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29話「王都-第一回武闘大会①」

ピコンピコン


朝起きるとメール受信ボックスに一通のメールが受け取られていた。


-------------------------------------------------------------


from:運営から

to:アオイ


件名:第一回武闘大会のお知らせ

内容:拝啓

   王都への転移が可能になった事により下記イベントを開催致します。

   王都にあるコロシアムを利用し2人組による武闘大会が開かれます。

   詳細は以下のアドレスにて確認してください。

   注意点として王都に直接いけない人が転移しても王都内の施設はご利用できません。

   URL http://**********.**********.****.co.jp/**/*********_*********/**********


-------------------------------------------------------------


やはりイベントの兆しだったか。


-------------------------------------------------------------


■第一回武闘大会の流れ


①申し込み期日までにコロシアム中央入口にある受付にて2人PT状態の上で申し込む。

②予選を勝ち抜き本戦に出場できる資格を獲得する。

③本選によるトーナメントで順位を決める。


特典として優勝者、準優勝者には豪華景品の贈呈。


今大会はレベル別によって分かれています。

1~15は初心者ブロック

15~30は中級者ブロック

31~45は上級者ブロック

46~は最上級者ブロック


なお一次職が多い為、二次職のスキルは戦闘中は使用不可とさせて頂きます。

また、戦闘時は長引かせない為に回復アイテムなどの使用を禁止します。


その他、質問等については下記Q&Aにてお答えします


URL http://**********.**********.****.co.jp/**/*********_*********/**********


-------------------------------------------------------------


「古典的だなぁ」


昔からイベントの1つに武闘大会が入っている。


だが、登録しに行く。


誰か組めそうな奴いねぇかな?


