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運命に導かれし白銀の糸 -《最弱だった糸使い》  作者: アラドリア
続・最終章「地球降下後編」
97/106

88話「現代⑥-死の真相」

※この話には差別的と受け取ってしまうかも知れない用語が含まれている可能性があります。

 不快感を感じたくない場合はブラウザバックをオススメいたします。

「分からない?」

《はい。BCGにおける人体への影響は少ない設計も成されている事から外部的要因は極僅かです》

「他に何もないんだな?」

《はい、摂取物質から全て調べ尽くしましたが痙攣から始まった心肺機能停止に繋がりえる根拠が見つかりませんでした》

「そうか」


タカヒコの死の原因は数年の調査を経ても見つからなかった。


《これを精神的ショック死だと断定いたします》

「精神的ショック死・・・であっても断言するには弱いよな」


ブレス攻撃を受けた程度ではショック死には至らない。

現にゲーム内で転落死したプレイヤーがショック死すら起こらなかったのだから。


《裏側の世界はゲームの死亡がリアルの死だと繋がるように設定でした。恐らくゲーム内の死亡と判断した佐藤隆彦はリアルの死を受け付けたと思われます》

「それがショック死の要因だと?」

《司法解剖の結果と照らし合わせてもショック死としか考えようがありません》

「そうか・・・」


ジジッ


っつ!


脳裏に何か焼き付けるような痛みを感じた。


《マスター?》

「じゃぁ、なんで未来の俺はデスゲームなんて状況を作り出した」

《それは、未来を知っているマスターが居たからです・・・過去のマスターも今後同じ道を辿ってくるでしょう》

「つまり・・・運命だったという訳か?」

《非科学的ですが・・・数多ある未来の道を辿ってきただけに過ぎません。中にはここにたどり着かない未来もあるのでしょう》

「であれば、お前を作った奴は何なんだ? ガンジが製作者だと言っていたがガンジのプレイヤーは今も健在なんだぞ?俺は、俺だけじゃないプレイヤーがあの惑星に転移か転生をしお前たちを作り出したと思っていたんだ」

《それは・・・ガガァ~》

「マザー?」

《その答えに僕が答えよう。運命を辿りし魂よ》

「・・・誰だ?」

《君達が神と呼ぶ存在さ》

「神? 俺は信じてないが」

《まぁ、神という概念はあるだけどね。正確には遥か高次元の存在さ》

「高次元」

《君達がアニメ、小説、漫画、物語なんかを二次元と呼ぶなら、僕たちの世界は五次元世界だ》

「五次元」


余りにも吹っ飛んだ話だ・・・三次元を二段階も超えた話だと?


《信じるかは君次第だね。で、ようやく説明する機会が訪れたからマザーの体を貸してもらっている》

「説明の機会だと?」

《そうだね、僕は魂を管理するものと呼ばれている神だ》

「転生神という所か?」

《まぁ、皆からはそう呼ばれているね》

「その転生神が何の用なんだ?」

《君は自分の死の原因を調べていた。その真相が知りたい、だろ?》

「その口ぶりだとお前が犯人だと言いたい様だが?」

《そうだ、僕が犯人だ。君の佐藤隆彦の魂をあの惑星に憑依転生させた》

「じゃ、この体は元々」

《あの惑星で餓死する筈だった少年の体だった訳さ。僕が無理やりにね》

「ゲスが」

《まぁ、死にかけの体を利用させてもらっただけだよ。じゃぁ、なんで僕がそんな事をしたかについてだね》

「理由がないからな」

《実はこの実験は何千回、何万回にも及ぶ結果なんだよ》

「実験?」

《地球の魂が突然他の世界に転生した場合、帰ってこれるのかというね》

「そんな事の為に」

《最初はお遊び程度だったんだけどね、運命神の奴が君の魂を加護を与えちゃってね》

「運命神?」

《君の魂は帰巣本能に従い地球へ帰れるように強固で太い運命が施されたのさ。つまり、僕がどんな邪魔をしようが地球には帰れる。とある時はペンドラゴン達を作らなくても宇宙船があの惑星に不時着してそれに乗って外宇宙に飛び出していく運命もあった。別の時は宇宙海賊になりつつも着実に別の場所へと移動を繰り返して高性能AIを手に入れて地球へと帰っていった。別に戦国時代に降りなくても現代に降りていく運命だってあった。君がVR機能の知識を渡さなくても柊勤という人物は生まれている。今回は違った運命を辿っていっただけに過ぎない》

