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32話「フィフス-レベリング」

「そっちに行ったぞ!」

「すまないでごわす!!」


第一回武闘大会が終わりを告げて俺はゴウキ達と合流し王都へ向かうために二次職のレベリングをしている。

二次職になりレベル上げに必要な経験値が多くなった為である。


「マクロ人形」


シュンッ


普段はインベントリに入れている戦闘ドールを取り出して操作する。


「防御姿勢!」


ガイィイイン


戦闘ドールは鋼鉄の大盾を構えて前衛をすり抜けてきたモンスターの体当たりを受け止める。


ザザッ


衝撃で後ろへ下がるが後衛である俺達にまでは達していいない。


「タゲを貰うでごわす!!」


ロンドが再び戦の咆哮(挑発)でタゲを奪い戦線を立て直す。


「やはり、人形使いは便利ですね」

「緊急時には防御ができるなんて凄いっすよ」


両隣にいるソニーとシュバルツが声を掛けてくる。


「支援と阻害ができるのが売りだからな」

「職業一の射程と攻撃力を持っているのも忘れていますよ」

「アレは装備が揃っていないとな」

「マジック装備なんて早々ないっすからねぇ。っとトリプルファイアーボールっすよ!!」


バシュゥウウウウン


ドガガガァン


ここはフィフスの荒野でライノサラスと戦っている。


「トリプルファイアーボールっす!」


ドガガガァン


「糸拘束術二式!!」

「うりゃぁ、五月雨切り!!」

「スマッシュでごわす!」


ブムォオオオオ


かれこれ数十という討伐回数を超えて俺たちの連携も様になってきた。


守護騎士のロンドが敵のヘイトを稼ぎ、横合いから直剣騎士のゴウキが攻撃し、司祭のソニーが前衛二人の回復にあたり、魔道士のシュバルツが大ダメージ魔法を放ち、人形使いの俺で相手の動きを阻害、後衛の防衛を担当している。


≪人形使いのレベルが35になりました≫


「また、ジョブレベルが上がった」

「またっすか?」

「人形使いは早熟とは思っていましたが早すぎですね」


同じ時期に二次職になった、ゴウキ達でさえ、10に届くかどうかと言うのに俺だけがジョブレベルの上がり方が異常である。


≪戦闘用ドール(木製)はライノサラスの戦闘から8,700の経験値を手に入れました≫


これが原因だということは一目瞭然だ。

戦闘で手に入る経験値は俺が個別で手に入れている事の他に武器である戦闘用ドールも手に入れている。

その数値はPT人数分の経験値を丸ごと手に入っているから、俺は1戦闘につきPT戦闘総経験値+1人分も集めてしまっているのだ。

だから、早くレベルが上がる。


「まぁ、誰も損がないから良いっすけどね」

「そうですね」

「お前ら、魔力回復したなら次行くぞ」

「あぁ」

「行くでごわす」


こうして各自の連携練度を高めながら着実にレベルを上げる。


フィフスからプレイヤーレベルが上がりにくくなる為、周囲の狩場は平均的なレベルで狩場が用意されている。


攻略組からの情報からだと平均レベル48でフィフスを突破できるという事らしい。

ただし全員がキッチリ二次職とミスリル装備で固めたからであって安全マージンは50程だそうだ。


俺達の平均プレイヤーレベルが45であり全然届いていない。


「二次職ですとプレイヤーレベルは中々あがりませんねぇ」

「仕方がないっすね。その分、スキルは強力になったんっすから」

「こうして後衛をカバーできるのも二次職のおかげだしな」

「効率の良い狩場があれば良いのですが・・・」

「そんな甘くないっすよ」

「地道に経験値稼ぎが良いだろう」


こうして俺たちのレベリングは続く。



≪アオイのレベルが46に上がりました≫

≪SPが1増えます≫

≪アオイはライノサラスから豊富な経験の指輪を手に入れました≫


ん?


