↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と闇を撒く世界  作者: 天草
PR
1/4

その①

それは日が西に沈みかけた夕暮れ時の事である。

 キシッ!

 何かがきしむ様な音が聞こえ、辺りの動くあらゆる全ての物が突然動きを失った。

 街中を走り回る車も、犬の散歩の御爺さんも、鳥も雲も全てがビデオの停止ボタンを押したかのように瞬時にして時を止めたのだ。

 それを不思議そうに見渡す一人の男。

彼の名は光宮勇気(ひかりみやゆうき)、近くの高校に通う、ごく普通の帰宅途中の学生である。

 彼は取りあえず動揺は心だけで留め、状況を掴む為周囲を隈なく見回した。

・・・・・・非科学現象だな。

時間が止まるなんて絶対にあり得ない!

って、言うのは普通の人間だが、オレはこーいう現象は嫌いでは無い。でもまぁいきなりだったんで驚いたが・・・・・・・・

 彼は別に困った様子でも無かった。むしろ興味津々といった所だ。

・・・・・・にしても、問題は何故時間がオレを残して勝手に止まったのだろうか?もしかしたら止まっている様に見えているだけなのかも知れない?人間の脳は不思議が詰まっているから視覚に何らかの異常があって・・・・・

いやいやいや、それじゃオレは病人じゃねぇか。

じゃ、残るは・・・・・何者かがオレだけに用があって?

何者とは誰だ?時間を止めるなんて非科学的な事をやってのける人間がこの世界にいるのか?

まぁ、何者かの仕業でオレに用があるって言うんならそいつは絶対にこっちを見ているはず。一度調べてみる価値もあるだろう。

「出て来いよ!どこの誰だか知らんがオレに用があるんだろ?」

 彼は時間が止まり静まり返った街中で周囲を見渡しながら力強く叫んだ。

だが、周りの空気は動く事無く、物音一つ聞こえてきはしない。

・・・・・・・外したか?オレの感・・・・・・・。

 頭をポリ付きながら他に何か無いかと考えようとした・・・。

・・・・・いや・・・・・

 彼は感は当たっていたと言う事を確信し、笑みを浮かべ後ろを振り返る。

「あんたが時間を止めたんだな?」

 彼の目は一人の少年を捕らえていた。少年は笑みを浮かべ勇気の顔をマジマジと面白そうに眺めていた。

 歳の頃なら十歳だろうか。ラフな格好の普通の子供。

「へえ~。驚いたよ。まさかこの状況に動揺する事無く、誰かが時間を止めたなんて言い当てちゃうなんて。

 普通の人間だったら分かんないよね?だってそんな現実離れした事なんて通常の生活では起こらないし。」

・・・・・・何だこのガキは!?・・・・・・・・

「ただの子供じゃないよな?いいや人間でも無いのか?」

 すると少年は更に笑みを浮かべ。

「僕はグレンって言うんだ。」

・・・・・・・見かけ日本人なのに変わった名だな・・・・・・

「まぁ、僕は人間ではあるけど、それはこの器だけさ。この器になってから色々と力が制限されてね。ホントはがれないかなこの肉体・・・・。」

 言ってグレンは自分の体を見て嫌そうにした。

 通常なら、そんな事を話せばただの冗談にしか聞こえないが、状況が状況だ。彼が言っている事は恐らく本当の事なのだろう。

 勇気は黙って相手の話しを聞いていた。

「僕は君の事を知ってるよ。僕の記憶をその異質な力で目覚めさせてくれた本人だからね。」

 自信満々に少年はそう言うが、勇気は腕を組み首を傾げ・・・・・

「知らん。オレの知り合いにあんたみたいな訳の分からんガキはいないはずだ。おそらく人違いだろう。」

 すると少年は少し考え。思いついたと言う感じで手をポンと叩き。

「そうか。君自身は自覚が無いんだね。でも君なんだよ僕の眠りを覚ましてくれたのは。」

 そしてグレンは笑みを浮かべた。

・・・・・・・また訳の分からん事を・・・・・・。訳分からんのはこの空間だけにしてくれ・・・・・・

 段々と彼は少年との会話に疲れて来た。

「つまり・・・・な。あんたは人間だが、心は人間じゃ無い奴だって事は分かった。

・・・・・で・・・話しを戻すが、その変な奴がオレに何の様だ?」

 するとグレンは近くにある道路沿いに植えられている花壇のブロックに軽く腰を下ろし勇気の目を見て口を開く。

「かつて、この世界には神に従う光の者が存在した。だが光の者から一人の悪が生まれた。その悪は人を惑わし光の者をも欺き、それは仲間を作って行った。そして最初の悪は頂点に君臨し魔王となった。それに従う者は闇の者と言う。闇の者と光の者は共に争い、地に住む人々をも巻き込んだ。

