46話「宇宙航行」
「ふわぁ」
今、何時だ?
ステーションに向けて半年程の時間が流れた。
基本的に自由に過ごしてきたが行動範囲が狭い為に中々に退屈である。
たまに広い格納庫で一人スキルの練習や運動をしてストレスを解消しているが限度という物が存在する。
「艦長、息抜きに宇宙空間に出てみますか?」
ブリッジの艦長席でボンヤリしていた時にペンドラゴンから提案があった。
「良いのか?」
「敵影は見つかりませんね?」
「50kmの範囲内に敵となる姿は見当たりません」
「艦の周辺でしたら戦闘機で出ても問題ありません」
「運転技術すらないぞ?」
「戦闘機にはサポートシステムが搭載されていますので操縦に関する殆どの事はシステム制御になります。搭乗者が行うことはスピードの上下、進行方向の決定、兵装の使用の3つしか選択いたしません」
「なるほど、息抜きもしたかったしな」
「格納庫に戦闘機がありますのでソチラへ向かってください」
「あぁ」
「近くにパイロットスーツも用意されています」
「サイズとかどうするんだ?」
「着用した人物の体型に合わせて変化する様になっています」
「分かった」
馴染みの格納庫には1機の戦闘機が置いてある。
地球の戦闘機と変わらない形をしている。
ググッ
近くにあった箱からパイロットスーツを引っ張り出して着てみたが大きすぎでダボダボである。
《右手首のボタンを押してください》
格納庫のスピーカーからペンドラゴンの音声が降ってくる。
ピコンピコンっ
右手首の点滅するボタンを押してみる。
カチッ
シュッ
体の体型に合わせてサイズがピッタリに合わさった。
カンカンカンッ
ハシゴを上り操縦席へと近づく。
《キャノピーが開きます。乗り込んだらサポートシステムが起動し補助しますので従ってください》
プシュウウウ
操縦席を囲んでいた透明なガラス蓋が開く。
操縦桿や機械のある前方の席と殆ど何もない後方の席があるが操縦席に乗り込む。
ピィン
《搭乗を確認。クラス5戦闘機・CTL-40165リィンカーンサポートAIシステム起動》
前方のスピーカーから機械音声が流れてくる。
《おはよう御座います。私がこのクラス5戦闘機・CTL-40165リィンカーンに搭載されているサポートシステムです》
「今回はよろしく頼むぞ」
《はい。リィンカーンの制御は任せてください》
「まず、何をすれば良い?」
《発艦までは向こうの制御下なので少々お待ち下さい》
ゴゥンゴゥンゴゥン
戦闘機が後ろに動き出し始めた。
《クラス5戦闘機・CTL-40165リィンカーン発艦まであと20秒》
《格納庫のハッチ開きます》
ゴォオオオ
前方の壁が開き宇宙空間が顔を覗かせる。
と同時に格納庫内の空気が抜けていった。
《リィンカーン発進許可の待機》
《発進許可申請受諾。許可いたします。艦長お気をつけて》
《リィンカーン発進!》
シャアアアアアア
カタパルトでリィンカーンが宇宙空間へと投げ出される。
《姿勢制御開始、戦闘機を水平へ移行》
直ぐに姿勢が安定する。
《リアクター稼働率上昇。推進器異常なし。艦長、いつでも飛べます》
「あぁ。スピードの上げ下げはどうする?」
《足元の右ペダルが加速、左ペダルが減速となります。操縦桿を左右に傾ければ旋回、押引すれば上回転と下回転ができます》
地球の戦闘機と同じ操作方法という事か・・・システム制御だから操作は殆ど簡略化されて誰でも乗り回せる仕様なのか。
「Gを全く感じないが?」
《モーションキャンセラーが搭載されています。過大な衝撃は搭乗者を死なせてしまう危険もある為です》
「死ぬのか?」
《マッハ8,000ではいかなる生物でも気絶は免れないでしょう》
「そんなに早いのか?」
《クラス5では標準的な速さです》
「そもそもクラス5ってなんだ?」
《基本構造の世代番号です。私の場合は最新の基本構造から5世代前という意味になります》
「千年前の代物なんだろう?」
《情報としてはクラス5ですが、ガンジ様により私は新たな機体に生まれ変わりました》
「この機体もガンジが弄っているのか」
