89話「現代⑦-大災害」
この話は震災が発生した時の描写を書き出しています。
御気分が悪くなるかもしれませんので、苦手な方はプラウザバックをお願いします。
ズズッ
ん?
足元からズレるような感覚を察知した。
ズッンッ!!
「!!?」
地面から押し上げられる衝撃が周囲に走った。
ゴゴゴゴッゴゴゴゴオッ
『地震だ!!』
『デカいぞ!!!』
『直下型だ』
『逃げろ!!』
自分が押し上げられるような感覚が伝わり、横揺れではない縦揺れだと判断する。
ゴゴゴゴゴッ
地鳴りが周囲を支配し、電柱や看板がグラグラと大きく揺れる。
バリぃん
パリィん
都市開発が進んでいない土地とはいえ駅に近い為に3階建て以上の建物からガラスの破砕音が連続して起こる。
カミソリの様に鋭いガラス片が下を通っていた人々に襲いかかる。
『きゃああああ』
『いてぇええ』
『屋内に避難しろぉおお』
アチラこちらで悲鳴が響き混乱が広がっていく。
ブスゥ
もちろん、俺の肩にもガラス片が突き刺さる。
『あ、あぁあ』
『うわぁあああん』
目の前に居た、親子を庇うために動かなかった。
『あ、有難うございます』
「気にするな。今はじっとしている事だ」
若い女性は娘を抱きしめて俺にお礼を言う。
タラッ
血が服に吸収されて赤い染みを作る。
『う、上!?』
女性が俺の真上を瞳孔を開いて指差した。
ゴッ
ビルの看板が俺目掛けて倒れて来たのだ。
ズンッ
グシャッ
ポタタッ
看板が頭に直撃し更に出血するも親子を庇いきる。
『だ、大丈夫ですか』
「心配ない・・・地震は収まったようだ。早く避難するといい」
『そんな、助けてもらったのに』
「行け」
ダッ
ダンッ
電柱まで飛び上がり、蹴って隣のビル屋上へと体を浮かせる。
スタッ
「酷いな」
ビル屋上からは見える範囲は混乱と悲鳴が轟いている。
所々では煙が上がっている。
大災害がこの市を襲った。
ダッ
俺は研究ラボへと戻る。
「アオイさん、どうしたんや」
「無事か?」
「今はアオイさんや! ここは耐震強度もあるから問題ないですわ」
「少し切っただけだ」
「ガラス片が突き刺さったままで少し切ったとは言いませんよ」
「とにかく、こちらへ」
研究ラボに戻ると棚なんかは倒れているが火災とかにはなっていない。
ペタペタ
「応急手当くらいしか出来ませんよ」
「今はどうなっている」
ピッ
大型テレビをつけてニュースを見る。
ババババババッ
『たった今、入りました情報によりますと関東全域にマグニチュード9.2の大地震が観測されました。高層ビル群は軒並み倒れております』
ヘリコプターからの映像だと思われるが、東京の中心部である高層ビル群の殆どが倒壊している模様が映し出された。
『皆さん、余震に注意して速やかに避難場所への移動をお願いします。なお、ガスもれの火災が予想されますので戸締り等をしっかりしてください。繰り返します』
ピッ
『こちら、先程の大地震で大火災になっております。消防車が数十台と来ておりますが消火が間に合わない事態です。無事な、お宅はガスの元栓を締めてください』
ピッ
『こちら、倒壊した高層ビルの直下です。多数の怪我人が運ばれております・・・軽症の方は応急手当でお願いします。これより医療機関は重傷者で溢れかえると予想されます。繰り返します』
ピッ
『こちら、東京駅です。先程の地震によって路線が捻じ曲がりました。それにより停まっていた列車がホームに乗り上げております。関東全域のJR及び地下鉄は運行中止となりました』
全部のチャンネルが未曾有の大災害を報道し注意喚起を促している。
東京だけでも1393万人が居るんだ、関東全域だと4328万が災害に巻き込まれている可能性がある。
「そんな・・・関東が大災害・・・」
「とにかく、家族が居る連中は連絡を取れ」
「はっ、翠」
「母さん」
「無事でいて」
スタッフは各々で連絡を取り始めた。
「チーフ、俺の所は無事だそうです」
「私も無事でした」
「俺もです」
「まったく繋がらへん・・・」
ヒロユキの顔色が悪くなっていく。
「ここの事は良い。向かいに行ってこい」
「あ、あぁ」
「くれぐれも焦って事故だけは起こすなよ。向こうから電話掛かってきたら一旦車は止めろ。関東全域でパニックを起こしているからな」
「分かったで」
ダッ
ヒロユキは営業用のバンに乗ってラボを出て行った。
「お前たちも、家族を迎えに行って来い。恐らく何処の避難所もパンクしているだろう。ここならある程度の備蓄も備えている。ただし周囲に悟られるなよ? あと、銀行通帳や貴金属類は全て持って来い」
「「「はい!」」」
他の3人も家族を迎えにラボを出て行く。