そして1914年のある日、天で戦争が起こった。闇と光の霊の被造物達の戦争。

闇は光の者の頂点に立つ者の手により、全て地に落とされ記憶を消され人の体へとなった。

あの大戦いだ。落とされた中には混ざり込んで光の者も多くいただろう。人へと変わった奴等は皆、知らず知らずの内に次の世代の遺伝子を通して転生を繰り返し力を削り取られていく。僕の転生歴は数えたら多分これで四回目だろう。だから今の僕は以前の半分以下しか力を出せなくなっている。」

 何か桁の違い過ぎる話しに沈黙する勇気。

・・・・・魔王って・・・・・・漫画じゃあるまいし。でもまぁ、通常なら信じられるはずは無いが、実際こんな時間の止まった空間を見せつけられてる訳だから信じない訳にもいかないだろ。

 彼はそう思い心の中で苦笑した。

「つまりあんたは闇なんだな?」

 すると驚いた感じで彼は勇気の顔を見た。

「何で分かった?って言いたそうだが、話しを聞いているとさっきから闇を強調している様に見えた。」

「そう。正回!僕は闇の者だよ。

そう言う訳だから、僕と一緒にこの世界を壊して遊ぼうよ。僕をこんなちっぽけな体に閉じ込めた光の者に一泡噴かせてやりたいんだ。異質の君が近くにいてくれたら勝手に仲間も目覚めてくれるしさぁ。」

・・・・・・何でそうなる・・・・・・

 勇気はうんざりした顔をして・・・。

「興味無いし。悪に手を貸すなんて最低な奴のする事だ。」

 そう言いきった。

 しかしグレンは笑みを浮かべ・・・。

「君は異質だけど今は何も力を使えないただの人間。それでも君の周りで僕の同志が記憶を取り戻しているのは事実だよ。

ここ最近妙な事件この辺りで多くない?」

・・・・・事件・・・・・?

確か一週間前にブロック塀に身元不明の女性の腕が挟まっていたとか、二日前に車の座席に子供の生首が置いてあったとか・・・・。

「確かに多いよな・・・。まさかあんたじゃないだろうな?」

 言われ首を横に振るグレン。

「僕はまだ何もしてないよ。」

 言って二タッと笑みを浮かべた。

「じゃあオレの近くに住んでいる誰かが・・・・・って事か?」

「そうかも知れないし、ただ君の近くを通っただけの人かも知れない。僕の様にね。

僕もね先日、君の横をただ通過しただけの無力な子供だったんだよ。でも突然僕が目を覚ました。ホントいきなりで最初は何がどうなったのか理解出来なかったよ。でも何とか理解した。

君は悪い事をしたく無いと言ったけど・・・・自然に僕達みたいな闇の者を目覚めさせているのは悪い事じゃないって言うの?」

 彼の言葉に沈黙する勇気。

「違うよね?いくら無自覚とはいえやっている事は列記とした悪だよ。だって悪人を生み出しているんだから。

君は既に大罪を犯しているよ。だから後には戻れないんだ。」

・・・・・・・こいつ、オレを丸め込もうとしているな・・・・・・・。

「例えそうだとしてもなオレは自ら過ちを犯すほど馬鹿じゃねぇよ。」

 グレンに背を向け彼は歩いて行く。

「それは偽善だよ。」

「言ってろ!」

 後ろを振り返る事無く勇気は歩いた。

「君は僕の恩人だったけど、どうなっても知らないよ。」

・・・・・オレ自身は何もしちゃいねぇよ・・・・・。

 そんな事を思いある程度グレンから距離を取ると突然時間は進み出した。

・・・・・オレが異質だと?何なんだよ。オレが何だって言うんだ。オレは普通の人間だ。・・・・・・・


「見てたよ。」

 突然横のコンビニの駐車場辺りから声が聞こえ振り向くとそこには、二十代半ば辺りのスーツを着た男がコンクリートに座り袋に入った大量のビールの一つを飲んでいるのが見えた。

「あっ・・・・酔っぱらい・・・・。」

 ついウッカリと声を出す勇気。

「まだ酔っぱらってねぇよ!」

 面倒だし逃げるのなら今の内だと感じ取りあえず勇気は全てを見なかった事にして足早に歩きだした。

「待て待て待て!ちょっと待て!

