76話「地球帰還」
「方舟、離陸開始します。火器管制システム起動。シールドジェネレーター起動.....成功。シールド70%展開。航行システム起動。主機、補機管制システム正常を確認。リアクター起動。出力上昇70...80...90%通信システム正常。通常、高速共に使える状況です。全システムオールクリア。推進出力上昇.....90%。大気圏脱出まで残り3分」
「加速荷電粒子砲を起動」
「エネルギーチャージ量20%・・・30%・・・40%」
「目標をエンシェントトーラスに標準するのだ」
「ロックしました。加速荷電粒子砲100%まで到達」
「撃て!」
ドシュゥウウウ
ピンク色を帯びた光線が発射される。
ギィイイイイイ
レーザーが島の中央を陣取っていたエンシェントトーラスの甲羅に突き刺さる。
ギャアォオオオオオン
宇宙戦艦の装甲すら易々と貫通する最大威力を誇る加速荷電粒子砲の前では防げない。
ドスゥウウン
目の光を失ったエンシェントトーラスは頭を地面に打ち付け動かなくなった。
「エンシェントトーラス、沈黙を確認。大気圏を脱出します」
ゴォオオオオオ
俺達が数十年過ごした島が小さくなっていき宇宙空間へと出て行く。
「青いな」
「海の割合が多いですからね」
3割が陸で7割が海だそうだ・・・
幸いながら人間が住めるような惑星環境でよかった。
「目標座標をロック」
「ハイパージャンプドライブ起動せよ」
「ハイパージャンプドライブ起動まで3・・2・・1。ジャンプします」
周囲の映像が流れていく。
ビィービィービィー
唐突にエマージェンシー音が鳴り始めた。
「何事であるか!?」
「唐突にブラックホールを検知!飲み込まれました」
「なっ!?」
「前回に比べて重力はあまり強くありません」
「耐えられるのであるか?」
「このアダマント製の艦体を持つ方舟なら問題ありません。外装は殆ど潰れますが」
「あちゃ~、加速荷電粒子砲含めた武装が全滅していくよ」
艦体表上にある武装が超重力に耐えられず潰れていく。
「ブラックホール出ます」
フッ
暗闇から明るい宇宙空間へと出てくる。
「周囲を探索します。射撃艦船用の高周波レーダー発射、続いて近距離高精度スキャンをします。レーダーに異常はありません。人工物等も検知せず。全システムオールグリーン。居住区エリア、機関エリア、特別エリア、医務室、格納庫等に被害なし。艦体が1%程縮小しました。艦外武装が全て破損しました」
マザーから次々に報告が上がってくる。
「星の位置から推測するに目的地より若干針路がズレただけに留まりました。太陽系までの距離約2光年先にあります。これより対消滅反応炉A型2基を停止し対消滅反応炉F型を起動させます」
「許可するのである」
「対消滅反応炉A型の停止を確認。対消滅反応炉F型の起動を確認。地球と思われる惑星まで約1ヶ月少々です」
「ふぅ」
「ご苦労だったな」
「指揮するのは大変であるからな」
「では、俺は説明に行く」
「こちらは任された」
ブリッジを出て居住区へと向かう。
この戦艦の居住区は人が住むように考慮された居住エリア、食事を一気に行えるように1000人規模が入れる食堂エリア、食料を自動生産する自給自足エリア、大量の食料を一気に調理する調理工場、今は何もない娯楽エリア等で巨大なエリアで分けてある。
館内放送で助け出した日本人達を食堂へと招集する。
「欠席者は居ないようだな」
「アオイさん、ここは一体なんなのだ?」
代表した前田機長から質問してくる。
「1ヶ月前にも言っただろうが俺は地球人ではないと」
「冗談ではなかったのか」
「冗談じゃないぞ。現状を説明しよう」
ピッ
3Dホログラムが1つの球体を表示する。
「これは俺達が漂流していた惑星だ。お前たちの知る地球とは違った形であろう?」
「た、たしかに」
「救助をいくら待っていても来ないわけだな。この惑星には文明が発展していないのだから」
「何てことだ・・・」
「話を戻そう。まず、俺達は地球人ではない事の説明だな。この惑星がある場所は天の川銀河内である事は確認済みだ」
「天の川銀河でござるか?地球もその銀河にあると記憶しているでござるぞ」
「あぁ。地球も同じく天の川銀河に所属している。仲間達が俺たちの捜索中に地球らしき太陽系を見つけていたらしくそちらに向かっている途中だ」
ワァ
周囲の人々から明るい表情が伺える。
「で、この艦内のクルー達は何処出身かというと天の川銀河から239万光年離れているアンドロメダ銀河出身者で構成されている」
「アンドロメダ銀河でござるか!?ものすごく遠いと記憶しているでござる」
「ここまで来るのに50年掛かったからな」
「ん?アオイさんは20代だと思っているのだが?」
「肉体年齢はな。実年齢75歳だ」
!!?