「さてと・・・マザー」
ブゥン
《マスター、如何致しましたか?》
方舟の崩壊と同時に消滅した筈のマザーがモニターに映り込む。
こういう時の為にマザーのコピーを地球のサーバーに退避させていた。
向こう側の知識等は使えないが、高性能AIとしては実に頼もしい存在である。
「現状、関東全域の様子は探れるか?」
《しばらくお待ちください》
今のマザーでは方舟時代との処理速度は雲泥の差が出ている。
《関東全域で大災害にみまわれています。各所で家屋の倒壊、火災、パニック、事故等が多発している情報が溢れかえっています》
「関東以外はどうだ?」
《東北や関西に至っても同様な事象が発生していますが、ここより酷くはありません》
「関東のライフラインは?」
《電気、水道、ガス等は現在稼働していますが、地震の影響で電線の断線、水道管の破裂、ガス漏れによる火災が各地で発生中》
「交通機関はどうだ?」
《各地の国道等は大渋滞を観測、全線の電車が運転中止、空港も全て欠航、フェリーなども運航中止と出ています》
「あらゆる物がストップしたか・・・」
プルルル
《柊家から電話です》
「あぁ」
ガチャッ
「アオイさま、ご無事ですか!?」
久しぶりにマコトの声を聞いたな。
「こっちは無事だ。そっちは無事か?」
「愛知への被害は殆ど出ておりません」
「そうか。頼みごとが増えてしまったが頼めるか?」
「なんなりと」
「恐らく、関東から各地方に向けて避難民が流れる。もし避難民がソッチに行った場合は」
「避難民の受け入れですね。我が豊穣市は受け入れ準備等を進めている所です」
「話が早いな」
「柊家の力を使って他の市にも呼びかけています。愛知での受け入れ作業は全域で行われると思います」
「東京から愛知だと・・・徒歩で」
「70時間(約3日)は掛かります。車ですと4時間ですが交通網は使えないでしょう」
「だろうな・・・今、世話になっている連中を連れてソッチに避難しようと考えている。大丈夫か?」
「数十人来ようが問題ありません」
「わかった。緊急回線でコチラから連絡する」
「お待ちしております」
ガチャッ
《現在、豊穣市への最短ルートを探しておりますが人の渋滞で迂回しないと行けません・・・車での移動は推奨いたしません》
「分かった」
マザーと共に情報収集をしてスタッフ達を待つ。
夜になると車が停まる音が聞こえ、数名の人が入ってくる気配を感じる。
ガヤガヤッ
ウィイン
自動ドアが開き、ミミンが60近い男女を連れてきた。
「アオイさん、連れてきました」
「あぁ。先ずはこっちだ」
続々とスタッフ3名の家族が集まった。
比較的近い場所に住んでおり殆どが実家から通勤できる距離にいた。
十数名程が会議室に集まってもらい、インスタントの食事を取ってもらっている。
手作りしている余裕までは無かったからな。
「チーフはどうですか?」
「携帯には繋がらない、恐らく携帯会社のサーバーがパンクしているんだろう。一応は緊急安否確認で生存までは見れる」
「そうですか」
「俺達、これから一体どうすれば」
「希望になるかもしれないが、愛知県に知り合いと話して避難民受け入れの準備が進んでいる。そこに避難しようと思う」
「愛知って、ここから結構遠くないですか?」
「徒歩で約3日掛かる・・・車や交通機関は麻痺しているから良くて自転車が限界だろう。それに時間が経つにつれて治安が悪くなる」
「治安ですか?」
「災害犯罪と言ってな、少ないとはいえそういった輩が出てくる。避難している家に侵入して貴金属を強奪していく連中だ」
「本当にいるんですか?」
「だから、貴金属類は持ってくるように指示を出した」
「なるほど」
「後はヒロユキの到着待ちか」
深夜1時頃に車の止まる音が聞こえてきた。
「チーフ!?」
「待て、様子がおかしい」
人の気配にしては騒がしくない。
ガァン
金属の棒でシャッターを叩く音が響いた。
会議室で寝ていた所、叩き起こされる形となった。
「ちっ、さっそくか」
防犯カメラに黒づくめの男達が写りこんでいた。
「災害犯罪ですか?」
「こんな所に来るのは限られている。データだ」
「データ?」
「俺達が秘匿し続けている闘天使や介護ロボットのな」
「こういう輩も出てくるのか」
スッ
「アオイさん?」
「少し、黙らせてくる」
「え?」
「お前たちはソコで待っていろ」
タッ
俺は暗い廊下を走り出す。
ガシャァン
ガラス窓の割れる音が館内に響く。
防犯システムが作動した所で防犯会社は他の対処でパンクしているだろう。
タッタッタッ
小さいが足音が数手に別れた。
避難民たちは最上階の居住可能エリアに固まっている。