戦闘ログに見慣れぬ文字を見つけた。


「これは?」


ストレージに指輪のアイコンが現れた。


「どうした、アオイ?レベルアップか?」

「あぁ、それもなんだが・・・」


俺は手に入れたアイテムを皆に話すことにした。


「激レアドロップが出たんですか!?」


PTの情報通であるソニーが普段見せないような驚きを表した。


「激レアドロップってなんだ?」


ゴウキが質問をする。


「基本的に通常のモンスターは素材アイテムしか落とさないのは周知の事実です。しかし、極稀に装備品をドロップします・・・過去に落ちたという例は1件でした」

「なるほど、コレは価値がある物なのか?」


・豊富な経験の指輪

 戦闘経験値量を10%UP

 未帰属

 耐久値:50/50

 ランク:ユニーク

品質:4


「ユニーク装備が何よりの証拠です。以前、アナタが手に入れた太古の杖より質は落ちますが凄い価値には変わりないです。持っていると知れ渡れば後は分かりますね?」


ゴクリ


「委託販売所に流すというのは?」

「高額取引はされますが、果たして買おうという人物が現れるかという感じです」


「望み薄か・・・販売者名や買取者名もバレるしな」


委託販売とは、総合商人連合という組織が俺達プレイヤーや一般NPCが個人販売を代理で行ってくれる巨大なマーケットになる。

ただし、売り手も買い手も直接会わない為、決められた金額でキッチリと払わないと手に入らない。値下げ交渉何て言うことももちろん出来ない。

問題は売り手側や買い手側の情報が複数名にバレてしまうという事だ。以前もレアアイテムを委託販売で売ろうとしてプレイヤーキラーに狙われたという報告が上がってしまった。

故に全プレイヤーはレアアイテムの販売は極力避けてしまっている。


では、以前俺がギルドのクエストでレア素材での買取手を募った場合はどうだったかになるが、コレも委託販売と同じで複数名に依頼者名がバレてしまう。

即、エンデバーが交渉に応じてくれた為にクエスト内容はあまり他人の目に入らなかった。更にプレイヤーキラーキラーという噂も立っている為俺を攻撃する事は殆どいなくなったと言ってもいい。

前回の武闘大会で糸による斬糸がいかに強力な攻撃かもプレイヤーキラー達に知らしめたはずだからな。それでも隙を狙って毒矢や痺れ矢等を打ち込んでこようとするキラーは居ないとは限らない。


