33話「海上都市-行き止まり」
あれから・・・2年が過ぎ去った。
俺達はシュバルツの死を乗り越え、新たな仲間を集っての再攻略を行い王都へとたどり着いた。
王都周辺からはモンスターとの戦闘が難しくなり攻略スピードがガクっと落ちた。
攻略組と合流を果たし、情報交換をしつつ俺達のレベルを上げながらも徐々に次へと進んでいった。
ザザァンザザァン
俺はこの王国の最北端に位置する海上都市の一部である海岸に座り夕日を眺めていた。
「おいおい、なにシケた面してんだ」
「まぁな」
隣にはゴウキが立っている。
「仕方ねぇだろ、まさかココで行き止まりだってんだから」
攻略組と共に切磋琢磨してきて海上都市へとやってきたはいいが、グランクエストが終了してしまった。
グランクエストとは、全員が共通で持つクエストでファストからずっと続いている。
それが終了してしまったのだ。
「ノーチスのメンバは?」
「会議だとよ。ソニーもそれに加わっている」
「そっか」
攻略組の一角を担っているのはギルド「ノーチス」、一年前に結成した俺達のギルド「フリーダム」、戦闘集団ギルド「フルタイム」、頭脳集団ギルド「ノックス」、女性のみのギルド「バルキリー」の五大ギルドが協力して攻略して来たのだが止まってしまった。この2年間は激動だと感じた、冒険、出会いと別れを繰り返して最前線に立つのは俺達となったわけだ。
「俺達は何を目標に行けばいいんだろうな?ナル」
「私はマスターの人形。マスターの行きたい場所に付いていくだけです」
ゴウキの反対側にいるのは竜の鱗で作られたドラゴンスケイル装備で身を固めた人形が佇む。
より人に近づけるために頭はダビットソンに依頼した。髪はミカに金糸のウィッグを作ってもらい女性らしさを作り出してもらった。
体は全て鋼鉄製でミモザとガンジの合作で作ってもらった。
主人である俺を第一優先に考える自律型魔導人形のナルを従えて俺は最前線を仲間達と共に進んできた。
「そうか」
「いつ見ても凄いよな。自立化だっけか?」
「あぁ」
「月に1度、魔力500消費して1ヶ月だけ自分で考えて動くスキルなんてな」
「スキルスクロールとしてあったからな。手に入ったのは偶然だったが」
シクスの街はダンジョン都市であった。
全10層からなるダンジョンでかなり攻略に時間をかけた。そこの7層で自立化のスキルスクロールが運良く手に入ったからだ。
戦闘の他に生活の全てにおいて自立してくれる画期的なスキルだ。
さらに見たもの、聞いたもの、理解した情報を蓄積し最適化する為、どんどん人のように動き回ってくれる。
「よぉ、こんな所で黄昏てどうしたんだ?」
「レッドか・・・」
リアルフレンドであり、俺より先に攻略組に参戦した。
トッププレイヤーといえばレッドの名前が上がる有名人だ。
俺も人形使いとして有名だが。
「海上都市に到着したらゴールかと思いきや行き止まりだもんな。しかもグランクエストが終わっちまうし訳わからんしなぁ。お前はどう思う?」
「ここがゴールじゃないとしたら先にあるんだろうな」
「先?」
バッ
俺は海の向こう側を指す。
「魔大陸」
「確かに、魔大陸も会議の一つに持ち上がったがどうやって行くんだよ?」
「ダンジョンを通っていく。フィレウス大迷宮」
「ちょっと待て、アオイは何故ソレを知っているんだ?」
ゴウキが俺に問いかける。
「ここ聖大陸と魔大陸を行き来するのは地下に広がるダンジョンだけだ」
「アオイ、そろそろ言うつもりか?」
「打開策がなければ仕方がないだろう」
踵を返して俺は攻略組五大ギルドの集まる場所へと向かう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ガチャッ
「ですから、最初から見直すべきではありませんか!」
会議場ではソニーが声を張り上げて意義を申し立てている。
『それで、グランクエストが戻ると?』
『見直しったってここにいる殆どの連中は関連クエストをクリアしてるんだぜ?』
『海上都市に着いた途端にグランクエストは消失。事実上のクリアって事なんじゃねぇのか?』
『しかし、クリアしたのならこのゲームは終了を告げる筈です。が、何も起こらない』
『だ~か~ら~、それを見つける為に会議してんでしょ?』
様々なトップギルドの面々が円卓を囲み論議し合っている。
「皆、聞いてくれ」
話が途切れた所で声を発する。
「ゲームクリアはこの先だと俺は考える」
「先とは?」
代表してソニーが聞いてくる。
「魔大陸に居る魔王の討伐だと思う」
「しかし、この都市には海を超える術はありません」
『そーだそーだ』
『また、この話ですか?』
『それは結論が出たでしょ?』
複数人のプレイヤーから終わった議論に対して批判の声が上がる。
「聖大陸と魔大陸を繋ぐ大迷宮。フィレウス大迷宮を攻略すれば行けないことは無い」
!!?