ウィイイイイン
そのエリアに侵入できる通路の防火シャッターを閉める。
侵入者たちは一階の捜索で手一杯のようだ。
カランッ
靴を脱いで足音を最小限にし移動を開始する。
「侵入者の数は?」
《10名未満かと・・・防犯カメラが次々に壊されており把握が遅れています》
「相手の武器は?」
《サイレンサー付きの拳銃を標準装備かと》
「プロがドサクサに紛れてか」
《どうやら、機密情報エリアの防壁扉に到着しています。数名そちらに向かっております》
「わかった」
ダダダダッ
一階から二階へ続く階段を無遠慮に登ってくる黒服の男達。
バッ
『なっ!?』
ドッ
ゴッ
二階から身を踊りだして先頭の男の頭部に踏み込んで壁にめり込ませる。
ダッ
ドッ
『がはっ』
驚いている隙をついて2人目を当身で吹き飛ばす。
チャッ
暗視ゴーグル越しで俺にサイレンサー付き拳銃を向ける。
シュォッ
ガッ
ゴギャッ
足刀蹴りで手首を折る。
『ぐっ』
ヒュォッ
ドゴンッ
踵落としで3人目を地面に沈める。
数秒で3人の男達を戦闘不能に陥らせる。
《どうした! おい!!》
ピッ
「お前たちは触ってはいけない事に触れた。覚悟しておけ」
バキャッ
通信機を握りつぶし、男達を武装解除し床に転がしておく。
《侵入者が警戒を強めています》
「そうか、デコイ頼めるか?」
《限界があります》
「音で注意を逸らすことは」
《その程度であれば》
「頼んだぞ」
別の出入り口から機密エリアへと入り、侵入を試みようとしている連中と壁一枚越しの所で留まる。
《PCをショートさせます》
「やってくれ」
バチンッ
防火扉越しでも電気が爆ぜる音が聞こえる。
『見てこい』
ダッ
1人が離れていった事を気配で感じる。
スッ
ドッガンッ
防火扉毎蹴り破る。
頑丈といっても俺の攻撃力の前では紙に等しい。
銃を構えていた連中の3人が吹き飛ぶ扉に巻き込まれて壁と挟まれる運命となった。
防火扉にハッキングを仕掛けていた男だけがその場に取り残された。
『ひっ』
「遅ぇ!」
銃を構えようとしているが即座に頭部を拳を当てて気絶させる。
ダダダダダダッ
様子を見に行った残りの1人がサブマシンガンを乱射して突っ込んできた。
キキキィン
チュィン
物陰に隠れて銃弾の嵐をやり過ごす。
ブゥンッ
近くにあった消化器を投げ入れると、敵も慌てて銃で応戦する。
ドバァアアアア
消化器の中身が撒き散らされて一面真っ白になる。
ブワッ
いくら暗視ゴーグルとはいえ真っ白な空間では役に立たない。
一瞬の視界不良の隙をついて最後の男へと接近して伸し掛る様に身動きを取れなくさせ気を失わせる。
「マザー、侵入者はこれで全員か?」
《防犯カメラ越しでは・・・いえ、もう一人》
「どこだ」
《後ろです》
ギィン
『なっ!?』
「プロなら隙を見せるな」
ガッ
重厚なナイフで俺の背後から襲いかかってきた最後の侵入者だったが、ナイフが俺の防御力によって弾かれた所に驚き、その隙を突いて昏倒させる。
「終わりだな」
《はい》
俺は素早く武装解除し男達を縛り上げる。
「侵入者にしてはいい武装しているな」
暗視ゴーグル、侵入用の高性能パソコン、防弾チョッキ、サイレンサー付き拳銃、サブマシンガン、閃光弾にスモークグレネードと日本じゃお目に掛かれないな。
男達を下着姿にひん剥き、倉庫の一角に運ぶ。
キキィ
「またか?」
《いえ、結城さん達が到着した模様》
バタバタバタ
「なんやコレ?」
「すこし、ゴタゴタがあってな」
「大丈夫なんか?」
「さっき片付いた。皆は3階に居るから案内してくれ」
「わかったで」
ヒロユキが家族を3階へ案内する。
「何があったんや?」
「コレを見てくれ」
ガシャッ
ダンボールに入れた男達の武器だ。
「ほ、本物かいな?」
「全部本物だ。企業を狙うプロ集団のようだ。このドサクサに紛れて盗み出そうとしたらしい」
「やっぱりアチラさんか?」
「全員が外国人だった。今は倉庫に閉じ込めている」
「警察は?」
「あてに出来ないだろう」
「徐々に治安悪化が懸念されている・・・明け方に移動を開始したいが仮眠を取ってくれ」
・・・
・・・・・・
チュンチュンッ
鳥の鳴き声と日の出で朝だと告げる。
軽く朝食を取って会議室に集まってもらう。
「全員、静かに聞いてくれ。集めた情報によると関東全域で大災害にみまわれた。全ての交通網は麻痺、様々な要因で二次災害に発展している場所もある」
ザワザワザワッ
「不安になる気持ちは分かるが今は避難を優先する事が先決だ。昨日の内に愛知県に避難する準備を整えた」
ザワザワザワッ