「じゃ、着けるか」

「それが良いでしょう。能力も私達にピッタリですしね」

「俺だけが経験値1.1倍って事か?」

「はい。少しずつ私たちのレベルに近づきます」

「しかし、アクセサリーは付けられるのか?」

「あぁ、装備欄にアクセサリー欄はありませんね。良く見てください。装備欄の他にファッション欄があります」


今まで気がつかなかったが装備欄の他にファッションというボタンが付いていた。


カチッ

シュンッ


装備欄からファッション欄に切り替わった。


【ファッション】

頭:なし

首:なし

指:なし


「頭と首と指だけしかないのか?」

「はい。この3つしか付けられません」

「ふ~ん」


≪豊富な経験の指輪をアオイに帰属し装着しますか?≫


YES


≪豊富な経験の指輪をアオイに装着しました≫


【ファッション】

頭:なし

首:なし

指:豊富な経験の指輪


「本当に装備できたんだな」


俺の右手に指輪が嵌った。


「アクセサリー系のファッションアイテムは鍛冶職人達に頼めば作ってくれますよ」

「効果は付くんだな」

「特殊効果が着いたアクセサリーは激レアドロップだけですね。今の所クリエイトアイテムからは出ていませんね」

「なるほど」

「話しが長いぞ。リポップ時間が来たぜ」


ゴウキに言われて気がつき目の前にリポップが始まった。


「戦闘準備だ!」

「うっす!」


・・・


・・・・・・


「今日は狩場を変える、サイ相手は飽きたしな」

「次は何処だ?」

「北西の丘に行く。あそこに新たな狩場が発見されたと聞いてな」

「わかりました」

「動物系っすかね?」

「リザードという4足歩行の爬虫類だと聞いた」

「攻撃力や防御力はどうですかね?」

「サイより防御力は低めだ。攻撃は突進、噛み付き、尻尾ふりとワニと同じ攻撃パターンが存在するぜ。鋼鉄装備なら防御できるそうだ」

「逆に皮や布は致命的と?」

「あぁ、だからお前らは一歩後ろに下がっていたほうがいい」

「ほかに注意点は?」

「怒りモードが存在する。その場合は後衛も要注意だ」

「モーションは?」

「3~5回の突進と噛み付き攻撃が来る」

「バラバラなんだな」

「不規則な回数だ。5回目が終わったとしても油断しないほうがいい」

「わかりました」

「あぁ」

「うっす」

「了解っす」


北西の丘を目指し俺達はフィフスの街を出て行く。


ギィイヤァァアア


「あれがリザードか」


ヤモリとか

イモリ等辺を巨大化した感じだな。


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:46

 種族:リザード

 体力:5,000/5,000

 魔力:350/350

 状態:健康、アクティブ



確かにサイより

体力が低いし戦いやすそうだ。魔力が高いのが気になるが・・・


「行くぞ!」

「おぅでごわす!」


ロンドとゴウキが飛び出し、ファーストアタックを行ってタゲを奪い取った後に俺達が動き出す。


ガチンガチンッ


「くっ」

「突進来るでごわすよ!」

「任せた!」


グワッ


ガイィイイン


噛み付きからの突進モーションをしばらくの戦いでロンドとゴウキが対応し始める。


幾つかのパターンが決まっている様で見切りやすい。


「糸拘束術二式!」


ガッガッ


【反撃不可、拘束9秒】


「ナイス!五月雨斬り!!」

「シールドバッシュ!」

「トリプルファイアーボールっすよ!」


ゴウキ、ロンド、シュバルツの3人がここぞとばかりにスキルを発動する。


ザシュシュシュシュシュッ

ガガァアアアアン

ドガガガガァン


ギィヤァアアアアア


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:46

 種族:リザード

 体力:2,100/5,000

 魔力:350/350

 状態:火傷(中)、アクティブ


「体力半分以下だ!怒りモードに気をつけろ!!」


ピカァアン


言っている傍からリザードの両目が赤く光った。


「鉄壁でごわす!」


鉄壁でリザードのヘイトを一気に引き付けて高防御力で耐える守護騎士のスキルだ。


ガガァンガガァアン


連続で突進がロンドのミスリルの大盾にぶつかり合う。


「エリアヒール」


ロンドとゴウキに範囲回復魔法が飛ぶ。


フォオオオ


「むっ!?」


別角度で見ていたがリザードの挙動が変わった。


大きく吸い込むモーションは初めて見る。


「糸防御術二式!!」


ギィイインン


「シュバルツ!」

「ファイアーボールっす!」

「アンカー!」


リザードの首にミスリル糸を絡めて、張った所にシュバルツのファイアーボールを放ってもらい強制的に引っ張る。

俺自身も引っ張られるから空いているミスリルの糸を地面に突き刺す。


グァアアアア


バフォオオオオオ


リザードの口から強力な吐息が吐き出された。


「なんだありゃ!!」

「当たらなくてよかったでごわすよ!!」


近くて見ていた2人が驚愕の声を上げる。


「アレは希に見られる、ブレスという奴じゃないですか!?」

「ブレスってドラゴン系のスキルじゃないんすか!?」

「ドラゴンも爬虫類、ならコイツ等もブレス位吐けるとでも言うのか?」

「聞いた事無いっすよ!?」

「事実、俺たちの前で吐き出したんだ。ブレスなんだろうよ」

「やれやれですね」

「ブレスは俺達で対処する」

「任せるっすよ~」

「ブレスの対処は任せた!」

「次が来るでごわす!!」

「うぉおおおお」


リザード狩りをして更なるレベリングを続ける。


・・・


・・・・・・


「全員50にやっと到達したか」

「2レベル差を埋めるのはキツかったな」


俺とゴウキ達のプレイヤーレベルの差は2・・・常に同じPTで狩り続けていては追いつくことはなかった。

が、幸運にも経験値を少量UPする指輪が激レアドロップで出現した。一番レベルの低い俺が装着する事で少しずつ皆に追いついた。


「アレは幸運だったな」

「そうでごわすな」

「コレを委託販売所に流したかったな」

「仕方がないですよ」

「帰属アイテムのユニークなんっすからね」


帰属アイテムと言うのはランクがユニーク以上のアイテムに付いている物で装備者が装着すると他のプレイヤーが装備できなくなるシステムである。

俺に装着してしまっている為、アイテムの価値は殆ど無く壊れるまで使うだけとなる。


「さてと、本格的に攻略と行こうか!」


プレイヤーレベル50まで俺たちはレベリングを行い続けた。


【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:50

 職業①:人形使い(Lv60)

 職業②:裁縫師(Lv5)

 SP:12

 体力:4,720/4,720

 魔力:3,622/3,622

 攻撃力:823(+60)(脚+30)

 防御力:774(+101)(手+20)