《リアクターもドラゴンの魔石炉ですし。制御機構もゴーレム寄りにして頂きました》
「つまり」
《メインの動きは艦長に委ねますが、私の判断で戦闘機をスムーズに動かします。また、自動修復機能により戦闘時に受けた損傷は素材があれば修復可能となります》
「ゴーレムに乗り込んだ感じなのか?」
《概ねそう思っていただければ幸いです》
「なるほど。武器はなんだ?」
《機体下部に取り付けられた旋回式のレーザー砲です。艦に比べてしまえば威力は弱いですが、同じ戦闘機型ならば遅れはとりません》
「戦いたい場合はどうすれば良い?」
《操縦を私に委ねて攻撃に集中して貰います。射程方向に向けて角度などを変えます》
「戦闘モードに移行」
《戦闘モードに移行します》
ウィイン
スピードメーター等の計器から大型のモニターが現れる。
《敵を画面中央のクロスゲージに敵をロックオンし操縦桿の赤いスイッチでレーザーを発射します。連続発射限界は5回まで。再使用には20秒掛かります》
「その間は」
《逃げ回ります》
「他の武装は無いのか」
《補助アームがある位です》
「アームに糸とか付けられるか?」
《可能です》
《ペンドラゴン様からの通信です》
《帰艦しましたら早速取り付けます》
「頼む」
《スキルでの攻撃ですか?》
「まぁな。動いている間に腕を出すわけには行かないだろう?」
《幾ら、宇宙空間には抵抗がないとは言え下手したら腕が吹き飛びます》
「確か、戦闘ドローンが格納庫に並んでいたな」
《はい》
「模擬戦闘とか出来ないのか?」
《可能です。ですが、実弾での戦闘は避けたいですね》
「レーザーの代わりに狭い指向性の電波を飛ばして当たったら終わりでいいだろ?」
《ジャンヌ、そういった事は可能ですか?》
《はい。リィンカーンも戦闘ドローンにもそれ位なら可能です》
「なら頼む」
《本艦から指向性電波の使用許可を受諾。模擬戦闘に入ります》
「さて、どれ位粘れるかだな」
《戦闘ドローンを確認。敵とマークします》
方舟から一機のドローンが射出された。
レーダー内に赤い点が出現し敵と認識された。
《操縦しますか?》
「先ずは操縦が何処まで通用するか練習してみるか」
《模擬戦闘開始します》
もの凄いスピードで戦闘ドローンが接近してくる。
ガッ
操縦桿を握り、右のペダルを踏み速度を上げていく。
《戦闘ドローンが右後方に張り付きました》
「やっぱり同じ速度でついてくるか」
《戦闘機並みの無人兵器です。攻撃電波来ます》
ビィービィービィー
「くっ!」
警告音が鳴る中、操縦桿を右に限界まで倒して横スクロールする。
《被弾なし》
「ドローンの軌道が可笑しいだが」
《戦闘機より軽く設計されており多数のスラスターもついております》
ドローンのマークがジグザクと俺を追い掛け回す。
《無重力空間に加え抵抗のない場所が可能としています》
「それはこっちも同じ条件で出来ないのか?」
《飛行機型ですと各所負荷の差がありやろうと思えば可能ではありますが、途中で分解してしまいます》
「くっ」
ビィービィービィー
幾度となく攻撃電波に晒されながらも避ける。
「昔見た木の葉落とし」
グンッ
操縦桿を引っ張り上に向かって旋回する。
「ここか!」
なんの手応えもなく戦闘機は進む。
「なんでだ?」
《空気抵抗も重力もない空間ではその行為は意味がありません》
なん・・・だと・・・
《減速したければ左のペダルを踏んでください》
「速度0には無理か?」
《無理です。最低でも1分以上かけて落とします》
「無念」
《被弾しました。模擬戦闘は終了と致します》
「アレが出来ないとは」
《大気圏内では可能な動きですので機会がありましたらやってみせて下さい》
「あぁ、そうするよ」
《敵影を感知。進行方向から2時の方角距離45km》
ジャンヌから通信が入る。
「相手は?」
《戦闘ドローン1機です。こちらに向かってきますので着艦の用意を》
「分かった。到着時刻は?」
《あと数分です。急いでください》
《自動着艦モードに入ります》
ガクッ
操縦桿がガッチリと固定され俺の意思では動かなくなった。
「一応戦闘モードに切り替えてくれ」
《はい》
