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61話「アーガスト要塞都市」

アーガスト要塞都市・・・元々は低い丘に建てられた要塞の周りに街が出来上がった都市である。

要塞の周りには2つの巨大な壁が仕切り容易には攻略できないようになっている。

外側壁の内部は一般的な人が住む地区、内側壁の内部は貴族や身分の高い者が住む地区と別れている。中央に巨大な要塞が佇んでいる。


『よし、通れ』


この世界の身分証明書として予め傭兵ギルドに登録しておりスムーズに外側の壁を通り抜けられた。


傭兵ギルドの仕事内容は普段は周辺の治安維持や雑用の仕事をしている。


冒険者ギルドとの違いは戦争が発生した場合ランクが関係なく自由に参加できる。


特に高ランカーは国からの指名依頼となる事が多い。


都市として機能しており活気に満ち溢れている。


見上げれば丘上に黒い壁で構成されているアーガスト要塞が佇んでいる。


大通りを歩き、アーガスト要塞都市支部傭兵ギルドへと進む。


『勇者様が召喚された噂を知っているか?』

『プロジット王国の話だろう?知っているぜ』


すでに此処まで噂が広がっているようだ。


ギィイイ


傭兵ギルドの扉を開き中へと入る。


さすが都市のギルドだけあり、中は広く少なくない傭兵達が居る。


ギィギィ


真っ直ぐに受付カウンターに向かう。


『ようこそ、アーガスト要塞都市支部傭兵ギルドへ。ご依頼ですか?』


どうやら、依頼人に間違われてしまった様だ。


「仕事を斡旋して貰いたい。何か俺のランクで受けられる仕事は有るか?」


チャッ


傭兵ギルド員の証をカウンターに置く。


『カッパーですか・・・』


この受付嬢は若手のようだ表情に出すぎている。


俺の見た目で熟練傭兵と思い込んでいたが新人傭兵と同じランクであるカッパーと知ってガッカリと言った感じだ。


『ギャハハははは!』

『オッサン!その年でカッパーかよ!!』

『いい年なんだから、傭兵なんてやめちまえよ』


何処にでも自分より下だと勘違いしたバカはいる様だ。


「で、どうなんだ?」

『カッパーですと、ここから2日間離れた森に近い村にゴブリンが現れたそうなので討伐依頼がでております。その他ですと雑用などが御座いますが・・・』

「それで良い」

『受理いたしました。アオイ様、くれぐれもお気を付けを』

『リナ!そんなオッサンに心配の声なんて要らねぇだろ』

『あぁ。こんな年齢までカッパーなんだかよ無駄だぜ』


あの言葉は受付嬢としての営業マニュアルに過ぎない。

そんな事すら認識していないようだな。


夕方となり門が締まるギリギリまで待った。


『今から外に出ると、中に入るには朝を待つことになるぞ?』

「心配無用だ。ルーナ村に向かうのだからな」

『ルーナ村か。あそこは俺の出身村なんだ・・・頼む』

「あぁ」


門番に通されて北東に位置するルーナ村へと赴く。


完全に人気がない事を確認した後に幽馬を召喚して2日掛かると言われた村までは翌朝には到着した。


『何者だ?』


村は木の柵で囲われただけで出入り口には木の槍を持った青年が話しかけてきた。


「傭兵ギルドから派遣されてきた。ゴブリン討伐について村長に話を聞きたい」

『やっと来てくれたか!直ぐに村長を呼ぶ』


青年は嬉しそうに掛けていった。


持ち場を離れてどうするんだ?


暫く待つと青年が俺と同じくらいの年齢になる男を連れてきた。


『私がルーネ村の村長をしています。この旅は依頼を受けて下さり』

「前口上は良い。依頼内容を話してくれ」

『数日前から、近くの森でゴブリン達を見かけるようになったのが始まりでした。最初は村の狩人が怪我を負う程度でしたが、徐々に村に被害が出始めて・・・つい先日に村娘がさらわれてしまったのだ』