その場の全員が一瞬呆気に取られる。
『ちょっと待ってください!フィレウス大迷宮とは一体何処から出てきた情報なんですか!?』
『私達も知らない情報を何故君が知っているんだい?』
『攻略組である俺達がここにたどり着いたのは約1ヶ月前だ。その間に調べられたのか?』
「初めから知っていた。しかし、直ぐに情報を開示しなかったのは訳がある」
『それはどういう意味ですか?』
『先に言ってくれれば不毛な言い合いなんて時間が省略できたでしょうに!』
『おうおう、出し惜しみは良くないんじゃねぇか!』
四大ギルドのリーダー達が声を荒げる。
ガンッ
「言いたくなかった訳はあるっつてんだ。少しは黙って聞いていろよ」
レッドが椅子に座り両足を机に投げ出して声を発する。
「それを今から言うっつてんだよ」
「レッド・・・すまないな」
「構いはしねぇよ」
『その口振りだとアナタは知っているようですね』
「詳しくは知らねぇよ。俺も初めて聞くことになる」
『そうですか・・・では傀儡師アオイさん、どうぞ』
「ここにいる皆はβテスターが多いと思っている。中には新規参入者が居ると思うが噂位は聞いた事あると思う。β時代の【悪夢の3時間】についてだ」
『懐かしい話題が出てきたな、ありゃ酷かった』
『セカンドの街付近が精一杯の我々をあざ笑うかのように来ましたからね』
『それで辞めちゃう連中もいたね』
『それが?』
「なぜ、スケルトンキングは魔大陸から聖大陸へと渡ってこれたのか話題になっていただろう」
『・・・は!?まさか、そのフィレウス大迷宮を通ってきたからだというのですか!?』
「あぁ」
『おいおい、それを何故お前さんが知っているんだ?』
『・・・そりゃ、本人じゃなきゃ・・・嘘でしょ?』
「そうだ、元βテスターでスケルトンキングをやっていたのは俺だ」
!!?
周囲が息を呑み驚愕する。
「これが言いたくなかった理由だ」
『そうか、お前さんがあの時のスケルトンキングだったのか』
『そりゃ、言いたくないよね。ここに居る大多数は殺されまくっちゃったしね』
『その気持ち分かるぜ』
「おいおい、そんだけかよ。プラスに捉えやがれよ。アオイがあっち側でプレイしてくれたから答えが出たんじゃねぇか。もし途中で死んじまったりしたら俺たちの旅も頓挫していたんだぜ」
レッドが明るい声で周囲を活気づける。
「今後の目標はフィレウス大迷宮の攻略、そして魔大陸の進出だ。アオイ、お前は魔王を見たんだよな?」
「βの時代に1度だけ見た。魔王は居る」
「最終目標は魔王の討伐、このゲームの最終シナリオは王道も王道って訳だ」
「ただ」
「なんだ?」
「魔大陸のモンスターは恐らく聖大陸の非じゃない位に強い。俺がスケルトンキングだった頃、レベル50でここからセカンドに続く王都街道に出てくるモンスターは弱かった」
「魔大陸でのレベル1は聖大陸でのレベル7相当な感じか?」
「恐らくは、向こうでのレベル50はここでのレベル70以上だと考えて欲しい。恐らく鑑定のスキルも役に立たなくなる」
『そんな馬鹿な!?ここまで安全を第一に考えて来たのですよ。そんなデタラメが通用するのですか!?』
「それが魔大陸だ。何もかもが強さが求められる場所だ」
『そんな所に行けというのか・・・』
『レイドPTを組んで行くしかないな』
『食料とかどうするよ?』
『現地調達、イベントリに空きがあれば持っていけるだけ詰め込む。荷車とかで運ぶのでもいい』
『傀儡師さんよ、その情報は確かなんだよな?』
「あぁ、βテスト時代となんら変わりがなければな。あのGMが小細工とか仕掛けていなければ俺達が一丸となれば魔大陸には行けるだろう。それとも後続を待ちレベルキャップ開放を狙うか」
現時点でキャラレベルと職業レベルは70が最高地点である。
このゲームが半デスゲーム化の時、変更点内にレベルカンストプレイヤーが増えた場合開放すると言っていた。
『そんなの待っていられねぇだろ』
『いや、その案は有効的だと考えるね』
『先に進むか、後続を待つかの二択ねぇ』
「カンストプレイヤーは俺達五大ギルドのメンバーを除いて30名も満たない、全体の1%未満だといつまで待つのか分からないな」
『そんなの待てるか?』
『中堅層のギルドがルーキー層を育てる機関を作り出したそうだ。これまでに死亡したプレイヤーの総数は半デスゲーム化した時から3000名を超えましたからね。それを私達も行ってはどうでしょう?』
