25話「フィフス-転職」
ガヤガヤ
残り少ないポーションを使い果たして俺達はフィフスの街へと到着を果たした。
二次職プレイヤー:48名【詳細】
一次職プレイヤー:6730名【詳細】
この短期間で二次職にたどり着けたのは十数名だけであり、脱落者の方が圧倒的に多い。
無理して、先へ進もうとし死亡したもの。万全を期して挑むが予想以上の攻撃に対処できず死亡したもの。
うっかり足を滑らせて崖下に転落し死亡したもの。プレイヤーキラーに目をつけられ死亡したもの・・・多岐に渡り脱落者が続出している。
「これで俺たちもトッププレイヤーの一員って奴か?」
珍しくゴウキが喜んでいる。
「フィフスに着いたばかりの俺達がトップの一員じゃないだろう」
「おいおい、ここは喜べよ」
「まずは二次職に進んでからですよ」
「スタートラインにすら立っていないんだぞ?」
「無事にとは行かねぇが、フィフスにたどり着いたんだ否定するなよ」
「そうっすよ、ここは来れた事を喜ぶ時っす」
「お、そうだろ!」
「あぁ、全員の協力あっての今だ」
「そこに関しては喜びましょう」
「なんだよ、手のひら返しやがって」
少しの間、喜びを分かち合って今日の所は解散となった。
≪フィフスの転移ポイントが活性化されました》
新たな街に到達したら、欠かさず転移ポイントの活性化を済まし街中をぶらつく。
「やっぱり、変わらないか」
フィフスの街もファストからフォースと同じ外観や町並みをしている。
「ようやっと、来たか」
転移ポイントの広場に久しぶりに再会を果たす。
フォースの街まで行くのに手を貸してくれたレッド。
現トッププレイヤーの中でも攻略組と呼ばれるPTに所属している知人だ。
「あぁ、追いついたぜ」
「よくもまぁ、不遇と言われ続けた糸使いがのし上がってきたな」
「周りの助けがあったからだよ」
「それもあるが、お前自身の功績でもあるんだぜ。何度かお前に関わった奴らから話を聞いた事があるが「助かっていたのは自分だ」って答えが返ってきたぜ」
「お前・・・」
「そう、怒るなよ。久しぶりの再会を祝おうぜ」
「そっちは調子はどうなんだ?」
「立ち話もなんだ、俺たちのギルドで語らないか?」
「ギルド、立ち上げたんだったな」
「あぁ、ギルド【ノーチス】。人数は少ねぇがトッププレイヤーとして頑張ってんだぜ」
「PT名がギルド名になっただけか」
「その方が簡単だからよ。こっちだ」
レッドを先導に俺は着いていく。
「おぉ」
中央広場から少し離れた場所にレッド達のギルドホームが見えてきた。
街の外観を損なわないように設計された2階建ての建物だ。
ギィ
「ようこそ、俺達のギルドホームへ」
レッドが扉を開けて招待される。
「邪魔する」
そう言って俺は中へと入る。
「広いな」
外観からしてそんなに広いとは思わなかったが意外過ぎる広さに感想が漏れ出る。
「この物件は外から見えるより広い家なんだ。高名な空間拡張術が使えるNPCが関わった物件だったからな」
おそらくファストの教会の地下と同じ術者が関わっているのだろう。
「お前のギルド員達は?」
「今はバラバラに行動しているよ。情報収集する奴や生産に集中している奴も居る」
カァンカァアン
「聞こえるだろ」
家の奥から金属を叩くような音が聞こえてきている。
「生産職も居るのか?」
「殆どの奴は生産はしねぇよ。最近ようやくギルドに入ってくれたからな。骨が折れたぜ」
「そんなプレイヤーが居るのか?」
「おうよ。鍛冶職人のガンジって名前位は聞いた事あるだろ?」
「あ、あぁ」
「やっと驚いたな」
「そんな大物を引き入れたのかよ」
「クハハッ!条件が厳しかったが仲間になってくれたぜ」
「ちなみに条件ってなんだ?」
「『ワシの専用工房を作れ』だとよ。いくらギルドホームを持っていても鍛冶場を作れる家じゃなかったからよ」
「だが、奥からちゃんと工房特有の音が聞こえてくるぞ?」
「だから、大金を払ってリホームしたんだぜ」
「壮大な話で驚きだぞ」