ピピピピッ
画面が切り替わり、操縦桿が動くようになる。
戦闘ドローンの位置を示す場所の映像が入る。
戦闘機の後ろには護衛として先程まで模擬戦闘していた戦闘ドローンがついて来ていた。
プシュゥ
何事もなく格納庫に入り、戦闘機から出てブリッジを目指す。
「状況は?」
「戦闘ドローンが30kmに入った途端に接近を止めて着いてきます」
「何が目的だ?」
「恐らくはこの艦の偵察かと」
「ハッキングは受けてるか?」
「今の所は無い。こちらからも仕掛けているが通信系を全て遮断しているようで入り込める余地がない」
「任務完了するまでは何処とも繋がっていない状態か」
「機体の外見で何か分かったことはあるか?」
「この艦に残っていたデータとの照会で機体にあるマークやフォントの形でアラムド連邦軍の戦闘ドローンかと」
「武装は分かるか?」
「旋回式レーザー砲が一門」
「この艦で耐えられるか?」
「余裕です」
「レーザー砲の射程圏内か?」
「いえ」
「主砲は?」
「戦闘ドローンに使うまでは無いかと?」
「捕まえて中身を直接見れないかと」
「なるほど。主砲の射程距離は50kmに及びます」
「そんなにオリハルコンが採れたのか」
50km先まで届くオリハルコンの糸が10本ってかなりの質量になるんだが。
NALLシリーズを揃える過程・・・つまり15年間の間でさえ右手のガントレットをオリハルコン製にしか出来ないほどの希少鉱石なんだがな・・・
それを言うとオリハルコンに比べたら希少度は落ちるがアダマンタイト装甲板で固めたこの艦自体もヤバイ値段になりそうだ。
「鉱山迷宮都市では普通に採掘できたかと」
「あぁ、あそこか」
チャリオットの封印されていた迷宮か。
「人型に変形しなくても主砲は放てるか?」
「いえ。変形しないとスキルを発動する連結回路が繋がっていないので出来ません」
「戦闘モードにしてくれ」
ウィイイン
ヘッドギアとグローブを装着し艦長席でスタンバイする。
「戦闘モードに移行。方舟変形開始します」
ゴゥンゴゥンゴゥン
艦内のいたる所で変形音が聞こえてくる。
「変形完了。何時でもいけます」
「戦闘ドローンが離れていきます」
「遅い、引き寄せ」
グンッ
右腕の主砲から古竜の爪で出来たペンディラムが射出され戦闘ドローンに向かう。
戦闘ドローンのスピードを軽々と超えてオリハルコンの糸で捕獲し引き寄せる。
「格納ハッチ開きます」
「戦闘ドローンにて回収作業を致します」
「緊急通信回線が開いた瞬間に乗っ取りが成功したのである」
危機的状況になった場合は緊急通信をする仕様だったか。
「こちらの情報は漏れてはいないな?」
「データが送られる前に掌握した」
「何かデータを持っているか?」
「命令された事のみしかない。データの記録、通信遮断、危機的状況による緊急通信等だ。最悪自爆する予定だったようだ」
「無人兵器ならではの運用か」
「乗っ取った状態で逆探知は出来るか?」
「乗っ取られたと判断された瞬間通信が切られた」
「軍も簡単に尻尾は出さないか・・・」
「他に情報がないか引き続き頼む。部品とか使えるものは解体してくれ」
「了解しました」
「また、何かあったら教えてくれ」
「「「「「はっ」」」」」
----アラムド連邦軍辺境駐屯基地作戦司令部では----------------------------------------------------
『戦闘ドローンロスト』
『何か情報は取れたか?』
『緊急通信が開かれたと同時にハッキングされました』
『逆探知を防ぐ為に即座に通信を遮断した為、データは取れませんでした』
『コチラの情報を渡してしまっただけとなったか』
『本部に報告いたしますか?』
『相手のデータも無く報告するのもな』
『リリアーナステーション到着まで残り1ヶ月です』
『あ、戦闘地域近くに居たサテライトドローンからデータが送られてきました』
『メインモニターに映せ』
『は・・・ぃ?』
ウィン
『なんだ、コレは?』
メインモニターに映しだされたのは全長200m程の人型ロボットの映像だ。
