62話「魔王軍の進行①」
東の関門が突破されて数日が過ぎ去った。
正面の門は開放されて避難民達の受け入れが滞りなく進む。
そんな中、災害級ベヘモスの出現に要塞都市を離れる者達も多くはない。
『各正規兵並びに冒険者ギルド・傭兵団ギルドの面々が集まってくれた事を感謝する』
1万の正規軍と冒険者ギルドと傭兵団ギルドの混成軍1,000の計11,000人が城塞都市の離れた場所に集結した。
『聞いている者も居ると思うが我らの役目は襲い来るモンスターの露払いを担う事となった。現在、近くの都市からも援軍が続々と進軍してきている報告が来ているが間に合わない前提で話す。今回は災害級ベヘモスも居る為、短期決戦で挑むことが余儀なくされた。それ故に各々の連携が鍵となる事を重々承知してくれ』
『傭兵団ギルドのギルド長を勤めている者だ。今回は歴史に名を残す戦いになるであろう・・・今は互いのしがらみを捨て去り事にあたってくれ』
『冒険者ギルドのギルド長をしています。今回の戦いで甚大な被害が予想されます。しかし我々は死を覚悟して集いました。誇りを持ち死を恐れず戦ってください!』
ォオオおおおおおおおお!
全体から声が上がる。
『陣形は各ギルド長から指示貰ってくれ。以上解散だ』
正規軍が直ぐに移動を開始し、野営地へと向かっていく。
残ったのは冒険者ギルド・傭兵ギルドの混成軍1,000人だ。
内訳として、両ギルドからオリハルコンが2名、ミスリルが10名、ゴールドが30名、シルバーが400名、カッパーが500名程集まった
『傭兵ギルドオリハルコンクラスのガルンだ』
『冒険者ギルドオリハルコンクラスのフゥです』
2人のオリハルコンと言っても対局的だ。
ガルンは近接戦闘を前提としたドラゴンスケイル装備に身を包んだベルセルクで有名。
フゥは遠距離戦闘を前提とした魔術師で有名だ。
【看破】
名前:ガルン
レベル:62
種族:ヒューマン
職業①:ベルセルク(Lv53)
体力:5,910/5,910
魔力:1,058/1,058
攻撃力:965(+270)
防御力:904(+550)
各種装備品:ミスリルの大剣、ドラゴンスケイル(ヘッドギア/アーマー/レギンス/ブーツ)
所有スキル:一刀両断、二連閃、三連閃、四連閃、豪腕一閃、大地斬、大破斬、戦の咆哮
状態:健康
【看破】
名前:フゥ
レベル:60
種族:ヒューマン
職業①:魔術師(Lv50)
体力:1,915/1,915
魔力:2,972/2,972
攻撃力:326(+45)
防御力:218(+144)
各種装備品:ライトクリスタルロッド、ミスリルのサークレット、グレートタラテクト(服/ズボン)、ライトクリスタルブーツ
所有スキル:生活魔法:ファイ、ウォタ、ウィン、ロック、第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール、第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール、第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ウォータースプラッシュ、ロックランス、第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ、第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング、第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク
状態:健康
「前衛組は俺が指揮をするから付いて来てくれ」
「後衛組は私が指揮をするので付いて来て下さい」
2手に分かれ始める混成軍。
「銀狼、そっちは後衛だぞ?」
ワルツに止められる。
「勘違いしている様だが、俺は後衛なんだよ」
「は?いや、お前の戦い方は前衛だろう」
「ソロに前衛も後衛もあると思うのか?」
「・・・初めて知ったぜ」
「聞かれないからな」
「銀線って魔法だったんか?」
「魔法に近いな」
「そうか・・・お前の活躍を期待しているぜ」