 状態:健康

 称号:ウルフハンター,ドッグハンター,エルフの友人

 ランク:D-


5レベル上がっただけでステータスの上昇値が糸使いだった頃に比べてかなり上がっている。


「自立戦闘」


レベルが上がったお陰で人形使い用のスキルが新たに出現した。

一時的に人形にAIが芽生え戦闘中のみ学習し動いてくれる物だ。

ただし戦闘したデータは蓄積する事なく毎回まっさらな状態で始まる。


「ロンド!」

「うっす!」


戦闘中にロンドが戦線を離脱し始める。


ガガァアン


ロンドが抜けた穴を補うため戦闘用ドールが大盾を持ってガードし始める。


「連れてきたでごわすよ!」


ロンドが抜けたのは戦闘が終わる前に新たなモンスターを連れてくる事だった。


この自立戦闘は1戦闘に付き魔力50の消費で10分のクールタイムを必要とする。

そこそこコストの掛かるスキルなのだが、俺達はある穴を見つけ出していた。

それが戦闘状態の維持である。

戦闘が継続する事で自立戦闘中の戦闘ドールは引き続き戦い続けてくれる。

つまり、魔力50の消費で数回の連続狩りができる事になるのだ。


「そろそろ、休憩いいっすか?」

「私達の魔力が尽きかけてきました」


といっても、連続戦闘は後衛にとっては辛いものである。


良くて3連続の戦闘で終了となる。


ザッザッザッ


フィフスの街から北側に位置する山脈、俺達は山頂を目指している。


「エリアボスはミスリルリザードという」

「その防御力はアイアンを優に超えているそうですね」

「だから攻略組はミスリル武器を欲していたのか」

「鋼鉄の武器じゃダメって事すね?」

「えぇ。私たちのPTもミスリル武器持ちなので50レベルで挑戦というわけですね」

「ま、防御面ではミスリルは無いからな」

「そういう事ですね」


50まで地道に上げたのは防御面はフィールドで手に入るモンスターの素材を使った防具でありミスリル装備に比べて性能が落ちてしまうからだ。


「要注意なのは怒りモード時の広範囲ファイアーブレスだ。」

「その他は私達が倒しているリザードやロックリザードと代わりないそうですよ」


山脈には岩の鱗をしたロックリザードが俺たちの邪魔をしてくる。


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:48

 種族:ロックリザード

 体力:7,500/7,500

 魔力:350/350

 状態:健康、アクティブ


リザードに比べて体力と防御力が高くなっている。

怒りモードにはブレス攻撃もしてくる。


「ブレスは俺とシュバルツでなんとかなるからな」


幾度となく怒りモード中にブレス攻撃が来たが俺とシュバルツのコンボで封殺している。


「あとはどれだけ戦えるかがポイントだな」

「ロックですら苦戦していますからね」

「ミスリルとなると長期戦は容易に考えられるでごわすな」


ロックリザードを倒しながらゆっくりと俺達は山頂を目指す。


「すみません、上級魔力回復ポーションが切れました」

「俺も数本だ」

「俺もっすねぇ」


山頂を目前に持ってきた上級系ポーション類が切れた。

残りは中級以下のポーション類だがエリアボス戦の事を考えると厳しいと結論付く。


「撤退だな」

「うっす」


ポーション不足で俺達は攻略を止める事を余儀なくされた。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「足りなかった?結構作ったけど?」