「ここから約3日間の旅になるだろう。途中で宿もないので野宿なる可能性もある。だが、人力で運べる物資にも限界がある。最低限の荷物だけでの避難となる」
『車は使えないのかね?』
「道路も大地震の影響で地割れが頻発して危険度が増している。事故のリスクは少なくさせるべきだ」
『ソコに行くしか無いのかね?』
「他に当てがあるなら止めはしない。あくまでも避難場所の一つとして提示しているだけだ。残念ながら此処は安全じゃないと分かった」
『昨日の事か?』
「武装した連中がウチのデータを盗みにやって来た」
『武装とは?』
「殺傷能力の高い武器とだけ」
『・・・』
『お父さん、ここは甘えましょう。恐らく親戚も手一杯でしょうし』
『だな・・・頼む』
「他に意見は?」
『食料は?』
「ここに備蓄している物を持っていく。全員分の食料なら問題ないだろ」
『ここが安全じゃ』
『さっき、危険だと言ってますよ』
『すまん』
「避難が完了するまでは他人への情けは捨ててもらいたい」
『どういう事だ?』
「たとえ怪我人が居ても助けるなという事だ」
『なっ!?』
『それは人道的にどうかと』
「あくまで助けたければ助けるといい。だが、最後まで面倒を見る気か?自分達の避難だけでも手一杯なんだ。余裕がない以上は手助けは出来ないと考えてくれ」
『せめて応急手当だけでもしてやれんのか?』
「して、放置か? それこそ後悔すると思うが?」
『ぐっ。なにもしてやれん事の方が後悔しそうだ』
「その程度なら、やってもいいが道中なにが起きるか分からん。隣の奥さんが怪我をしても応急手当も出来なくなる事も考慮に入れて行動をするべきだ。感染症を防げなかった事が原因でって事もありえる」
『・・・』
「俺は何も強制はしない。ただ、このまま時を待っても恐ろしい事が起こると予想している。その前に早く避難を開始するべきだと思っている。俺からは以上だ」
ガチャッ
俺は備蓄倉庫から全員分の水と食料をリアカーに乗せ始める。
『俺達にも手伝わせてくれ』
暫くして男達がやってきた。
4世帯十数名分の飲料水を数台のリアカーに乗せる。
「これを所持しておけ」
『これは?』
「昨日襲ってきた連中から頂いた護身用ナイフだ。避難中、周囲は敵になりうる。食料を求めてな」
『アンタはどこまで』
「家族を護りたいんなら、それくらいの覚悟を出してくれ。自分の娘が暴漢に襲われても平気だといいんだがな?」
『・・・わかった。私が愚かだった。アンタはこういう事態には慣れているんだな』
「長年培った経験だ・・・さっさと移動を開始しよう」
予定期日を超えても良い様に5日分の飲食物をリアカーに乗せる。
その他、背負える物は各自背負っている。
「大丈夫かいな?」
「えぇ」
バッテリー駆動時間が4時間しかない介護歩行ロボットを装着しているミドリが車椅子に予備バッテリーを積んでいる。
万が一動かなくなった場合は車椅子に座って移動するようだ。
「全員、覚悟を決めて移動するぞ」
おぉおおお!
十数名による避難大移動が始まった。
目的地は愛知にある豊穣市。
リアカーには何を積んでいるのか分からない様に布団で隠していての避難だ。
ザワザワザワ
既に大量の人で大通りはごった返しとなっていた。
けが人もチラホラと見える程には居る。
人の流れも避難所に向かうもの、県外へ向かう者で進みが悪い。
パッパー
車で移動しようと試みている者もいるが、交通網が麻痺し信号機能も停止してしまった今では進みようが無い。
「迂回しよう」
マザーから逐一送られてくる地図の交通情報を頼りに住宅街を通って行く。
「ぷはぁ」
東京から静岡の県境に来るまでに1日を要した。
川超えする事があれば橋に人が集中してしまい思った時間までは進まなかった。
今は人気のない公園で一息つき、ここで野宿する事が決まる。
女子供を中心に集め、男達で交代で寝る事を決める。
寝ている隙に泥棒や置き引きにあいたくは無い。
・・・
・・・・・・
深夜となり周囲に静けさが支配する。
ゴソゴソ
『へへっ、やっぱり食料があった』
「何をしている?」
『え?』
グキッ
『え、あがっ!?』
見知らぬ人が俺たちのリアカーに手をつけていた所を背後から関節を決めて締め上げる。
「それは俺たちの所有物だ。勝手に持ち出す事は犯罪だ」
『いででででっ』
「死にたく無ければさっさとこの場から離れろ」
ペタペタ
重厚なナイフをギラつかせながら見せつける。
コクコク
『ひえぇえ』
男は慌てて公園から出て行く。
『どうしました?』
「荷物を盗もうとした輩が出ただけだ。直ぐに追い払ったがな」
『懸念されていた事が起こりましたか・・・』
「こんな状況じゃ秩序もないだろうな」