『データとの照合・・・・一致しました。我々の追いかけているゴーストシップです』
『ハハッ、俺達の目標がコレなのか・・・馬鹿げている』
『常識を覆される気持ちです』
『あ』
ジジッ
映像が乱れ途切れた。
『サテライトドローンロスト、恐らく鹵獲されたかと』
『一瞬細い光線が写ったがアレが攻撃なのか?』
『攻撃かは不明です』
『これ以上の監視はコチラに被害が及ぶな。進路上にあるサテライトドローンの活動を停止しておけ』
『監視ができなくなりますが』
『いづれはリリアーナステーションに来るのだ。それまでに準備して向かえるまでだ』
『魔族に乗っ取られているという可能性は?』
『確かに数十光年先はサンズ帝国軍の領域であって可能性は無くはないが・・・人型に変形する戦艦なんぞ聞いた事がないぞ?』
『男としてはロマンを感じる所ではありますが』
『どんな酔狂な奴が改造したのやら。予定日時の3日前に我が軍は到着するように準備をしておけ』
『編成は如何致しますか?』
『巡洋艦一隻、軽巡洋艦三隻の編成だ』
『かなりの出費になりますが、本部への報告は如何致しましょう』
『俺自身でしたためておく。過剰戦力だろうが未知の攻撃をしてくる以上は警戒は必要だろう』
『分かりました。各艦長等に通達しておきます』
『3日後に出発する様に伝えておけ』
『はっ!』
------------------------------------------------------------------------------------------------
「コチラの情報が流れていた?」
あの戦闘ドローン接近してきた事から1日が過ぎてチャリオットとジャンヌから報告を受けていた。
どうやら、近くに居たサテライトドローンから映像情報が軍に渡ってしまったようだ。
「戦闘ドローンに気を取られていたからな」
「巧妙に隠されていたのを発見できず申し訳ありません」
「件のサテライトドローンは特殊だったのか?」
「調べてみた結果、耐ソナーコーティング素材を使われていてデブリの一種かとレーダーで補足していました」
「通信を開始された時には遅く流出は止められなかった。我の落ち度である」
「未知の出来事に対処できないのは誰でも一緒だ」
「お許しに?」
「今後に生かせ。失敗を繰り返さなければ良い」
「「はっ」」
「道中にあるサテライトドローンはどうしている?」
「恐らく、軍側が活動停止状態にしているのかと」
「全てのデブリにスキャンを掛けて確認しております」
「緊急通信並びに通常通信の電波は全てジャックしている」
「出来るだけ目立つ事なく進みたい物だな」
「我々が友好的であると証明できれば向こうも警戒しないでしょう」
「戦闘ドローンとサテライトドローンの鹵獲は早計だったか」
「軍も馬鹿ではないでしょう」
「仕方ない、向こうの出方を見つつ航行を頼む」
「「「「「「はっ!」」」」」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ようやく、目的地に到着したか」
「居住可能な宇宙ステーション「リリアーナ」です」
俺たちの目の前には全長5kmにも及ぶ円柱形の宇宙ステーションをカメラ越しで捉えていた。
ビィービィービィー
唐突にエマージェンシーコールがなり緊急ランプが点灯する。
「巡洋艦一隻、軽巡洋艦三隻がステーションから出てきました」
「軍艦が四隻も出てきたのは驚きだな」
「巡洋艦から高速通信が入った。どうする?」
「繋いでくれ」
「繋げる」
ビビッ
メインモニターに巡洋艦の艦長席が映される。同時にこちら側の映像も映し出されているだろう。
『僕はアラムド連邦軍辺境駐屯基地所属、巡洋艦艦長のロロ中佐と言います』
映しだされたのは未成年に見える少年である。
艦長帽子や制服を着ているが子供にしか見えない。
『貴艦に対して停止命令を致します。僕達の指示に従って頂きます』
「俺はこの艦方舟の艦長をしているアオイという者だ。どういった内容で停止しなくてはならないんだ?」
『その艦は元々我々のアラムド連邦軍の艦です』
