37話「スタンビート」
「スタンビート現象?」
「はい。近々ゴブリンスタンビートが発生する見込みだと報告が上がっております」
順調にランクを上げていた時に受付嬢のミーアから伝えられた。
「ゴブリンが大繁殖したってことか?」
「はい。場所は街から北西方面にある森にて異常繁殖が認められました」
「誰も行かなかったって事か?」
「あそこの森は街から結構離れている事。途中で野営する事。旨みがない場所の3拍子が揃っているので」
「こことしての対応は?」
「ゴブリンを少なくても倒せる冒険者たちや街に駐在している兵士達に声を掛けています。隣街の冒険者ギルドにも増援要請をしています」
「規則的に断れるものなのか?」
「ギルド規則『9.義務:魔物の襲撃などで国より要請を受けた場合、冒険者はそれに従う義務がある。また、緊急事態において、冒険者はギルド職員の命令に従う義務がある。』ですね?」
「あぁ」
「今回は後者に当たりますので熟練冒険者の方には強制的に参加して頂いていますが、F+ランクになったばかりのアオイさんの場合は前線ではなく後方支援か街での避難誘導等に回ってもらうかと思います。自信があるのであれば前線に趣いてもらうほうがコチラとしては嬉しいのですが・・・如何いたしますか?」
「もう少し聞いてからだな。ゴブリンスタンビートって事はキングやクイーンといったリーダー格が出てきたって事か?」
「偵察からのゴブリンの規模は500なのでゴブリンジェネラルがリーダーではないかと推測が立っています」
「キングやクイーンの場合だと規模は?」
「およそ1,500から2,000だそうです」
「あの森には何かあるのか?」
「森という以外は特になかったはずですが?」
「なるほど・・・現段階の戦力は?」
「最高でB-が2組、C+~C-が17組、D+~D-が36組、F+~Fが7組の124名。F-以下の冒険者には逃げるか下働きしてもらうかを選んでもらっています」
「A級は居ないのか?」
「あいにく街に在籍していますA級冒険者は遠征中です」
「B級も2組が今回のトップとして指揮するのか?」
「総指揮はギルド長が取ります。細かい指示はB-冒険者が伝達する形になります」
「街の防衛設備は?」
「街の北西に位置する草原にて迎撃する予定ですね」
「迎撃態勢じゃなくて、防衛設備の方だ」
「と言いますと?」
「130程度で500に勝てるとでも?」
「仰っている意味が分かりかねます」
「数じゃコッチが不利だ。決定打となる戦略があるのかって事だ?」
「ぶつかり合うだけだと聞いていますが?」
「軍レベルの統率が取れた連携をするなら良いだろう。が、冒険者達はPT毎で動けても軍団で動ける物なのか?」
「その為にギルド長やB-冒険者が陣頭指揮を取るのです」
「それで冒険者達が足並み揃えてくれるのか?」
「いえ・・・」
「指揮はどうやって伝達する?」
「風系統の拡散魔法による物です」
「そういった魔法はあるのか。ゴブリンスタンビートが発生する時期は?」
「偵察が戻ってこないので正確な日取りは分かりませんが数日以内には起こると見込んでいます」
「そうか・・・」
このまま、ギルドの指示に従っていても結果は見て明らか。
アイツ等と徒党を組んでいれば話は別だがな・・・
「今回は参加しない。別の街へ避難する」
「何故?」
「何故とは?」
「アナタ程の実力者が逃げるのですか?」
「可笑しな話だ。F+冒険者が実力者なんて事はないだろう?」
「その冷静な判断、戦力の分析能力、戦略の有無確認、素で実力が備わっているのに」
「成人したばかりの者に期待しすぎじゃないか?」
「今必要としているのはアナタのような人物なのです。逃げるのですか?」
「いくら実力があろうが数の差は侮れない。どこかで均衡が崩壊するのはわかっている。俺の命は掛けられないだけだ。邪魔したな」
「ちょっと!」
ミーアの静止を振り切り俺はギルドを出ていく。
「数日以内か・・・今日かもしれないし、明日かもしれないか・・・」