「じゃぁ、あいつ等も本来は」

《君と出会ったりはしない筈の転生者や転移者達だ。あの場に出くわしたのは数奇なる運命の道がズレて今回に繋がっただけさ》

「椿家や他の三家も無かったのか?」

《今回が初めてのケースだったよ。地球の運命は君達程度じゃ変えられないけどね》

「今から、あの惑星に行って」

《それは無理って話だね。月にあるマザーの方舟は数百年という経年劣化で動かない。あの長い距離を君は戻る事は出来ないんだよ》

「ハイパージャンプ一回程度なら」

《銀河椀には辿りつくだろうけど、あの重力場は越えられないよ》


銀河椀の間に発生していたブラックホール・・・今の方舟では越えられないのか。


《既に君は僕の実験から外れてしまったから答えを教えてに来ただけなんだ。お疲れ様》


ガラガラガラッ


俺の心の中で何かが崩れ去る音が聞こえてきた。


「貴様に俺の何が分かる」

《分からないよ》


次第に目の前の人物に怒りがこみ上げてきた。


《動物実験に愛情でも沸くと思う? 君がして来た事に比べれば大した差は無いよね?》

「して来たこと?」

《VR装置の開発、闘天使の開発・・・どれも人体実験なくしては完成できなかった物だよ》

「それは、そうだが」

《僕たちも同じ感情をしている。用の無くなった物への関心は消え去る。そして僕の興味は転生させた新たな彼の魂の行方だ》

「何万回と言ったな・・・それは今後も説明しに来るという訳か?」

《死の原因を探ってきた時限定だよ。それ以外は放置だし》

「お前がマザー達の真の製作者だったのか」

《まぁね。今回もサンをあの隆彦のインベントリに入れておいたよ。さて、今回はどの道を辿るのか楽しみだよ》

「マザーの生みの親なら・・・俺の行動を制御させたな」

《さすが早くも気付いた? マザーにはそれとなくこうなる様に指示を出していたからね》

「なぜ、俺だったんだ?」

《さぁね、そんな理由は遥か昔に忘れてしまったよ》

「そうか」

《さぁて、ネタ晴らしも終わった事だし。今後二度と関わらないよ。後は自由に寿命まで好きにすればいい・・・けどこれ以上はマザーの知識は譲れないからね。バイバイ》


ガザァアアアアア


通信機から砂嵐音が流れるだけとなった。


その数ヵ月後、月の裏側で大爆発が起こっていた事が明らかとなり日本航空宇宙局の調査により、遥か昔から月の裏側にあった事、残骸を調査した結果、地球上にない貴金属で加工された巨大な外宇宙航行可能な宇宙船だと判明、詳しく調べるにも数百年の研究が必要との事。何よりも地球外生命体の証明が出された事によって世界中はその話で持ちきりとなった。


俺の人生は一体なんだったのかすら分からなくなってきた。


・・・


・・・・・・


『第一回闘天使全国大会団体戦優勝者はチーム“人形使い”のアオイさんだぁあああ』


ワァアアアア


東京にあるドーム型会場を貸切った一回目となる闘天使全国大会団体戦優勝者の名前が挙げられる。

闘天使全国大会が三年目にして団体戦(5vs5)が始まった事を知り参戦してみた結果、優勝者へと登り詰めた。


流石に決勝戦は強者揃いだ、個人戦第一回優勝者のミドリ、第二回優勝者のナギサ、第一回と二回の準優勝者のシンイチロウ、準々優勝者のシーロンとクーロンの5人が相手であった。