オレはお前を待ってたんだ。」

 その言葉に嫌々ながら後ろを振り返る彼。

・・・・・・本日、見知らぬ人に声を掛けられた回数二回目・・・・・・・

「オレはな、冬木光(ふゆきひかる)と言ってな情報屋をしている光の者だ。」

・・・・・・光の者?って・・・・・・・

「さっき奴が言ってた通り、オレも君の接近により目覚めた者だ。目覚めたのは一年位前だったかな、それからずっと君の事を監視してたんだよ。君が何なのか知りたくてね。

君が奴につかないでホント良かったよ。ついてたらオレが倒さなきゃなんない所だったからね。」

 勇気は冬木の元へと近づいた。

・・・・・オレ一年も前からこいつにつけられてたんだ・・・。全然気付かなかったぜ・・・・・。

 そんな事を思い嫌な顔をする勇気だが口を開き・・・。

「光の者も結構いるのか?巻き込まれて地上に落とされたって聞いたが・・・・。」

 すると彼は笑みを浮かべ・・・・。

「全て計算上だよ。巻き込まれたんじゃない。オレ達は奴等を倒す為に態と身を犠牲にしてここに来たんだよ。

もし奴等が目覚めたら地上は血の海になってしまうからね。それの予防策。」

・・・・・成程・・・・彼等は彼等なりに考えて動いてたって訳か・・・・・

「で・・・・この一年オレの事を調べて何か分かった事は?」

 だが彼は首を横に振り・・・・。

「サッパリ分からない。

何処からどう見ても君は普通の人間だ。闇の者でも光の者でも無い。普通の・・・・。

だけど君がオレ達を目覚めさせたのは事実。きっと何かあるに違いない。」

・・・・・・結局分からないのかよ・・・・・

「別にあんたを責める訳じゃないが、なるべく家から外に出ないでくれないか。

あんたが外に出て陽性の人と接触する度にこっちの仕事が増えて仕方が無いんだ。」

・・・・・・仕事?・・・・・・・

「あんた・・・確か情報屋だったよな?

その情報屋が何の仕事をするって言うんだ?」

 勇気に聞かれ、彼は体全体で深い溜息をつき・・・・

「闇の者の討伐だ。」

・・・・・討伐って・・・・

「お前・・・・それって殺すって事か?」

 冬木は俯いたまま頷いた。

「目覚めてしまった奴等は人の体に閉じ込められている事を知り狂気して無差別に人を殺す。まぁ中にはあのグレンって奴みたいに闇族本来の理性を保っている奴もいるがオレがこの一年目にして来た大半は狂っていた。そんな奴を人間で言う所の刑務所に入れても恐らくは脱走して行方知れずになるのが落ち。行方知れずになればまた被害が拡大する。」

・・・・・・確かにそうだけど・・・・・

「だけどな、そいつ等も元は普通の人間だったんだろ?」

 すると冬木は勇気の顔を見て・・・・・。

「元は人間の姿にされた闇の者だ。時を得て人の血が混ざり生きているが奴等は列記としたこの地に災いを生み出す闇の者。グレンの様な能力を普通に操る事が出来る。そんな奴等を普通の人間がどうこう出来ると思うか?」

 冬木の言葉にどうやら納得したらしく悔しい顔をする勇気。

「だけどな。オレにもオレの仕事がある。

学校って言う面倒臭い仕事がな。引きこもってられるかよ。」

 冬木は勇気の顔を見て溜息をつくと・・・・。

「オレには何の権限も無いし普通はそうなるわなぁ・・・・。学生は勉学に励むのが常識だ。

そうなるとオレはまた暫くお前の行動を監視しないといけなくなる訳だ。」 

 ニヤっと笑みを浮かべる冬木を見て背筋に冷たい物が走るのを感じた。

「だがこれだけは言っておくが、これはお前が選んだ事だ。お前のせいで本来目覚めなくて良い者が目覚め、殺されなくて良い者が殺される・・・・・。

これからお前自身に何が起きるかは分からないが絶対に後悔だけはするな。」

 頷く勇気。

 冬木は鞄から銀色のケースを取り出してそこから一つの名刺を勇気に手渡した。

「オレもお前にベッタリくっ付いてはいられない事もある。何かあればここに電話してくれ。」

 【秘密情報局 局長 冬木光】そこにそう書かれていた。

・・・・・この若さで局長かよ・・・・・。でも何かこの人部下いなさそう・・・・・・

 勇気は名刺を鞄に突っ込み、苦笑していた。

「もう暗くなって来たしな。お前はさっさと家へ帰れ。」

 冬木にそう言われて帰ろうとするが再び彼の方を見て・・・。

「おっさんはまだここにいるのか?」

 ぴくっ。

 冬木の額の血管がやや動く。

 微妙な空気に沈黙する勇気。

「冬木さんって呼んでくれないか?もしくはお兄さん・・・・。」

・・・・・・つまりおっさんって言われるのは嫌なんだな・・・・・・。

「あ~・・・・はいはい。じゃ冬木さんはまだここにいるのか?」

 すると冬木は空のビールの缶を缶入れに捨ててビニールからビールを再び取り出し、勇気にちらつかせた。

「後、一本だけ飲んだら家に帰るよ。

街の光で殆ど星何て見えなくなったが、夜空の下で飲むビールってのは良いもんだぜ。お前も二十歳になったら一回やってみろ。」

・・・・・・やっぱ、中身おっさんじゃんか・・・・・・。

「あぁ。やってみるよ。

じゃあな。」  

 苦笑しつつそう言いながら彼は冬木の元を去った。





【第一話終わり】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。