「苦労したぜ、いろんな所駈けずり回ってリホームしてくれるようなプレイヤーやらNPCやらを探し回ったんだからよ」
「出来たのか」
「結果な。その分、俺達のプライベート空間は小さくなったからな」
話を聞くに、1階の大部分が鍛冶場で俺達が居るリビングルームに小さなキッチン、2階がギルド員のプライベートルームだがベットがある他に小さな机が一つポツンと置いてあるだけの部屋だそうだ。
ギィイイ
『騒がしいぞ、小僧』
俺たちの会話が聞こえていたのか、金属音が鳴り止まない工房の扉が開き髭をたくさん生やした小さな人影が出てきた。
「初めて見たぜ、ドワーフのプレイヤー」
鉱山都市で見かけたドワーフの風貌をしている。
『ん、小僧はなんじゃい?』
「紹介するぜ、こっちは俺と同じノーチスギルドのガンジ。ガンジ、こいつは前に話していた俺の知人の糸使いアオイだ」
「・・・おっ!おぉ!!糸使いといえば時折掲示板を騒がしている奴じゃな。ワシも気にはなっておったぞ」
「それは光栄だな」
「アレだけ不遇だと罵られておきながらここまで来たのじゃから、余計に気になるのぉ。むむっ」
ガンジの視線が俺の両手に注がれる。
「小僧の武器はそれか・・・ほうほう、猛毒と鋼鉄のペンディラムガントレットというのか。ふむふむ」
ガンジの視線がガッチリと両腕に釘付けになりブツブツ言い始めた。
「小僧、コレを作った職人はフォースに居るのかの?」
「フォースに居るかは分からんが、フィフスに行ける実力は持っているぞ」
「名は?」
「鍛冶師ミモザ」
「ほぅ、あの有望株かの」
トッププレイヤーに名前を覚えられているぞミモザ・・・
「ミモザといやぁ、中堅プレイヤー達の中じゃ有名なんだろ?」
「有名らしいな。俺と一緒に来たPTメンバもミモザの武具を身につけているからな」
「この爺さんが気にかける人物なんて早々いねぇからな」
「ふんっ、小僧には分からんのか。こやつの装備に注がれた熱意を」
「俺は司祭だぜ?武器は全然わからん」
「だから、小僧じゃと言っておる。己の武器もよく知らんくせにトップだとよう言うておるな」
「トップなんだから仕方ねぇだろ」
「トップならトップらしく自分以外にも視線を向けてみよ」
「結構視野は広い方だぜ」
「もっと必要じゃよ」
「あぁ、やめにしようぜ。爺さんと言い争っても終わりゃしねぇ」
「これだから、若いもんはイカンわい。小僧もそう思うじゃろ?」
「俺もあんまり自分の武器とか知らないからな」
「はぁ。どいつもこいつも分かっておらんのぉ」
「爺さんはこんな所で油売ってて平気なのかよ。リーダーの頼み物は済んだのか?」
「攻撃力300超えは難しいんじゃよ」
「トップではもうそこまで行こうとしているのか?」
「といってもリーダーの250が一番なんだけどな」
「素材が足りないんじゃよ。鍛冶師としてのレベルも限界に達しておるしの」
「限界?」
「メイン職業に二次職が追加されたのじゃが、サブ職業には追加されなんだ。つまり事実上のカンストしてしまったという訳じゃな」
「生産職というのはそんなに経験値が入らないと聞いた覚えがあるが」
「ワシ等トップになると数十、数百という依頼が殺到するもんじゃ。いやでも経験値が入る。無論素材持ち込み限定でも依頼してくるんじゃよ」
「なるほど・・・」
「せめて鋼鉄より上の素材魔法銀が手に入れば良いのじゃが」
「魔法銀?」
「魔法銀は聞きなれないかの。ミスリルと言い変えよう」
「ミスリルだったか。しかしミスリルが鋼鉄より上なのか?」
「このフィフスや周辺を探索して得られたのがミスリルの存在じゃ。恐らくミスリルが今回のキーになるんじゃろう」
「なるほど・・・俺は来たばかりだから分からんが」
「俺達はミスリルがどこで手に入れられるのか探索中なんだ。でも中々情報が集まらなくて攻略も止まってるんだ」
「なぁ、ミスリルを作っている種族についてココも一緒じゃないのか?」
「ミスリルを作る種族」
「・・・森のエルフか!」