フィフスに帰り調薬師ことイロハにその事を伝えると怪訝な顔をした。


いつも無表情なのにレアだな。


「ロックリザードのエンカウント率が高すぎだった。もっと準備しないとダメだ」

「俺達はポーションの原料を集めてくるぜ」

「私も攻略に着いて行こうか?」

「レベル50ないとキツいだろう」

「そっ」


イロハは生産職に戻っていた為にレベルは45止まりだ。


「依頼ならいつでも請け負う」

「いつも済まないな」

「これが私の道だから」


イロハは中堅調薬師では有名で、様々なプレイヤーから依頼は来ているはずだ。

だが、俺達のPTは優遇されている。

フィフスにやってきたのも一緒だったからもあるだろう。


1週間の準備期間を設け大量のポーション類を用意して再び俺達はエリアボスへと向かう。


「ソッチに行ったぞ!」

「ガード体勢!」


ガィイイン


「戦の咆哮でごわす!!」


ウォオオオオオ


「アタック体勢!」


戦闘用ドールへと次々に命令を下しながら俺も戦闘に参加する。

いくら自立的に動いてくれるからといって優先的な動きをしてくれる事はあまりない。

だから俺が短い命令を下して動いてもらう。


ロンドを中心に俺達は動く。


ロックリザードの強力な防御力を物ともせず俺達は着実に山頂へと進んでいく。


プハァ


「一旦休憩だ」

「魔力が心もとないですからね」

「うっす」

「各自周囲を警戒しながら交代で休憩だ」


ローテーションを組んで俺達は座り休憩をする。

アクティブのロックリザードが動き回っているからいち早く対応するため2人は立って休憩をする。


・・・


・・・・・・


「やっと山頂か・・・」



かれこれ街を出発してから6時間経過して、ようやく山頂へと到着した。


「あとはエリアボスだけだ!各自、戦闘前の確認はしろよ」

「「「「おぅ!」」」」


エリアボス前の安全地帯で準備をする。


モグモグ


ゴクゴク


減っていた空腹ゲージと乾きゲージを全快にする。


「準備はいいか?」

「「「「おぅ!」」」」


ヒュンッ


いざエリアボスの待ち構える空間に入ろうとした時、視覚外から風切り音が聞こえた。


シュルッ


「っと!」


間一髪だったが前を歩くゴウキへのヘッドショットを防いだ。


「誰だ!?」


一斉に臨戦態勢になって矢の放たれた方向を見る。


バサバサバサッ


岩の上に黒で統一された格好をしたプレイヤーが弓を構えて立っていた。


ニィ


フードで顔は見えないが口元が笑っている。


「プレイヤーキラーだ!」

「おいドンの後ろに!」


ヒュンッ


第二射が射られる。


カァン


だが、ロンドの盾が防ぐ。


「こんな時にキラーかよ!ソニー、後方も気をつけろよ!!」

「はい!」

「遠視!」


即座に遠視のスキルで視覚を上空にズラして周囲を見る。


「後方に2人、3時の方向に1人、9時に2人隠れている」

「キラーPTかよ!」

「どうします」

「一旦撤退だ!待ち伏せされたって事は計画的なヤツだろうよ」

『逃がすとでも?』


目の前のフードのプレイヤーキラーが声を発する。


ザッ


周囲に他のプレイヤーキラー達が姿を現した。


『トリプルファイアーボール』


その内の1人が魔法系の使い手で既に詠唱は終えていた。


「誘導!!」


ビィイイン


『んな!?』


トリプルファイアーボールは俺のスキルで跳ね返させてもらった。


「あんまり使いたくないが・・・魔力強化一段階、斬糸!」


最初に不意打ちしてきたフードのプレイヤーキラーに向けて攻撃する。


『くっ!』


プレイヤーキラーはバランスを崩しながらも斬糸を避けた。


「行くぞ!」