『俺ぁ誰かに事細かくレクチャーする自信はねぇぞ?』
『適材適所です。我々のギルドから育成機関員を出しましょう』
『私の所からも頭のいい子はいるからいいわよ』
『そっちの話はお前らに任せる。俺達は攻略を進めるぜ』
俺の発案の所為だが話が分裂を始めた。
『フィレウス大迷宮について詳しく聞きてぇ。別室で話そうぜ』
「ソニー、そっちは任せた」
「はい」
ノーチスのリーダーに半ば強制的に連れられて別室に移動する。
一応攻略という事でフルタイムとノックスの副リーダーも同席してくれる。
俺はノーチスのリーダー事ガンツにあらゆる質問をされ、それに淡々と答えていく。
それをメモっていくフルタイム、ノックス、バルキリーの副リーダー達。
「以上が俺が答えられる範囲だ」
「最後のゲートキーパーが難関そうだな」
「材質はミスリルとオリハルコンの合金ゴーレムだからな」
「よくもまぁ、倒したな」
「言っただろう、あっちでの50はこっちでの70オーバーだ。フレイムピラーやらダストストームなんか出せるレベルだ」
「いや、魔法使い1人だけでって話だ」
「ノンターゲッティングでやっていたからな。こっちから一方的に攻撃をし続けた。それでも10時間は掛かったんだがな」
「ソロで10時間か・・・」
「大苦戦にはなると思うがダンジョンのボスやドラゴン討伐で一丸となって倒せたんだから信じてるぜ」
「くっ、いい事いうじゃねぇか。俺たちは一人じゃねぇんだしな。とにかく大迷宮攻略が目的だな」
「食料や飲料水の確保は大事だ。アソコで手に入るかは分からない」
「ん?どうしてだ?攻略したときはどうした」
「そもそもアンデットであるスケルトンキングは飢えも乾きもしない。食料や飲料水は不要だったんだ。スタミナ無限の状態でいつまでも走れる」
「お、おう。そうだったな」
「全体的な攻略時間は俺でも不明だ。数日で終わるか、1週間以上掛けたかは分からない」
「どういう事だ?」
「βテスト時代は結構無茶して2徹3徹も当たり前にやっていたからな」
「3徹か・・・ここでの1日ってリアルで何分だ?」
『昼が1時間、夜は30分です』
「3時間で2日分か・・・1日で16日分として・・・最大で48日分かよ」
『そこまで食料や飲料水が保つとは思えません』
「スケルトンキングだからこそ攻略できたかもしれない」
「ボス以外の情報とか無いのか?」
「朧げにだか・・・」
俺はあの時出会ったモンスターの情報を思い出しながら言う。
「10種類程は居るか・・・しかもレベル70台のモンスターばかりか」
「注意ポイントもある。途中で垂直に落下する大空洞がある」
「垂直落下する空洞か」
「落ちたら落下死は免れないぞ」
「浮遊の魔術師が居るな」
「例え最下層に落ちて生きていたとしても、レベル100超えのモンスターがウヨウヨいる」
「最下層だと?」
「フィレウス大迷宮は上層、中層、下層、最下層の4階層で成り立っている」
「それも、β時代にか?」
「本当は死ぬはずだったんだが運良く1ドットだけで生き残れた。後は回復して彷徨った」
「ん?つまり、大迷宮の攻略は1ヶ月以上掛かったが最下層に落ちたからだよな?」
「そうだな」
「んじゃ、落ちなければそれ以上に早く攻略できそうだな」
「あぁ。だが俺の記憶だけの情報だと空洞を避けて通れないが?」
「浮遊であれば緩やかな下降しかできないが、飛翔なら飛んでいける」
「ちょっと待て、飛翔のスキルなんてあるのか?」
「隠してても仕方ねぇよな、ノックスの副リーダーさんよ」
『うぐっ』
「俺達は既に把握済みなんだ。あのダンジョンで飛翔のスキルスクロールを手に入れている事をな!コイツが色々話してくれたんだからお前達も隠している事を話せ」
『たしかに我々ノックスは飛翔のスキルスクロールを手に入れた事は事実だ。しかし、アレは単体スキル専用なんです』
「なんだよ」
「飛翔は自身だけ専用か?それとも別のプレイヤーにも使えるのか?」
「両方とも可能です。しかし魔法職の範囲までしか飛翔出来ない事を考えると非現実的ですよ」
「大体20mを飛翔か・・・記憶が正しければ天井まで100mは離れていたな・・・ギリ届く距離までか」
「おいおい、何を言っている?」
「その飛翔スキルと俺のワイヤーアクションを組み合わせれば上手く対岸に行けるかもしれない」
「第三回武闘会で出したあのスキルか!アレは凄かったぞ」
「俺の最大射程は80m、飛翔で20m上昇できれば天井にコレを突き刺して向こう側に渡れる」