「たしか、ほかの小説なんかじゃミスリルの武器を作るのはエルフの仕事という設定があるしな」
「盲点じゃったわ」
「しかし、フィフスの近くに森はあるが、出てくるのはワータイガーなんだぜ?」
「エルフは排他的種族と設定されている。いくつかの作品にエルフの里にたどり着くにはエルフ自身ではないとダメだという事だ」
「つまり、イベントじゃな?」
「森のエルフに出会えればもしかしたらが有るかもしれないな」
「なるほど!俺は出るぜ。検証する価値は有るかもしれんからな。サンキュー」
レッドは慌てるように玄関から飛び出していった。
「おいおい。友人を置いていく奴あるか」
「ここ2週間位は滞っておったからの」
「素材持ち込みなら作ってくれるのか?」
「鍛冶師の範囲ならの」
「羽根の使い道はなんなのか知らないか?」
「羽根?あぁ、怪鳥の羽の事かのぉ・・・残念じゃが知らんのじゃよ」
「そうか・・・また来ると思うがよろしくな」
「うむ。ワシも持ち場に戻るとしよう」
最後にガンジとフレンド登録を交わしてノーチスのギルドホームを出て行った。
『おい、聞いたか?』
『あぁ、遂にミスリルが見つかったんだってな』
『森にあるらしいぞ』
『なんで森なんだろうな?』
『さぁ』
あれから3日が経ちギルド内ではそういった噂がなされていた。
『ゴウキ様、ロンド様、ソニー様、アオイ様、シュバルツ様、イロハ様。計6名に転職クエストを受ける事を受理致しました。転職クエストの詳細をお聞きになりますか?』
俺達6人は十分な休息を得てから転職クエストに挑むことにした。
「もちろんだ」
『転職クエストとは一次職から二次職になる為のクエストとなります。転職に必要なアイテムをギルドに持ち込む事で条件がクリアされます』
「転職すると何が得でもするのか?」
『転職しますと現在の職業レベルは失われ、ジョブレベルは1から再スタートとなります。またレベルアップする為の経験値は一次職より多くなりますが成長率が違ってきます』
転職する価値はあるようだな。
『以上が転職した後の説明となります。質問などが御座いますか?』
「・・・無いな。クエスト内容は?」
『フィフスより南下した所にあります広大な森、最奥地に「魔力の湖」という小さな湖が存在しています。湖のそばに自生しているラフランシアという花を人数分採取してきてください』
「それだけで良いのか?」
『無論、危険であることには変わりはありません。ラフランシアを好んで食べているユニークの存在が確認されています』
つまり、転職にはユニークモンスターの排除も兼ねているという事か・・・
『森に生息しているのはワータイガー、討伐クエストも受けますか?』
「あぁ」
「ついでにタイガークエストを受けとこうぜ」
「だな」
タイガー、ワータイガー、転職クエストを受けて俺達は南門から出発する。
グルァアア
「アースウォールっす」
ボワッ
ロンドとタイガーの間に土の壁が生える。
バガカアアン
土壁を破壊してロンドに迫るが隙だらけでロンドやゴウキから反撃を受ける。
「どうっすか!」
「ナイスだぜ!」
「こんな使い方があるでごわすか」
前衛から賞賛の声が届く。
「はぁっ!」
ドスドスドスドス
4本を攻撃に2本を緊急サポートに残し俺は戦闘スタイルを変える。
【毒(中)】
生物系故に毒になりやすい。
6人も居て効率的にタイガーを狩りながら東の森へと到達する。
「薬草類も生えているな」
「恐らく、ここから先は各街周辺には1つは森だと思う」
「だよな、一々数日も掛けて薬草を取りにいけないしな」
歩いている時間を使って薬草採取を欠かさずに俺達は森の中へ入る。
グルァアアア
「ワータイガー、斧武器持ちだな」
虎の頭に人の体を持ったモンスターが鉄の斧を持ち、鉄の鎧を身にまとって現れた。
「防御力がありそうだな」
「攻撃力もだな」
【鑑定】
名前:NoName
種族:ワータイガー
レベル:43
体力:5,800/5,800
魔力:270/270