包囲網の一角が崩れ、俺達は撤退を開始する。


・・・


・・・・・・


「チィ!まだ追ってきやがる」

「これ以上はロックリザードの領域です」

「ここで、戦うしかないか」


ロックリザードまで戦闘に入ってきたら溜まったものではない。


「ここで、向かい討つ!相手をモンスターと思って覚悟を決めろよ!!」

「前に出るでごわすよ!!」


ロンドが前に出て盾役に徹する。


PT同士の戦闘はモンスターとの戦闘とは違い、動きが全く違ってくる。


相手は知性ある生き物なのだ、効率良く回復職や火力のある魔法使い系を潰しにかかってくる。

ヘイトコントロールも無い戦いだ。一瞬の油断が即死に繋がるのだから。


「アオイ、敵の職業はわかるか!?」

「全部で5人、剣3、魔法使い1、弓使い1だ」

「フィフスにいるってこった、相手も二次職なんだろうよ」

「キラーもレベルを上げてきているって事ですか・・・」

「回復職はいないのか?」

「見える範囲では居ない」


最大6人PTである、6人目が隠れ潜んでいても可笑しくない。


「周囲警戒しながら事に当たれ!行くぞ!!」


ゴウキとロンドが追いついてきた剣士系3人と対峙する。


ヒュゥン


プレイヤーキラーの後方から弓使いが俺たちを狙って攻撃してくる。


「やはり、後衛狙いか」

「どうするっすか!?」

「ソニーが俺たちの生命線だ。守りながら俺たちも後衛側を叩くぞ。ソニーは俺達より前衛の2人に回復を!!」

「わかりました!!」

「自立戦闘!」


インベントリにしまっていた戦闘用ドールに魔力を注ぎ6人目の戦力を増やす。


「中衛を任せる」


ヒュンッ


戦闘用ドールの装備が弓装備へと変わる。


ヒュンヒュンッ


無駄のない動きで戦闘用ドールは相手の弓使いの牽制に入った。


『トリプルファイアーボール』

「そうはさせないっすよ!トリプルファイアーボール」


ドガガガァアアン


上空で6つのファイアーボールが炸裂して爆風と爆音が周囲に撒き散らされる。


ザシュッ


「ぐっ」


ゴウキが剣戟を受けて呻く。


こちら側の方が数的に不利である戦いだ。


「糸拘束術二式」


ピタッ


【反撃不可、拘束4秒】


右手の5本は戦闘用ドールで専有されているが、最近多重操糸術がLv7になって左手のフリーになった2本で前衛を援護する。


「五月雨斬り!」


ズバババババッ


「シールドバッシュ!!」


ガイィイイイン


『エリアヒール』


パアァアアアア


ゴウキとロンドが与えたダメージが即座に回復された。


「回復が隠れていた。最奥の岩の陰だ」

「あの位置だと届かないっすよ!」


岩と岩の間に自身の体を最大限に隠している。


「普通のPTならな。あの岩の上に向けてノンターゲッティングだ」

「わかったっす!」


シュバルツがトリプルファイアーボールをプレイヤーキラーの隠れている岩の上に向けて発射する。


もちろん、ファイアーボールは着弾する軌道ではなく通り過ぎる軌道だと誰しもが思う。


「油断大敵だぜ。誘導」


パシィン


ボワッ

ドガァアアアアン


通り過ぎた所で俺の誘導でトリプルファイアーボールはプレイヤーキラーの背後を襲った。


『グレーターヒール』


倒しきれず、体力の殆どを回復されてしまう。


「惜しかったっすね」

「まぁ、俺達は魔法と回復を邪魔できればいいか」


・・・


・・・・・・


『おい、回復はどうした!』


ゴウキとロンドの奮戦で数的優位のあった向こうの3人が体力が少なく心もとなくなってきた。


俺とシュバルツのコンボで自身の回復で精一杯である。

たまに魔法が飛んでくるが、誘導で回復役にぶつけたりしている。


「魔力回復ポーションがもう」