「お前こそ死ぬなよ」
「当たり前だ」
俺は後衛側へと歩き出す。
「まずは弓、魔法、回復で別れて頂きます」
後衛者は最も少ない人数で100人にも満たない。
弓が30人、魔法は15人、回復が10人となる。
「貴方は確か、傭兵ギルドの銀狼さんですね?」
「あぁ」
「こちらは後衛ですよ?」
「皆勘違いしているようだが俺も後衛だ」
周囲が騒めく。
「後衛だったのですね・・・弓でも魔法使いでも無い感じですが?」
「魔法も使える」
「噂でしか聞いた事が無いのですが貴方の武器はなんですか?」
「主に糸だ」
「糸ですか?」
「実際に見せよう。操糸」
フワッ
俺の周囲に無数の銀に輝く糸が浮き上がる。
「ほぅ」
フゥがその光景に感嘆の息を漏らす。
「珍しい魔法ですね」
「糸はオリハルコン製だ。魔力で操って攻撃に転ずる」
「オリハルコン・・・私も持っていない素材を武器に」
何だか嫉妬を感じる。
「それでは前衛に近い技ではないですか?」
「前衛か後衛かの定義はその攻撃範囲で決まるものなんだろ?」
「えぇ。数メートルが前衛、数十メートルが後衛です」
「俺の射程範囲は100mだ」
「100!?」
ザワめきが波紋を呼ぶ。
「第6位階と同じ範囲ですか」
魔法使いの魔法攻撃範囲は20m程、魔術師の魔法攻撃範囲は40mと威力が高くなるにつれて射程範囲は伸びていく。
「では、銀狼さんは中衛をして貰っていいですか?」
「中衛?」
「前衛と後衛の中間の位置に居て下さい。その攻撃範囲があれば前衛のサポートをしつつ、後衛の仕事ができる距離です」
「なるほど」
「では、他の皆さんの配置ですが」
テキパキと陣形の位置が決まっていき戦争の準備が整っていく。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『モンスターの大群が来たゾォオ』
見張りの冒険者数名が馬を走らせて野営地へと入ってくる。
ガンガンガンガンガンッ
すぐさま戦闘準備に取り掛かり冒険者・傭兵・正規軍は決められた配置へと移動を開始する。
最初の露払いは冒険者・傭兵の混成軍1,000人による激突だ。
撃ち漏らしや俺たちが瓦解した場合に1万の正規軍が応戦する形となる。
なぜ、混成軍を使い捨ての駒のような配置かというと戦争で武勲を建てるのには最前線で戦わなければ到底無理な話になる。
正規軍の損耗を抑える為でもあるが誰も文句は言わない。逆に正規軍と共に戦えば誰が武勲を建てようが全て正規軍の手柄になってしまうからだ。
『敵の数は!』
『ゼェハァゼェハァ!!およそ2万!』
ドヨッ
圧倒的に不利な数に混成軍に不安の空気が流れる。
『2万対1,000か』
『くそっ』
さすがに数的有利ではない現状に参加している者達のやる気が落ちる。
「フゥ、お前さんの魔術でどうにかならないか?」
「私の魔術師の腕を買って頂けるのは結構ですが、2万をどうにかする魔術は持ち合わせておりません」
「この都市ではお前以上の魔術師はいないしな・・・」
「アースクエイクで道を狭く出来ないか?」
「どういう意味です?」
「お前は銀狼だったか?」
オリハルコンのガルンとフゥの会話に混じる。
「アースクエイクを放射状に何発も放って大群の道を無理やり作れば一気に来れなくなるだろ?」
地面にアースクエイクの道を作り出す。
大群
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
混成軍
正規軍
アースクエイクの隆起現象は魔力を抑えずに使えば、直径100m程、高さ10mの岩の柱が不規則に円形状に発生させる。
「あなたは馬鹿ですか?第6位魔法は簡単に連発出来やしないんですよ。例え出来たとしても魔力が足りません、人数が必要です」
「あんたなら10発位できるだろう?」
「例え5発ずつを左右に放った所で500mの壁にしかなりません。2万の軍勢を誘導するにはその3倍は必要ですよ」
「なら、残りの20発は俺が補えば勝機はあるんだな?」
「いま、何て?」
「残りの20発が俺のアースクエイクで補う」
「は?銀狼は中衛だと聞いたぞ?」
「え、えぇ・・・と言うより魔法が使えたんですか?」