状態:健康、アクティブ
これまでにない完全武装したモンスターであった。
「アースホール!」
ズボッ
「ロックランス!」
「ファイアーボール」
シュバルツとイロハのコンボで落とし穴の中で炸裂した岩の破片がワータイガーを襲う。
が、鉄の防具でダメージの殆どが防がれてしまう。
「やっぱり大したダメージになんないっすね」
「森の中じゃ、火は危険」
火属性の攻撃を控えるとなるとシュバルツの土かイロハの風での援護のみになってしまう。
「森だと魔法使い系は制限されるから仕方がない」
「ん」
「頑張るっすよ!」
「話してないで、前を援護して下さいよ」
徐々にであるがワータイガーの動き方を覚えて対処の仕方を自然に覚え始める。
グルァアアア
十数頭目の戦いになりなれ始めた時に今までにないスキルを使ってきた。
【獣の咆哮】
・周囲に咆哮を撒き散らし生物を硬直させる。
グルァ
木々の間を利用してワータイガーは俺たちにターゲットを切り替えて襲い掛かってきた。
「まずい!」
「ぐぅぅ!」
近くに居たロンドやゴウキは俺たちよりも硬直時間が長い。逆に後衛である俺たちが短いのである。
それでもワータイガーの身体能力であれば十分に俺たちへ一撃を入れる事ができるだろう。
「ワイヤーネット」
ガガガガガガッ
6本の鋼線が木々に向かって杭を打ち込み襲い掛かってくるワータイガーを迎える。
グアァアアアア
【反撃不可、拘束30秒】
「いまだ!」
硬直が解けたメンバー全員で総攻撃を浴びせてワータイガーは消滅していった。
「初めてで対処が遅れましたねぇ」
「ヒヤリとしました」
「ん」
「ビックリしたぜ」
「アオイどん、あのスキルは何でごわすか?」
「ワイヤーネット、あんな感じでワイヤー以上の糸でネットを作り捕獲するんだ。森の中か洞窟の中でしか出来ないがな」
「拘束時間30秒は多い」
「つまり、そういう方法もあるって事か」
「その間は戦闘に参加できないぞ?」
「それでも有り余る時間ですね」
「やりたい放題っすからね」
「ま、コレも加えるか」
ワイヤーネットを使ったコンボも視野に入れて俺たちは森の探索を進める。
キャアァアアア
ピタッ
遠くの方から聞こえてきた悲鳴に俺たちの足が止まる。
「今のはなんですかね?」
「悲鳴のようだったぞ?」
「プレイヤーでごわすか?」
「分からない」
「行ってみるしかなさそうっすね」
「ん」
全員一致で悲鳴のあった方向へ進む。
『くっ!』
グルァアアア
ワータイガーと誰かが対峙していた。
キィン
ガァン
細い剣でなんとかワータイガーの斧を防いでいるが時間の問題だろう。
「助けに入るぞ!」
「うっす!」
ゴウキとロンドがワータイガーの背後から襲いかかる。
「ウォオオオ!」
ワータイガーの視線が俺達に向くのと同時にロンドが挑発でタゲを固定する。
「糸拘束術二式」
「三連閃!」
「ロックランス」
「ウィンドカッター」
俺がワータイガーの動きを止めて3人が集中砲火をする。
「こちらへ!」
ソニーがワータイガーに襲われていた人物を呼び込む。
『助かったわ!』
・・・
一瞬、全員の動きが止まったが戦闘中だった為直ぐに再開した。
ウガァアアア
ドスゥウン
5分程でワータイガーを沈めた。
「ふぅ」
「緊張下でごわすな」
「分かるっすね」
「ご苦労様です」
「アナタは誰?」
戦闘が終了し体力の回復を図るために休憩に入りながら襲われていた人物に問いかける。
『私は、フォーレニア部族がシシガの娘ヤンです』
「俺はゴウキ」
「私はソニーです」
「オイはロンドでごわす」
「俺はシュバルツっす」
「俺はアオイ」
「イロハ」
それぞれ自己紹介して事情を説明してもらう。
「私の父は重い病に犯されてしまって森に自生している「ラフランシア」という薬草を摂りに来たのです」
「ラフランシア、俺たちの求めている奴だな」
「ほ、本当ですか!?」
「が、どこにあるのか分からないから森の中を彷徨っているわけだが」
