38話「新たな武器」
カァンカァンカァン
あちこちで鉄を叩く音が聞こえる。
ここはトランブル領の隣の領に位置するトライアングル領のというアンガーの都市だ。
トランブル領とトライアングル領は元を辿れば1つの領だったが子孫の意向によって2つの領に分かれた。
以降2つの領は互いに助け合って今の時代まで残っている。
トランブルは農業、トライアングルは工業が盛んで、農作物をもらう代わりに金属製品等を渡しているそうだ。
アンガーの街は鉄工場がアチコチに存在しており鉄製の日用品から武器や防具が日々作られている。
豊富な鉄鉱石に職人達がこぞって集まった出来た都市。通称、工房都市と呼ばれている程の大都市である。
カァンカァンカァン
工房が幾つも店を開きライバル店と切磋琢磨し職人の力を高め合っている。
「ん?」
何時もと違う道を行き隠れた工房に視線が移りある物に目が止まった。
・絹糸のリール(鉄製)
絹の糸で出来た糸使い専用武器。
攻撃力:4
防御力:7
耐久値:150/150
装備可能職業:糸使い
ランク:クリエイト
品質:2
「これは・・・」
鑑定でそれが何なのか瞬時に読み取り手に取ろうとする。
『小僧、ソレに触れるでねぇぞ』
ギョッ
視界の端に子供くらいの背丈の人物が葉巻を吸いながら座っていた。
『ここの商品はワシが作った子供達でな、よそ者の小僧が触れていいものじゃねぇ』
「これをアンタが?」
・鋼鉄の短剣
・鋼鉄の長剣
・鋼鉄の大盾
・鋼鉄のプレスプレート
・鋼鉄のレギンス
・鋼鉄のアームガード
・鋼鉄のフォールド
・鋼鉄の大剣
ザッと見ると他の工房には無い鋼鉄製の武器や防具が並んでいる。
『目上のもんに聞く口じゃねぇな。まずはソイツを直してから出直しな』
「待て、アンタはコレが何に使う物なのか分かってて作り出したのか?」
『ガハハハッ。ワシが作り出した物の使い道を知らんとでも?小僧、死にたいのか?』
職人の眼で俺を見据え少し殺気をだす。
「この国、いやこの世界ではこの武器が使えるジョブは廃れたんだろ?」
『・・・ほぅ。続けろ』
「糸使いっていうジョブじゃないと扱えない・・・」
『小僧、博識じゃな。この武器が糸使い用の武器だと見抜いたのは始めてじゃわい。歴史にでも詳しいのか?』
「そんな訳じゃない。使われない武器を作り続けているのか?」
『馬鹿もんがぁ!』
唐突に怒鳴り声で怒られる。
『コレはワシ等ドワーフ族に口伝される武器じゃ。コレを作り出せなくて職人が名乗れるかぁ!』
なぜ、この武器にそんな拘りがあるんだ?
『ワシ等の先祖である『鍛冶神』ガンジ様がドワーフ族に広めた物じゃ』
「鍛冶神?」
『千年も前に勇者達に伝説の武器や防具を作り出したドワーフ族の頂点に立った男じゃ。この国の宝物庫にも収められている聖剣アポカリプスや魔剣ディランダルはその代表格じゃ』
「聖剣・・・魔剣か」
『そうじゃ。そして第五の勇者と呼ばれておった糸の勇者の武器を後世に伝えておる』
「糸の勇者、剣の勇者・拳の勇者・賢の勇者・癒の勇者の四大勇者なら知っているが」
『それはヒト族が残した歴史じゃろう。ワシ等ドワーフ族は五大勇者として受け継いでおる』
「糸の勇者というのは、どんな活躍をした人なんだ?」
『ワシ等の伝承によれば魔大陸への道を見つけ出した勇者だと聞いておる』
「魔大陸」
『千年前に勇者達が討伐した魔王の領地じゃ。海の下に広がる『フィレウス大迷宮』への入口を糸の勇者が見つけ出したのじゃ』
フィレウス大迷宮・・・どういう事だ?