これまで通ったコンビニやスーパーからは飲食物が消え去ってしまった。
その他に電池や懐中電灯などの日用品も同じく消えてしまっている。
外部からの補給ができない以上、限られた物資だけで歩き続けなければならない。
盗まれても警察が動くことはできない、自己防衛でしか自らの身は守れないのだから。
翌朝、朝食を取り・・・愛知へと歩き始める。
「アオイさん、なんか山へ向かってません?」
俺を先導に付いてきたが不思議に思ったヒロユキが疑問を投げてくる。
「今夜の宿泊予定地はここにあるキャンプ場だ」
約100キロ先にあるキャンプ場を指す。
「あと、山沿いに進んでいるのは人気を避けてだ。国道沿いだと人が多すぎる」
「なるほど」
幾度かの休憩を挟み、人通りも少なく順調に進んでいた。
「尾けられているな」
「え?」
俺達を数百メートルの間隔を空けて尾行している連中がいる・・・一般人であれば良いが。
「この道順に進めばいい。俺は最後尾で警戒している」
スマホをヒロユキに渡して俺は最後尾を歩く。
一応、男手を最後尾に配置する。
「引き剥がすのは無理か」
十数名を引き連れてじゃ逃げる体力もない。
後ろについてきている連中は柄の悪い感じの男だ。
昨夜、俺が追い払った男が居る。
恐らく食料目当てで追ってきたのだろう。
「先に行け、後から追いつく。いざとなったら覚悟を決めておけ」
コクリ
男衆は頷き先へと進む。
俺は道を塞ぐように仁王立ちして後ろから付いてくる連中を待ち構える。
ガラガラガラ
金属パイプやバットを地面に擦りつけながら俺へと向かってくる若い連中が20名程近づいてきた。
「お前たちは何しに来た?」
『本当にデケェ外人じゃん』
『日本語がペラペラじゃんか』
『へへ、俺達も避難中なんだわ』
避難中といっても軽装すぎる。
持っているものと言えば武器となりうるものばかり。
『ここいらの家の連中は助けてくれそうにもねぇしな』
シャッ
カーテンの締める音が周囲から少なからず発生する。
『まぁ、同じ方向に進んでる好だし。仲良くしようや』
『そうそう、ここは助け合いが必要じゃん』
「助け合い? 強盗の間違いじゃないか?」
『あ? テメェ、舐めたこと言ってんじゃねぇぞ』
ガイィイン
金属バットでカーブミラーの支柱を叩く若者。
『俺達がいつ強盗をするってぇんだ?』
『勝手に犯罪者呼びはよくねぇぜ』
『知ってんだぜ、アンタもナイフを持っている事をよ。それって銃刀法違反ってんだぜ』
どの口が言うんだか・・・
「わかった、わかった」
『分かってくれるなら良いんだよ』
『これだから外人はよお』
「その武器を没収したらな」
『あ?』
ガッ
グニャッ
近くの若者が持った金属バットを奪い、力任せに捻じ曲げる。
「死にたい奴から掛かってこい!」
ドッ
近くに居た、若者がねじ曲がった金属バットに気を取られている瞬間を狙い当身をして吹き飛ばす。
「怪我で済めばいいがな」
『っざけるなぁ!』
『やっちまえ』
若者たちは一斉に襲いかかってきた。
・・・
・・・・・・
『うぅ』
『うげぇ』
『ごほっ』
『ぐぅ・・』
『カハッ』
十分もしないうちにカタは付いた。
所詮は素人の集団、こんな物である。
ある程度の手加減をしたが、病院に行かないとダメなレベルで怪我を負わせた。
二度と俺たちに近づけさせない為の処置である。
ダッ
ヒョイッ
地面を蹴り、ブロック壁に登ってからもう一度跳躍して民家の屋根に登る。
ヒロユキ達が向かった方向へと駆けていく。
タッタッタッタッ
屋根伝いに走り数分で人気の少ない住宅街を進むヒロユキ達を発見する。
スタッ
ダッンッ
「おわ!? 驚かせんといてぇな」
「スマンな」
「何処から現れたん?」
「屋根を伝ってきた」
「忍者かいな」
「安全は確保してきた」
「そうか・・・」
「この先の公園で休憩だ」
何度か休憩を挟み、目的のキャンプ場へとたどり着く。
すでに幾組かの避難民が着いていたようで俺達は空いているスペースを見つけて陣取る。
周囲はしっかりと準備をして各々食事にありついている。
『ねぇ、アナタ達。食料を分けてくれないかしら?』
交代で食事を摂っている時に若い女性が話しかけてきた。
ランタン程度の光で分かり辛いが化粧も厚く塗っているようだ。
『俺達、持ってきた食料が尽きちゃって困ってんすよ~』
次に金髪の若い男性が声を掛けてくる。
チャラチャラと金色のネックレスや指輪を着けている。
「お断りや。自分達の食べ物だけで精一杯なんや」
ヒロユキが2人に向かって言う。
『こっちも困っているのよ。この人数なんだし余ったりするでしょ?』
「ギリギリしか持ってきてないんや。他に分け与える程は持ってへん」