レベルが近いのはソニー達だが46のためブロックが違う。


フレンドリストから組めそうな人物が居るか眺めてみる。


弟子であるラカンはレベル27・・・中級者ブロックか、というかレベル上がるの早いな。


戦闘系のプレイヤーってソニー達以外知らないしな。後は生産系の連中だけだ・・・


レベル帯が同じフレンドにメールを送って見ても殆どが戦いには不向き等の返信で断られた。


「いいよ」

「いいのか?」

「ん」


王都で見かけたイロハにイベント参加に誘ってみたら良いそうだ。


「魔法使いとしか参加できないけど」

「問題ないだろう」


早速、王都コロシアム前へとやってくる。


『こちら初級者ブロックで~す』

『こっちは中級者ブロック最後尾で~す』

『上級者ブロックはこっちです』

『最上級者ブロックはここです』


コロシアム前には4つの列が出来上がり最後尾には受付係のNPCが呼びかけていた。


「やっぱりレベルが低くなると増えるな」


一番長い列は中級者ブロックであり、かなり長い列が出来上がっていた。


短いのは最上級者でレベル46以上に到達した連中しか居ないようだ。


「よ!お前達も参加するのか?」


振り返るとゴウキ達が揃っていた。


「まぁな。お前たちは最上級ブロックだよな?」

「あぁ。レベル上げで46以上になっちまったからな」

「アオイさんはどうするのか心配でしたが、イロハさんよろしくお願いしますね」

「ん。任せて」

「いいっすねぇ~こんな可愛い子と組めるなんて」

「おいドンとは嫌でごわすか?」

「そんな事ないっすよ~」

「とっとと、受付しようぜ」


ゴウキ達は最上級ブロックの列に並んでいった。


「それにしても結構速い受付だな」


並んでいるが、止まることは殆どなくどんどん前へと歩いていく。


「受付方法は識別の玉に手をかざすだけ」

「へ?」

「Q&A見てない?」

「全然だな」

「見るべき。有力な情報とか細かいルールとか書かれているから」

「そ、そうだな」


ものの10分で俺たちの番になった。


各受付のテーブルには2つの玉が乗せられている。


『ブロック間違いが無ければ手を置いてください。もし虚偽であれば適性のブロックに向かってもらいます』


なるほど、この玉は識別するための物なのか。


スッ


玉に手を置くと少しだけ淡い光をだした。


『条件はクリア致しました。チーム名を提示してください』

「は?」

「マリオネットで」

「え?」

『チーム名:マリオネットに致しました』

「行く」


イロハに背中を押されて受付の列から外れる。


「チーム名なんて聞いていないぞ?」

「Q&Aに書かれていた。情報収集不足」

「ってか、マリオネットってなんだよ!」

「人形使いの別名。傀儡師」

「お前は入ってないじゃないか」

「別に良い。私はオマケ」

「オマケじゃないだろ」

「もう決まったこと」


主導権はイロハにあるようだ。


「せめて、一言相談してくれ」

「これは決定事項」

「一時と言えど名前は大事だろ」

「気にしたら負け」

「はぁ~」


何を言ってもダメのようだ。


「Q&Aでも見るか」

「その前に、その格好をどうにかして」

「格好?」


俺の服装を見る。


「前と変わらないだろ」

「虎柄はダサい」

「そっちの方がよっぽど重要じゃないだろ」

「見た目も大事。狩りに行く」

「狩りっても虎以外の毛皮でもあるのか?」

「フィフス、北にある洞穴にグレートタラテクトの糸が布系装備に使える」

「虎より性能が上って事か?」

「私のがソレ」


・グレートタラテクトの服

 グレートタラテクトの糸から作り出した服。

 防御力:27

 耐久値:200/200

装備可能職業:糸使い、弓使い、司祭、魔法使い

 ランク:クリエイト

品質:2


・グレートタラテクトのズボン

 グレートタラテクトの糸から作り出したズボン。

 防御力:27

 耐久値:200/200

装備可能職業:糸使い、弓使い、司祭、魔法使い

 ランク:クリエイト

品質:2


・グレートタラテクトのローブ

 グレートタラテクトの糸から作り出したローブ。

 防御力:27

 耐久値:200/200

装備可能職業:糸使い、弓使い、司祭、魔法使い

 ランク:クリエイト

品質:2


若干であるが確かに虎皮装備より性能は上だ。

マントの魔力回復(中)の恩恵は消えるのが惜しいが防御力が少しでも上がるのは捨て難い。


「マントは使えるが?」

「マントも」

「足は良いんだな?」

「足装備は無いからいい」

「無いのかよ」


こうして俺たちは北の洞穴へ赴く事となった。


キシャァアアアア


「でかっ」


グレートタラテクトになるとゆうに5mは超えている巨大蜘蛛である。


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:44

 種族:グレートタラテクト

 体力:4,500/4,500

 魔力:200/200

 状態:健康、アクティブ


「ってか、前衛も無しに来る所かよ」


推奨レベル42~となっていてもPT戦前提のゲームなんだが。


「前衛は持ってる」

「これで防御しろと?」


一応は出していた戦闘ドールだが、あの巨大な体から出る攻撃を受け止められるだろうか?


バキャァン


鋼鉄の小盾が火花を散らしてグレートタラテクトの右脚による攻撃をいなす。


「耐久値が大分減ったぞ!?」

「ヤバイかも」

「タイガーなんかよりも強い攻撃力って事じゃねぇか」


草原のタイガーの攻撃も戦闘用ドールで実践済みで問題なかったが此処では役に立ちそうに無い。


「小盾じゃ防御力が足りなさ過ぎるぞ」

「一旦退避」


俺たちはオメオメと逃げる事となった。


「やっぱし前衛ないと駄目?」

「そりゃ、そうだろ」

「いま、ライバルとなるプレイヤーを強化する人なんて居ない?」

「ソニー達は別ブロックだから協力してくれるだろう。あいつ等も早々に装備を変えていたしな」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「おりゃぁあ!」