俺は南門を通りグルリと東側から北西の森へと向けて歩き出す。
「≪サモン(駿馬)≫」
ブワッ
何もない空間から白馬が現れる。
「種族スキルにあっから試したが駿馬が召喚できるとはな」
グッ
ヒヒィン
駿馬の背に乗り北西の森を目指す。
「待ちな!」
が、誰かに呼び止められた。
「只者じゃねぇとは聞かされたが、本当に只者じゃねぇのな」
視線を後ろに向けるとヤンジャンが仁王立ちで立っていた。
「直接的な接触はするなとは言われていたがコレばかりは声を出させて貰った。お前さん、死ぬ気か?」
「どういう意味だ?」
「その目だ。覚悟を決めた目をしている。そんな目ができるのは熟練冒険者である証拠。年齢に削ぐわねぇ態度もそうだったがその目だけは俺は見逃さなかったぜ」
「何を言っている?」
「数の不利?お前さんが突っ込んでいって勝てると本気で思っているのかよ?」
「勝つ気は無い。統率者を潰せばいいだけだろ?」
「結局突っ込むことに変わりないだろう。たった一人で何が出来るってんだ?」
「それはアンタに関係ない。俺は隣街に避難するだけだ。じゃぁな」
「お、おい!」
馬を走らせ一気にヤンジャンを引き離す。
「なんて速い馬だ!だがC+冒険者をなめるんじゃねぇ!!」
ヤンジャンは全力ダッシュで俺を追いかけて来た。
「人の速度じゃねぇだろ」
必死の形相で俺を追いかけてくる。その速度は普通の馬より速い、スタミナが保つのが気になるが馬を止める気はない。
ついて来たければ着いてくればいい。
・・・
・・・・・・
街から離れて4時間経過した頃、周囲は暗闇で見づらいが北から大勢の足音や唸り声が聞こえ始めた。
「ゼェハァゼェハァゼェハァ」
コイツもスタミナ切らさずによく着いてこれたな。
ヤンジャンは全身汗だくだが4時間全力ダッシュを行って付いてきた。
【看破】
名前:ヤンジャン
レベル:45
種族:ヒューマン
職業①:武道家(Lv32)
体力:940/1,780
魔力:557/557
攻撃力:289(+45)
防御力:214(+32)
各種装備品:鋼鉄のナックル、武道家の胴着、武道家のズボン、黒帯
所有スキル:正拳突き、五月雨突き、足払い
状態:健康
これがC+冒険者のステータスか・・・体力が削れているのは全力ダッシュ分という事か。
スタミナ枠というのは存在せず体力の一部として数えられている訳か。
【看破】
名前:なし
レベル:5
種族:駿馬
体力:480/500
魔力:0/0
攻撃力:10
防御力:5
所有スキル:消耗軽減、突進、逃走、スタンピング
状態:健康
試しに駿馬を看破すると意外にもスキルを4つ持っていた。
あの距離で体力が20しか減っていないのは消耗軽減スキルだろうな。
「千里眼」
ブワッ
視界が上空に移動し高い位置からゴブリンの集団を見下ろす。
【ゴブリン(Lv2)】
【ゴブリン(Lv3)】
【ゴブリン(Lv5)】
【ゴブリン(Lv8)】
千里眼と併用して鑑定を発動させ簡易ステータスを見ると視界一杯に現れた。
【ゴブリン2,679匹】
「ゴブリンの数は・・・・2,679だな」
「2,679だと!?500って話だろ!!偵察者は何をやってたんだ!?」
「ゴブリンキングだった話だな。この話を街に戻って報告するか?」
「今から戻っても間に合わねぇ。付き合うっきゃねぇだろ」
「そうか・・・死にそうなら迷わず逃げろよ」
ット
駿馬から地面に降りつ立つ。
「コイツはどういう馬なんだ?普通の馬とは違っている様に見えるが」
「召喚獣の一種だ。召喚術師は知っているのか?」
「召喚獣!?話に聞いていたが実在したのか!」
「居ないのか?」
「今となっちゃ伝説の職業の1つだ。召喚術師1人いるだけで戦争がひっくり返るとかって噂もある」
「1人だけじゃ戦力にはならんぞ。数百人も居れば話は別だが」
「遥か昔、大召喚術師と呼ばれた鍛冶職人ミモザがソレだと聞いているが?」
おい・・・大召喚術師で鍛冶職人のミモザと言えば一人しか思い当たらねぇぞ。
というより、この世界はあのゲームを現実化した世界という事か?