それでもこちらも著しく消費してしまった。


「次のタイミングで前衛にぶつけてくれ」

「分かったっすよ!」


シュバルツが詠唱に入る。

二次職からはスキルの関係で魔法名だけではなく詠唱付きでの発動となる。

それを聞いている前衛の2人も注意を自分にそらすように声を張り上げて奮闘する。


ヒュンッ


弓使いから放たれた矢が俺の真上を通過する。


ガイィイイン


自立戦闘中の戦闘用ドールが小盾で矢をガードし軌道上にいたシュバルツを守る。


「フラッシュオーバーっす」


ゴウキとロンドがタイミングを合わせて後方に下がる。


ボワァアアアアアア


『『『ぎゃぁあああああああああ』』』


残りの体力が心もとない前衛3人が強力な魔法で一気に焼かれていく。



≪プレイヤーキラーがフィフスの山脈頂上で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫

≪プレイヤーキラー:ヨージュンの討伐に成功しました≫

≪ヨージュンの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫

≪プレイヤーキラー:シシライの討伐に成功しました≫

≪シシライの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫

≪プレイヤーキラー:ヤイチの討伐に成功しました≫

≪ヤイチの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫


全体アナウンスが流れ3人の消滅が確認された。


「形勢逆転だな?続けるか?」


3人の前衛が一気に消えた事により残りの後衛しか残っていないプレイヤーキラーPTは不利となった。


『くっ、撤退だ』


回復役が短く言って、魔法役と弓手のプレイヤーが動き出す。


「ふぅ、何とかなったっすね」


シュバルツがそう言う。


『トリプルファイアーボール』


魔法使いが去り際に魔法を放ってきた。


「くっ、誘導」


真っ先に反応が出来たのは俺だけで2つのファイアーボールは跳ね返せた。


ブワッ


残った1つが俺の真横を通り過ぎる。


ドガァアアアアアアアン


『ぎゃぁあああああ』


≪プレイヤーキラー:スサノの討伐に成功しました≫

≪スサノの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫


ドゴォオン


俺の背後で爆発音と爆風が巻き起こる。


「ぐふっ」


爆煙の奥で小盾でガード体勢をした戦闘用ドールがシュバルツごと崖へ落ちていくのが見えた。


「引き寄せ!」


2本のミスリル糸をシュバルツに放つが狙いが定まらず空振る。


「シュバルツ~!!」

「シュバルツ!!」

「シュバルツさん!!」


残りの3人が崖へと駆け寄っていく。


ガランガラァン


崖下へとシュバルツの持つ杖や戦闘用ドールの持っていた武器装備が落ちていく様が見える。


ドンッ


「シュバルツ!どうしてだ!!!」

「油断しました」

「すまないでごわす」


あの時、みんなが油断していた。

アイツ等は素直に撤退すると思っていたからだ。


「シュバルツぅうううううう!!」


ゴウキが大声で叫ぶ。


【ひどいっすよ、まるで俺が死んだみたいじゃないっすか?】


頭の中にシュバルツの声が聞こえた。


【シュバルツ、生きているのか?】


離れた同じPT内の仲間と無言で話せるPT内チャットである。


【間一髪っすけどね】

【どうして】

【アオイさんの自動人形っすよ。生き残った腕で俺をキャッチしてくれました。今はぶら下がっているんで早く引き上げてくださいっす】