「防御は任せるでごわす!」

「エリアヒール」

「クワトロファイアーボール行くっすよ~」


何時ものメンバーに声を掛けたら2つ返事でグレートタラテクト討伐に参加してくれた。


≪アオイのレベルが45に上がりました≫

≪スキル:右腕操術のレベルがMaxになりました≫

≪SPが1増えます≫

≪スキル:左腕操術のレベルがMaxになりました≫

≪SPが1増えます≫

≪スキル:胴体操術のレベルがMaxになりました≫

≪SPが1増えます≫

≪スキル:右脚操術のレベルがMaxになりました≫

≪SPが1増えます≫

≪スキル:左脚操術のレベルがMaxになりました≫

≪SPが1増えます≫

≪スキル:マクロ人形操作が派生しました≫


戦闘時も人形を手元に置いて参加している為、レベルが軒並み上がった。


≪スキル:マクロ人形操作をSP5消費して取得いたしますか?≫


YES


≪スキル:マクロ人形操作を獲得しました≫


特にスキルの中身を見ていなかったがSP消費が5とはでかいな。


「マクロ人形操作か」


・マクロ人形操作

 人形に対して念じるだけで決まった動きをする。

 歩く、走る、剣を振るう、盾で受け止める等。

 糸5本の専有

 前提:人形使いレベル20

    SP5の消費。

 消費魔力:10

CT:1s 


基本的に5本は使うことになるのか消費魔力が増えた分操作性が向上されたと思っても良いのか?


「ゴウキ、こいつも戦闘に参加させてもいいか?」

「あん?問題ないのか?」

「恐らくは邪魔にはならないだろう」

「タゲはオイどんが惹き付けるでごわすから気にせずやってみるでごわすよ」

「助かるぜ。マクロ人形操作」


ブゥン


糸から人形に対して魔力が送られてる。


今までと違う手応えを感じる。


「さぁ、戦闘を続けるでごわすよ!」

「「「「おぉ!」」」」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「これで目的のアイテム数も集まったな。皆助かった」

「ダサいっすからね」

「えぇ」


虎装備をしていた2人が頷く。


「目立ってしょうがないしな」

「ごわすな」


それに同意する前衛の2人。


「早く、変えるべき」

「分かったから。そう急かすなよ。つか、誰に頼めばいいのか分からん」

「ミカに頼むと良い」

「受けてくれるのか?」

「素材持ち込みだから大丈夫。お金さえあれば平気。でもレア素材系は難しい」

「なるほど・・・」

「そういや、急に人形の動きが鋭くなったよな?」

「あぁ、途中で二段階目のスキルを取得したからだ」

「もう、二段階目ですか」

「俺らはまだっすよ?」

「人形使いは成熟が早いのかもしれないな。糸使いは大器晩成って感じだったし」

「人形使いのレベルはどれくらいでごわすか?」

「20だな」

「速ぇ!俺なんか12だぞ」

「私なんて8ですよ」

「そんなに差が開いていたのか・・・」


本当に成熟が速いのかもしれない。


・・・


「はい、出来たわよぉ~」


ミカに素材持ち込みで依頼すると直ぐに生産に入ってくれた。


「色はそのまま白にしておいたわよぉ~」

「値段は?」

「ん~、98,000Gでいいわぁ」

「虎に比べて価値がぐっと上がるのな」

「需要と供給の問題よぉ。持ち込みだから安く済んでいるけど人気のないモンスター素材は高くなるわぁ~蜘蛛素材は魔法職系に必要だから供給はそこそこあるけど余り物を売ってそれっきりだから少ないのよねぇ~」

「後続がどんどん増えれば供給は間に合いそうだな」

「言うようになったわねぇ」

「まぁな」


最初は殆ど死に戻りゲーと化していたが、あっと言う間に進んでいったな。


「それで、武闘大会に出場するのよねぇ?」

「あぁ、イロハがペアになってくれた」

「あらまぁ!お熱いことで」

「そんなんじゃねぇよ」

「デレないでよぉ」

「デレてるように見えるのか?」

「マジレスしないでよねぇ。まぁ応援しているわぁ」

「後衛同士だから何処まで行けるか分からないがやれるだけやってみるさ」

「えぇ」


ミカと別れて大会の情報を見るためQ&Aを落ち着いたカフェで見る。


----------------------------------------------------------------

Q.受付はどういう形式なんだ?

A.受付にある識別玉を触るだけで行われます。もし別ブロックの者達が組んでいた場合正式な場所に行ってもらいます。

 また、PT名を決めていただきます。


Q.戦う時にルールとかあるの?

A.基本的にはどのような戦闘方法を用いても構いません。ただし二次職のプレイヤーが全体の数%しかいませんので戦闘時にはスキルの封印を施します。戦闘終了の判定は体力が全損しての全滅、場外、負けを認めるといった行為で決まります。


Q.豪華景品ってなんなんだ?