判断材料が少なすぎる。
ガチィン
ヤンジャンが両手のナックルを打ち合わせる。
「死ぬなよ」
「おう。俺は左側を担当するぜ」
「俺は右側を担当する」
「次合う時は終わった時だ」
「あぁ」
ダッ
ヤンジャンが左側の群れに突っ込んでいった。
「じゃ、俺は右側を突破するか。駿馬、お前はヤンジャンを守ってやれ」
ブルルゥルン
横に控えていた駿馬がヤンジャンの後に続くように走っていった。
アイツは頭がいいし大丈夫だろう。
最悪ヤンジャンをつれて逃げてくるだろう。
「魔力糸」
ブワッ
俺の周囲に10本の魔力糸が漂う。
「やるか」
ドドドドドドドドドッ
100m程までゴブリンの大群は押し寄せてきていた。
「逃げるなら今のうちだぜ。ゴブリン共、斬糸!」
ブワッ
直径100mの斬属性を乗せた魔力糸が左右から振るわれる。
ギャァアアアア
一撃で俺を中心に半径50mの半円状に居たゴブリン達が絶命し群れに穴を開けた。
「おらあぁああ」
ブルルルゥ
ヤンジャン側では駿馬が付かず離れず連携しながらコブリン達を仕留めていく。
俺とヤンジャンで削れるだけ削る。取り逃しても街に滞在している冒険者達が何とかするだろう。
「まだまだ、行くぞ!」
・・・
・・・・・・
「千里眼!」
戦闘開始から2時間が経過し視界を上空に上げる。
日はとっくに登りきっている。
ゴブリンの大群を割りながら俺は突出して殲滅を続けていた。
ヤンジャンと駿馬は後方700m位で何とか戦っているがそろそろ体力が限界に近づいている。
ピィイイイ
指笛を吹くと駿馬がヤンジャンの襟首を咥えて持ち上げる。
「おい!」
ヤンジャンが暴れているが駿馬はヤンジャンを連れて俺の所へと向かってきた。
「俺はまだ、戦えるぞ!」
【看破】
名前:ヤンジャン
レベル:45
体力:230/1,780
魔力:120/557
状態:疲労(中)
「無理をするな。お前の所は後ろの冒険者達に任せておけ」
ドドドドド
街で結成された冒険者達が各々の武器を持ってやってきていた。
ヤンジャンの事は無視して左側のゴブリン達は前進を始める。
ぶつかり合うのは時間の問題ないだろう。
【ゴブリン750匹】
「かなり削ったな」
「まだ750も居やがるのか」
「残りも潰すぞ。ヤンジャンは駿馬と一緒に休んでいてくれ。体力が戻ったら参戦してくれ」
「申し訳ねぇが、任せた」
ブルルゥン
「俺が残りを潰す」
・・・
・・・・・・
それから1時間が過ぎゴブリン達を率いている存在がようやく姿を現した。
【看破】
名前:ゴ・ガアル
レベル:42
種族:ゴブリンキング
体力:5,526/5,526
魔力:595/595
攻撃力:769(+25)
防御力:769(+20)
各種装備品:サーベル、獣の毛皮、獣の腰巻
所有スキル:一刀両断、王者の咆哮、薙ぎ払い
状態:健康
「モンスターに名前がついているのか」
「ゴブリンキングってだけでも厄介なのにネームドモンスターかよ」
「名前の有無で強さが変わるのか?」
「変わる。名前がある場合は全能力が跳ね上がるって話だ。自然発生でネームが発生する事は無い筈だ」
「ゴブリンキングにネームをつけた強者が裏にいるって事か?」
「そこまで分からん」
「ま、やるまでだ」
ヒュォンッ
風切り音が発生しゴブリンキングに近づくために邪魔なゴブリン達を切り刻みながら吹き飛ばす。
「なんて強さだ。Fランクなんて俺は信じねぇぞ」
ブルッ
後ろでヤンジャンが震え上がる。
ゴアァアアアアオォオ
俺と接的する前に王者の咆哮を発動させ生き残っているゴブリンをぶつけてくる。
少しでも俺の体力を削りたいのだろう。
ヒュォヒュォン
が、俺に接近される前に近づくゴブリンは尽く切り刻み血の海を作り出す。
ガァアアアア
ダッ
ゴブリンキングはスキル関係なしに吠えて俺に肉薄する。
ズブゥッ
ブシュウ
筋肉に覆われた肉体の前では俺の斬糸は出血程度で留められた。
ガァアアアア
「糸防御術二式」
グンッ
ガァアン