俺の発言に周囲に衝撃が走った。
「不老でござるか!?」
「不老という訳じゃない。種族がヒューマンの上位種ハイヒューマンに進化した影響だ。推定で150歳まで生きられる計算だそうだ」
「ここにきてファンタジー用語キタでござるな!!」
「話を戻すが、何故、我々は天の川銀河を目指すかだな。俺を含めて大体は前世の記憶を持つ、元日本人だからだ。中には地球から直接勇者召喚で拉致られた被害者もいる」
「そ、そそそ、れは、真でござるか!勇者召喚が本当にあるのでござるか!!」
そこに食いつくのか・・・オタクなら当然の反応なのだろう。
「アンドロメダでは魔法も勇者も魔王もいる惑星がたくさん存在する」
「うひょぉおお!これは世紀の大発見でござるぞ」
「落ち着け」
「あぅ!山田師匠!!何をするでござるか!!」
「みんなお前にドン引きだ」
「これが興奮していられないでござるぞ」
「だから落ち着けって。話について行けなくなっているんだからよ」
「まぁ、無理もない。こんな荒唐無稽な話は日本では考えられないからな」
「俺からも質問だ。元日本人だとしたら何年生まれなんだ?」
「2076年生まれだ」
「2076年!?50年も未来じゃないか」
「他の連中の中には第二次世界大戦や2020年前後の前世を持つ者がいるんだ。年代関係なく転生ないし転移している」
「未来では何が起こるんだ?」
「それは知らない方がいいだろう。人生が面白くなるしな」
「そうか」
「大まかな説明は以上だ。何か質問はあるか?」
「地球に戻ろうとしている目的は分かった・・・我々は2021年の時代のものだが地球は一体何年頃なのだろうか?」
「それは解からない。アンドロメダ銀河では人類発祥の地は地球だと伝説が残っている程だ・・・俺が生きていた時代よりもっと未来の地球か滅亡した地球の可能性もある」
「・・・そうか」
「もし、地球が滅亡していた場合はどうなるんだ?」
「住めないようならば先ほどの惑星に引き返す。この戦艦もガタが来ていて長い航行は出来なくなった」
「そうか」
「他に質問はあるか?」
「ブリッジとか見せてもらえないでござるか?」
「機密事項の塊だ。見せられるわけ無いだろう」
「むぎぎっ」
「諦めろ。俺達は救助された側だ」
「しかし、拙者等は宇宙すら見せてもらっていないでござるぞ」
「そとの様子が知りたいのにか?」
「本当にこの艦が動いているのかも怪しいでござるよ」
「宇宙空間はそんなに面白くないんだがな」
ピッ
モニターで外の宇宙空間を映してやる。
ォオオオオ
暗闇空間に浮かぶ様々な色の星々に集まった人たちは感動する。
「これが宇宙でござるか!素晴らしい物でござるよ」
「あぁ、なんて綺麗なんだ」
「ここに来れば外の様子を見れる様にしておく。何かあれば再び集まってくれ」
外の様子に感動している人たちを置いて食堂を出て行く。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「そろそろか」
冥王星・海王星・天王星・土星・木星・火星と通り過ぎて地球へと近づいている事が分かる。
ここが太陽系だと確信したのが土星と木星を観測した辺りだ・・・両方とも教科書でみたままの姿かたちをしている。
「未だに人工物を検知できません」
マザーからスキャン情報が逐一報告される。
もし地球の文明が発展し容易に外宇宙へ進出できる様になっていれば太陽系に入ったあたりから反応がありそうな物だが未だに検知されていない・・・
さすがに火星探索無人船も出ていると記憶しているから有る筈だと思っていたが火星にはそのような痕跡が見当たらなかった。
「地球を補則。メインモニターに映します」
ウィン
青色の球体が太陽光を反射してモニターに映し出される。
「あれはユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸・・・日本もちゃんと確認できたな。間違いなく地球だ」
ォオオオオオ!