A.優勝して獲得してみてからのお楽しみにしてください。我々からは答えられません。


Q.ブロック毎の豪華景品の中身は変わるのか?

A.高いブロックほど良い物に変わります。


Q.遅刻した場合はどうなるの?

A.戦闘開始予定時間から5分経過してもこなかった場合は不戦勝になりますので皆様注意してください。


Q.急に腹を壊して出れなくなった場合何処へ連絡すればいい?

A.特設サイトの出場者ボタンを押してください。通常は押せなくなっていますがプレイヤーの状態がその様になってから初めて押せるようになります。

 URL http://**********.**********.****.co.jp/**/*********_*********/**********


Q.予選のバトル形式は?

A.数ブロックに分かれたバトル・ロワイアル形式になります。最後まで生き残った上位2チームが本戦に出場できます。あまりにも出場者が多い場合になりますと予選と準予選に別れさせ上位2チームを集め生き残った上位1名を本戦に出場させます。


Q.期間はどの位の予定なの?

A.予選~本戦については出場者数に左右されますが、大体1週間~2週間の予定になっています。


Q.せめて飲食店の施設だけでも開放してくれ

A.予選~本戦中の期間だけコロシアムの内部に飲食店を複数用意していますのでそちらをご利用ください。王都の施設を利用したければ期間中にフィフスから来訪してください。


Q.一度にどれくらいのプレイヤーが戦えるの?

A.闘技場のサイズを調整すれば50組100人での戦闘となります。


Q.生き残った全プレイヤー約6800名が全員出場した場合はどうするの?

A.期間を延長しサーバーを増やして並列で予選などを行ってもらいます。


Q.PKやMPKも出場できるの?

A.全プレイヤーに出場権利はあります。ただし、期間終了後したら衛兵に捕まる場合があります。


Q.期間中にレベルが上がりブロックが上位に入ってしまったらどうするの?

A.参加期間中は参加ブロックの最大値であるレベルより経験値がMAXになったとしても上がらない仕様となっております。レベルを上げたい場合棄権をしてください。


Q.体力全損したらゲームオーバー?

A.大会中の戦闘に限り、体力が全損してもゲームオーバーになりません。しかし、大会参加者だからと言って外で体力全損した場合は例外なくゲームオーバーです。



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とりあえず、こんな所か・・・他にも様々な質問なんかが寄せられていたが他愛もない質問ばかりだった。



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


受付期間が過ぎ、予選が始まった。


今回、上級者ブロックに集まった申込者数は320名、160組の申し込みがされていた。

予選は40名、20組のバトル・ロワイアルを8回行い上位2組の16組が本戦に出られる事となった。


以外と少ないな・・・


『Dブロックの人たちはこちらに集まってください』


係員に従って予選Dブロックに割り振られた俺たちは集まった。


周囲を見てみると近接戦闘職が多く後衛職はチラホラという感じだ。


『では、位置に付きますので待機していてください』


ブゥウウン


転移の感覚がして風景が代わる。


ッタ


「随分広いな」

「攻撃範囲を考えればこれくらい離れていないとダメ」


直径100mはありそうな石造りの闘技場に俺たち予選組みは等間隔に円周に立っていた。


闘技場の淵には淡い光が天に向かって伸び場外判定をしやすいように可視化しているようだ。


ん?アレは?


