75話「無人島生活⑩-移転」
「どんどん運んできてくれ」
ベチャッベチャッ
俺達が湖へと移住をして最初に行ったのは住居作りだ。
その為には冬でも暖かさを失わない泥粘土を用いた物だ。
冬まで残り数ヶ月を鑑みると土器レンガ製の住居は間に合わない。
仕方なく他の住居と同じで木で骨組みを立てて粘り気のある泥粘土で壁を作っていく事にした。
泥粘土を集めるのに湖のメンバーが協力を申し出て運んできてもらっている。
ペタペタペタ
薄すぎず、厚すぎないように泥粘土を壁に貼り付けて行く。
パチパチパチ
住居内で焚き火を行い、泥の水分をいち早く飛ばして凝固を促す。
バサァアア
別で作り出している焚き火から高熱に熱せられた木炭を壁にふりかけて内と外から温めていく。
「この様なやり方があったのか・・・」
前田機長が関心している。
「泥粘土の難点はその重だからな、早く水分を飛ばすにはこの方が早い」
窯で焼き上げるより火の温度が低くても、土器レンガに比べて薄い壁なら水分を飛ばすには十分である。
水分が抜けることによって気泡が泥内部に出来て熱を逃がさない構造ができる。
「まぁ、こんなもんだろ」
皆の協力もあり1日で4人家族が寝泊りするには十分過ぎる住居ができあがった。
「中は蒸し暑いわ」
「そうなのだよ・・・」
リリィが汗を大量の流し住居から出てくる。
熱を逃がさない住居という事は現在の蒸し暑い気温や室温は中に留まる事になる。
しかし窓をつけると冬場は逆に熱を逃がす構造を作ってしまう為密閉された住居が作り出すのは仕方がない事なのだ。
「ログハウスを作りにしても人手も材料も少ない」
冬場で一番消費するのは日々快適に過ごす為の薪だ。
この1年で湖周辺の木々が倒され薪として消費されていて見晴らしが良くなっていたのである。
住居作りが完成し、次に行動をするのは生活水準の構造である
鉄製は1年前に俺が用意してやった斧、槍、ナイフのみ。
それ以外は石を加工したものらしい。
よくそれでボア狩りが出来たのは不思議だが山田のお陰であると前田機長から説明された。
南に墜落した旅客機の残骸に来る。
「錆びているか」
年中潮風にあたり続けた機体は塗装が剥がれ内側の金属部分は酸化による錆が酷くなっていた。
「無いよりマシな程度か」
翼の上に登り、前回と同じく鉄板を引き剥がす。
バキバキバキ
「錆が激しすぎる」
尾翼斧を振るうまでもなく鋼鉄製の翼は錆の進行が激しく簡単に剥がれる。
「これは使えないな」
満遍なく錆ている機体を諦める。
「どうでしたかな?」
「錆が激しくて使い物にならん」
「でしょうな」
「まずは炉の制作からだ。また皆に協力してもらわないとな」
「炉ですかな?」
「鉄を精製する炉を作り出す。こっちに来るときに持ってきた鉄製道具は皆向こうで鉄鉱石から作り出してきた」
「10年近くも漂流すると鉄をも作り出せるのか?」
「知識がなければ作り出せん。まずは泥粘土レンガ作りだ」
「泥粘土運びは腰に来ますからな」
「また皆を集めてくれ」
「わかった」
前田機長の声で狩りに出かけている者以外に鉄製品を作り出す為の炉を作る説明をする。
再び泥粘土運びの話をすると嫌そうな顔をするが生活水準向上の為だと説得する。
木枠で次々にレンガの形を作り上げて小さな竈を作り、そこから本格的に土器レンガの精製である。
泥粘土の他に土や砂を混ぜて強度を上げる。
「なぜ、土や砂を混ぜるのですかな?」
「土や砂には微量なガラス結晶が強くする」
「なるほど」
二度焼きの工程を経て土器レンガを作り出し製鉄炉へと着手する。