「いつの事だ?」

『昨日だ・・・俺が付いていながら』


青年は悔しながら呟く。


「その時は何匹だった?」

『5匹だ・・・あの数じゃ助けられなかった』

「連れ去られたという事は巣の懸念があるか・・・」

『一刻も早く村に平穏を戻してくれ』

「分かった」

『頼む!ミーナを救ってやってくれ』

「・・・」

『やめないか!ジル、依頼内容にない事を言ってはいけない』

『しかし!』

「ゴブリンは繁殖力が高く、他種族の雌との交配も可能な種族だ・・・今朝方なら助け出せるだろうが・・・後は分かっているな?」

『くそっ!!』


青年は地面を蹴って奥へと走り出してしまう。


『すまぬが、村娘の事は既に諦めている。依頼だけをこなしてくれ』

「ゴブリンの出現位置は森の中でいいのか?」

『森がやつらの住処になっている筈だ』

「分かった」


ザッザッザッ


森の中へと入ってゴブリンとの会敵を待つ。


『ギャギャギャッ』


入って数分でゴブリンと出会えた。


『ギャギャギャッ』

「至るところにいるな」


気配察知と遠視を使ってゴブリンが森の至るところに姿を隠している。


『ギャギャギャっ!!』


木の棒を振り回して接近してくる。


ガッ


『ゴッバッ!』


近づいてきた所を拳の一撃で吹き飛ばす。


顔面が陥没し頭蓋骨を割り脳髄を地面や木に撒き散らす。


『ギャギャギャっ』

『ギャギャギャっ』


それを見ていた他のゴブリン達がワラワラと現れて俺に闘いを挑んでくる。


・・・


『ギャァアア』


数分で約40匹のゴブリンが襲い掛かって来たが全て拳のみで終わらせた。


武器が無くとも高ステータスだけで解決する。


『ギャギャギャッ』


森の奥へと逃げるゴブリンを見つけて追いかける。


『ギャギャギャァ!!』


森の奥、こんもりと盛り上がった場所に穴がありゴブリンが中に入っていく。


道中でもゴブリンが襲い掛かってきたが返り討ちにする。


「この中か・・・む?」


洞穴の奥は単純に掘って出来た物で細い通路の奥に広い空間が広がっている。


その中にゴブリンの気配の他に2つの別の気配を感知する。


1つは浚われた村娘だろうが・・・もう1人は分からないな。


ザッザッ


通路を進み奥へと入り込む。


「ん?」


通路の途中で木の棒が立ち動物の頭蓋骨が引っかかっていた。


「ゴブリン達の趣味か?」


気にせず奥へと進む。


『ギャギャギャッ』


暗闇の中でもゴブリン達は潜む事はしないらしい。


ザッ


広い空間に出るとゴブリン達は武器を構えて待っていた。


「ライトボール!」


ボワッ


暗闇の空間から一気に昼の様に明るくなった。


【ゴブリン40匹】

【ホブゴブリン3匹】

【ゴブリンリーダー1匹】


見える範囲にゴブリン44匹が居る。


奥のほうで人が2人倒れているのが見えるがピクリとも動かない所を見ると殺されている可能性がある。


『ギャギャギャ!!』


一番奥に居るゴブリンリーダーの掛け声でゴブリン達が俺に殺到し始めた。


ブシャッ


『プギャゥt!?』

「最初から知っているぜ」


背後から一匹のゴブリンが足音を消して近づいてきたのは知っていた。


ゴブリン達が前方で声を上げていたのは挟撃を成功させる為のようだ。


カランッ


錆びれた短剣がコブリンの手から落ちる。


「斬糸」


ヒュオッ


2本の銀線が空間に広がりゴブリン達の首元を通り過ぎる。


ズルッ


『ぎゃぁあああ』

『がああああ』


一瞬にしてゴブリンとホブゴブリンが首と胴を両断されて即死する。


『ギャギャギャッ』


唯一生き残ったゴブリンリーダーが更に奥へと続く通路へと逃げていく。


ザッザッザッ


逃げていった後を追うように俺も歩く。


通り過ぎる途中で倒れている2人の様子を伺う。


・・・


「一人は死んでいるか」


既に少女が死んでいた。


『うぅ』


もう1人は息があり気絶しているようだ・・・だがゴブリンの巣のゆえに無事では済まない。


後で如何するか決めるとして奥へと進む。


ドシドシドシッ


奥へ向かうまでも無く重い足音が聞こえ始めた。


グルルルゥ


通路の置くから一際大柄なゴブリンが現れた。


【看破】

 名前:NoName

 レベル:21

 種族:ゴブリンジェネラル

 体力:2,520/2,520

 魔力:270/270

 攻撃力:321(+25)

 防御力:321(+20)