5人ともタイプがバラバラだが決勝戦進出する腕前を持っている事に踏まえて連携力も凄まじかった。


『続いて、第一回闘天使全国大会団体戦準優勝者はチーム“聖天使達”だぁああ』


会場内が盛り上がりのピークへと達しようとしている。


『今大会が闘天使大会を初出場にも関わらずたったの一人でのし上がってきたアオイさんから一言』

「これは通過点に過ぎない。俺は次のステージに行く」


バッ


ミドリを指差し。


「君に自由を与える為に」

「え、えぇ?」


唐突に指差され困惑するミドリ。


「おかーさん!?」

「ねぇさんが?」

「ほぅ」

「結婚しているんじゃ?」


チームメンバーも驚き困惑している。


「と、君の夫が酒の場で叫んでいた」


ズルゥ


その場の出場者と司会者がズッコケル。


「俺からは以上だ。あまり周囲に惚気を振りまくなと注意しておいてくれ」

「はい・・」


ミドリは真っ赤になって答える。


『では、改めまして準優勝の聖天使達のリーダーであるナギサさんから一言』

「はいっ!」


マイクを持ち緊張しながら観客に目を向ける。


「ウチがこの闘天使に出会ったのが2年前や・・でした。最初の1年は楽しくて楽しくてしょうが無かったです。引っ込み思案だったウチに友達を与えてくれたのも闘天使のお陰でした。今年は個人戦じゃ負けましたけど団体戦でここまで来れたのは皆のお陰やと思っているんです。だから、ウチこれからも闘天使を続けて来年こそは人形使いを倒してみせるんです!」