近づかれた所で一刀両断のスキルを使ってきたゴブリンキングに対して糸防御術二式で攻撃方向を逸らす。
「二連脚!」
ダダァン
二連脚がゴブリンキングの顔面にヒットするがダメージはさほど与えていない。
ニタァ
俺が驚異と感じなくなったのかニヤケた。
「斬糸!」
ブシュッ
耐久値25しかない魔力糸での残し程度では出血は促せても決定打に欠けた。
ゴブリンキングの前では俺の攻撃は軽すぎるようだ。
ガァアア
ゴアァアア
ブォオン
勢い付いたゴブリンキングはサーベルを力任せに振るう。
その度に魔力糸が耐久値を消し飛ばされている。
「やっぱり、この状態じゃ無謀だったか」
魔力糸だけでゴブリン種の最上位に位置するゴブリンキングに挑むのは無謀だったようだ。
「おいおい、押され始めてんじゃねぇか」
遠くの方でヤンジャンがオロオロし始める。
「糸防御術二式、糸拘束術三式」
ブチブチブチ
糸拘束術ですら瞬時に引きちぎられる。
なんとか糸防御術で攻撃を逸らす事しか出来ない。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『ようやくたどり着いたか』
ヤンジャンがゴブリンキングとアオイの戦いを眺めていると冒険者の集団が勢ぞろいしていた。
比較的強そうな冒険者以外は体中に返り血を流し体力の殆どを使い果たしている。
『ヤンジャン、お前が先行して飛び出していったと聞いた時は驚いたぞ』
「姉貴・・・すまねぇ」
『だが、生きていて安心した』
「なんとか生き残れた」
『で、状況は?』
「見ての通りだ」
ゴアァアア
ブォオン
ゴブリンキングのサーベルがアオイに迫るが寸での所で軌道がズレて届かない。
「前に言っていたギルドが俺に監視依頼してきた例の少年だ」
『なるほど、只者じゃないと噂される新人だね』
「ゴブリンに対してはキラキラ光る細い線でなぎ倒していたんだが、ゴブリンキングだとあんな感じだ」
『そうか。で、お前は何をしてんだ?』
「う・・少し休憩を」
ゴンッ
「ッツ!?」
『バカ野郎!後輩に戦わせて何やってんだ!お前も参加しやがれ!!』
「ぐぅ」
『この前の話じゃ入ってきたばっかなんだろ!』
「いまじゃF」
『Cのお前が戦わねぇでどうするんだって言ってんだよ!早よ、行け!!』
ドスッ
ヤンジャンは姉に蹴られて渋々ゴブリンキングとアオイの所へと向かう。
・・・
「何しに来た!」
「加勢だよ!!」
「それなら助かる!俺は後方支援型だからな!」
「バリバリ前衛で戦っていたやつが何を言うんだって話だよ!」
「俺が奴の攻撃を受け流すから前衛にたってくれ」
「お、おう!」
ヤンジャンは少し心配したが長い事ゴブリンキングの攻撃を避け続けていたアオイに背をあずけることにした。
「うぉぉおお!」
ヤンジャンが雄叫びを発してゴブリンキングの前に立つ。
ゴアァアアアアア
ゴブリンキングが吠えて威嚇をするがヤンジャンが果敢に挑む。
ブンッ
「糸防御術二式」
スゥ
ヤンジャンに振るわれたサーベルがあらぬ方向に振るわれる。
「五月雨突き!」
ドドドドドッ
5発の正拳突きがゴブリンキングの腹部に炸裂する。
グフッ
始めてゴブリンキングが呻いた。
「正拳突き!」
体重を乗せた正拳突きがゴブリンキングに放たれた。
パシッ
「なぁ!?」
が、空いている左手によって防がれる。
グワッ
「糸防御術二式」
無防備だったヤンジャンにゴブリンキングが一刀両断スキルを発動したが俺が攻撃の軌道を逸らす。
『ヤンジャン!苦戦してんじゃねぇ』
そこへ長身の女がヤンジャンの隣に立った。
【看破】
名前:ヤンマオ
レベル:57
種族:ヒューマン
職業①:拳闘士(Lv42)
体力:2,170/2,710
魔力:724/826
攻撃力:498(+45)
防御力:360(+32)
各種装備品:鋼鉄のナックル、拳闘士の胴着、拳闘士のズボン、黒帯
所有スキル:正拳突き、五月雨突き、足払い、連牙拳、飛連脚、鉄拳、鉄拳五月雨突き、金剛体