 各種装備品:ロングソード、獣の毛皮、獣の腰巻

 所有スキル:一刀両断、二連閃、薙ぎ払い

 状態:健康


レベルは低いがゴブリンの上位種が現れた。


『グォオオアアアアア』


洞窟内に咆哮が響き渡りビリビリと振動する。


ブォオン


力任せの大上段が俺に振り下ろされる。


キィン


攻撃力346に対して俺の防御力は2,700近くだ。


余裕で受け止める。


『がぁ?』


ヒュオッ


ブシュゥウウ


ロングソードを持っている右腕の付け根を切り離す。


『ギャァウウウウ』


血飛沫を上げてゴブリンロードは左手で患部を抑えるが出血は止まらない。


「ここがお前の最後だったな」


ヒュオッ


頭が下がった所で首を切断し地面に転がす。


最奥に小さな気配を感じて奥へと進む。


「ゴブリンベビーか」


生後間もないゴブリンの赤ん坊が最奥の空間に数匹いる。


グシャッ


無抵抗なゴブリンベビーと奥へと逃げたゴブリンリーダーを殺し広場へと戻ってくる。


ペチペチ


気絶している村娘の頬を叩くが起きる気配が無い・・・命が助かっただけでも良いかは彼女自身の問題だな。


「ウォタ」


バシャッバシャッバシャッ


この世界に来て会得した生活魔法と呼ばれる誰でも使える魔法にて彼女の体を洗い流してある程度綺麗にする。


バサッ


インベントリにしまっている代えのローブを彼女に羽織わせる。


バシャッバシャッバシャッ


既に死亡しているもう一人の少女も最低限綺麗にして布に包む。


「っしょ」


生きてる村娘を背負い、死体となった少女を小脇に抱え、ゴブリンジェネラルの首を麻袋に入れて腰にぶら下げる。


これでクエストは完遂と行ったところか・・・


「最後の仕上げだったな。アースクエイク!」


ドガァアアアアン


ゴブリン達の根城としていた洞穴ごと周囲十数メートルの範囲の森を巻き込んで地面を隆起させ再びゴブリンが住めない環境を作り出す。


轟音が周囲に撒き散らされて森全体が揺れる。


「これで良いな」


村に戻ってきたのは昼前であった。


『無事だったのか?』


村の出入り口に居た青年が森の出入り口に立っていた。


「なんだ?」

『さっき森からものすごい音が聞こえてたから心配になってきたんだ』

「そうか・・・村長を呼んでくれ。あと女もな」

『あ、あぁ』


青年は村の奥へと消えて行く。


暫くして村長だけが現れた。


『もう終わったのか?』

「あぁ。攫われた村娘を発見した。どこか横にできる場所はないか?」

『お、おぉ!コチラだ』


村長に案内されてひときわ大きな家に通される。


「既にゴブリン達にやられた後だった。起きたときに取り乱すだろうし近くに女がいた方がいいだろう」

『あなたはこの村を救ってくれた恩人だ』

「それともう一人。既に死んでいたんだが」


パサッ


脇に抱えていた少女の遺体を包んでいた少しだけ布を外す。


『この子は隣村の・・・あっちにも行っていたのか・・・』

「任せていいか?」

『あ、あぁ。この子は隣村に届けよう』

「これで依頼は完了でいいか?」

『助かった。コレをギルドに届けてくれ』


村長から割符を受け取る。


傭兵ギルドのシステムとして依頼人には割符が配られて達成したギルド員に割符を返却する事で依頼の達成有無が分かる。


『今から都市に戻っても間に合わないだろう。ここで一泊して行ってくれ』

「いいのか?」

『小さな村と言え、あなたは村を救った英雄だ。遠慮しないでくれ』

「分かった。邪魔をする」


夜となり広間に井形に組まれた木が燃え盛り村人総出の宴が開かれた。


無論、俺が主賓として呼ばれる事となる。


『傭兵様、一杯どうですかな?』


年齢も年齢で村長は俺に酌をする。


自然と年配の連中が集まり村の若者は少し離れてチラチラと見ているだけだ。


『ねぇねぇ、傭兵様!どうやって倒したの~』


大人の相手をしていたが、唐突に話しかけられた。


声の方を見ると10歳位の男の子が立っていた。


『こら、マルス!失礼であろう』

「別に良い。何が聞きたい?」

『凶暴なゴブリンになんで立ち向かえるの~』

「うむ。立ち向かえるには勇気が必要だな」

『勇気?』

「あぁ。怖くないという気概が必要だ」

『じゃぁ、僕も怖くなかったら戦っていいの?』

「それはダメだ」

『なんで~?』

「お前の仕事は戦うことではない」

『でもでも、お父達は戦うこともあるよ?』