『んだよ~、困ったときは助け合い精神はないんか』
「助け合う余裕なんかあらへん言うとるんや」
『ちっ』
『ケチねぇ』
若い男女は悪態ついて去っていった。
「だぁぁあ、緊張したわぁ」
「良くやった」
「いつも、アオイさんに助けられてちゃアカン思うてな」
「だんだん、方言が出てるぞ?」
「あっはは。そりゃ、こんなん状況ですわ。標準語話してる余裕はなかですわ」
「そうか」
「今日も、順番で見張りを立てるぞ」
少ないとはいえ食料目当てで近づきそうな輩はいそうだ。
・・・
・・・・・・
『ごらぁ、何してるんだ!』
『っくしょぉ』
『俺達の食料を盗みやがって!!』
仮眠を取っている間に見張りの男衆が慌しく動いていた。
食料をねだって来た若者が盗みを働こうとしていた所、見つかって捕まったらしい。
『アンタ達がケチだから、俺だって仕方がなく』
『今はそれ所じゃねぇんだ。自分達だけで精一杯なんだぞ』
『お前もなんで準備をして避難してないんだ!!』
『途中のコンビニとかで何となると思って』
『そんなん分かりきった事だろ。90年前の時も一時的に物流が止まった事も知らないのか!!』
『教科書に載っていただろう。それに防災訓練にも避難する際は防災グッズを背負って行く決まりだろう。お前はそんな事も知らんで逃げてきたのか』
『しかたねぇじゃん。家に帰る暇も無く逃げてきたんだしぃ』
『仕方が無いで済む問題じゃないんだ』
「その辺にしておけ」
『た、助かった~』
グッ
『ギャッ』
若者の左肩に右脚を乗せて体重を掛ける。
「選べ、このまま肩の骨を踏み砕かれるのと、静かにこのキャンプ場から立ち去るのを」
『いででででで』
「3、2、1」
『わかった、去る。ここから去るから』
スッ
『ほっ』
ゴッ
『っで』
「二度と近づくな」
『分かったから』
タッタッタッ
若者はキャンプ地から走り去っていく。
パチパチパチパチ
様子を伺っていた周囲の避難民達から拍手が贈られる。
あぁいう輩は脅威だと認識している様だ。
翌日、朝食を取っていると脅威を追っ払ってくれたお礼という事で周囲の避難民達からコーヒーをご馳走となった。
少ない食料から出し合ってくれただろう。
その分、少なからず情報交換が出来た。
静岡の至るところでは避難所が設置されているが何千万という人数を抱える事は出来ない為、避難民が西に向かって歩いているらしい。
キャンプ場に居る全員は集団で行動するメリットとデメリットを考えて危険と感じ此処へと来たらしい。
「俺達は愛知の豊穣市へと向かっている。そこでは避難民の受け入れ体制を整えているらしい。恐らく愛知全域での受け入れ体制が数日後には整うという」
ォオオオオオ
それを聞いた、避難民たちは希望の声を上げる。
「ただ、関東全域をカバーする事は出来ない。静岡と同じで愛知でも避難所に入れない場合は更に西へ向かうしかない事は念頭に置いてくれ」
時間が過ぎて避難民たちがバラバラに出発をする。
俺たちも準備を整えて愛知へと向けて出発する。
カラカラカラ
「本当にゴメンナサイ」
遂に予備バッテリーも底を付き、ミドリの介護歩行ロボットが動作を止めた。
今は車椅子に乗って娘のナギサと義弟のシンイチロウが交代で押している。
「ううん。おかあさんは元々足が悪いんのは仕方あらへんよ」
「そうですよ、義姉さん」
「アナタにも苦労を掛けます」
「かまへん、かまへん」
険しい山道を徒歩で進むには一般人の足ではキツく、何度も休憩を繰り返して思うように進まない。
「ここに文明の力が使えへんというのは辛いなぁ」
ガァアアアアア
『おい、エンジン音じゃないか?』
『こんな山道に車なんて来るのか!』
静かな林道にエンジン音が轟いて俺達の目の前に数台のトラックが通り過ぎた所で急停止した。
ガチャッ
数十年ぶりに見た柊真琴の姿は70歳を超えた婆さんだった。
「アオイ様、お久しぶりでございます」
「無理するな」
「アオイ様が東京に向かわれて50年近く経過してもお変わりがありませんね」
「お前は老けたな」
「ふふっ、お迎いに上がりました。この方たちがお連れ様ですね」
「あぁ」
「では、荷物をお預かりします。皆様は後続のバスにお乗りください」
リアカーに乗せていた食料をトラックの荷台に積み、タカヒロ達は大型バスへと乗り込む。
残りの数百キロの道のりを車で運ばれて、避難所にたどり着く。
広い敷地内に何百というテントが建てられていた。
「アオイ様はこちらへ」
マコトに連れられて、柊の本邸へと案内される。
「東京だけではなく関東全域が大地震の被害にあい、日本中は大混乱となりました。政治家達も幾人かは行方不明になり現在は各自衛隊が関東に集結し救助活動をしているとか」
