その④
夕暮近く外は全ての動きを失っていた。
四人が来た時には既に数体の瓦礫の様に崩れた人の体があちこちに散乱していた。
「こいつ等は、光か闇のどっちだ?」
勇気は冬木に尋ねるが彼は首を横に振った。
「この人達は普通の人達だよ。
恐らく時間が止まったままでバラされたんだよ。
この人達は今は生きている。
でも時間が戻れば・・・・・」
勇気の体に怒りが過る。
「でも治せない訳じゃない。
オレ達は一応神の祝福を得ている光の者だ。昔の様に力は使えないが癒し位は出来る。」
冬木の言葉に勇気と望美は安堵した。
すると冬木は地面に手を置いて・・・・。
「あなた達は死から解放されました。」
そう呟いた。
すると地面が光り崩れていた人達が元の形を取り戻して行った。
・・・・・・え゛っ!?それだけで元に・・・・・・
「凄いな。あんた等の力って・・・・。」
「良いなぁ!わたしもそんな力欲しい・・・・。」
勇気達は冬木の前でクルクルと回って喜んでいた。
「お前等・・・・喜んでる場合じゃないぞ。あいつだろ?お前等言ってたグレンって奴は・・・。」
ミストは呆れた顔をしながら目の前にいる子供に目をやった。
紛れもなく目の前にいるのはグレンだった。
「何だ、お兄ちゃん・・・・そっちの味方の人だったんだ。
しかも折角砕いた玩具を直しちゃって・・・・。」
つまらなそうに言うグレン。
「まぁ良いけど・・・・・。その人達を倒したらお仕置きしてあげる。そこのお姉ちゃんを目の前で殺してねぇ・・・くふふふふっ。」
勇気は望美を庇う様な態勢で前に立つ。
しゅっ!
ミストはその場から消えグレンの背後に回りグレンの背中に魔法陣を光で刻む。
「ひゃ!?」
あまりの早さに奇声をあげるグレン。
「何だお前は?
術を使う光の者だと・・・・・?」
ミストはクスッと鼻で笑う。
「聞いた事はあるだろう。
大罪人ミストの名を・・・。」
顔色を変えるグレン。
「お前があの漆黒の光人・・・・
一晩の内に何千人もの闇と光の者を殺したと言う・・?」
グレンは動こうとしていたが身動きがとれないでいた。
「何をした?」
明らかに今まで落ち着いていたグレンが動揺しているのが分かる。
「見れば分かるだろ?簡単に殺してしまっては芸も無いと思ってな。束縛の術を掛けてやった。」
どくんっ。
・・・・・・・そもそも・・・・この争いはオレにある。オレの力のせいで死ぬ人が出て来た訳だ。だけど・・・・・オレにはどうする事も出来ない・・・。ただ見ているだけしか出来ない。異質と言われた変な力しか無い無力な人間。オレはここで見ているだけしか出来ないのか?・・・・・
そんな事を考え勇気の心は震えていた。
「あいつを助ける程の力がオレにあれば良かったのに・・・・・。」
すると望美は勇気の手を握り。
「あぁ。その言葉を待っていた。」
望美は笑みを浮かべると勇気の腕にキスをした。
「な?お前・・・・また・・・・望美じゃない奴?」
顔を赤らめる勇気。
「全てを解放する。」
すると勇気の体から大量の光が一瞬放たれ、次第に収まった。
勇気の異変に誰もが気付き、近くにいる冬木は駆け寄って来た。
「何があった?」
聞かれるが全く意味が分からない彼はただ自分に流れて来る力に震えるしかなかった。
「良いか。お前の力は無効化だ。思い描け。あいつを元の人間に戻すと言う事を。」
彼女はグレンの方を見ながらそう言った。
「出来るのか?」
勇気の言葉に首をコクリと縦に振る。
「そうか・・・・。
ならお前の事を信じてやる。」
勇気は笑みを浮かべ、グレンが元に戻る事を願った。
するとグレンの側から突然光が放ちグレンを突っ込んだ。
側にいたミストや冬木は意味が分からず黙ってそれを見ていた。
次第に光が治まり、グレンの背中にあったはずの術はいつの間にか消えて彼は地に崩れ落、その拍子に辺りの時間の流れも元に戻った。
「どぅ言う事だ?