『それでは、予選Dブロックを始めます!』


10・・・9・・・8・・・


10カウントダウン方式か。


「イロハ、開始直後俺たちは戦線離脱する」

「ん?」


いつも無表情なイロハが呆けた。


3・・・2・・・1


スタート


中央にはじめの合図が大きく浮かび上がる。


シャッ


右の糸を真上に放つ。


グルルルッ


ガチッ


「行くぞ!引き寄せ!!」


イロハを抱き寄せ、俺たちは真上に向かって体が浮き上がる。


『ウソだろ!』

『くそ!やられた!!』


俺たちに向かってきていたプレイヤーからそんな声が届いた。


あっと言う間に目的地に着いた。


俺が見つけたのは闘技場の真上にある人が乗れそうな石柱だ。

本来は雰囲気を盛り上げる装飾用にと作られている筈の変哲もないオブジェクトなのだろう。

闘技場外から伸びていたから利用させてもらった。


「これぞ、高みの見物って奴だな」


ゴンッ


「っつ!」


背後から硬いもので頭を殴られた。


「最初に言って」


そこにはふくれっ面のイロハが杖を俺に振り下ろした状態で立っていた。


「悪かった」

「これって良いの?」

「戦い方は何を使っても良いらしいからな。こういったオブジェクトを利用するのもアリだろう」


といっても、これが使えるのは一回限りだろう。


様々な場所でスキルが発動し人が吹っ飛び、吹っ飛んだところでは別の組みが戦っていたりと残りの19組が混戦状態だ。


「ヒマ」

「労せず勝つ、コレもまた戦略の一つだ」

「ズルでしょ」

「そうとも言う」


・・・


・・・・・・


10数分経過した所で俺たちを含んで4組に絞られ予選も終盤に差し掛かった。


『オラオラオラ!』

『そこですわよ!』

『負けぬわぁ!』

『グハッ!』

『厳しいぜ』

『上位2組まで、もう少しだ!』


6人が互いに牽制しながら三つ巴戦へと突入する。


『ぐあぁあああ』

『アレ~クスゥ!!』


鋼鉄装備を身につけた剣士が体力を全損させて待機エリアに転送される。


『隙ありですわ!』

『オラオラオラ!』


パートナーを失ったもう一人の剣士は2組に攻め寄られて転送されていく。


『なぜですの!』

『残ったの俺たちだけだろ!』


闘技場内には2組が残ったと錯覚を起こして戦闘を辞めてしまう。


できれば潰しあって欲しかったがここまでだな。


「イロハ、行くぞ」

「やっと出番」


バッ


ババババババッ


ローブが風に煽られて落下を開始する。


シュルルルルルルル


「トリプルファイアーボール!」


イロハが2組を巻き込む形で魔法を放つ。


『ハッ!後ろに下がりますわよ!!』


いち早く気づいたのはお嬢様口調のプレイヤーが後退し始めた。


ドガァアアン


クンッ


ズサァ


ミスリル糸によって俺たちの落下ダメージを相殺し着地を果たす。


「ソニックウェーブ」


爆炎で見えないがイロハが追撃を放つ。


バフッ


ソニックウェーブが爆炎を吹き飛ばしてモロにファイアーボールを食らったプレイヤーが姿を表す。


『ゲホゲホっ!』

『一体何処から!?』


さすが鋼鉄装備を身につけてあるだけで体力はそこそこしか減っていない。


「糸拘束術二式」


シュルルルッ


『うわっ!?』

『なんだ、コレ!!』


【反撃不可、拘束9秒】


ミスリルの糸で1人ずつ2本で拘束する。


「イロハ!」

「トリプルファイアーボール」

「斬糸!」


俺とイロハで動けない2人に攻撃を続ける。


カッ


ドガカアアアン


ファイアーボールで再び見えなくなるが1人にはクリティカルポイントに入って体力が全損するのを確認。


『ダンテ!無事か!!』


しかし、相棒は隣には居ない。


「ストリングランス」


ギュルッ


ズダンッ


『ぐふっ!?』


4本のミスリル糸がより合わさり一本の槍として生き残った男の胸に突き刺さる。


『そんな』


これがクリティカルと判定され男が転送される。


『Dブロックの勝者、チーム:ハイビスカスとチーム:マリオネット』


闘技場中央にvictoryの文字が浮かび上がった。


『おって、決勝戦の情報をメールにてお送りいたします。本日はお疲れ様でした』


係員が宣言し俺たちも転移が始まる。


シュンッ


再び控え室に転移された。


『卑怯ですわ!』


声高く唐突に俺たちに指を指して宣言する女性プレイヤーが居た。


俺たちと一緒に勝ち残ったハイビスカスの片割れだ。


『最後の最後まで高みの見物をして私たちを戦い合わせておいて生き残った方のどちらかを攻撃なさるなんて』


『そうだぞ!』

『卑怯者だ!!』


女性プレイヤーに増長するように俺たちにあっさりと倒された3番目に生き残っていた2人のプレイヤーが立っていた。


「卑怯?戦い方は自由な筈だろ?例え俺たちがオブジェクトの上で高みの見物していたも問題無いはずだろ?訴えるべきは俺たちではなくオブジェクトを用意した運営開発側じゃないのか?」