「アンタと同じ第6位階までならな」
「・・・何者です?そのような人物がいままで埋もれていたなんて」
「とにかく時間がない。それでこの戦いが有利に進むんだな?」
「え、えぇ。彼の言う通りの事ができればですが」
「なら、早速実行してくれ」
「実行しますが、実行後私は無力になりますよ」
「戦いが有利になればそれでいい。2万の軍勢に飲み込まれるなんて無駄だ」
「分かりました。銀狼さん着いてきてください」
俺とフゥが最前線に向かう。
「とにかく、私の後に補って下さいね!」
ブゥン
「力強き土の精霊よ、我が願いを叶え、矮小なる存在に力を見せつけよ!神の力を示したまえ!アースクエイク」
ガァアアアアアアン
ヘルニア平原の一部で隆起現象が発生し、何も聞かされていない混成軍達がどよめく。
「これは作戦の一部だ!」
ガルンが大声で鎮める。
「ハァハァハァハァ」
「大丈夫か?」
「少し、黙っていてください」
この世界で魔法に詠唱が必要だと聞いていたが、アレでは攻撃してくださいと言っているものだな。
しかも次に放つまでが長い。
・・・
・・・・・・
30分以上掛けて10発分のアースクエイクを放ったフゥは魔力枯渇症に陥りダウンした。
「いいですか、全てはアナタに掛かっているんですからね」
タンカによって運ばれていくフゥを見送り俺の番となった。
シュルッ
100m分のオリハルコンの糸を取り出して、土の魔法陣を描く。
「アースクエイク×10」
ヒィイイイイン
ドガァアアアアアアアアアアン
5つの魔法陣詠唱魔法によって強化されたアースクエイク10発分がフゥの作り出したアースクエイクよりも高く広い物が10箇所で同時に発生する。
それを見ていた混成軍の者達が耳を塞いで見ている。
「次、行くぞ!アースクエイク×10」
ヒィイイイイン
ドガァアアアアアアアアアアン
ものの数分でアースクエイク20発分を放ち漏斗状に広がったアースクエイクの壁が出現した。
ただし、俺の魔法陣詠唱魔法によって威力がフゥより増加した為、当初の予定より500m長い2Kmに渡る高き壁が出現した。1.5km分の壁の方が15mと高く乗り越える事は困難だろう。
「見たか!これで1度に2万の軍勢と戦わなくて済むぞ!!武勲を上げたい野郎共は活路を開きやがれ!!!」
オォオオオオオオオオオオ
混成軍から活気を取り戻す声が広がる。
「俺は元の配置に戻る」
「休まなくても平気か?」
「後ろで休ませて貰うからな」
「前は任せろ」
俺は中衛の位置に戻り、後衛の魔法使い達に羨望の眼差しで見られる。
『モンスターの大群が見えたぞぉ!』
前衛組から報告が送られてくる。
ドドドドドッドドド
地鳴りを響かせ土煙を上げて2万の軍勢がヘルニア平原へとやって来た。
平原に現れた左右に広がる2kmの巨大な壁に対してモンスター達は唸り声を上げた。
スィ
モンスターの大群からコウモリの様な羽の生えた人型モンスターが単騎で近づいてきた。
『私は魔王が四天王の一人、ヤンデバウトと申します。この平原にはこんな通路が無かった筈です。誰が作り出しましたか?』
ザワッ
四天王の登場に冒険者や傭兵達が騒めく。
「斬糸っ」
ヒュォッ
銀線がヤンデバウトに迫る。
『おっと』
俺の斬糸が軽々と避けられる。
『美しくないですね。戦う前に特使である私を攻撃するなんてヒューマンとは』
『銀狼、勝手な行動をするな!』
ガルンから叱咤の声が上がる。
『銀狼という方ですか・・・ふむ、ヒューマンにしておくには勿体無い方ですね』
【看破】
名前:ヤンデバウト
レベル:70
種族:トゥルーヴァンパイア
体力:10,109/10,109
魔力:1,284/1,284
攻撃力:3,423
防御力:3,425
各種装備品:紳士服、紳士ズボン、革靴
所有スキル:吸血、蝙蝠化、ブラッディソード、ブラッドスプラッシュ、血の狂乱
状態:健康
「真祖の吸血鬼か?」
「ほぅ、私の正体を見破るとはねぇ」
「真祖だと!?」
「何か知っているのか?」
「真祖も災害級って奴だ」
累積ステータスの俺と真祖吸血鬼のステータスでは大差程まで開いているわけじゃない。
・・・そもそも、勝てるのか?