「それなら、私が案内します。ですが、ラフランシアが生える場所には強力なモンスターが居ると聞きます」
「ワータイガーよりもか」
「はい。見ての通り私は森のエルフなのですが、男衆でも倒せない程と言われてます」
「特徴とかはしらないのか?」
「名前はエルダーエント、木に擬態する事に長けていまして気がついたら背後から攻撃を受けて死ぬものも居ると伝えられています」
「ウッドゴーレムと同じ感じか」
「レベルはこっちの方が高いですけどね」
「攻撃方法は?」
「分かりません。帰ってくる者は皆口を閉ざしてしまいますので」
「そうか」
「どうか、私を連れて行ってくださいますか?」
≪ヤンから特別クエスト「父を救え」が発生しました。受けますか?≫
コクリ
YES
「有難うございます!」
ウィン
PTメンバーにヤンの名前、体力、魔力が表示された。
特別クエストNPCはPT上限には引っかからないらしい。
シュタッ
「こちらです」
ヤンが木に登り、枝から枝へと飛び移り動き始める。
「エルフって感じっすね」
「そうだな」
「行こう」
ヤンが斥候を担当してくれる為、ワータイガーの接近等を察知でき俺たちは戦うだけとなる。
時折ヤンからも援護攻撃が飛んできて戦いやすくなった。
「アソコが魔力の泉です」
森が少し開けた場所に小さな泉が存在してた。
「周辺にはエルダーエントが潜んでいます」
【鑑定】
名前:NoName
種族:エルダーエント
レベル:45
体力:8,700/8,700
魔力:520/520
状態:健康、ノンアクティブ
「あの、枯れた巨木がエルダーエントだな」
「え?!」
「鑑定がそう伝えている」
「ん。私も見える」
「人族は凄いですね」
「いや、コイツ等だけだからな」
「木に火は有効だろうが」
「森が燃えてしまうのでやめてください」
「ファーストアタックは俺が貰っていいか?」
「任せたぞ」
「頼みました」
「最大出力で行く」
シャンッ
全ての糸を取り出して浮かび上がらせる。
俺たちの隠れている場所は奴との距離が30m超えで気づいてすらいない。
「魔力強化二段階、斬糸!」
シッ
6本同時に射出する。
グンッ
6本を動かすのに必要な魔力は全部で210、殆ど魔力を消費する。
ザシュゥウウ
ザシャァアア
ズシャァア
斬糸が至る方向からエルダーエントを襲い鋼糸を体に食い込む。
ギィイイヤァアアア
最初に到達した1本は242(総攻撃力)×4.0(魔力強化スキル)×2.0(飛距離)×2.0(クリティカル)3,872のである。
残りの5本はクリティカルを除いて1,936になる。
【鑑定】
名前:NoName
種族:エルダーエント
レベル:45
体力:3,750/8,700
魔力:520/520
状態:健康、ノンアクティブ
「半分は吹き飛ばした。後は頼んだぞ」
「おうよ!」
「相変わらず糸使いは凄いでごわすな」
「俺達魔法職以上の火力を誇るっすからね」
「休んでて」
4人が茂みから飛び出してエルダーエントへと接近していく。
「総耐久値の半分を下回った、2回目は無理そうだな」
「魔力回復に努めてください」
今までの連戦での耐久値の減少でこれ以上の魔力強化は危険だと判断する。
「あなた、一体何者なんですか?」
最後にヤンが信じられないものを見たかの表情をして問うてくる。
「ただの冒険者だ」
「初めて見ましたよ」
「一撃必殺だったらもっといいんだがな」
「アレで一撃で倒していたら私は恐怖します」
「後はあいつらがなんとかしてくれるだろう」
エルダーエントは根を地中に広めてその巨体を支えている為移動はしない。
幾本もの鞭のような根を操り攻撃するがロンドの防御力と拮抗している。
ゴウキも襲いかかってくる枝を斬りつける。
ギャアアアア
初見だったとはいえ、エルダーエントの攻撃は予測しやすくパターンが少なかったのが功を奏した。
≪ユニークボス:エルダーエントの討伐に成功しました≫
≪アオイはレベル44に上がりました≫
≪糸使いのレベルが39になりました≫