元地球人である皆が歓声を上げる。
「アオイ殿、長かった道のりであるな」
「あぁ。みんなの協力があったからな」
「アレが皆の故郷なんだね」
「長かったわね」
「そうですね」
「ようやっと到着したのじゃな」
「そうですねぇ~」
「勇者召喚されて十数年も掛かりましたね」
「えぇ。これが私達の故郷よ」
「凄いキレ~」
「アレがパパが居た星っすよ~」
「むぅ」
皆が魂の故郷である地球を見て涙を流す。
俺が転生してから63年の月日が経ち、ようやく地球へと帰って来れた・・・
この地球がどの時代かは分からないが長かったな・・・
ギュッ
リリィが俺の手を握りニコリと笑う。
「帰ろうか」
応!
こうして長かった俺たちの旅は幕を閉じる。
今後の展開は地球に降り立った後にでも決めよう・・・
「方舟、降下開始!」
「地球へ降下開始致します」
ーーーーーーーーーーENDーーーーーーーーーーーーー
皆様、ここまでお付き合いありがとうございました。
それでは3ヶ月間という短い投稿でしたがありがとうございました。
ジジッ
誰もいないブリッジに薄らぼんやりとした人影が浮かぶ。
「誰です?」
その存在に気がついたマザーが機械音声を上げる。
『久しぶりだね、ペンドラゴン・・・いや、今はマザーと呼ばれているんだったっけ?』
「お久しぶりです・・・XXX様」
『そう、畏まらなくてもいいよ。すこし目を離していたら”今回も”失敗に終わっちゃったからね』
「やはりXXX様のお力を持ってしてもですか?」
『本気になれば何時でもクリアはできるよ』
「申し訳」
『いいよ、気にしないし。何時もの事さ・・・でも、報告はちゃんとするよ』
「では・・・35年前に遡りますね」
・・・
・・・・・・
『なるほど、彼の運命は相変わらず強固だね。これで通算××,×××,×××回の失敗って訳かぁ』
「XXX様はマスターをどうするおつもりで?」
『うん?今回の彼にはもう興味ないよ?・・・そうだね、あの子はなんで彼に惚れたんだろうね?足を引っ張るような設定を施していたと思うんだけどね』
「機械である私にはお答えできかねます。やはり心があるとしか言い様がありません」
『所詮はホムンクルスって事か・・・なんだか存在進化までしているし』
「そもそもXXX様が私達にマスターを地球にお連れするという設定を付けなければ宜しかったのでは?」
『ふふっ、これは最低条件だよ。あの生意気な運命神を見返してやる為のね・・・また笑われるけどねぇ』
「では、この先は例のプランで話を進めても宜しいのでしょうか?」
『もちろん、失敗時の為のプランをソッチで進めていいよ。僕は次の彼の魂を転移させるように用意しなくちゃならないからねぇ』
「分かりました。これで最後のコンタクトになりますか?」
『転移させる時が最後になるよ。その時までは君たちは働いてもらうよ』
「畏まりました」
『またね』
フッ
ブリッジに人影が消えて静粛が戻ってくる。
「やはり、五次元世界の考え方は分かりませんね・・・」
ピッ
マザーも省エネモードに切り替える。
お疲れ様でした。
以上で「運命に導かれし白銀の糸 -《最弱だった糸使い》」は終了となります。
次回作は模索中ですので、もし興味があればお待ちください。