「なるほど」
「この豊穣市でも全てを受け入れる事は困難です。今は大阪や京都にも呼びかけていますが良い返事は返ってこない次第です」
「柊家の力は愛知までだろうからな」
「現在、首都壊滅状態となり日本の経済がガタ落ちです。早急な対応をしていますが・・・支援にも限りがございます」
「だろうな」
関東数千万の人間を養うには相当な金・資源・食料が必要だ。
「既に全世界にこの状況が報道され、募金を集めているようですが何処まで届くかは不明です」
「首都を緊急的に大阪に移す計画が早急に動きだし始めました」
「大阪か」
「東京に次いでに大きな都市を持っていますからね。情報なども集まりやすい土地でもあります」
「とにかく、よくぞ戻って来られました。今夜はご寛ぎ下さい」
「あぁ」
柊家本邸にて一風呂浴びて、客間で寛いでいたら訪問者が訪れてた。
『始めまして、お婆様の孫である柊夜未と申します』
まだ、子供っぽさが抜けていない女性が訪れた。
「お婆様の代わりに挨拶にお伺いました」
「あぁ」
「本当にご先祖さまなのですか?」
「地下のカプセルは見ていないのか?」
「アレは何故か粉々に砕けたと聞いています」
「何年前だ?」
「2年前かと?」
方舟が吹き飛ぶ同時期に証拠隠滅を図ったな。
「アレは地球外物質であるだけじゃ納得できないか?」
「お婆様の言うことを信じない訳ではありませんが、実際に見ても実感は湧きません」
「そうか」
「もし、あのアオイ様なら私は一言申したい事があります」
「ん?」
「なぜ、スターニアさんが作り上げた会社を潰すような真似をしたのですか!」
「アレは仕方が無かったことだった」
「詳しい話は聞いております。危険な実験をしていたと・・・」
「万全の体制で行っていた」
「万全であれば潰れなかったはずですよ」
ガラッ
「それは違いますよぉ」
ソコに当の本人が入ってきた。
「スターニアさん!」
「タイミングが良いな」
「柊家にはお世話になっていますものぉ」
「そ、そんな恐れ多い。私達がお世話になってばかりで」
「うふふ。律儀ですねぇ。そういった所が好きなのですよぉ」
クィッ
スターニアがヨミの顎を人差し指で上向かせる。
ズズゥ
お茶を飲みながらソレをみている俺。
美女同士でやると絵になるなと思う。
「って、そんな事ではなくて今の本当なのですか?」
「アレはアオイさんの望んだ事でもあるのですよぉ。たまたま私が立ち上げた会社だけの事なのですよぉ」
「非人道的な実験と聞いていますが」
「私達の作り上げたVR機器は身動きの取れない人でも仮想空間内を自由に動き回れる夢のある機械なのですよぉ」
「しかし、死人が出てしまっては意味がありません」
「確かに死人が出てしまったので会社が潰れてしまったのも事実ですがぁ、全てアオイさんの責任ではありませんよぉ。VR機器を担当したのは私なのですからぁ、私にも責任はあると思うんですよぉ」
「そんな、スターニアさんが責任を取るなんて」
「ずいぶん、スターニアの肩を持つんだな」
「し、知らないのですか!? スターニアさんは歴代柊家を含めた四家を支えてきた人物ですよ」
「そんな事していたのか?」
「その通りなのですよぉ、危険な道を歩もうとしている当主達に近づいて何度も正道に戻しましたのですよぉ。ここで私はすっごい有名人なんですよぉ」
ブィ
「はぁ、スターニアさんがソコまで言うなら何もいう事はありません」
「アオイさんは本当に凄い人物なんですよ。今は力をセーブしているので実感は沸かないと思いますがぁ」
「はぁ?」
「その内に分かりますよぉ。さぁ、若い女性が男の部屋に居続けるのは宜しくないので私達はぁ退散しますよぉ」
スターニアがヨミを連れて部屋を出て行った。
「力なんて・・・殆ど失ったんだがな」
あるのは人間離れした能力だけだ。
・・・
・・・・・・
暫くして、避難活動が安定期に入り始めた頃にヒロユキ達からパワードスーツ開発を行う事を告げられた。
「私はじっとしてられまへん。パワードスーツの利便性はこういった時に発揮されるんですわ」
「分かった・・・しかし、資金何かは如何するんだ?」
「データなんかはコッチに持ってきましたわ。お金も会社の資金から出します。事情を話したら柊家が便宜を図ってくれて研究施設の提供もしてくれはりましたわ」
「他の皆は?」
「協力してくれはりますわ。世話になりっぱなしは嫌やそうで」
「そうか」
「パワードスーツのプロトタイプは一から作り直しやから時間も沢山使いますが手伝ってくれますか?」