「完成だ」
一度目のノウハウや人が使えた事により早く完成を迎えた。
「問題は燃料だが」
狩りをしつつ北の山に調査をしていたら石炭の鉱脈が出ている事に気付いたからこそ炉作りに入ったのだ。
秋口に製鉄炉を完成した。
火をくべて空焚きをして内部の水分を飛ばす。
その頃には土器で食器作りが盛んに行われていた。
老若男女問わず、暇な時間があるときは粘土で皿や椀を作り出していた。
『どーよ、ロクロを作り出したんだぜ』
『すげぇ!』
『これで回しながら作れば綺麗な皿ができる寸法よ』
男衆から土器作りに必要なロクロを開発されていた。
『だが、問題があって上手く回らないんだ』
「少し見せてみろ」
空焚き中は暇で男衆に混じる。
キュキュキュッ
木の板に棒を組み合わせた簡単な仕組みだが木と木が擦れて摩擦力で止まりやすい構造をしていた。
「志野さん、ナタネ油はどうなっている?」
通りかかった志野に話かける。
前田機長を支えている志野CAだ。
「ナタネ油の増産は未だに難儀していますよ」
「少し分けてくれないか?」
「えぇ、構いませんが?」
『なるほど、油で滑りをよくするんだな!』
『さすが、アオイさんだ!!』
『俺達のボスなだけあるな』
「ボスは前田機長じゃなかったのか?」
『ハハハッ、前田機長は参謀って感じだろ?』
『力はアオイさんの方が上だしな』
「直ぐに取ってきます」
志野がむくれて去っていった。
『なんで怒ってんだ?』
『知らね?』
「前田機長に頼っていた奴らがポッと出の奴を支持するからだ」
『でもよ』
『俺達より大先輩なアオイさんが頼りにするなってのが無理な話だろ?』
「前田機長にも頼れよ」
『でもな』
『最初頼りすぎて機長も疲れているだろうしな。これからは俺達若い者ががガンガン動かないとなと思っていたわけだぜ?』
「なるほどな」
40過ぎの前田機長は1年間、遭難者である若者たちを引っ張り続けて肉体的にも精神的にもボロボロであった。
それを見て若者たちも自ら動き前田機長の負担を減らそうとしているのだ・・・
俺、この中で一番の年上なんだけどな・・・
同じくリリィを中心に女衆が纏まりつつある。
やはり10年もサバイバル生活を送っているという実績が皆が頼ってしまう要因なんだろうな。
「たまには相談でもしてみろよ」
『あぁ』
『分からなくなったら相談程度ならしてみる』
こうして土器作りは加速度的に上達していった。
バランスが悪く机に置くだけでガタガタする皿はロクロの登場で殆ど水平になり皿として機能しだす。
・・・
・・・・・・
ギィイイガガガアア
唐突に通信機が動きを見せた。
《マスター。お早うございます》
8年以上も動かなかった通信機からリィンカーンの電子音声が聞こえてきた。
《省エネモードで待ち続けて10年と数ヶ月、ようやく方舟との通信に成功しました。ただいま転送します》
「あぁ、送ってくれ」
ピィイイイガガガッ
《あ、アオイ!やっと繋がった!!》
久しぶりに聞く声だ。
「スターニア?」
《なんでボケるの。私だよキャメリア》
「悪い、悪い」
《やっとリィンカーンから送られてくる微弱な電波を追って来たんだ。いま通信領域内に入れたから試してみたんだけど通信機も生きているみたいだね》
「とっくの昔に機能しなくなったと思ったがな・・・さすがリウイ作の通信機だ」
《あたぼーよ。たかが10年で壊れちまうヤワな作りはしてねぇぞ》
通信途中からリウイが話しかけてくる。
《私達も忘れては困るのですよぉ》
《アオイさん、お久しぶりです。元気そうでなによりですね》