「お前だけが行けても意味ないだろ?」
「後は引き寄せで1人ずつ渡らせる。空洞の直径は50mだからな」
「天井に突き刺さなくても直接行けばいいんじゃないか?」
「たしかに天井に突き刺さなくてもある程度の高度から直接行けばいいな」
「だろ?」
『空洞の攻略は目処がたったとして攻略の人員や飲食物はどうします?』
「正直、一回で攻略しようなんて思っていねぇ。何度かの挑戦を経て攻略していくしかねぇ」
「すまないが一発勝負だ。出入り口の扉はプレイヤーが通った後に自動的に閉まる仕組みでビクともしない」
「そういう大事なことは先に言えよ」
「俺の時はそれで前進を余儀なくされた。本当は様子見するつもりだったんだがな」
「そこから【悪夢の3時間】が始まったようなものかよ」
「攻略人数を絞って、物資は現地調達とかで誤魔化すしかないか」
「職人系も数名は居るんじゃないか?」
「インベントリも万能じゃないしな」
食事にしても調理済みの料理はインベントリの中で腐る。調理前であれば幾らかの日数は持つ。
「途中で耐久力を戻せないと少人数でも攻略は難しくなる。同等の武器防具を持っていくにしてもインベントリを圧迫するだけだしな」
「そうだな。これ以上は無いか?」
「思い出せるだけは全て話した筈だ。後は何処まで詰めるかだ」
「わかった。後日改めて話し合うぜ」
一旦会議が終了し解散となった。
「ソニーそっちはどうだった?」
「後発組育成計画はノックスを中心に行うことが決まりました。大まかな道筋として私達の知識を集結させてやる気のあるプレイヤーに対し指導していく模様です」
「なるほど。俺達の方は攻略する方針で話が決まった。しかし、入ったら最後という事で攻略する為の人員を選別するそうだ。中心はノーチスのリーダーだな」
「一気に話しが進展しましたね。これもアオイさんが元スケルトンキングだったからなのですね・・・それにしても驚きました」
「隠していたからな」
「私も犠牲者の一人だったので余計にです」
「あの時にいたのか」
「えぇ。皆阿鼻叫喚でしたからね。街中にまで魔法が飛んでくるなんて誰も考えてませんよ」
「プレイヤーの攻撃は街中にも及ぶからな」
「考えれば簡単でした。あのスケルトンキングはプレイヤーだったのですから」
「話を戻すが、攻略人数のプレイヤー選考の会議は後日だそうだ」
「私達も密に会議をしないとですね。育成グループと攻略グループで分けないとですね」
「あぁ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「これから、育成計画班と攻略班で人選を選出しようと思う」
育成と攻略に対して話がまとまって来た所で人選をどのように分けるか合同会議が始まった。
『まず、この中に弟子を取った事のある人は居ますか?』
スッ
俺とソニーにゴウキ・・・各ギルドの数名がチラホラと手が挙がる。
『師弟システムの方が育成に向いていると考え、手を挙げている人達には攻略をしてもらう方に回って貰うつもりでしたが・・・』
「おいおい、師弟システムはあくまで初心者を救済するシステムだろ?レベル50や60の連中に必要か?」
『必要はないですね。では、育成と攻略に分かれてもらいましょう。私から見て左が育成で右が攻略です』
ザッザッザッ
『やっぱりこうなりますよね』
「ったりめーだろ」
全体の2割が育成で8割は攻略である。
そもそも俺達はゲームを攻略する為にトップを走ってきたからな。
「とりあえず、アオイは攻略班は確定させる。唯一の経験者だしな」
『私からも、攻略にはカンストプレイヤー以上で職業バランスを整えた方がいいでしょうね。見た感じ前衛剣士グループが多いですし』
「まずは、カンストしてねぇ奴は育成班な。教えるのが下手なら裏方に回れ」
ザザザッ
カンストしていないプレイヤーがこぞって育成グループに移動をする。
「それでも多いか。今度は剣士プレイヤーの選別だな。直剣騎士、巨剣騎士、近衛騎士、守護騎士、斧槍騎士で分かれてくれ」
ザザザッ
直剣騎士や巨剣騎士が大多数を占め、近衛騎士と守護騎士がバランスよく居て、斧槍騎士が極端に少ない。
「こうなるか、どう分けるよ?」
『アオイさん、貴方の情報が必要です。件のダンジョンの通路の様子はどうでしたか?狭かったんですか?広すぎましたか?』
「半々といった所だな。狭い場所もあれば広い場所もある」