ワァアアアア


拍手喝采が会場内に溢れる。


ヒョイッ


「なっ~!?」


俺はナギサからマイクを奪う。


「その意気込みは良いが来年の闘天使団体戦には出場する予定は無い。悪いがな」

「なっ~!!?」

「今年から闘天使を応用した技術開発をする予定なんだ。これからはソッチに動く為にコッチには顔は出せない」

「そんな、なんで」

「君のお父さん絡みとだけ言っておこう。本格的に始まったと」

「うぅ~」

「そもそも、1人で5体を同時運用している事をイカサマだと思っている連中がいる以上は出場を控えておくだけだ」

「そんな事あらへん! アオイさんは本当に5体の闘天使を操っているさかい」

「そう言ってもらえると助かるが、一々相手するのも面倒なんだ。分かるか?」

「うん。ほな、次回に持ち越しやな」

「あぁ。同時運用が実現可能だと他者が立証するまでは俺は表に出る事はない。その座を奪われないように死守してくれよ」

「来年は絶対に優勝するさかい、それでアオイさんとこのメンバーで再戦するんや!」

「待っている」


『以上で第一回闘天使全国大会団体戦は終了となります。来年の天使全国大会個人戦および団体戦をお楽しみして下さい。来場者の皆様慌てずに退館をお願いします』


こうして、闘天使全国大会は幕を閉じた。


・・・


「アオイさん、アレは無いですわ」

「少しは惚気を振りまく事を自重しろ」

「それは無理ですわ。ウチの奥さんが可愛いんは仕方が無い事ですわ」

「ったく」

「チーフは通常運転ですね」

「これで惚気が無ければ」

「良いんですけどね」


闘天使開発陣達が笑いながら話す。


「さて、次のステージに入る準備は整ったか?」

「えぇ。開発資金もたんまり集まりましたわ」


闘天使は3年前から爆発的に売れて、人気が衰える事がない。

全国大会も良い広告となって、それを見た少年少女達が親に買って貰うような流れとなっている。

それだけ闘天使は魅力的な玩具なのだ。


「試作品はもう出来上がったのか」


人が搭乗する全身パーワードスーツ。


フレームがむき出しで品位なんて無い無骨な作りをしている。


「基本的なシステムは闘天使と同じですわ」

「チャリオットを大きくした感じだな」

「えぇ。ここであの無茶が生かされましたよ」

「アレは人が乗る前提の無茶だったんですね」

「さすが、アオイさんですよ」


いや、チャリオットにもう1体の闘天使を仕込むのはロマン的思考から生まれたアイデアだ。


「まぁな」

「で、問題点は?」

「人を乗せると動かないのですわ」

「動かない?」

「機械を入れている上に人の重さが加わると重量オーバーなんですわ」

「なるほど・・・物理的な問題か」

「内包する機械の軽量化を裏で製作してますが来年まで持ち越しですわ」

「ちょっと乗ってもいいか?」

「えぇですが、まったく動きませんわ」

「そうか」


グッ


前面部分の突起物に足を掛けて、下半身からスーツに乗り込む。


ウィン


両手足が固定される。


「起動ワードは”PSE起動”ですわ」


カチャッ


闘天使と同じデバイスを頭に装着して起動する。


ウィイイイイン


各関節のモーターが動き始める。


ガガガガガガッ


途端に振動が全体に伝わり始めた。


「ななななんだ、これは」

「重量オーバー時に見られる現象ですわ」

「ぬぉおおおお」


ガガガガガカタカタカタカタ


筋力で無理やり振動を押さえ込むが全部は無理だ。


「ぐっ」


グオッ


右足を無理やり上げて前にだす。


「おぉお!」

「動いた!!」

「始めて動きましたね」

「凄い」

「無理やり動かしているに決まっているだろう。ぬぉ!?」


脳電気信号を受信したスーツが内蔵モーターを動かして更に強い一歩を踏み込む。


バキッ


強い踏み込みで床に亀裂が走った。


ブワッ


ガシャァアン


天井を突き破って上階へと飛び出てしまう。


「すまん!」

「アオイさん!その先は記者会見場ですわ」


ガシャンガシャンッ


殆ど暴走状態に近い形で狭い廊下を走り回る。


どうやら、調整ミスなのか一度入力された動きをループされてしまっている。


ガクンッ


関係者以外立ち入り禁止用のロープに両足が引っかかりバランスを崩して前のめりに倒れる。


ガシャァアン

ズサザアアア


ウィンウィンウィンウィン


上半身部分の重量で足が持ち上がり、今でも無理やり動き続けている。


バキィッ


固定された部分を破壊してスーツから脱出を試みる。


「いてて」


ウィンウィンウィン


倒れた衝撃で痛みを感じながら、スーツの背面にある緊急停止スイッチを押して動力との電気供給をカットする。


プシュウウウ


施設破壊という被害だけで済み、人的被害は俺の打撲程度で済んだ。


パシャパシャパシャっ


途端にカメラのフラッシュが視界を覆い尽くす。


「アオイさん、大丈夫ですか!」

「なんとかな」


フォークリフトに乗ったヒロユキが駆けつける。