《アオイ殿、久しぶりであるな》
《アオイさん、ご無沙汰しています》
《アオイさん、ちっす。元気そうで良かったっすよ》
《アオイさん。元気ですか?》
あぁ、久しぶりに聞こえてくる仲間達の声だ。
「皆元気そうね」
《あ、リリィちゃんだ。元気してた~》
「えぇ。そっちも問題なさそうね」
《あれ?あんまりトゲトゲしくないよね?》
「私を怒らせたいの?」
《なんだか、この10年間で丸くなったというか》
「お母さん、この人たちって誰?」
《《《《《《《お母さん!?》》》》》》》》
おぅ、総突っ込みだな。
《え?今の声、リリィちゃんの子供!?》
《相手は誰ですか!?》
《一人しかいねぇだろう!》
《ハハハッ、これはめでたいのであるな》
《おめでとう御座います》
《こりゃ盛大に祝わないとっすね》
《これから準備が大変になるわね》
向こうが騒がしくなり始める。
「話の途中で悪いがコッチには何時頃これるんだ?」
《アオイ、後でじっくり聞くからね。リィンカーンの位置は特定できているから1ヶ月程で着くと思うよ》
「結構離れているのな」
《10年間探し回ったからコッチもボロボロなんだ。リアクターも寿命に近いよ》
「そんなにか?」
《この銀河には何も無いんだ。コロニーもね・・・ドックが無いから全然整備が出来ないままで運航していたから》
「なるほど」
《とにかく、通信もコレで終わりにするね。また1ヵ月後に連絡するよ》
「それとだな」
俺は現状をかいつまんで説明する。
《わかったよ。35人分の受け入れ態勢を整えておくね》
「頼んだ」
ピッ
通信が終わる。
「やっとか」
「そうね」
「お母さん?」
「リンにも話しておかないといけないわね」
「俺は連中にも話をしておく」
「頼んだわ」
住居を出て前田機長に皆を集めるように頼み、俺は西の海岸線に住む山田グループにも湖に集まってもらった。
老若男女、日本人が40名程集まった。
「皆、作業を止めて集まってくれた事を感謝する。アオイさんから重大な発表があると言うため集まってもらった。山田くん達もありがとう」
「それで、重大発表とは?」
代表として山田が質問してくる。
「アオイさん」
「あぁ。皆には俺達10年以上前から俺達が漂流したことは説明した。今朝方、その救援の連絡がついた」
ワッ
皆の表情が明るくなる。
「ここで俺たちの正体について皆の勘違いを拭いたい」
「正体だと?」
「君たちは勘違いしていると思うが、俺や妻たちは地球人ではない」
・・・
静粛が周囲を包む。
プッ
ハハハハッ
だが、誰からが吹き出して笑いが周囲を包む。
「アオイさん達が地球人ではない・・・証拠とは?」
前田機長が含み笑いをしつつ質問をする。
「俺の本気を見せたほうがいいだろう」
クルッ
踵を返して背後の湖に向く。
スッ
バシャアアアアアアアアアアアアアア
俺は全速力で湖の上を走る。
当然、人間が水より比重が重く沈む。
だが沈む前に左足を出して踏み込み、左足が沈む前に右足を踏み込めば沈まず前進する事は可能である。
当然普通の人間がこれを素で行うには最大筋力の15倍出さなければ不可能。
「フッ」
バシャァアアア
水面を蹴り、垂直跳び10mを超える。
これも人間では到達できない領域である。
「はっ!」
ドゴォオオオオオオオン
着地と同時に右腕で地面を全力で殴り、土を吹き飛ばして10m程のクレーターを作り出す。
ピッ
地面を殴った時に流血するが、自然治癒力が回復し始める。
スタスタスタッ
「これが地球人でない証拠だ」
『うぉおおお!』
『すげええええ』
は?