『ぐっ、しかしですわ!この大会に参加したからには正々堂々と戦うものじゃありまんせの?』

「戦いに正々堂々もあるとは驚きだな?じゃぁ、何か?遠距離攻撃型の魔法職や弓使いは正々堂々と戦っていなかったって言いたいのか?俺たち後衛職は布系か革系しか装備を許されていないのにお前たちは鉄系装備でガチガチに防御力を高めておいて正々堂々とよく言えた物だな?俺たちに合わせた装備にしてから文句を言ってくれよな?」

『ぐっ』

『お嬢様、ここは引き時かと』


女性プレイヤーの後ろから落ち着いた雰囲気の初老風プレイヤーが止めにかかる。


『分かりましたわ、決勝では卑怯な手は出させませんわよ』


そう言い残して立ち去っていった。


「行くぞ」

「ん」


会場を後にして本戦の連絡待ちとなる。


Q&Aに今回の事について運営に問い合わせが殺到する事となり、新しいルールの追加で戦闘フィールドの高さが30m位となりオブジェクトに乗ろうとすれば場外判定になるそうだ。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


3日後、全ての予選が終了して本戦が行われる事となった。

初心者ブロック全10組、中級者ブロック全28組、上級者ブロック16組、最上級者ブロック4組、計58組116名が集う事となった。


主催者は王国自体でNPCキャラクター達も観戦者として本戦では見に来るそうだ。

本戦の順番は初心者ブロック~最上級者ブロックを直列で始めるそうだ。

正式に賭けることが出来るそうだ。

公式ホームページからどのブロックの2人が優勝するのか1度きりいくら賭けるのかが決まる。


ピピピッ


「もう、賭けが始まっているのか」

「私達の掛率が一番下」

「そもそも後衛職同士の組み合わせだしな。コメントの中には糸使い対人最強説を唱えて全財産突っ込んだ人もいるぜ」


掛けた理由を述べることも出来るシステムであった。


「お、ラカンとヤハンが決勝戦にでてるな。糸使いと回復職のコンビか」

「火力不足」

「回復でどこまで粘れるかがポイントだな。阻害系スキルを組み合わせるのもポイントになりそうだ。見に行くか」

「ん」


ん?何か視線を感じるが良いか・・・


本戦が始まり初心者ブロックが着々と進む。


・・・


『初心者ブロックの優勝者はリズとマレーンのドルリアだぁあああああ』


2日間による初心者ブロックで優勝者が決まった。職業は二人共前衛職だ。


『続きまして、中級者ブロックになりますので出場者は控えてください』


アナウンスが鳴り中級者プレイヤー達が闘技場の大フロアに集まり出す。


対戦相手などが発表されるのはトーナメントが始まる直前だそうだ。


「あぁ~緊張するで!」

「ハハッ、ずっとじゃないですか」

「糸使いとして師匠に恥ずかしくないよう戦ってきたけどコレだけは抑えられへんわぁ」

「でも、ここまで来れただけでも凄いと思いますよ」

「運が良かっただけや、ワイ等はどっちとも後衛職だから後回しされただけやで」

「それも有るかもね」

「よっ!」

「師匠!?」

「イロハさん!」

「ん」

「応援に来てやったぜ」

「そそそんな!」

「ハハハッ、余計緊張しちゃった」

「緊張か。そりゃするよな」

「発表される」


『それでは対戦表の発表です』


ドルゥルルルルルルッルルルウ


ダダァン


数秒のドラムロール後に対戦表が出てきた。


それは公式ホームページにも表示されている。


「ラカン達はH枠、明日だな」

「頑張って」

「うぅう」

「はい!頑張ります」

「ヤハンはなんでそんな元気なん?」

「そりゃ、イロハさんに応援されているからね」


あぁ~、まぁそうだよな。


「分からへんで」

「ラカンさんには分からないですよ。男の子の気持ちですから」

「アカン、また緊張してきた。戻るわ」

「では、この辺で」


ラカンとヤハンが会場を後にする。


「見ていく?」

「いや」


俺たちも会場を後にしラカン達の出番を待つことにする。


・・・


『中級者ブロックも中盤に迫ってきました~。本日の中級者レベルでは注目度の高いあの糸使い様の一番弟子であるラカン選手と同じPTのヤハン選手の入場です』


司会の進行で大会は進んでいく。


「やはり緊張をしていますねぇ」

「大舞台だからな」


ワァアアアアアアアアアア


俺たちの周りには知人連中が集まっている。

俺とソニーの弟子であるラカンとヤハンの戦いを見にゴウキ達もやって来た。

ゴウキの弟子であるドッチも俺たちと合流し一緒に見ている。


『対するはこちらも中級者レベルの中では前衛コンビで有名なヤモリ選手とヨーキン選手です』


ワァアアアアアアアアアア


大歓声の中からガチガチに鉄装備を身に纏った前衛2人組だ。


前衛VS後衛という形になった。


本来なら攻撃力の低い糸使いと回復メインの職業であるラカン達の方が不利だと思われるが戦い次第では勝てるかもしれない。


『では両者、位置について開始の合図を待ってください』


5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・スタート!