『ここより遥か北に位置する拳の国ウリスに大迷宮は存在すると言われておる』
「言われている?」
『ワシ自身は行ったことがないからの。ドワーフ族の言い伝えじゃ』
「そうか」
『・・・ふむ。小僧は冒険者じゃな?』
「この格好で商人に見えるか?」
コボルトの皮を使った装備だ。
『見えんのぉ。して、この武器に興味あるようじゃが使い方まではワシもよう分かっておらん』
さっきは知っている素振りだったんだがな。
「手にとってもいいか?」
『壊すでないぞ』
どうやら、持つことは許されたようだ。
カチャッ
「ふむ」
鑑定ではこの装備の情報は分かったが違和感がある。
手の甲から飛び出ている絹糸を指で挟んで掴む。
グッ
そこから思いっきり引っ張ってみる。
バツゥン
絹糸が即切れた。
『小僧!何をしておるんじゃ!!』
「それはコッチのセリフだ。糸が出てこないんじゃ、ガントレットモドキと変わらないだろう」
『当たり前じゃ、コレにはセーフティが掛けられておる。糸が勝手に出て行かないためにのぉ。貸してみろ』
パシッ
リールを奪い取られて手首部分に指を這わせる。
カチンッ
『コレで糸の出し入れは出来るようになったぞ』
シュルシュルシュル
先ほどまでと違い絹の糸はスンナリと出てきた。
『しかし、ココから糸が出てくると分かったのぉ』
「まぁな」
『じゃぁ、この糸でどうやって攻撃するのか知っておるか?ワシ等は作ることが出来るのじゃが使い方は失伝しておる』
「適正ジョブじゃないと使えない。剣士でもない奴が剣を振り回したところで鉄の棒を振っているのと同じ事だ」
『ふ、ふむ。長年の謎が解けるかと思ったのじゃがな』
「これはフリーサイズなのか?」
『まぁの。誰でも使えるように設計されておる。このベルトで固定する方式じゃ』
リールには2箇所で留めるベルトが取り付けられている。
「少し装備させてもらうぞ」
『うむ・・・・・む?』
カチャカチャッ
右手に2箇所ベルトで止めて固定する。
ブンッブンッ
少し振り回してもリールはズレることは無い。
「コレで良いか」
腰に差していたダガーを取り出す。
シュッ
それを通りに向かって投げる。
『お、おい!』
ドワーフの店主が慌ててダガーの飛んでいく方向に目を向ける。
あのままでは通行人の誰かにダガーが突き刺さるコースだ。
シッ
ヒュオッ
超高速でリールの絹糸が飛び出てダガーへ向かう。
シュルッ
ダガーの飛ぶ速度よりも早い絹糸は即座に到達、糸の先端がダガーの持ち手に絡まる。
クンッ
スコンッ
糸がダガーを引き戻し近くの柱に突き刺さる。
シュルッルウルルゥ
その後、絹糸は自動的にリール内へと戻る。
ガコッ
ダガーを引き抜き腰に戻す。
「やっぱり直じゃないと精度は落ちるか」
これまで魔力糸で戦っていたし、糸に魔力を這わせて操作するのに若干のラグが発生しダガーが柱に突き刺さってしまった。
『な、な、なんじゃお主。コレを使いこなせるのか?』
「使いこなせていないさ」
『今のは糸使いのスキルじゃな?』
「初歩も初歩だがな」
『ガハハハハハッ!』
ドワーフの店主は大声で笑う。
『長年鍛冶屋をやっておったが遂に現れよったの!小僧、いや・・・名前は何と言う』
「名乗る前にアンタが名乗れよ」