【看破】
名前:アオイ
レベル:47(140)
種族:ヒューマン
職業①:傀儡師(Lv70)
職業②:魔導師(Lv70)
職業③:勇者(Lv70)
職業④:盗賊(Lv20)
職業⑤:薬剤師(Lv20)
職業⑥:採掘師(Lv20)
職業⑦:裁縫師(Lv7)
職業⑧:木工師(Lv2)
体力:560(33,060)/560(33,060)
魔力:418(27,726)418(27,726)
攻撃力:140(4,650)
防御力:94(3,656)
各種装備品:変形マスク、レーダーキャンセラーアーマー、レーダーキャンセラーレギンス、スニーカー、外套(茶)、オリハルコンワイヤーの手袋
所有スキル:糸拘束術一式、糸拘束術二式、糸拘束術三式、糸防御術一式、糸防御術二式、糸防御術三式、引き寄せ、多重操糸術、操糸、切り離し、斬糸、ワイヤーネット、ワイヤーロード、アンカー、落とし糸、誘導、囮糸、盗聴糸、斬鋼線、右腕操術、左腕操術、胴体操術、右脚操術、左脚操術、マクロ人形操作、マリオネット、自立戦闘、自立化、装備強化、魔力糸壁、武装解除、生活魔法:ファイ、ウォタ、ウィン、ロック、第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール、第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール、第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ウォータースプラッシュ、ロックランス、第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ、第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング、第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク、第7位階:エクスプロージョン、バイオレントストーム、アブソリュートゼロ、メテオストライク、詠唱魔法 、魔法陣魔法 、詠唱魔法陣魔法、鍵開け、無音歩行、気配遮断、気配察知、集音、魔力糸、採取速度上昇、薬草の粉薬、薬草茶、薬草の丸薬、結合剤、裂傷回復丸、毒回復丸、麻痺回復丸(小)、石化回復丸(小)、火傷回復丸(小)、釘打ち速度上昇、鋸切断速度上昇、採掘速度上昇、魔力操作、乗馬、二連脚、三連脚、観察、注視、鑑定、看破、解析、鷹の目、遠視、千里眼、幽馬、日本語、ヒメリア語、アラムド連邦標準語、スールン星系標準語、ルルーシ語
状態:健康、隷属(プロジット王位継承者)
『では、次は戦場で相まみえると致しましょう』
スイっ
ヤンデバウトはモンスターたちの大群の中へと消えていった。
グルゥラァアアアア
ドドドドドドドドッ
大群はアースクエイクの道を通り俺たちに襲いかかってくる。
一度に押し寄せるモンスターの量が激減して前衛の混成軍が衝突する。
「魔法隊、放ちなさい」
『『『『『『ファイアーボール』』』』』』』
「弓矢隊、放ちなさい」
担架の上でも自身の仕事をこなすフゥを横目に俺も少しばかり本気を出すしかない様だ。
「悪いが、中衛の話は無かったことにする。遊撃に回る」
「銀狼さん、何を」
「ワイアーアクション」
ギュルッ
100m先にあるフゥの作り出したアースクエイクに糸を伸ばして奥へと体ごと移動させる。
ヒュォッ
数度繰り返してモンスターしか居ないエリアに到着する。
「トリプルファイアーボール×9」
ドガアッガガガァアアン
27つのファイアーボールがモンスターの大群に殺到し吹き飛ばしていく。
ヒュゥウウ
反対側のアースクエイク跡に糸を伸ばして空中を移動しながら次なる魔法を唱える。
「ロックガドリング×9」
ガガガガガガガガガガガガガガガガ
無数の岩の弾が雨の様に降り注ぎ、硬い鱗を持たないモンスター達が細切れに吹き飛んでいく。
「信じられねぇぜ」
前線で戦っていたガルンが呟く。
「斬糸×9」
ズババババババババババ
銀線が乱れ飛び数十というモンスター達が細切れになる。
フッ
ガギィイイイイン
ザァアアアアアアアアア
「サイクロプス」
一つ目巨人が空中を飛んでいた俺を太い幹でできた棍棒で撃ち落とした。
【看破】
名前:NoName
レベル:70
種族:サイクロプス
体力:2,556/2,556
魔力:313/313
攻撃力:742
防御力:610
各種装備品:棍棒、腰布
所有スキル:棍棒術、振り下ろし、振り回し、豪腕、叩き落とし
状態:健康
ジンジン