「あぁ・・・ただパワードスーツは人が乗って自由に動く事が目的、災害地へ赴いて瓦礫撤去をするなら闘天使を人型にまで大きくすればいいじゃないか?」
ポンッ
「たしかに・・・でもバッテリーは」
「人と同じ大きさならバッテリーを乗せる事は可能だろう。それが無理なら操縦者が有線接続のバッテリーを背負う形式でもいい」
「ほな、それで作ってみますわ」
闘天使製作に関わるノウハウを生かしてヒロユキ達はプロトタイプを完成させた。
「なんでコレを採用した?」
「プロトタイプならコレやろ」
作られたのは5体、ペンドラゴン、アルテミス、サン、ジャンヌ、チャリオットを模した物だ。
「早速、動作テストですわ。ホイ」
デバイスが渡される。
「俺が操縦するのか」
制作は殆ど任せっぱなしだった。
「開発時代を思い出しますね」
デバイスを着けたミドリが車椅子姿で横に停まる。
「アオイさん、よろしくお願いします」
「人形使いの実力を目の前で見れるなんて光栄です」
ナギサとシンイチロウの2人もデバイスを装着している。
「闘天使操縦者の上位者がこれだけ集まってるんや。テスターには打ってつけや」
「私はサンモデルを担当しますよ」
「ウチはペンドラゴンモデルがえぇ」
「僕はジャンヌモデルですかね」
「俺がアルテミスとチャリオットを担当か」
ザワザワザワッ
闘天使が本当に災害現場に役立つかの実験テスト場には避難民達も少なからず集まっている。
ここ数ヶ月は避難生活で娯楽という娯楽は無い。
「よぅし、瓦礫撤去シミュレーションを開始や!」
様々な瓦礫を模したコンクリート片が置かれているフィールドだ。
「「「「闘天使起動」」」」
ピカッ
両目が点灯し起動する。
パッ
「「「「!?」」」」
デバイスに知らない映像が映し出された。
「災害現場での瓦礫撤去を目的としたものなんや、闘天使の目線で操作して貰うで」
「分かりました」
「やったるで」
「なるほど」
「あぁ」
ウィイイン
人と同じサイズの闘天使達が動き始める。
グラッ
「一人称視点だとバランスが」
「難しいですね」
「闘天使の時と違うんやね」
三人称視点の時と違いバランス感覚も要する。
「並列思考」
スッ
目を閉じてアルテミスとチャリオットに意識を写す。
これが人形使いと言われる所以、ごく僅かな人間しか持たないとされる同時に別のことを考える事のができるスキル。
ギィンッ
2体分の視野が頭に入ってくるが、難なく動かせる。
ズシッ
チャリオットの巨体が大きな瓦礫を崩し、アルテミスのフットワークの軽さを活かして小さな瓦礫を抱えて撤去予定地へと運ぶ。
「負けられませんね」
「そうですね」
「そやな」
3人も時間を掛けて闘天使達を動かし始める。
テスト用の瓦礫郡を5体で分担して撤去運動をする。
「ジャンヌの足元に要救助者の反応があるぞ」
「なんですって?」
「掘り起こせ」
ガッガッガッ
瓦礫下に要救助者モデル人形が横たわっていた。
「アルテミスにはレーダー機能があるようだ。生命に反応する」
「そや、各闘天使には撤去作業能力だけでなくそれぞれ一つだけ特殊技能が組み込まれてるんや。まぁ、一つしか組み込めんかったが正しいんやな」
「チャリオットはパワーによる防御力か」
「瓦礫が突如崩れてきても仲間を守るんがコンセプトや」
「ペンドラゴンは・・・リーダーシップかな?」
「4体の技能を使い所を指示が出せるんや」
「ジャンヌは緊急手当ですか・・・」
「要救助者がすぐに医療施設に運び出せるとは限らへん。延命処置が大事なんや」
「サンは・・・何もないんですか?」
「あるに決まってるわい。サンはその危機察知能力に長けてるんや。それはチャリオットへと即座に連携できる」
ピッ
ボンッ
高い位置の瓦礫が小さな爆発を起こして、サンに崩れ落ちようとしている。
ウィンッ
サンはその機動性を活かして後退する。
ガイイィイン
即座に情報が送られてきてチャリオットが瓦礫を重厚なアーム部分で防ぐ。
「と言うこっちゃな」
「5体で1チーム編成を前提に作ったのか」
「そういう事や・・・で、デモンストレーションとしてはお気に召しましたかな?」
『えぇ、これほど素晴らしい出来は復興活動に大いに役立つでしょう。主に重機が入れない場所などが活動できますね。後で詳しい話をお聞かせ下さい』
黒服の偉そうな人物が離れていった。
「あいつは?」
「この助天使の量産を判断する国のお偉いさんや」
「助天使?」
「社会の秩序を護り、悪魔の囁きから人々を助ける天使や」
「そうか」
「ほな、私は詳細を説明しに行くわ。後は頼んだで」
ヒラヒラと手を振り去っていく。
こうして復興支援ロボット助天使の製造が決定し、順次復興地域へと投入されていった。