こいつから何の力も感じない。まるでただ子供じゃないか。」
グレンの様子を見て慌てるミスト。
望美は勇気の手を取りミストの元に歩み寄り。
「これが彼の本来の力だからな。彼には人に宿る全ての光と闇の力を消す能力を持って生まれ来た。
さっきわたしが話した話しの事だよ。
わたしは過去に好きになってはいけない者を好きになってしまった。そしてその相手も本来なら一緒に殺されるはずだった。
だが・・・・・・わたしは今で言う光の王に頼んだ。
相手の者を殺さないで済む様に・・・・・。そして全ての責任はこのわたしが背負う・・・・と。
すると、彼はわたしに条件を出して来た。この先起こるであろう未来の為に、ある青年の持つ力を永遠に守っていて欲しい・・・・・そうすれば殺す事は無い・・・・と。
だからわたしはその青年の家系を遠い昔から、転性を何度も繰り返し見守って来たと言う訳だ。」
言って望美は笑みを浮かべた。
「まさか・・・・お前は・・・」
ミストは彼女に近付くが彼女は首を振った。
「もう終わった事だ。・・・・・わたしはきっかけを与えに来ただけなのだから・・・・。暫くはわたしの役目は無いだろう、眠りにつくとするよ。」
言って彼女は勇気の腕に崩れ落ちた。
ミストは黙り込んでいた。恐らく望美の中にいた女性が例の好きだった術者だったのだろう。
「さて・・・・・どうする?
お前の力はとんでも無い代物だ。オレは構いやしない、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
すると勇気は考えて・・・・。
「オレ・・・・・まだ右も左もよく分かんないし・・・・。細かい事苦手なんだよな。しかもこれってオレしか出来ないっってほとんど押し付けじゃねぇ?・・・・・」
一瞬嫌な顔をする勇気だが冬木の顔を見て・・・。
「確か光と闇の者ってまだウジャウジャいるんだよな?・・・・・」
「あ・・・まぁな。何処に落とされたのかも分かんないしなぁ・・・。」
冬木の言葉に笑みを浮かべ・・・・。
「取り合えず、冬木さん達に協力してもらわないと何も分からない訳だし、暫く協力者として頼んで良いかな?」
苦笑しながらそう言う勇気。
「あぁ・・・・・まぁ、オレにとってもそっちの方が助かるよ。オレから力取ったらただの、お兄さんだからな・・・・。」
・・・・・・・中身、おっさん臭いけど・・・・・・
冬木の発言に心の中で突っ込みを入れる勇気。
「しかし・・・・・オレ達光の者はとんだ骨折り損だ・・・・・。
光の王は先の事を見通してあんたのその変わった能力を読んでたんだからなぁ。こんな地にまで来てオレ達は何やってんだかな・・・・・。」
「でもオレの力が発揮されなかったら?と考えると、冬木さんは骨折り損でも何でもないと思うけど?」
勇気の言葉に笑みを浮かべる冬木。
「違いねぇ。」
言って冬木は笑った。
「闇の王ってのも探し出さないといけない訳だからな・・・・これから忙しくなる。」
今まで落ち込み黙っていてたミストが突然言葉を発した。
「大丈夫なんかよ。お前・・・・。」
勇気の言葉を無視し勇気の腕の中にいる望美を見て勇気に手を出した。
「何だよ。その手・・・・。」
意味が分からず聞き返す勇気。
するとミストは顔を赤らめ・・・・。
「オレがそいつを連れて帰ってやるからお前はこのガキを警察に連れて行け。」
言うなり勇気の目の前にグレンを出した。
「はぁ?訳分からんぞ。それ・・・・・
お前・・・・望美と仲悪かったじゃねぇか・・・・・。
それにこいつはオレの近所だ。オレが連れて帰る方が一番良いだろ。バッカじゃねぇの?」
「さっきたまたま仲が悪かっただけだ。とにかく渡せ。」
「嫌だ!!!
こっち来るなよ!」
そのまま言い合いしながら二人は冬木を残して去って行った。
「いや・・・・・若いって良いねぇ・・・・・・
ビールでも買ってから戻るか・・・。」
そして彼もまた歩き出した。
【終わり】