『では、狭い場所とは剣士が2人以上並べますか?』
「狭くてもそれくらいはある。スケルトンキングがまさにそれくらいの大きさだからな」
スケルトンキングの身長は人より大きい3mで横幅もそれなりに広い体格を持っている。
『広い場所というと大体どれくらい』
「感覚によるが横に10人居ても大丈夫な広さもある。コレも感覚だが下の階層に行けば行くほど広くなったと思う」
『なるほど・・・攻略は下の階層には行かない方針ですので守護騎士や前衛は少なめにした方がよいですね』
ノックスのリーダーが淡々と人選を決めていく、戦闘において技量の有無で選出しているようだ。
『前衛はコレくらいで次は後衛ですね。狭い洞穴をイメージしているので弓や魔法使い等は少数でしょうね』
・・・
『次は職人プレイヤーの選出です』
・・・・・・
『以上36名。6PTのレイドで進みましょう』
1PTの構成は守護騎士が1、直剣剣士と巨剣騎士が合計で2、魔導師か狩人のどちらかが1、司祭が1、職人が1の6人で固められた。
『後は後続育成のためのグループです。ここからは分かれてミーティングです。移動を開始してください』
育成班と攻略班でこれからの事について話合う為にバラバラに動き出す。
「攻略班のリーダーを勤めるノーチスのガンツだ。基本的に各PTリーダーに従ってもらうが大まかな指示は俺が出す。事前に言ってあるが一発勝負、後戻りの出来ない攻略だ。行ったが最後二度とココに戻ってこれないと思ってくれ。それでもついて来てくれるか?」
『『『『『『『『おぅ!』』』』』』』』』
「じゃぁ、ミーティングを始める。唯一の大迷宮攻略者でありながら元スケルトンキングだったアオイを混ぜて話をすすめる」
「おい」
「周知の事実だろう。とりあえず初めての顔合わせもあるだろうが自己紹介をしようじゃねぇか」
といっても俺たちのグループは守護騎士のロンド、直剣騎士のゴウキ、人形使いのアオイ、職人のミモザの4人は顔見知りだ。
今回新たに加わったのは巨剣騎士リエンと司祭ローの2人だ。
「フルタイムのリエンだ。よろしく。見ての通り巨剣騎士だ」
「初めまして、バルキリーのローだよ。回復は任せて」
「フリーダムのゴウキだ。直剣騎士だ」
「同じくフリーダムのロンドでごわす。守護騎士でごわすよ」
「フリーダムのアオイ。人形使いだ。よろしく」
「フリーダムのミモザよ。メインは鍛冶師。サブとして大召喚士ね」
「それでこのPTのリーダーだが」
「アンタで良いだろ?」
「そうそう、フリーダムのギルド長だし。意義なーし」
「そうか」
ギルドフリーダムは俺の作り出したギルドである。ギルド員も少ないが攻略組にくい込む実力を持っている。
そこのギルド長を勤めているのが俺である。
「正直、巨剣騎士とはあまり組んだ記憶がないんだが、どんな職業になるんだ?」
「一言で言えば至近距離からの一撃必殺がメインスキルの構成だ」
「超重武器だからか?」
「そんな所だな」
「ローはどのような魔法を扱う?」
「基本的な回復魔法は扱えるよ」
「異常回復系は?」
「大体は回復できるよ。石化と暗闇はまだポイントが足りてない位」
「9階層は辛かったろ?」
「うんうん、バジリスクの石化光線とか辛かったよ。でもポーション屋さんが優秀だったから切り抜けたよ」
「そうか」
なにも異常回復は回復魔法だけでなく調薬師が作り出すポーションで補うことが出来る。
「自己紹介は済んだようだな。新たなPTメンバーと組むことになる奴もいるだろうか1ヶ月の訓練をして互の連携を強くしてもらうぜ。じゃ、解散」
ガヤガヤガヤ
各々のPTが個々に分かれて動き出す。
・・・
「シールドバニッシュ!」
ガイィイン
【反撃不可、気絶5秒】
「気絶入ったでごわす!」
「大破斬!」
「シクスブレイカー!」
「セブンスストライク!」
「斬鋼線」
ロンドの気絶効果付きのシールドバニッシュで相手を気絶状態に追い込んだ後に俺達が集中砲火を食らわせる。
「私の出番はなしだねぇ」
「私もよ?」
後衛職であるローとミモザは殆ど見ているだけだ。
「ダンジョンだから仕方ないだろ?」
ここはシクスの街にあるダンジョンの6階層で連携訓練をしている。
相手はミスリルゴーレムだ。魔法職キラーと呼ばれており魔法効果は殆ど無視される。
ここの階層は物理特化が有効でありミスリルのインゴット等を落としてくれる為に重宝されている。