状態:健康
「助かったぜ姉貴」
ヤンジャンの姉って事か・・・。
「交互に叩くぞ!」
「おう」
姉の登場にヤンジャンが気力を取り戻した。
ステータスもレベルもヤンジャンより高いから前衛は任せても良いだろう。
ビシィッ
未だに生き残っているゴブリン達を近づいてきた瞬間に余っている魔力糸で屠りながら前衛で戦っている2人をサポートする。
『回復なら私に任せて頂戴』
俺の隣に見知らぬ女性が立った。
【看破】
名前:リンネ
レベル:53
種族:ヒューマン
職業①:司祭(Lv43)
体力:1,880/1,880
魔力:1,276/2,146
攻撃力:326(+13)
防御力:274(+12)
各種装備品:回復の杖、司祭の法衣、革靴
所有スキル:ヒール、パラライズヒール、ポイズンヒール、ペトリファクションヒール、グレーターヒール、ハイヒール、エリアヒール、エリアグレーターヒール
状態:健康
「グレーターヒール」
比較的体力の削れていたヤンジャンに中位回復魔法で回復する。
「バランスが取れたな」
前衛2、後衛2はバランスの良いPTになる。
ブンブンっ
ゴブリンキングの攻撃は俺が全て逸らし、前の2人がガリガリと体力を削り、こちらの消耗はリンネが回復していく。
生き残っているゴブリン達は俺が蹴散らし、周囲に散らばっているゴブリン達は回復が完了した別の冒険者達が狩り続けている。
ゼェゼェゼェ
1時間もしないうちにゴブリンキングの息が上がり始めた。
2人の打撃に加え、俺の付けた出血傷で血を流しすぎた様だ。
ゴブリンキングの足元が血で濡れている。
「もうちょいだよ!気張っていきな」
「おうよ!」
さすが姉弟といった所か・・・
息が合い互いに邪魔をせずタイミングよく自身のスキルを使って確実にゴブリンキングにダメージを与えている。
「鉄拳五月雨突き!」
「五月雨突き!!」
ゴアアアアアアアア
ゴブリンキングが今日一番の声を上げた。
グラァ
ズズゥウン
そして、巨体が地に伏した。
ハァハァハァ
ゼェハァゼェハァ
激しく動いていた2人の両方が上下に動き息をする音しか周囲に聞こえなかった。
うぉおおおおおおおおおおおお
その後、周囲で見ていた冒険者達が大声で歓声を上げた。
パァン
ヤンジャンとヤンマオがハイタッチする。
「よくやった」
「ヒヤヒヤしたぜ」
フッ
2人の目の前で倒れていたゴブリンキングが唐突に立ち上がった。
「「んな!?」」
死んだと思っていたゴブリンキングが立ち上がったことに2人の反応が遅れる。
「マジックストリングブレード」
10本の魔力糸が複雑により合わせ瞬時に刃を形成する。
「ふっ」
ブォォン
魔力を込めた刃が10m先に居るゴブリンキングの首に振るわれる。
ザガッン
「あぶなっ!?」
遠心力の乗ったマジックストリングブレードが後ろの土にめり込み、そこに立っていたリンネが慌てて後ずさった。
ズズズッ
ゴブリンキングの頭部が首を境にズレて行き、胴体から離れていった。
ドドォン
残り少なかった体力が全損しゴブリンキングが本当の意味で倒れふした。
バキャァアン
魔力糸で作られた刃もまた耐久値が0となり砕け散った。
ゼェハァゼェハァ
マジックストリングブレードは俺の隠し技の一つで魔力500も消費するスキルだ。
うぉおおおおおおおおおおおお
再び周囲で見ていた冒険者達が大声で歓声を上げた。
「駿馬」
ヒヒィン
パカラパカラ
駿馬が俺の近くにやって来る。
トスッ
「行け」
俺は素早く駿馬に乗り走り出す。
「あ、てめぇ!」
後ろでヤンジャンが叫んでいるが俺は無視して進む。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ここが隣街か」
数時間、馬を走らせて隣街へとやってきた。
途中、冒険者達の集団とすれ違ったがゴブリンキング討伐隊だったようだ。
それから数日かけて街を移動して隣の領へとやって来る。
お疲れ様でした。