「とにかくラボに戻りましょ」

「あぁ」


グイッ


グォンッ


「なんて力ですか、軽自動車並の重量ですよ」

「とにかく、ここは離れるぞ」


スーツをフォーク部分に乗せて、この場を去る。


第一回闘天使団体戦準優勝の記者会見中の乱入事件でパワードスーツ試作機は全国へと流れていった。


闘天使を開発した会社は何を作り始めているのかという議論がネット上で白熱されてしまった。


もちろん、機密情報の塊であるスーツを表に晒してしまい俺達は大激怒をスポンサーから貰ってしまった。


研究所を関係者以外しか立ち寄れない場所に移転する事となった。


「よりによってここかよ」

「懐かしいですなぁ、ここで私とアオイさんが出会った場所ですわ」

「元BEGがあった場所を選ぶとは」

「人の出入りが少なく、スーツ開発にうって付けの場所がここしか無かったんですわ」

「良く施設を買えたな」

「資金はタンマリありますからな」

「また、ここでか」

「夢を一緒に叶えるで」

「俺は付き合っているだけなんだがな」


タカヒコが死んでしまった以上、目的は既に変わってしまっている。

が、その目的が思いつかなくなった俺は再びここへ戻ってきたわけだ。


「次は暴走しないようにしてくれよ」

「アレは良くわからんのですわ」

「それを無くすのがアンタの仕事だ。俺は搭乗者テスターなんだからな」


ここでの立ち位置はパワードスーツのテスターだ。

唯一動かせると証明してしまった俺が最適だとか・・・本当は筋力に物を言わせてスーツを動かしてしまったとは今更言えない。


「まず、フレーム強化の再設計からだ」

「フレームを軽くすれば強度が落ちまっせ」

「そこは横の繋がりでなんとかしろ、同じロボット研究室から声は掛かっているんだろう?」

「えぇ。あのニュースで関連部署から共同開発のお誘いが来ている程ですわ」

「全体的な軽量化が必要だ。目標は500キロ以内に抑える事だな」

「500キロ!? そんな無茶な」

「無茶を通す事ができれば結果がついてくる。頑張れよ」

「とほほっ」

「チーフ頑張りましょう」

「私達がついてますから」

「今日は飲みに行きましょう」

「えぇ、頑張りましょう。私達はそうやって何度も頑張ってきたんですから」


こうして、新たなパワードスーツ開発の一歩を踏み出した。


・・・


「まだ、重いな」

「これでも改良に改良を重ねて軽量化してるんですわ」


スーツの起動実験で俺が感想を述べる。


まさか半年で500キロ以内に収めるとは思っても見なかったが、体の不自由な人を載せる前提で作られた物だ重ければ重いほど体への負荷が絶大だ。


「下半身の部分から攻めましょ」

「そうだな・・・奥さんを優先に考えたろ?」

「それが私の夢ですからね」

「まぁ、いい。路線を下半身麻痺前提で変えるか」

「上半身の部分を考えないなら軽量化も捗りますわ」


足腰部分をカバーするだけなら数十キロしか要らないらしい。

体全体カバーだとやはり重量が増えてしまうという事だ。


たったの数ヶ月で試作品を完成させて始動テストの段階に映った。


両足と腰部分だけをカバーしただけの歩行ロボットだ。


カチャッ


デバイスを装着し同期する。


ウィンッ


軽い足取りでロボットが歩き始める。


「これは楽だな」

「問題は動力源ですわ、たったの4時間しかバッテリーが持ちませんわ。バランスも悪く前傾歩行ですし」


連続稼働時間に耐えうるバッテリーが一番の重量があり、腰部分に装着した為前傾姿勢での歩行となってしまっている。


「あと、腰から上は人で支えるから疲れそうだな」

「それもあると思いますわ」


前傾という事は上半身が通常の数倍疲れる事になる。


「課題も見つかったですし、今日はパーっと飲みますか」

「お前はいつもそうだな」

「アオイさんだけですよ、私に付き合ってくれるのは」

「たまには早く帰ってやれよ」

「ベロンベロンに酔った私を介抱するのが楽しいって言ってましたわ」

「今日は、帰れ・・・いいな?」

「うっ、分かりましたわ」


他の不具合が無いか、走る、跳ぶ、高所からの着地などの実験を経て動作テストを終わらせる。


・・・


「う~ん」

「どうした?」

「この介護歩行ロボットって無骨過ぎません?」


闘天使開発時の外見担当のミミンが悩んでいた。


「まぁ、ロボットだしな」

「そうじゃないんです、コレは女性や子供に高齢者にも対応する物なんですよ! 内部だけじゃなく外見にも力をいれて欲しいんです」

「と、言ってもな・・・」


俺は男だし、美的センスは皆無だ。

俺専用の闘天使達のモデルは転生神の作り出した自律型魔導人形だった訳だし。


「もっと、優美でかつ繊細な線が欲しいんです。こんな真っ直ぐな脚なんて唯の棒ですよ」

「なら、ちょっと脚を見せろ」

「なっ!? セクハラですよ」

「実際に見ないと分からないだろ?」

「私の脚なんか見ても意味ないですよ。雑誌に写っているモデルの脚とか見てくださいよ」