ナルの戦力を含めて言えば俺達は7人PTである。道が狭くなければミモザの召喚獣を含めた9人で攻めようとしたくらいだ。
ミモザの主力召喚獣は最初からずっと同じでクマ吉(Lv57)の鋼鎧熊だ。サブは鳥の召喚獣で遠距離から阻害魔法やらを放ち俺達をサポートしてくれるヤキトリ(Lv52)の魔鷹だ。
ダンジョンを選んだ理由は大迷宮の狭い通路での戦闘に酷似している最適な場所だと判断したからだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「準備はいいか!」
それから1ヶ月後、各々で準備していたレイドPTを組みフィレウス大迷宮への入口へと歩を進めた。
「こっちだ」
インベントリには2週間は保つ食料と飲料水を詰め、最小限の回復系ポーションを持ち、それでも足りない物資は幌馬車の中に詰めての攻略だ。
「ここが入口なのか?」
海上都市から北西に位置する岸壁の陰にソレは隠されるようにあった。
「あぁ、だが様子が変だ」
たしかに扉としてソレは存在する。
だが、扉には記憶にはない模様が彫り込まれていた。
ググッ
「開かねぇな」
ガンツが力を込めて開こうとするがビクともしない。
「1ヵ月前に来た時にはこんな模様はなかった筈だが」
「それは本当か?」
「だから、俺は皆に話したんだ。一体なんなんだ?」
「おい、これを見てみろ。字が書いてあるぜ?」
俺達のPTメンバが扉の隅に石で出来たプレートを見ていた。
【魔を封印する地。封印を解くには人の罪を集めよ】
プレートの下には7つの何か嵌める窪みがあった。
「人の罪ってなんだよ?」
「シンプルだがパッと出てこないな」
「誰かコレについて分かる奴いるか?」
『7つの大罪じゃないか?』
1人のプレイヤーが呟いた。
「どういう事だ?」
『人の罪と7つの嵌めるような窪みから推測だが、人の罪って7つの大罪だと思ってな。傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲の7つだ』
「で、それからはなんだ?」
『いや、ここまでしか思いつかん』
「そうか。他に何か分かった事はあるか?」
「隠しダンジョン・・・か?」
「隠しダンジョンだぁ?」
「7つの大罪と隠しダンジョンの関係性だ・・・憤怒のインテリジェンスタートルをそこで見かけた事がある」
「ちょっと待て、アレは噂程度の物だろ?隠しダンジョンに行った事があるのかよ!?」
「サードの鉱山内部、最下層エリアに奴は居た」
「もしそれが本当だとしてもサードまで戻らにゃならんのか・・・」
「それだけじゃない、他の隠しダンジョンは俺も知らん。残り6つの情報が必要だ」
「だな。とりあえずソコに向かうしかねぇじゃねぇか・・・。後は後で考える。予定変更だ!俺達はサードの鉱山に向かう!!」
ガンツの声によって36名は一旦海上都市へとUターンして行く。
1日ばかり他のギルドメンバへ情報を渡して攻略組の目的は7つの大罪モンスターがいるであろう隠しダンジョンの探索と攻略へと大幅に切り替えた。
報告を受けた育成機関のメンバは了承し俺たちの出立を見送ってくれた。それと同時に隠しダンジョンの情報を冒険者ギルドを通して集めてくれるそうだ。
ザワザワ
海上都市を出発して早3週間程掛かりサードの街へと到着した。
それでも俺達は野営を含めた旅をし1週間程の短縮に成功している。
サードの広場にトッププレイヤーの集団が集結した途端に周囲のサードプレイヤー達がザワめき始める。
その中には見知った顔は見当たらない。
ゲラゲラゲラ
知っている奴らを見た。
俺がレベル1の時、冷やかしていた3人組である。
彼らなりにレベルを上げているようだ・・・
「よし!今日はココで宿で寝るぞ!!長旅の疲れを癒せ。解散!」
ここまでガンツは俺たちを引っ張ってきた。
3週間にも及ぶ長旅はどのプレイヤーでも精神的にキツイ旅である。
「アオイは少し残ってくれ。この後の話をしたい」
「わかった」
俺はガンツに連れられて冒険者ギルドの方へと向かう。
先に宿を決めておく事は忘れない。
「でだ、鉱山に有る隠しダンジョンに行くにはどうすればいい?なにか特別な方法でもあるのだろう?」
「俺が知っているのは2つの方法。トラップによる落下死コースからの入口」
ブッ
ガンツが飲みかけていたビールを気管に入れて咳き込む。
「ゲームオーバーだろう」
「何もしなければな。といってもあの人数を殺さず下ろす事は不可能だ。浮遊の魔法でも無理だろう」