「『アラムド軍法第29条、いかなる事態に陥った場合でも艦がロストした場合は所有権を破棄する物とする』と書かれているが?この場合、コレに該当すると思うが」
『アラムド軍法第29条は過去の法であり現在存在致しません』
「ほぅ」
『艦長、敵からハッキングを受けています』
『なんですって!?敵対行動ですよ!!』
「本当に存在しないか確認のためだ」
『なんてスピードだ』
『防げますか!』
『他の艦にも同時ハッキング攻撃です。我が艦は幾分か防げていますが』
『軽巡洋艦エリーン、乗っ取られました』
『軽巡洋艦ハンナ、乗っ取られました』
『軽巡洋艦ナンナ、乗っ取られました』
『全艦乗っ取られました。かろうじて通信系が生きていますがその他のシステムが向こう側に持って行かれています』
バンッ
『なんて奴らだ』
1分と掛からずに軍艦四隻のシステムを乗っ取るとは思ってもみなかった様だな。
「軍法についてはどうだ」
「アラムド軍法第29条は今でも健在。だが、1ファイルだけ無くなっているデータもある。恐らくコッチに渡す際に見せるために改竄されたデータなのだろう」
「だそうだ。軍法というのは守らねばならないアンタ達の法だろう?それを改竄して提示しようとした?立派な軍法会議案件じゃないか?抗議してやろうか?」
『それだけは!?』
そう思うならやろうとするなよ。
「戦艦一隻がこの付近に現れます」
四隻の軍艦の後方から更に大きい戦艦が姿を現した。
「戦艦から通信が入った」
「繋げてくれ」
ピッ
メインモニターに戦艦のブリッジが映し出される。
これまた小さな子供の見た目だが口髭を蓄えている事からそういう種族なのかもしれない。
『俺はアラムド連邦軍辺境駐屯基地指令のガルド大佐と言う』
「方舟艦長のアオイだ。オタクの部下が軍法を改竄する暴挙に出ていたぞ?」
『ガルド指令、その・・ですね』
ロロがあせった様子でガルドに許しを請う。
『馬鹿もの!俺の命令がちゃんと伝わっていなかったのか!今回の行動は所属不明軍艦の調査だと。四隻で向かわせたのは敵対した場合の戦力であったのだ。よりにもよってアラムド軍法を改竄する行動は目に余る事だぞ!』
『ひぃ!?』
『部下が非礼をした事を謝罪する』
ガルドがカメラ越しに頭を下げる。
「その事はソッチで何とかしてくれ。俺達の調査と言ったな?」
『突如と現れた謎の軍艦に我々も調査はしなくてはならないのでな』
「ふむ。こっちの情報は掴んでいるのであろう?」
『数百年前にロストしたアラムド連邦軍特殊偽装艦とまではな』
「ロストした理由は俺にも分からない」
「敵国の攻撃によって沈んだと生き残った乗組員達から聞き取り調査されたとガンジ様は仰られていました」
『む、誰かね?』
「副艦長を務めさせていただいておりますペンドラゴンと言います」
『人ではないな?』
「自律型魔導人形です」
『オートマタという奴か?初めて見るが』
「オートマタというのは分かりかねますが、恐らく同じカテゴリかと」
「乗組員からは他に情報を聴いたりしていないのか?敵国とかの情報は?」
「恐らく魔族の艦だったらしいとまで。それ以上は口を閉ざしてしまったようです」
『「アラムド軍法第7条、軍に所属する者は作戦中にどんな事があろうが軍機密は守るべし」だな』
「恐らくは」
『ふむ。我々は貴艦に対して検疫をしなくてはならない。いらぬ病原菌等をステーションに運び入れる訳にはならぬのでな』
「艦長、如何致しましょうか?」
「検疫とは具体的に?」
『貴艦内部の調査し殺菌作用のあるガスを使用させてもらう』
「こちらのシステムに対しては何もしないのか?」
『本来ならばする必要があるんだがね』
「逆ハックを掛けられそうだと?」
『ま、そういう事だ。軍艦四隻が掌握されているしな』
『司令、このままだと我が艦も乗っ取られてしまいそうです』
アレにも電子戦をしてるのかい。
「止めてやれ」
「はっ!」
「それと、アッチの四隻も開放してやれ。あくまでも軍法の情報を手に入れるため何だからな」
「承知した」
ピピピッ
『では、検疫する為に衛生隊員の乗る衛生補給艦を送るが何処へつければ良いか?』