5秒カウントダウンの後にSTARTと出て両者が動き出した。


「ヤハン、行くで!」

「気をつけて!」


ダッ


『バカが!』

『後衛職が前に出るのか!』


合図と同時にラカンが舞台中央にダッシュ、同時に相手もダッシュして近づいていく。


「1対2、大丈夫なのでしょうか?」

「糸使いは遠距離系が基本だが、接近戦にも対応しているからな」


ラカンがアレからどの程度成長しているのかがポイントだ。


『うぉりゃぁあ』

『いえやぁあ』


ヤモリとヨーキンの剣が同時にラカンへと襲いかかる。


「糸防御術二式!」


グウゥン


ガキィン


糸が剣に巻き付き軌道をズラす。


「二連脚!三連脚!!」

『『グアッ』』


2人に5発の足技を出してノックバックさせる。


「糸拘束術二式や!」


【反撃不可、拘束4秒】


『な、なんだ!?』

『体が動かない!』


「斬糸!」


お、斬糸も覚えていたか。


ビビッ


『っつ~』

『これが糸使いの斬糸か!』


タッタッタッ


拘束時間が解けて2人が動けるようになりラカンは距離を取る。


今の流れで2人に与えたダメージは1割という所だ。


ワァアアア


たった、それだけでも大歓声が轟く。


『こっちからも』

『行かせてもらう!』

「ライトボール」


カッ


2人がラカンに突っ込む瞬間を狙って目の前にライトボールが光り輝く。


『『うわっ!?』』

「斬糸ぃ!」


視界を光に奪われて驚く2人に容赦なく斬糸を数回ほど当て続ける。


シャァン


「お、クリティカル入ったな」


クリティカルのエフェクトが1度だけ発生する。


『ぐっ、このっ!』

『調子に!』

「糸防御術二式!」


グウゥン


ガキィン


糸が剣に巻き付き軌道をズラす。


「二連脚!三連脚!!」

『『グハッッ』』


先ほどと同じコンボが決まり体力の1割が瞬く間に吹き飛んでいった。


タッタッタッ


「ホラホラ、お二人さん連携がなってへんよ」


ラカンが軽くステップを踏み2人を挑発。


『っせぇ!』

『ハアァ』


ザシュシュっ


「くっ!」


ラカンに2人の攻撃がヒットし体力を半分にまで減らして通り過ぎようとする。


後衛職は紙防御だからな。


「なぜ、避けないのですか?」

「まぁ、見てな」


となりでソニーが心配そうな声を上げる。


「グレーターヒール」


タイミングよくラカンに回復魔法が掛かり体力を満タンに持っていく。


「そりゃぁあああ」


ようやく攻撃がヒットした事に油断していた所にスキル発動なしの足蹴りが2人の脇腹にクリーンヒットする。


ズサァアア


2人は横倒しに倒された。


「せいやぁあああ」


倒れたところに追撃の遠キック。


『ぐっはっ』


守られていない頭を蹴られヨーキンが吹き飛ばされる。


『よくも』


反対側で倒れていたヤモリが起き上がり背中を見せていたラカンに斬りかかった。


「とりゃぁぁ」


パシィン


『なっ!?』


ラカンが素早く振り返って迫り来る剣を両の平手で挟み込み受け止める。


「せいやっ!」


グィンっ


そのまま、剣を挟み込んだ状態で相手の足を払って投げる。


「大外刈りかよ!」

「あんな体制でよく出来ますね」

「ヒュゥ~。ラカンちゃん、やるっすね」

「うっす」