「モデルの脚なんか見ても意味ないだろ? 一般的な女性の脚を模した歩行ロボットが良いんだろう?」

「そうですけど・・・分かりました」


ミミンが顔を真っ赤にして靴を脱ぎ始める。


「冗談だ、脚についてはお前のセンスに任せる。フィギュア製作で散々作ったろ」

「も~、も~」


ミミンはポカポカと俺の分厚い胸板を叩く。


「女性用、子供用のモデルは任せた」


2年の開発期間を経て車椅子生活を送っている患者を補助する目的で作られた歩行装置が完成を遂げた。


何度もテストを繰り返し、耐久性、重量、デザイン共に妥協せずに完成を遂げた。


種類は高齢者、男性的、女性的、子供の4種類の歩行器具だ。


闘天使のシステムを応用で本来なら脚に伝わる電気信号を受信し、ロボットが代わりに代理歩行をする医療器具として発表がされた。


もちろん、車椅子生活から抜け出せると知った全国の患者たちは購入の予約が殺到した。


生産数を超えて間に合わない状態となり数年待ちが余儀なくされた。


次第に車椅子生活から抜け出せた人々は制作会社に感謝の言葉を送った。


それは日本という国を超えて全世界へと広がっていく。


「ホンマですか。はい、はい! 分かりました」

「どうした?」

「パワードスーツの開発についてアッチの国から要請が来たんですわ」

「やはり来たか」

「なんや、浮ばれませんな?」

「介護歩行ロボットは最大の難点がある」

「活動時間ですね」

「あぁ、結局は4時間の活動限界がある。まぁ、予備のバッテリーと交換すれば8時間は耐えてくれる代物にはなった・・・だが、パワードスーツは違う」

「24時間稼働はできる設計ですな。それが何や?」

「パワードスーツも全身麻痺患者用として開発は出来るだろう・・・が、その分リスクもある。良い製品には軍事利用されてしまう可能性だ」

「え?」

「闘天使も一時期は軍事利用されかけた。あえて難点を残したから止められたがな」

「特設ステージ内での活動領域ですな」

「あぁ、遠くへと行けるような事があれば無人ドローンと同じく闘天使を敵陣の偵察として送り込める。企業相手であれば、あの小ささだダクトに侵入しデータを盗み出す事だってできる」

「いやいや、そんな事の為に作っている訳じゃないんや」

「使い手次第で悪用される事も危惧しないとな。包丁一本で料理にも化けるが殺人道具にも変わるもんだ」

「だからパワードスーツの開発は慎重にやらなければならない。コレがベースに戦争の道具に化けるぞ」

「私は自由な体を取り戻して欲しいと思って!」

「世界中の考えがプラスなら良いんだがな・・・スーツの制作を断念したって誰も文句は言わない」

「しかしなぁ・・・」

「既にVR技術の一部は戦争道具の一部として組み込まれてしまっているのも事実だ」

「え?」

「VR技術が転用された無人飛行機だ。アレを操る最に360度見渡せるカメラ越しで操作してボタン一つで搭載されたミサイルが発射する。強力なセキュリティロックでVR技術を保護していたが、流石に何年も保つ訳がなかった」

「それじゃアオイさんは」

「俺と同じ道へは来ないほうがいい。心をやられるぞ?」

「そんな」

「既に何人かは無人飛行機で命を散らしてしまった。開発とはそういう物だ、便利で使い勝手の良い道具は悪用されれば最悪に発展する」

「アオイさんが悪いわけじゃ」

「作ったものの責任でもある。世に出さなければ、無人飛行機なんかに殺される兵士は居なかったのかもな」

「大丈夫なんで?」

「さぁな。スーツの開発をする決断は任せた。俺はお前の判断に従おう」


ザッ


一度、研究室を出て自室のテレビをつける。


『今年で五回目となりました闘天使全国大会です。第三回闘天使全国大会団体戦優勝者はチーム“聖天使達”です。二連覇達成の感想をどうぞ』


そこには歩行ロボットを装着し立っているヒロユキの妻であるミドリがマイクを手に取っている姿が写っていた。


「今年も個人戦ならびに団体戦で良い成績を収める事が出来ました。今年こそはリベンジをする事を目標でしたが出来ず残念です。でも、今年も様々な人たちが参戦してくれたので楽しく戦えました。有難うございます」


『近々聖天使達を解散するという噂があると聞いていますが本当の事でしょうか?』

「はい、この場を借りて私達は一度解散をする事を宣言いたします。自惚れかもしれませんが個人戦決勝の常連である私達が固まってしまうのはバランスが取れているとは限りません。来年は互いのチームを作って戦おうと思います」

『なるほど、では新たに作り出したチームが五チームとして参戦して頂けるのですね』

「はい。闘天使をこよなく愛する私達は永遠に不滅です」


ワァアアアアアア


大歓声がドーム内に広がる。


ピッ


テレビを消してキッチンでコーヒーを淹れる。


「たまには散歩でもするか」


俺は夕方の街へと出て行く。

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