【わかった】


引き上げると崖の角度上見えない所にシュバルツはぶら下がっていたようだ。


「怖かったっすわ」

「生きててよかった」

「そうでごわすな」

「はい」

「心配かけたっすね。でも、なんとか生き残れたっす。この通り、体力もギリギリ{トスッ}・・・え?」


シュバルツの胸に一本の棒が生えた・・・生えたように見えた。


「嘘でしょ・・・そんな」


シュバルツがそう言う前に体全体が粒子となり消えていった。


≪プレイヤー:シュバルツが死亡しました≫


「おい、嘘だろ!」

「そんな!?」

「くっ」


振り返ると弓を放った姿のプレイヤーキラーがそこに立っていた。


「よくも!」


ダッ


そいつは最後に嫌な笑みを残して逃げようと踵を返した。


シュンッ


俺の装備の中で最後のマジックアイテムを装備しなおす。


「魔力強化三段階、斬糸!」


『ギャァツ』


一撃で首を跳ね飛ばす。


≪プレイヤーキラー:イオリの討伐に成功しました≫

≪イオリの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫


ゴトッ


シュウうう


戦闘用ドールが戦闘状態から開放された。


つまり、戦闘はまだ続いていたことだったのだ。


「なんでだ!なんでテメェが死ななきゃならねぇ!!!」

「うっぐ、ぐずっ」

「私が、もっと、はやく、回復していれば!」

「油断した」

「それは、誰もがだ。矢が飛んでくるなんて誰も考えていなかった、奴らが消えたのは確認したんだ!!」

「引き返してくるとは思わなかった。遠視でちゃんと見ておけばよかった」

「言うんじゃねぇ!お前のせいでもねぇ」


・・・


・・・・・・


1時間ほど俺達は立ち尽くしていた俺達はようやく動き出した。


「行くぞ!俺達はここで立ち止まっていられねぇ」

「うっす」

「はい」

「あぁ」


4人でロックリザードを相手するのはキツかったがなんとかフィフスの街へと戻ってこれた。


「おかえり。あの辺りでプレイヤーキラーがいたらしいけど大丈夫だった?」


街中でミモザとイロハに出会う。


「シュバルツは?」


イロハがシュバルツの姿がない事に疑問を口にする。


「アイツは死んだ」

「「え?」」


ミモザとイロハが呆ける。


「プレイヤーキラーとの戦いで死んだ。殺されちまった」

「そんな・・・」

「うそ」

「嘘じゃねぇ・・・」


ポタポタッ


いつの間にか実装されていた涙がゴウキの目からこぼれ落ちる。


「今日の攻略は中止だ」


ザッ


ゴウキ、ロンド、ソニーが宿へと向かって歩き出し、俺だけがその場に残る。


「何があったの?話したくなければ後日でいいわ」

「経緯くらいは」


俺はミモザとイロハを連れてギルドへと向かう。


俺達が順調に山脈に登り、いざエリアボスと戦おうと向かっていたとき、プレイヤーキラーPTが現れて戦闘を強いられた。

1時間弱の長時間戦闘を経て形勢逆転までに持ち込んだが魔法使いの1撃がシュバルツを崖下に落とした、が戦闘用ドールがシュバルツを守りキャッチしていた。

そこに油断が生まれ、最後の攻撃までは防ぎきれなかった。結果、キラー達は5人とも倒したがシュバルツが死んでしまった。


「そうだったのね・・・」

「しばらく、俺達は引き篭ると思うからそっとしておいてくれ」


今まで一緒に闘ってきたシュバルツが居なくなってしまって俺達の心にはポッカリと穴が空いてしまった。


この悲しみを乗り越えられなければ次へ進む事は出来ないであろう・・・・

お疲れ様でした。

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