「ウチのラカンは超接近戦型なんで」

「なるほど、体術を会得して糸を自身の補助に充てている戦法なのか」

「アオイさんとは違った戦法というわけですか」

「今は押してるけど何処まで行けるかだな」


ヤモリとヨーキンが体制を立て直し距離を取る。


『作戦変更だ』

『俺が後ろをやる。アイツの相手を頼んだ』

『おうよ』


ヨーキンがヤハンへと駆け寄る。


「行かせへんで!糸拘束術」

『やらせるかよ!』


ラカンがヨーキンに拘束術を使おうとするがヤモリがそれを邪魔するように動いていた。


「やっぱり、回復役を潰しに掛かるか」

「戦術の基本」

「こりゃ、持久戦も出来なさそうだな」

「私達、回復職には戦う術が少ないですからね」


周りはヤハンが倒されたら終わりだという雰囲気だ。


「へへっ、ヤハンがそう簡単に倒されないぜ」


そんな中、ドッチだけが仲間を信じている。


ガァアアアン


「フッ」

『っにぃぃ!』


ヨーキンがヤハンを倒そうとスキルを発動し攻撃したが軽くイナされる。


「ラカン、こちらの事は構わず戦ってください」


ヤハンが棒術でヨーキンの攻撃を受け流しながらそう言う。


「助かるで!ホンマ2人相手は辛ろうてなぁ!」


ドゴゥ


『グフッ!前衛の防御力を舐めるなぁ!!』


ラカンはヤモリに打撃を与えるが体力が全然削れていない。


「少しでも削れればそれでえぇんやで!」


ラカンは最小限の動きで大振りの攻撃を避けつつ反撃を繰り返す。


その後ろではヨーキンもヤハンに攻撃を続けているが避けられるか剣の軌道をズラされてダメージが与えられていない。


「こりゃ、スゲェな」

「えぇ。あの2人は後衛職なのに前衛職と引けを取らない攻防をしているなんて」

「へへっ、伊達に先生たちの弟子じゃないぜ。俺たちアレから試行錯誤しながら戦っているからな」


ドッチが自慢げに言う。


むっ・・・


『りゃぁああ!』


ビシッ


クールタイムの隙をみてヤモリの攻撃がラカンにヒットする。


ビビッ


体力が目に見えるほど削れる。


「グレーター」

『させるか!』

「くっ!」


ガイィン


ラカンの体力の回復を試みるがヨーキンが邪魔をする。


『ハハッ!隙さえ見つければコッチの物だ!!』


ヤモリの勢いが付き始めラカンは防戦一方になりつつある。

反撃しようにもクールタイムの関係上スキルの連発がしにくくなっている。


「ペースが向こうに行ったな」

「えぇ」

「こりゃ、マズイな」


完全に対戦相手側のペースとなりラカンとヤハンの勢いが衰えていく。


「ラカン!ヤハン!!踏ん張れ~」


2人のPT仲間であるドッチが声を張り応援を送る。


「ドッチが応援してくれてるんや!がんばらなアカンな!!」

「はい!踏ん張り時ですよ!!」


・・・


ザシュッ


「あ・・・スマん、2人共」


アレから数分は粘っていたが何度も与えられたダメージの蓄積でラカンの体力が0となり転送されていく。


『あと1人』

『ナイスだ!』


残されたヤハンも2人に囲まれて体力を削りきられて転送されていった。


ワァアアアアア


『そこまで!勝者ヒルナンデスゥウウウ!!』


大歓声の中、試合が終了する。

お疲れ様でした。

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