「高さは?」
「ざっと50m。やつの大きさは高さでも20mはあった」
「そりゃ、死ぬよな。半デス・ゲーム前に発見したって事か?」
「いや、俺のワイヤーアクションもどきで落下死を免れただけだ」
「もどき?」
「条件が揃っていなかったのかワイヤーアクションがスキルとして昇華されなかった」
「なるほどな。で、そのデカブツの印象は?」
「ガ○ラだな」
「ガ○ラか・・・。勝てるのか?」
「分からん。一旦看破スキル持ちが偵察しに行ったほうがいいと思う。戻り方はちゃんとあるし。近づかなければターゲットはしてこない」
「と、思うだろう?」
「ま、襲って来るだろうな」
俺達は何度この事例に踊らされただろう。
半デス・ゲーム化前の情報はあてに出来ない。
最悪帰りの手段も消えていても可笑しくない。
「前情報もなしに戦う俺達も馬鹿じゃない。偵察はさせるが逃げ切れるだけの人材が必要だ。それとお前自信も案内人として必要だ。何人抱えられる?」
「重戦士で1人までが限界だ。軽戦士なら2人まで、後衛なら3人までだな」
「10本でも耐久値が心もとないか?」
「これは公表していないが、糸使いの糸の耐久値の減少幅は距離が長くなれば減り幅も大きくなる」
「攻撃時でもか?」
「攻撃時も同じだ。でなければ50mレンジ攻撃が最強すぎるだろう?」
「そんなデメリットもあったのか」
「この事に気づいたのは極最近だったのが怖い話だ」
「そうだな・・・」
「看破を持っているのは俺以外に誰か居るのか?」
「お前も持っていたのかよ。なら一人で」
「レベルは低いと思うぞ?」
「幾つだ?」
「10だ」
「取ったばかりか」
「魔力を馬鹿使うんだよ」
「どれくらい?」
「100」
「魔法職なら今のレベルだったら余裕だろ?」
「俺は魔法職じゃねぇんだよ」
「そりゃ、そうだったな。ならなんで取ってんだ?」
「それが効率が良かったからだ」
単に周りに鑑定系のスキル持ちがいなかっただけだ。
「大体は鑑定で間に合うしな」
「看破する対象が少なすぎるって事か」
「そういう事だ。今回のように未知数の相手なんかが看破を使う対象にしているしな」
「なるほど。さすがの俺も他の連中が看破を持っているか把握していねぇ。後で聞いておいてやる。んで先行して向かってくれねぇか?」
「お前たちはどうするんだ?」
「鉱山都市で待機する。んで、朗報だ。ファストの森に隠しダンジョンじゃないかという情報が入ってきた」
「ファストか」
「何処にでも行ける事を理由にエルフロールプレイヤーが森の最奥部に向かったがいつの間にかフィールドボスの手前まで戻ってきてしまう場所があるそうだ。恐らく阻害系フィールドなんだろうな?」
阻害系フィールドとは様々なデバフ効果を持つ特殊フィールドの事で迷うような魔法がプレイヤーに掛かってしまうのだろう。
「それについては後日だな」
「あぁ。とりあえず、明日の朝には偵察隊の人員を選出しておく。今日はお疲れさん」
「お疲れ」
話は終わりを告げ解散する事となった。
・・・
・・・・・・
「よろしく」
「よろしくねー」
翌朝、偵察隊として俺の他に中央広場にミモザとローが待っていた。
「ミモザが看破スキル持ちか?」
「えぇ。色々なアイテムを看破していったらカンストよ」
「それなら安心だな。ローは俺達の回復役か」
「モチよ~」
「ナルが前衛って訳か?」
「クマ吉が盾よ。ヤキトリもいるわよ」
「1PT分って訳か」
「私はどっちの回復を優先すればいぃ~??」
「主に盾のクマ吉だな、ナルは2番目だ」
「うぃうぃ~」
「出発しましょう」
「あぁ」
こうして俺達は一足先に鉱山都市を経由して鉱山内部へと入る事にした。
「ジュエリーライト」
パアァアア
「いつ見ても明るいねぇ~」
ローが俺の持つマジックアイテムジュエリーライトを見て呟く。
ダンジョンで散々見てきただろうに・・・
「それで魔法職の戦力を落とさない考えは素晴らしいよ~。でも量産はできないの?」
「宝石は全然手に入らないだろう?」
「たしかにバッタリと見なくなったねぇ~」
「私が呼ばれた理由はここにもありそうね」
「俺と同じで奴を見た目撃者だしな」
「あれ?そうなんですかぁ?」
「同じPTを組んでいた時に一緒に見たんだ。モチロン即退散したけどな」
「へぇ~。結構下に降りるんですかぁ?」
「2階層分を中層の上下と下層の上下で8階層分を下る」