「この艦に侵入する必要があるのか?」
『なにか、問題でも?』
「ガスを注入するパイプを伸ばしたりしない物なのか?」
『殺菌は隅々まで行う必要があり人が中に入る必要があるのだ。そこは承知してくれ』
「ガスは人体に問題が発生する物なのか?」
『人畜無害のガスで出来ているから安心したまえ』
「ふむ」
「サイズはどの程度の物になりますか?」
『全長10m程の艦だ』
「では、格納庫にお入りください」
ウィイインン
俺の知らない格納庫ハッチが開き始めた。
そもそも、この艦はブリッジ、居住区、格納庫、動力室等の重要な場所以外はアダマンタイト製で出来ている。
つまり、あんな所に格納庫なんて無かったはずだ。
ピピッ
「戦艦から衛生補給艦が出てコチラへ向かってきます」
「武装は?」
「5cmレーザー単装1基1門です」
「チャリオット、一応乗っ取れるように準備しておけ」
「承知」
数分掛けて衛生補給艦が格納庫へと入っていく。
ビビッ
メインモニターに白衣を着た少年が写る。
『アラムド連邦軍辺境駐屯基地所属、衛生班班長のグラム軍曹です。これから殺菌ガスを放出するであります』
「あぁ、よろしく頼む。まずは格納庫から頼むとしよう」
『はい』
ピッ
「ペンドラゴン、アソコは」
「はい。相手の出方を見るために作り出しました」
「さて、武装兵は出てくると思うか?」
「十中八九かと」
「そうだろうな。その時は」
「始末ですね」
「人質にすればいいだろう。あとあのガスは本当に大丈夫なのか?」
「ガスの解析完了しました。滅菌ガスに違いないですが催眠ガスも混じっている模様」
「通気口は繋がっていないよな?」
「繋がっていませんのでガスはこちら側まで来る事は無いです」
「背中のタンクは全てそのガスなのか?」
「いえ、一部のタンクにはレーザーブレードかレーザーガンが仕込まれているようです」
「非戦闘員らしき人物は全体の何割だ?」
「50名中の2割かと」
「白兵戦する気満々だな」
「如何致しますか?」
「非戦闘員だけを誰にもバレずに捕獲できるか?」
「艦内での捕縛になりますと此処からでは難しいです」
「偽エリア作成でどの位保つ?」
「無限回廊化すれば暫く保ちます」
「無限回廊化?」
「スタート地点とゴール地点の次元を繋げて延々と獲物を迷わせ続ける回廊です。部屋の形を全く一緒にしておけば違和感に気づき辛いでしょう」
「まるで、ダンジョンだな」
「この艦まるごとダンジョンとして機能しているのですよ」
「・・・初耳だぞ?」
「言ってませんでしたね」
「お前の何時も触っている球体はダンジョンコアなのか?」
「はい。なので有りもしない区画が作れるのです」
「合点が言ったが、直ぐに創り出せるものなのか?」
「ダンジョンポイントが大量にあれば作り出せます。現在のダンジョンポイントは17,800ポイントになります」
「多いのか?」
「少ないです。ダンジョンポイントを増やす方法で唯一取れているのが中にダンジョンとは関係ない生命体が1時間居て5ポイントずつ増えるだけですので」
「・・・俺の事だよな?」
「はい。艦長が唯一の該当者でコレまでの3ヶ月間に渡り10,800ポイントを加算してくれました。多い分はガンジ様たちが居た時代の残り分です」
「なるほど」
「ダンジョンとしては若すぎて無茶は出来ませんが、そうは言ってられませんので」
「とりあえず、非戦闘員の確保は任せるとして戦闘はサンとジャンヌに任せる。敵を無力化して来てくれ」
「「はっ!」」
ガシャガシャガシャ
サンとジャンヌがブリッジを出て行く。
「なぜ、あの2体を?」
「室内戦じゃ近距離型が専門だろ」
「なるほど。アルテミスの弓とチャリオットの盾では不適切ですね。私は?」
「戦闘指揮官が前線に行くと?」
「これは失礼しました」
「お前は非戦闘員の確保と2人に指示を出してくれ」
「はっ!」
「アルテミスとチャリオットは抜けた分をカバーできるか?」
「お任せを!」
「承知」
こうして非戦闘員を確保しつつ、戦闘前提で乗り組んできた連中を捕らえにサンとジャンヌが動き出した。
