ。」
そういえば、この王は、真性の女役だった。この大陸一の巨大な力を持つ美貌の王は、両性具有体だ。しかも、女役として抱かれなくては、男の方も役立たずらしい。昨夜の王の姿態を思い浮かべ納得する。
「それでも、こんな紛い物よりも本物の男性がよいでしょう?」
「何を言うか。同じ時を生涯共にできる伴侶だぞ。これ以上の良縁は無いわ。」
「しかし・・・。」
「しかしもかかしも無い。もしかして、子供ができないことを苦慮しておるのか?ならば、方法は無いこともない。」
私は、王のその言葉に真っ青になる。確かに私が王の男を受け入れれば、可能性がゼロではない。
「違う違う。そうじゃないのだ。お主に効き目があるかわからんが、ある国で隷属の首輪を改良していたら、性転換する魔法具ができたというのじゃ。」
欲しい。私に取って夢のような道具じゃないか。
「ほう。やはり欲しいようだな。しかし、それは、その国の宗教が独占しておる。あると言う情報以外は一切漏れてこんのじゃ。そこで、数百年前から我が国でも研究させておるのじゃが、一向に見通しは立っておらんのじゃ。すまんの。」
一瞬、自分で取りに行こうかと思った。今ある力があれば、力ずくでも奪い取ることができるだろう。とそこまで考えて、ハッと思った。
そんなことは、ツェンランさまなら簡単なのだろう。だが力ずくで奪うということは、多くの人間を戦渦に巻き込んでしまうじゃないか。この弱きモノに優しい王にできるはずが無かったのだろう。
自分の欲望のために多くのモノを不幸にする。私は教師なのだ。生徒に手本を見せるべき存在であるはずだ。その私が欲望に狂ってしまったら・・・。
・・・・・・・
「ツェンランさまって、ゲイなんですね。」
失敗したな。生徒の目の前にあんな話をするんじゃなかった。しかも、自分の都合のいいように誤解してやがる。まあ、本当のことは、言えないから訂正できないのだけど。
遠山が目をキラキラさせながら聞いてくる。とりあえず、笑ってごまかしておく。いくらなんでも王に直接聞くことは無いだろう。
「ということは、なにか道具を使ったのですね。」
「ノーコメントで。」
「そう言わずに教えてください。」
「ノーコメントだ。」
・・・・・・・
その夜、ツェンランさまの寝室に向かう。
「お呼びと御伺いしましたが・・・。」
「ああ、城は喧しくなってきたから、諸国を巡ろうと思う。付いて来い。」
「・・・はい。」
「どうした。何かあるのか?」
「いえ、皆付いてくると言うだろうなと。」
「そうだな。なら、今からこっそり出るか。」
ツェンランさまは、面白い悪戯を思いついたかのように言う。
「城のことなら気にするな。宰相には、既に伝えてある。」
いつも評価して頂きましてありがとうございます。
BLタグは入れませんが、GLタグはどうしようか悩んでいます。
プロローグを呼んだ読者を惑わすにはいいかもとか(笑)
また、変な設定を増やす予定ですのでご期待ください。