『ガハハハハッ、これは失礼したのぉ。ワシはガンダルフ。鍛冶師のドワーフじゃ』
「それは見れば分かる。俺はアオイ、傀儡師のアオイだ」
「傀儡師?」
「糸使いの上級職だと思ってくれ」
「なんと!?糸使いじゃなくて更なる上位職とな!?」
「そういう事だ。で、さっき遂にと言っていたが?」
「そうじゃ、ドワーフ族の言い伝えに『糸使い現れた時、我が聖地へと訪れるように』と残されておる」
「聖地?」
「我らが先祖『鍛冶神』ガンジ様の遺産がソコに眠ると・・・」
「案内してくれるのか?」
「それは無理じゃ」
「は?」
「先程も言った筈じゃが、ワシは生まれてこの方この国から出たことすら無いのじゃ。言い伝えは知っておっても場所までは知らぬのじゃ」
「ドワーフの聖地の場所が失伝でもしているのか?」
「失伝はしておらぬ」
「知らないって事は失伝しているんだろう?」
「ワシは言い伝えを知っておるだけじゃ。が、ドワーフ達の住まう鉱山に向かうことじゃ」
「どういう事だ?」
「ドワーフの聖地は鍛冶師の中でも最高位の鍛冶職人の中でしか伝わっておらん。誰もが知っておったら聖地はいつか暴かれてしまうからの。ワシ等のような一般鍛冶師は糸使いを見つけるための草に過ぎんよ」
「つまり、鉱山へ迎えと?」
「この近くの鉱山じゃないぞ。話によれば癒しの国にあると言われておる」
「また、曖昧な答えだな」
「容易にたどり着けないようになっておるのじゃ。ドワーフ族は各地に散らばり情報を少しずつ持つ」
「辿れという事か」
「ま、そうじゃな。どれ、ワシのできる限りの装備を整えてやるかのぉ。と、言っても此処では鋼鉄製が限界じゃがな」
「良いのか?」
「『糸使い見つけし時、手助けするべし』とコレも言い伝えじゃ」
「分かった。幾つか注文を付けるが構わないが?」
「できる限りの事はするの」
こうして俺は糸使い専用の武器を手にする事となった。
「素材が足りんわい」
「とって来よう」
「鋼鉄に必要な鉄と銅の鉱石を各種20個、絹糸なんてヤワな物じゃなくてアイアンタラテクトが西にある森の奥地に生息しておる。そやつの糸を取ってくるのじゃ。ソイツはオマケでくれてやる」
「分かった」
攻撃力からしてみれば心もとない絹糸のリールだが、元のステータスが高いし問題ないだろう。
絹糸のリールを装備し俺は言われた品を取りに向かう。冒険者ギルドで正確な情報を手にして2日程離れている鉱山、4日離れている西の森へと赴く。
カァンカァンガイィイン
ピッケルで鉱脈を掘りながら着々と鉄鉱石や銅鉱石を手に入れる。
本来なら熟練の鉱夫でしか見分けられない鉱脈なんだが、俺には鑑定の力を発揮させて楽々とポイントを的確に見定められる。
ゴロッ
「これで約束の個数分だな」
・銅鉱石(20個)
・鉄鉱石(20個)
インベントリに仕舞って個数のチェックをする。
ん?
「そこに隠れている奴、出てこい」
狭い坑道は曲がり角や岩肌の影に隠れやすいポイントがいくつも存在している。
カンテラの光が届く範囲も限られている。
『ガハハハッ、よく分かったのぉ』
「ガンダルフ?」
『ワシはガンダルフと違うわい。人族はよく人を間違えるのぉ』
ガンダルフに似た別人という奴か?