防御力でなんとか防いだが腕の痺れたからスキルを使っていたな。
ギャギャギャッ
周囲にモンスター共が殺到する。
「斬鋼線!」
ブワッ
ブシャアアアア
鋼鉄すらも切り裂くオリハルコンの糸が周囲100mに渡り近づくモンスターを両断する。
ズドォンン
もれなくサイクロプスも一撃で沈む。
「む?」
俺が大群の中で戦っている間に混成軍の戦線が崩れかかっている。
ッババ
視界には数千というモンスターがいるが後退を余儀なくされた。
「怪我を負ったものは交代しろ!」
「回復魔法使いは重傷者を中心に回復を!」
開戦してから1時間も経たずに混成軍は壊滅しかかっている。
1,000対2万では戦いにすらならないが良くもった方だ。
「ロックガトリング×10」
ガガガガガガガガガッ
最前線に向かって岩の弾を面でモンスターたちに浴びせて殲滅にかかる。
「戦線は瓦解した!撤退を開始しろ」
「お前はどうする!!」
「ここは食い止めておくから生きてる奴は逃げろ」
ガガガガガガガガ
襲いかかってくるモンスター共を岩の雨で防ぐ。
「撤退しろ!!動けるやつは怪我人を運べ」
1,000人いた混成軍は700人以下となり撤退を開始する。
『混成軍は何をしている!まだ戦える奴がいるだろう』
俺たちの撤退を見た正規軍の指揮官が馬に乗って講義してくる。
「戦力3割を失ったんだ!俺達は撤退をする」
『ならん!武勲が欲しいんじゃないのか!!』
「武勲なんかより命だ。すでに300名がこの戦場で命を散らした!!」
『コレだから冒険者も傭兵も役に立たん。報酬は無いと思え』
指揮官が号令を出すと1万の正規軍が前線へと動き出す。
ガガガガがががッ
『殿、ご苦労だったな。後は我々に任せてもらおう』
「後はなんとかしてくれ」
ガッ
最後のロックガトリングが魔力消費を終える。
ガガァアアアアン
ガラガラガラガラガラ
俺の作り出したアースクエイクで隆起した地面が粉々に崩れ地面に降り注いだ。
そう、モンスター達が一箇所で数も限られていたからこそ混成軍は1時間もの間戦い続けられたのだ。
ギャギャギャギャっ
たった500m程しか壁として成さなくなった以上、モンスター達は3方向から正規軍へと襲いかかった。
俺は一足先に城塞都市の門内へと撤退する。
「ガハハっ、あの連中は手こずってやがるな」
「そんな事より手当を」
フゥが中心にとなり重傷者の手当をしている。
だが数十人もでては回復魔法の使い手達でも処置が間に合わない。
「ポーションとかは無いのか?」
「そんな高価な物がある訳が無いでしょう。軍の連中しか使用の許可が出されていないんですから」
ポーションの存在は知っていたが普段みなかった理由がコレか。
「そうか・・・ならコレを使ってくれ」
俺は大きめの麻袋に入れていた丸薬を取り出す。
「これは?」
「これでも調薬師でもあるんでな。ポーション程ではないが回復の効果はある」
「それは助かります。無いよりはマシでしょう。誰か、コレを軽傷者に配りなさい」
「重傷者には施さないのか?」
「例え回復のポーションでも間に合わないでしょう。今は回復魔法でしか効果はありません」
腕や足が無い冒険者や傭兵達は地面に横たわり痛みに耐えている。
応急手当として止血を施しているが回復魔法の使い手が圧倒的に足りないのだ。
『光の精霊よ我の呼びかけに応え彼の者に安らぎを与え給え。ヒール』
「アンタ、その杖に何が刻まれている?」
回復魔法を使っていた術士が持つ杖に何か模様が刻まれている。
『回復魔法を補助してくれる魔法陣だよ!早くしないと他の連中が死んじまう』
「よく見せてくれ!」
杖を奪いジッと見せる。
「銀狼!邪魔してんじゃねぇよ」
バッ
ガルンに杖を奪い返されて、持ち主に投げ渡される。
「覚えた」
「テメェは邪魔がしたいのかよ」
「操糸」
フワッ
銀線が浮かび上がり光り輝く。
シュルルルッ
重傷者の上空に今覚えた魔法陣を糸で再現する。
「ヒール」
ズゾゾゾゾゾッ
魔法陣に魔力が一気に吸われて行くのを感じる。
ヒィイイイイイン
魔法陣と化した糸が光度を増して輝きが強くなった。
パァアアアア
光の粒が重傷者達に降り注ぎ始めた。
『うううぅ・・うぅ』
『痛い・・・いたっ』
『ぁぁ、痛みが引いていく』
魔法陣の下に居た重傷者達の怪我は時間がすぎる毎に回復していく。
「これは、夢か?」
「いえ、夢ではありません。あの様な巨大な魔法は見たことありません」
『アイツにばっか仕事を持って行かれてたまるか!』
『俺達はアッチだ』
応急処置しか施せない混成軍の生き残り達はその光景を見続け、回復魔法の使い手達は範囲外にいる重傷者達を治療していく。
お疲れ様でした。