『忍者みてぇえ』
『何も仕掛けが無かったよね!』
『こんな場所にアレを実現させる仕掛けを作れる分けないわよ』
予想外に皆が歓声を上げている。
「待て待て、落ち着いて理解しろ。おかしいだろ?」
「いやぁ、アオイ殿の力が凄まじいことは理解しましたぞ」
「さすがアオイさんだな。薄々、俺達と違うとは思っていたがアレ程とは」
ダメだ、こいつ等この危機的状況で冷静な判断が欠けているぞ。
パンッ
「皆、静かに聞いてくれ」
手を鳴らし、注目を集める。
さすが日本人というべきか聞く耳は持ってくれるようで静かになる。
この生活を続けていればそうなるようだな。
「地球人でない証拠はコレから現れる。俺達を救出してくれる連中は」
ビッ
空を指差す。
「宇宙からやってくる。全長2kmにもなる宇宙航行可能な戦艦だ」
ハハハッ
・・・一度、こうなってしまえば理解して貰えそうにないな。
詳しい話は再理解して貰ったあとでいいか・・・
軽く説明をしてこの日は解散し、約束の1ヶ月後を待つことにする。
ギィイイガガガアア
《マスター。再び通信が来ました。私は一足先に回収されます》
「あぁ。ご苦労だったな」
『あ、アオイ。やっと着いたよ。いま降下するから待っていて』
「リィカーンの回収地点とは真逆の海岸は分かるか?」
『えぇっと・・・アレ?何か墜落してない?』
『アレって旅客機?』
『そうであるな』
『だから35人の受け入れ準備だったのね』
『そっちに降りればいいの?』
「あぁ、皆を集めるか」
ゴォオオオオ
快晴の空から轟音が振り注ぎ作業中の者や屋内にいた者達が空を仰ぐ。
時間が経つにつれて全長2km、全高50m、横幅40mにもなる宇宙戦艦方舟がその姿をハッキリと現して南の海岸線へと降りていく。
ドバシャァアアン
無論、海に着水すれば津波が起こり墜落した旅客機を巻き込む。
周囲の人は唖然として見ている。
「アオイさん。アレがもしかして」
「あぁ。迎えだ」
ザッザッ
南の海岸線へと歩きだし、後ろにフラフラとした足取りで前田機長が着いていく。
思考停止した人間の行動とは面白いもので集団心理が働いて全員が南の海岸線へと歩いていく。
ザバァンザバァン
津波の影響は収まっており、旅客機の残骸は濡れた砂浜に完全に打ち上げられていた。
キュイキュイッ
ヒュンヒュンヒュンッ
回収ドローンが幾百という数が方舟から発射されて周囲を確認している。
ピッ
「聞こえるか?」
《聞こえるよ。凄い格好しているね?》
「10年以上もここに居ればな」
《その人たちが保護対象?》
「あぁ」
《生存可能な惑星があってコッチも助かったよ。今、補給船を出すね》
ゴオオオォン
方舟の格納庫ハッチが開き、10m程の補給船が出てきた。
海岸線に着陸すると中からハルヒコ、アキヒサ、ウミの三人が出てきた。
日本人のままである彼等を迎えに寄越して遭難者である彼等を安心させる為であろう。
「アオイさん、お久しぶりですね」
「あぁ。久しぶりだな」
10年振りの再会に俺はハルヒコとアキヒサと抱擁を交わす。
リリィはウミと抱擁していた。
「彼等が保護対象ですね?」
「あぁ。やはり、ここは地球ではなかったようだな?」
「残念ながら、ここは地球に似た別の惑星です。太陽系と似た星系なのは確かですね」
「恐竜がいるしな」
「他の大陸には様々な恐竜を観測しています。この島にも居ますね」
「それに左腕をやられた」
「・・・直ぐに医療ポッドに行きましょう。彼等は僕達が案内します」
「今更、この左腕を治療してもな」
「医療技術が足りないので再生までは出来ませんが義手であれば出来ますよ」
「そうか」
「先に行ってらっしゃい」
「あぁ」
ガッ
リリィと別れて俺は回収ドローンに掴まり、方舟へと一足先に向かう。
挨拶もそこそこに医療ポッドに入り、左腕の治療を始める。
僅か、1時間で治療が完了しリウイ謹製の義手が取り付けられた。
ウィンウィン
機械音が左腕から鳴るが神経と繋がった義手が思い通りに動く。
何処の錬金術師様だ?