時期を見計らって敵がレーザーブレードとレーザーガンを取り出し偽ブリッジに突入したのを確認し作戦は始まった。
・・・
・・・・・・
「で、コレをどう説明してくれるんだ?」
戦闘員53名、非戦闘員15名の合計68名を確保して戦艦に居る司令官へと通信を繋げる。
「そちらの要望は本艦の検疫と言われた。だが、衛生班に混じって戦闘員が紛れ込みブリッジ制圧をしかけてきた説明を求めるぞ」
『これは手違いを』
「手違いで済まされると思っているのか?」
『衛生班の班長と話がしたい。グラムもソコに居るのだろう?』
「面会は全面的に謝絶だ。部下の行動も指揮できない様じゃ司令官失格だと思うんだがな?」
『ぐっ!貴様等に何が分かる!!』
「分からんよ。宇宙に進出してたった3ヶ月しか航行してこなかった俺にはな。だが俺の部下達はちゃんと動いてアンタの策略は潰して貰えたが?アンタよりは優秀かと思うぜ?」
『人形ごときを操っていい気になりおって!』
「それは聞き捨てにならない言葉だぞ?」
『事実を言ったまでだろう』
「これが軍のやり方か?お前達が守っているリリアーナステーションの連中はどう思うのだろうな?」
ウィン
ウィンウィンウィン
俺達と相手側のメインウィンドにリリアーナステーションに設置しているカメラ映像を流してやる。
巨大なスクリーンに映る軍艦と俺達の艦、どちらの艦長の写ったブリッジ内画面。
ソレを通行人達が眺めている。
「これがアンタ達が信用と信頼している軍のやり方だ。たかだが正体不明艦を調査するのに姑息で汚い行動を取らせる司令官が在住の軍にアンタ等は守られている様だ。正義をかざすには思慮が浅いようだな」
『なっ!?なっなっなぁあああああ』
「後はお前達が信用を取り戻しな。幸い検疫は完了しているようだから通らせて貰うぞ」
ゴゴゴゴゴッ
俺達の方舟が動き出し軍艦隊の横を通り過ぎる。
「リリアーナステーションより通信が入った」
「繋げ」
『正体不明艦につげます。ステーションへの入港が出来ませんのでお帰り下さい』
「艦を登録しに来たんだが、ここでは受け付けてくれないのか?」
『軍艦になりますと軍へ申し込んで下さい』
「これは軍艦ではなく民間船になるんだが」
『全長200mを超える民間船となりますと何処か企業の所有物となります』
「船には規模とかあるのか」
『民間船までの規定サイズは全長50m、全高15mが限度となります』
「4分1サイズか・・・」
「致し方ありません。カットしましょう」
「少し待ってくれ。・・・カット?」
「余分な部分を切り離します。規定どおりのサイズに再調整します」
「そんな事も可能なのか」
「任せてください。重要な部分以外を残します。カットされた素材や余分な戦闘ドローン等はダンジョンコア内に収納します」
「そんな機能も備えているのか」
「はい」
「任せた」
「はい」
バキバキバキバキバキバキッ
方舟の艦体が軋み収縮を開始する。
余分なアダマンタイトの艦体を切り離し最低限必要な区画を残して言われたサイズに変更を掛けていく。
ダンジョンコアの万能さには驚きだ。
・・・
『・・・』
「あー、リリアーナステーション聞こえるか?」
『え、あ、はい!』
「見ての通り、そちらの要望に答えた。我が艦は軍艦ではなく民間船だという事を再認識して貰いたい」
『畏まりました。新規登録には時間か掛かりますので48番ドッグに着港したら中央受付へ来て下さい』
「分かった」
『48番ドッグへの誘導赤外線を発射いたします』
「誘導赤外線を受信」
「誘導に従い移動を開始する」
ギィイイ
ガコンッ
ドッグに艦が固定されて橋が出入り口に設置される。
「やっと到着か」
「ここから如何なさいますか?」
「情報収集だな。チャリオットはここで待機し電子戦の防衛を頼む。同じくサンも侵入者が出てくれば迎撃して独房に入れておけ」
「はい!」
「承知」
「ペンドラゴン、アルテミス、ジャンヌは俺と共にステーション内に行くぞ。ジャンヌには独房の兵士達を連れてきてくれ」
「「「はっ!」」」
こうして俺達は無事に第一目標のリリアーナステーションへとたどり着いた。
お疲れ様でした。