≪SPが1増えます≫
≪スキル:糸拘束術二式のレベルがMaxになりました≫
≪SPが2増えます≫
≪スキル:糸防御術二式のレベルがMaxになりました≫
≪SPが2増えます≫
≪スキル:斬糸のレベルがMaxになりました≫
≪SPが2増えます≫
≪アオイはエルダーエントから古木を手に入れました≫
「木材っすね」
「レアドロップは古木というらしいです」
「出た」
「俺もだ」
「木材でごわす」
「俺も古木は出たな」
少し休憩を挟み目的の物を手に入れるために周辺を探索する。
【ラフランシア】
「あったぞ」
紅い花が魔力の泉近くに群生して生えていた。
「あぁ、これで父も助かります」
ヤンが涙ぐみながらラフランシアを胸に抱える。
≪特別クエスト「父を救え」をクリアしました≫
≪報酬は以下から選び下さい≫
・ミスリルの直剣
・ミスリルの大盾
・ミスリルの杖
・ミスリルの糸×10
どうやら職業に関するアイテムが貰える様だ。
ピピピッ
それぞれが報酬を選ぶ。
「それでは、私はこれで」
≪称号:エルフの友人が手に入りました≫
・エルフの友人
フィフスにあるエルフの隠れ里に行けるようになる
ヤンが木々の間をすり抜けるように姿を消していった。
・ミスリルの糸
魔法金属から作られた糸。
魔力消費を半分に抑えられる。
服の裁縫にも使える。
耐久値:450/450
ランク:マジック
品質:3
俺の選んだのはミスリルの糸である。
・・・
・・・・・・
『確かにラフランシアの花を受け取りました。これより皆様を転職いたしますので奥の間へお願いします』
受付嬢から案内を受けて、奥の扉の鍵が開く音が聞こえ俺達は向かう。
『一人ずつ、中央に進みください』
部屋はそれなりに広く中央部には幾何学模様が浮かび上がっていた。
「わくわくするっすね」
「そうでごわすな」
「俺から行かせて貰うぜ」
ゴウキが最初に転職を行うようだ。
『転職を開始します』
受付嬢の声に呼応し模様が光を放つ。
カッ
「お。成れたようだぜ。直剣騎士が新たな職業だ」
ゴウキに続いて他のメンバーも二次職へと進む。
ロンドは守護騎士、ソニーは司祭、シュバルツとイロハは魔導師となった。
『それではアオイ様、こちらへ』
最後に俺が中央に進み二次職へと成る。
≪アオイは一次職の糸使いから二次職の人形使いに成る事が可能です。転職しますか?≫
YES
≪人形使いになりました≫
【ステータス】
名前:アオイ
種族:ヒューマン
レベル:44
職業①:人形使い(Lv1)
職業②:裁縫師(Lv5)
SP:12
体力:1,710/1,710
魔力:624/624
攻撃力:215(+50)(脚+30)
防御力:172(+88)(手+20)
状態:健康
称号:ウルフハンター,ドッグハンター,エルフの友人
ランク:D-
「俺も無事になれたぜ」
「糸使いの次は何なんだ?」
「人形使いだ」
「人形使いってなんだ?」
「やっぱり人形を操る職業なんすかね?」
「他の作品ですと人形にも種類がありますからね。それこそ人をも人形として操る物もありますし」
「プレイヤーも?」
「まだ、スキルは見てないから何ともだな」
『皆様、無事二次職に成れたことおめでとう御座います。しかし、二次職になれたからといって浮かれていてはなりません。油断がその命を刈り取る敵なのですから』
受付嬢が俺たちの様子を見て釘を刺してくる。
「わかったな」
コクリ
『それでは、良い冒険を』
受付嬢が立ち去って俺たちも転職の間を出て行く。
「ん、ここでお別れ」
「助かった」
「お世話になりました」
「またっす!」
「またな」
イロハとは二次職までの付き合いだと約束しており達成した今別れる事となる。
「今日はこのまま解散で?」
「そうだな、二次職について一人で考えたいだろう?」
「だな」
「そうっすね」
「また、明日でごわす」
俺たちもまた新たなスキルについて熟読する必要もあり解散となった。
お疲れ様です。