「大人の仕事には戦いも含まれるのだ。どうしても戦いたいと言うならば早く大人になる事だな」

『うん!早く大人になりたいなぁ』


パタパタパタ


満足したのか去っていった。


『すみません』

「気にしなくてもいい」

『あ、あの!俺、俺!!』


今度はあの青年が話しかけてきた。


『この村を救ってくれて有難う。ミーナの事を救ってくれて』

「命だけは救っただけに過ぎん」

『だけど、俺!あの時は何もできなくて・・・悔しくて』


ポタポタッ


青年から大粒の涙が溢れる。


「お前が出来ることをすればいい。もし彼女の心に傷が残るようであれば傍に居てやってくれ」

『は、はい!』


青年は少し元気を取り戻して離れていく。


こうして、夜が更けていった。


ムクリ


夜中に起き上がり素早く身支度を整えて寝ていた家から出て村から離れる。


来た道を幽馬に乗り帰る。


・・・


・・・・・・


『アンタ、無事だったか』


都市を出るときに村出身の門番と出会った。


『ゴブリンは?』

「きっちり仕事はしてきた」

『ありがとう』


割符を見せると一言礼を言って通される。


ギィイイ


傭兵ギルドに戻ってきて受付に向かう。


「ルーナ村のゴブリン退治を完遂してきた」


ギルド証と割符をカウンターに乗せる。


『少々お待ちを』


カウンター下からクエスト依頼書と割符の片方を取り出す。


カチッ


割符がハマった事を確認する。


『ルーナ村付近のゴブリンクエスト達成を確認致しました』

「あぁ、それと」


ドンッ


ビーチバレーボール程に膨れ上がった麻袋をカウンターに置く。


「ゴブリンジェネラルが巣を作っていたぞ」


パラッ


ゴブリンジェネラルの首を受付嬢に見せるように布を取り外す。


『ゴブリンジェネラルをですか・・・依頼内容には無い事なので報酬の上乗せはありませんが一度ギルド長に話を通します』

「あぁ、コレはどうする?」

『こちらで預かります』

「他に仕事はあるか?」

『南の荒野にコボルトの群れが発生しております』

「ソレを受けよう」

『お気をつけて』


ザッ


俺は次の仕事を完遂する為に城塞都市を出て行く。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


瞬く間に1年が過ぎ去り俺の実力はゴールドに登り詰めた。


勇者の噂は隣国バット神聖国での目撃情報が流れてきた。


順調に勇者としてのレベルを上げてコチラに来ている事が伺える。


「よぅ、銀狼のオッサン」

「なんだ?」

「つれねぇな。同じゴールドじゃねぇか」

「で?」


こいつは傭兵団「ライオネス」リーダーのワルツ。

俺と同じゴールドのギルド印を持つ人物だ。


「たったの一年でカッパーからゴールドになったオッサンに頼みがあるんだがよ、俺達と一緒にワイバーン退治に行ってくれねぇか?」

「俺が銀狼だと分かっていないようだな」


ここ一年で俺が成したことはゴブリンジェネラルを始めとして上位モンスターを片っ端からソロで狩り尽くしていったからだ。

ソロでの戦いを目撃した者の証言から俺のことを銀線を操る一匹狼から銀狼という二つ名が勝手に広まっていった。


出自不明、たったの1年でゴールドまで上り詰めた謎多き人物として周囲のゴールド以上の傭兵ギルド員達から一目置かれ始めた。


バンッ


『大変だ!東の関門が破られた!!』


傭兵団ギルド員が息を切らしてギルド内に響き渡るように大声で伝え、伝播していく。


東の関門とは人の領域と魔の領域を二分する関門の事を指す。


この大陸は人と魔の領域があり巨大な山脈が双方の領域二分している。

通称ドラゴンボーン山脈、昔からドラゴンの住む山脈として知られている。

ただし、山脈には切れ目が存在しており人と魔の領域を繋ぐ渓谷が続いている。

ウェル渓谷と呼ばれて双方が進軍する際に使われる有名なルートだ。


人はその間に関門を設置し魔から流れてくるモンスターをせき止めていた。


それが突破されたという事は帝国として一大事だという事だ。


『近隣の村や町が避難を開始し始めている!避難民が押し寄せてくるぞ』


東の関門に近い村や町が幾つも存在し、避難場所はここ要塞都市と指定されている。


数千人単位の避難民が来る事となる。


「ちっ、また戦争か」


ワルツが舌打ちをしてワイバーンの討伐依頼をキャンセルしに向かう。