ウィイン
「皆、久しぶりだな」
ブリッジの中に入るとワイワイと騒がしくなっていた。
「あ、アオイ。お帰り。リンちゃん可愛いねぇ」
リンを抱いたキャメリアが返事をする。
「いやはや、女性陣がリン殿を見てこの様な状況に」
「ガハハっ、リリィの昔だった頃にそっくりじゃからのぉ」
「実際に可愛いですからね」
「そうっすねぇ」
「どうなってるんだ?」
男性陣が隅に追いやられている。
リリィがリンとツヨシをつれてブリッジにやってきたら女性陣が騒ぎ出したと報告を受ける。
「そうか。で、そっちの2人は誰だ?」
「ハハハ、この子は僕とウミの子供でソラって言います」
「お前たち結婚したのか?」
「まぁ、いろいろとありましてね」
「アオイさん初めまして。ソラって言います」
「あ、あぁ。よろしくな」
「俺の娘も見て欲しいっすよ。ランって名付けたっす」
「この特徴・・・キャメリアとの子か?」
獣耳が頭頂部に生えているしな。
「いやぁ、意気投合しちゃったすよ」
「むすっ」
アキヒサとキャメリアも結婚したようだ。
「おかーさん・・・」
「大丈夫っすよ。その内収まるっすから」
「取られない?」
「ランはいい子だから大丈夫っすよ」
「我慢する」
どうやらキャメリアがリンを可愛がっていて怒っている感じだ。
パンッ
「とりあえず程々にして互いの進捗を聞くとしようか」
この10年間、何が起こったのかが解からないのだ。
「その説明は私が致しましょう」
俺の背後、頭上から聴き慣れた機械音声が流れた。
バッ
振り返ると巨大な球体が光を放っていた。
「お久しぶりです、マイマスター」
「お前は・・・」
「お忘れですか・・・無理もないと思いますが悲しいですね」
「リウイ・・・」
「あぁ。NALLシリーズだぜ。全員分の記録をサルベージして1つに統合しちまったらこうなった。俺達はマザーって呼んでいる」
「NALLシリーズ統合体マザーです。全システムは私が管理下に置いております」
「そうか。改めてよろしくな」
「よろしくお願いします。では議題はこの十数年間についてお話しましょうか」
マザーはNALLシリーズ5機分のデータから成り立つシステムで方舟を制御しているAIだと最初に説明された。
俺とリリィがこの惑星に漂流してからコチラ側は大慌てで探し回ったが痕跡すら見つからず、さまよい続けたそうだ。
リウイがNALLシリーズの記録を統合したマザーを作りだしてから航行の大部分を任せて捜索に力を入れるが俺たちの居所は掴めず。
その間にハルヒコとウミが結婚しソラが産まれた。更にアキヒサとキャメリアも結婚してランが産まれた。
銀河をアチコチと探し回っていた時に微弱ながらリィンカーンの救難信号を数十光年先でキャッチして俺たちのいる場所を発見したそうだ。
今度は俺達の番でリィンカーン毎この惑星にジャンプし、その衝撃でリィンカーンが破損して海に墜落。
そこからは俺達2人のサバイバル生活が始まり、今に至る話をする。
「いやぁ、聞いてるこっちが恥ずかしくなるねぇ」
「付き合ってもいない男女がぁ冬の寒さを抱き合って過ごすとか凄いですねぇ~」
「危機的状況を自身の身体を犠牲にしてまで守ってくれるナイト様かぁ」
「いい人貰ったわね」
「恥ずかしいわ」
「濃厚な十数年じゃわい。よもや石器時代を体験しているとはのぉ」
「土器や鉄器を作り出すのも中々ですな」
「さすがアオイさんですね。僕でも何もない所では生き残れるかどうかの話ですよ」