「そんなに合ったんですねぇ。私も知らない情報ですよ~」
「ごく一部のプレイヤーしか知らない情報だろう。そもそもプレイヤーがそこまで降りる必要が無い時だしな。俺がこの情報を知らなかった場合シラミ潰しされて発見されたんだろう」
「なんで広まんないんですかねぇ?」
「情報屋が上層部分のマップを町で売っているわ」
「そういう事」
俺達よりも後から追いついてこようとしているプレイヤーの何名かで鉱山のマップを完成させた。
未完成ながらも上層の上下、中層の上を網羅している物で6階層分にもなっている。それより下の情報はここを通るだけプレイヤーには不要情報だと思われたのか下に続く道は消されている。
・・・
・・・・・・
「ここが下層の下だな」
「ここだとサクサク進みますねぇ」
「レベル差があるからな」
「それでどうやって最下層に向かうんですか?」
「デストラップを使う」
「へ?」
「あったわ、押すわよ」
「おう」
ガコンッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
ザパァ
大量の水が俺たちを飲み込み、道中のモンスター達をも倒していく。
【酸欠。30秒に総体力の5%ダメージ】
・・・
「ワイヤーネット」
ガガガガガガガッ
水の排出口手前でワイヤーネットを張り、俺達は落ずに留まる。
「ぷはぁ!もぅ、最初に話してくださいよ!」
「すまんな」
「早く降りましょう」
「これ持っていてくれ」
ジュエリーライトをミモザに渡して、降りる準備を始める。
フッ
「へ?」
俺たちを支えていたワイヤーネットが消失、重力に従って落下をし始める・・・
「きゃあああああああ」
何も知らないローが悲鳴を上げる。
「ワイアーアクション」
シュルンッ
2本の糸はミモザとローに巻き付き、残りの8本で天井に楔を打ち込んで移動を開始する。
俺達は振り子のように移動しながらジュエリーライトの光に照らされた岩棚へと向かう。
スタッ
「だから、早く言ってください!怖かったんですよぉ!!」
「悪い悪い」
「全然悪いとは思ってませんねぇ!」
「それより、ちゃんと居るわ」
「ミモザさんまで・・・・・・うそぅ」
ジュエリーライトはかなり広範囲まで光を届けてくれる。
憤怒のインテリジェンスタートルを見てローの怒りが収まっていった。
「そんな、こんな大きなモンスターは見たこと無いですよぉ」
「30mはあるな。奥はどの位か分からないが」
「レベルが上がったからやっとわかったわ」
「どんな感じだ?」
ミモザが看破でインテリジェンスタートルを見ている。
【看破】
名前:憤怒のインテリジェンスタートル
レベル:100
種族:タートル
体力:300,000/300,000
魔力:15,000/15,000
攻撃力:5,400
防御力:14,000
所有スキル:踏みつけ、スピン、広範囲ブレス、アースクエイク、憤怒、大咆哮、睡眠
状態:睡眠
ミモザが奴のステータスを口に出す。
「体力30万ですか!?」
「防御力14,000も高いな」
「苦戦すると思うわ。私達職人達は参戦せずに他のトッププレイヤー達を連れてきたほうが良いわね」
「だな。予想外のステータスだ。ドラゴンですらもっと低いステータスだ。さすが隠しステージのボスだけある」
「帰りましょう」
「あぁ」
ガラッ
グラッ
「あ?」
体重を掛けていた右足の岩が崩れ俺の体が傾く。
「くっ」
なんとかバランスを取ろうとするが突然の事で体が付いてこない。
「アオイ!?」
「アオイさん!!」
ヒョオ
ドスンッ
カハッ
背中ら盛大に落ちて空気が漏れる。
「っつ~」
「アオイ!無事!!」
「早く逃げるのですぅ!」
岩棚の上からミモザ達の慌てる声が聞こえてくる。
コォオオオオ
ん?
視線をタートルの方に向けると奴がコッチを見ていた。
口を広げ周囲から何を取り込んで溜め込んでいるモーションだ。
「マジかよ!?」
【広範囲ブレス】
俺の視界にそう写されて光に満ちた。
【GAMEOVER】
光に満ちた状態でも俺のゲームが終りを告げた文字が浮かび上がっている。
「ここまでか・・・」
ほんの数瞬までハッキリしていた意識が落ち込んでいく。
ログアウトで起こる覚めるシーケンスに入った様だ。
・・・・・・
・・・・
・・
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お疲れ様でした。
次回から第二章に突入です。