『ワシはガンドルフ』
「名前が似すぎだろう」
「よく言われるのぉ。息子じゃし」
「ガンダルフの息子?」
「なんじゃ、その疑っている眼は?」
「親子にしては年が離れていないように見えるが」
「これでも40歳は離れているわい」
「それで、俺に何のようだ?」
「親父から手紙を貰ってのぉ。お主が糸使いだと聞いた」
「で?」
「鉱山について教えてやってくれと書いてあったが、その必要はなさそうじゃ。態々こんな人気のない坑道を選んでいるのにも関わらず鉱脈を見つけ出すのじゃからな」
「心配無用だ」
「それでこそ言い伝え通りの糸使いじゃ。これで親父も・・・」
「なんだ?」
「いや、何でも無いぞい。鉱石が集まったんなら次は西か?」
「あぁ」
「ワシが鉱石を先に届けておこう」
「アンタとは今日始めて会った。そんな奴を信用しろと?」
「ワシが鉱石を持ってネコババするとでも?」
「ガンダルフの息子ってのも怪しいしな。手紙を持っていたとしてもガンダルフの筆跡は分からん。息子の存在も聞いていないしな」
「ガッハハハハッ!そこまでの疑いようじゃワシに預ける事は出来んの。それならワシはここいらで退散しようかの」
「待て、その格好からすると戦斧使いなんだろ?」
ガンドルフの背中には背丈と同じ位の大きく重厚な斧が掛けられている。
「ワシ等ドワーフは鍛冶師でありながら誇り高き戦士じゃ。ドワーフ特有の怪力を発揮できる武器がコレという訳じゃな」
ブォオン
ガンドルフは背中の戦斧を一振りして風が俺の所まで届く。
この狭い坑道内で壁にぶつける事無く振れるだけでも熟練の戦士だと言う事が分かる。
「看破」
【看破】
名前:ガンドルフ
レベル:38
種族:ドワーフ
メイン職業:戦斧使い(Lv27)
サブ職業:鍛冶師(Lv15)
体力:2,041/2,041
魔力:438/438
攻撃力:348(+50)
防御力:310(+41)
各種装備品:鋼鉄製の戦斧、鋼鉄のアーマー、鋼鉄グリーブ
所有スキル:斧術、破砕、薙ぎ払い、一斧両断、兜割り、ショックインパクト、観察、注視、鑑定、鍛冶師(銅/鉄/鋼鉄)
状態:健康
レベル38の戦闘系ドワーフといった所か・・・ガンドルフというのも偽名じゃなかった用だ。
「ガハッ!無遠慮にワシを看破スキルを使ってきおったの」
「嘘は言っていないようだな」
「疑り深いのぉ。まぁ疑念は晴れたじゃろう。それでワシを呼び止めた理由は?」
「その力を貸してもらいたい」
「理由を聞いても?」
「俺はアンタを信用した訳じゃない。なら如何すればいいと思う?」
「一緒に居る事じゃな」
「もし、アンタが良ければの話だけどな」
「あい、分かった。ワシも無駄足にならなくても済むしのぉ。西の森に向かうかの」
「あぁ」
一時的にガンドルフが仲間になり俺達は西の森に居るであろうアイアンタラテクトが居る場所へと向かった。
・・・
ギシャァアアアア
ギチギチギチ
西の森に生息するアイアンタラテクトを沈める。
「蜘蛛が糸に絡め取られてるなんて滑稽じゃのう」
アイアンタラテクトは絹の糸で足が絡め取られて身動きがとれなくなっていた。
ソコをガンドルフの戦斧で叩き切るだけの作業であった。
・アイアンタラテクトの甲殻
・アイアンタラテクトの爪
・アイアンタラテクトの目玉
・アイアンタラテクトの糸
一匹で複数の素材が手に入る。
「異空間持ちじゃと楽じゃなぁ」
素材は全て俺のインベントリに入る。
ガンドルフはソレを見て異空間と呼んだ。
異空間とは別の次元を作り出して物を出し入れするスキルの事で所持者は少ないと言う。
勘違いしている様だが放っておこう。
ある程度のアイアンタラテクト素材を手に入れて俺達は帰路に立つ。
後は作ってもらうだけである。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それから3日程時間が経ち俺は再びあの店に向かう。
ザッザッザッ
カランカラン
「ガンダルフ、出来たか?」
「じゃかしぃわ!小僧」
店に入るなり怒鳴られる。
「どうしたんだ・・・」
3日前に素材を引き渡した時と違い、ガンダルフの髪や髭が黒から白に変わっていた。
心なしかシワが増えているように見える。
「ほれ、コレが主の求めていた物じゃ」
ゴトッ
カウンターに金属製の篭手が置かれる。