ゴールドとなれば戦争時に強制召集されるのがギルド員の決まりだ。


当然、俺も呼ばれる事になるだろう。


・・・


・・・・・・


1時間もしない内にギルド長によって要塞都市に居る傭兵ギルドのゴールド以上は大会議室に集められた。


『都市にいるゴールド以上はこれだけか』


ゴールド以上の傭兵は俺を含めて十数人だ。


自他共に認める強者揃いではあるが戦争では個の強さよりも数の強さが生かされる場である。


『おいおい、ギルド長よぉ。俺たちはゴールドなんだぜ?』

『モンスター如きに遅れをとらねぇぜ』


最近ゴールドになったばっかの傭兵達が発言する。


『粋がるでないぞ小僧共。戦争では個の力なんぞ無に等しいぞい』


さすがに要塞都市の実力者で知られるミスリルの傭兵が放つ言葉は重みが違う。


『十数年前に発生した戦争と同様、我が傭兵ギルドからもゴールド以上の傭兵は参加が余儀なくされた訳だ』

『俺はこの為に力を付けてきたんだ』

『武勲を上げれば俺も爵位を貰えるらしいからな』


ここ帝国では戦争時武勲を上げることで爵位をもらえる制度が存在する。

爵位をもらった傭兵や冒険者は有名となり暮らすのに不自由がなくなる特典が付いてくる。

よって平民は一発逆転を狙うために冒険者や傭兵になる事も少なくはない。


『今回の戦に参加するのは要塞都市に控えている1万の正規軍、冒険者・傭兵ギルドの混成軍が事に当たる予定である』

『冒険者ギルドの連中と馴れ合うのかよ』

『あんな連中とかよ』


冒険者ギルドと傭兵ギルドは普段相容れないギルドだ。


冒険者ギルドは幅広く仕事をするのに対して、傭兵ギルドは戦闘に特化している集団だ。

時折、冒険者と傭兵の狩場が重なりイザコザが発生する事もシバシバある。


『向こうの冒険者と共に最前線を戦ってもらう』

「開戦場所は?」

『ヘルニア平原だ』


要塞都市から東に進んだ広大な平原で迎え撃つ様だ。


「ギルド長、モンスターの大群は今は何処いるんで?」

『関門近くの村や町を襲いながらこっちに向かってきている様だ。2週間の猶予がある為避難民の受け入れと戦闘準備に当てられる』


ガチャッ


『ギルド長、失礼します。続報が届きました』


ギルド職員が会議室に入ってきてギルド長に耳打ちする。


『なに?それは本当か?』

『偵察の報告によれば確かかと』

『わかった。下がってくれ』

『はい』


直ぐに退室していくギルド職員。


『悪い知らせが来た、偵察に出していた者が【ベヘモス】を目撃したそうだ』


!!?


ベヘモス・・・災害級と言われ人が抗っても勝てない伝説上のモンスターだ。


『歴代の戦争の中で災害級が出てきたのは初めてのことだ・・・被害は尋常じゃないと判断されるだろう。既に他の都市にも援軍を呼びかけている様だ。幸いベヘモスは足が遅く1週間以上は間がある』

『対策はあるんだろうな?』

『この城塞都市は対災害級モンスターを前提に作られた都市だ、城壁の至るところにはバリスタを始めた物が設置されている』

『俺達は露払いをしろって事か?』

『モンスターの大群を粗方片付けて、ベヘモスが現れた時点で撤退をする。何か質問がある奴は居るか?』

「報酬は?」

『銀狼、その話は後にしろ・・・この中で年齢が高い方のお前がそれでどうする?』

「報酬が提示されなければやる気が出ない奴も居る。命が助かるなら傭兵の資格を捨てる者も出てくるぞ?」

「銀狼、それは俺達に対する侮辱か?」


ワルツが代表をして怒りを顕にする。


「人の心は移り変わりやすい。死の覚悟も持てない奴に後ろは任せられないからな?」

「てめぇ!歳上だから言って良い事と悪い事があるじゃねぇか!」


胸ぐらを掴み俺を持ち上げる。


「放せ」

「うっ!?」


俺の一言でワルツが俺を地面に下ろす。


『ほほぅ・・・こりゃ、ワシも気合をいれにゃダメじゃな』

「御老公」

『銀狼、主も悪い事だとわかって言っていると自覚はあるかの?』

「こういう時、発破をかけるのは俺達先人の役目だからだ」

『フォッフォ、ギルド長。どうやら尻込みして逃げる腑抜けはおらぬようじゃよ』

『あぁ。御老公の言うとおり、俺達傭兵ギルドの力を見せつけてやるぞ!』

『『『『『『おぉおおおおお』』』』』』』



こうして、モンスターの大群との戦争の準備が始まった。

お疲れ様でした。

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