「アオイさん、2人も子供いるっすね。出産時って滅茶苦茶大変だったんじゃないっすか?」
「あぁ」
女性陣と男性陣と分かれてこの十数年間について語り合う。
・・・
・・・・・・
「さて、これからの事を話し合おう。十数年で何か変わった事はあるか?」
日を改めて会議室兼食堂に皆集まってもらう。
「まず、この方舟の状態が悪くなっていく一方だよ。1ヶ月前にも言ったけどこの銀河には整備するドッグがなくて内部的にボロボロだね。燃料もあと僅かって感じ」
「私からも、食料が殆ど尽きかけています。その為、回収ドローンを使ってこの惑星から飲食物を現在採取しております」
キャメリアとフェリスから報告が上がる。
「なるほど・・・どちらとも危機的状況か」
「飲み水の確保は順調ですが、食べ物の選別に時間がかかっています」
「その件は俺達が実際に食べたものを話す」
「お願いします」
「燃料は後どれくらいだ?」
「ハイパージャンプ1回分、通常ジャンプ20回分、通常航行数百光年分かな?」
「この銀河の大きさは・・・」
「約10万光年程です」
マザーが即座に答えてくれた。
「十数年で、地球には見つかっていないようだな?」
「太陽系らしき星系は既に見つけてあるよ。ここから随分と離れているからね」
「ハイパージャンプで行ける距離か?」
「1回行ったら動けなくなるよ」
「マザー、この惑星から燃料は見つけられるか?」
「現在、調査中です」
「現状の問題を解決してから動くしかないな」
「マスター、この島の中心部にて巨大な熱源を探知しました」
「映像を出してくれ」
一機のドローンから送られてくる映像がモニターに映し出される。
俺達が住まう拠点から北の山をすごい速さで山越えし中心部へと進む。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
「山が動いていますね」
「いや、アレは山じゃない・・・エンシェントトーラスが眠りから覚めたんだ」
【鑑定】
名前:エンシェントトーラス
レベル:100
種族:トーラス
体力:57,262/57,262
魔力:0/0
状態:健康
「巨大なカメですか」
「でか過ぎっすね」
「ベヘモスを思い出しますね」
全高は50m、全長は1kmにも及ぶ巨大なカメが動き始めた。
「方舟の着陸音で流石に起きてしまったか」
旅客機よりも騒音を出していたしな。
「如何いたしますか?」
「現在の戦力で勝てるか?」
「加速荷電粒子砲であれば可能です。その為には離陸しなければなりません」
「この惑星から脱出するときに倒しておけばいいか。戦闘ドローンでは無理か?」
「相手が巨体すぎてレーザーが通るか不明です。表面スキャン上では甲羅には鉱物が含まれています」
「引き続き監視を頼む。問題は保護した連中だな。現在どうなっている?」
「現在、居住区にて各個人ごとに部屋を割り振り与えています」
「この艦に圧倒されて楽に案内できたからいいっすけど。何も説明していなかったんっすか?」
「説明しようとしたんだが信じてくれなかっただけだ」
「なるほど・・・っすね」
「説明は俺からするとして他に何か困っている事とか無いか?」
・・・
・・・・・・・
特にないようだな。
「会議はこれまでとする。各人、良く俺達を探し出してくれた。ありがとう」
「ありがとう」
俺とリリィが頭を下げる。
「「「「「「「お帰りなさい!」」」」」」」」」
こうして俺達は方舟に無事に戻ることができた。
お疲れ様です。