「さすがドワーフ」
・鋼鉄のワイヤーアンカー
【アイアンタラテクト】から糸が作られている
重量感ある鋼鉄製のガントレット型糸使い専用武器。
糸は1本まで操作可能である。
攻撃力:14
防御力:10
移動速度-10%
耐久値:200/200
装備可能職業:糸使い
ランク:クリエイト
品質:2
「あったぼうよ。ドワーフの一族が口伝し続けた一品だからよぉ。ガハッ、ゲホォッ」
声の中に張りが欠けている。
「おい、大丈夫か?」
「心配するこたねぇぞ。こいつぁ、ワシの最後の息子じゃぁ」
3日前と違い覇気が感じられなくなっている。
「一体どうしたんだ?」
「じゃから、心配無用じゃぁ。ワシはワシのやる事をやったまでの事じゃ。ゴホッゴホォッ」
「この3日間で変わり果て過ぎだろ!」
「寿命じゃから仕方ないのぉ」
「寿命?」
「ワシはこう見えても150歳をとうに超えておる。ドワーフ族の寿命は既に過ぎてしまったのじゃぁ」
「じゃぁ」
「コレが生涯最後の仕事じゃぁ。最後にいい仕事をして貰った。わかったらトットと出てゆけ!ワシからの情報は全て話したんじゃからな!」
ドンッ
バタンッ
ガチャッ
カウンターに置かれたワイヤーアンカーを抱えさせられて店から追い出された。
鍵まで掛けてまで徹底している。
ドワーフ族がどんな生体なのか分からないがこれ以上居てはいけない気がする。
俺はワイヤーアンカーを手に宿屋へ帰る。
カサッ
宿屋でワイヤーアンカーを改めて見ていたら腕を入れる穴に紙切れが入っていた。
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小僧、コレを読んでいる頃にはワシは天寿を全うした頃じゃ。
っと、勘違いしないでくれ。ワシの寿命は既に尽きかけておった。
小僧が現れた事によって再び昔の鍛冶師魂が再燃焼して最高の作品が作り出せた。
むしろ感謝すらしておる。有難うのぉ
先日、癒しの国に行けと言ったが、正確には鍛冶師達の集う鍛冶都市「ウィーリア」に向かうと良い。
そこで、餞別にくれてやったコレをドワーフ族に見せるが良い。ガンダルフの紋章が小僧を導くじゃろう
これ以上書く事はワシには無い・・・最後にもう一度言うが、小僧のせいではないのだ。
気にせず鍛冶都市へと向かうが良い。
糸の勇者使いアオイ様の加護があらん事じゃ・・・小僧もアオイと言ったか、偶然も困ったものじゃ
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クシャッ
読み終わり紙を握りつぶす。
「有難うよ、ガンダルフ」
俺は決してコレを読んでガンダルフの元へと行かない。
付き合いが長い短いとかではなく手紙の筆跡や内容でガンダルフは一人で逝くのだと悟ったからだ。
・・・・・・
後日、俺はガンダルフの店を訪れガンドルフに看取られて静かに逝ったガンダルフが横たわる。
ガンダルフの死後、葬儀をする為に周囲の職人達を集める事となった。
周囲の工房によると、ガンダルフの店はこの街最古の工房で最高の武器や防具を作り出すドワーフとして名高かった。
そんな御仁が唐突に亡くなった事は直ぐに広まり、領主まで出てくる程大きな話となった。
葬儀の喪主はこのトライアングル領、領主ヤマネ=トライアングルが表立って指揮していた。
街中からガンダルフを慕っていた民が参列をする程だ。
1週間に渡る葬儀を終えて、俺も旅立ちの用意を済ます事が出来た。
ガシャッ
右腕にはガンダルフの作り出した鋼鉄のワイヤーアンカーを装備している。
「出発するかの」
「なぜ、居る?」
街の門にガンドルフがフル装備で待ち構えていた。
「コレも縁じゃしな」
「着いてくる気か?店はどうするんだ?」
「親父の店は放置じゃ。残っていた武器防具は領主に提供したしの」
「それでいいのか?」
「ワシが継ぐには技術が足りんよ」
「鋼鉄製武器までは作れるんだろう?」
「ワシは親父のサポートは出来るが、制作まではできん。ワシは戦士よ」
ガシャンッ
戦斧を鳴らす。
「まぁ、前衛は欲しかったからな」
「これでもDランク冒険者じゃ。役には立つじゃろ」
「D+冒険者のアオイだ」
「改めてガンドルフじゃ」
ガシッ
互いに握手し癒の国ネリスにある鍛冶都市「ウィーリア」へと旅立った。
お疲れ様でした。




