24話「フォース-山岳-エリアボス」
「待たせたな」
「少ししか待ってねぇよ」
「気にしないでください」
「そうっすよ」
「うっす」
フォース最大の難所と呼ばれる山岳フィールドへと向けて北門を出て行く。
「シッ」
バシィン
【毒(中)】
219(総攻撃力)×2.0(飛距離)×2.0(クリティカル)の876に加えて毒の与える確率が大幅に増えたような気がする。
「なんだか、攻撃力が上がってねぇか?」
「あと毒が入りやすくなってませんか?」
2人からそんな質問が飛んできた。
「飛距離ボーナスとクリティカルが入っているからだな。毒は分からない」
「なるほど」
「何かあるのかもしれませんね」
俺は30mからFAし、俺にターゲットしたオーガが接近する前に追撃を3回も加え削りとる事で有利に戦っていた。
「コレ取ってみるか」
糸使いの攻撃手段の一つ、随分前から気になっていたストリングランスというスキルだ。
≪スキル:ストリングランスをSP2消費して取得いたしますか?≫
YES
≪スキル:ストリングランスを獲得しました≫
「試しに使ってみるか」
30m先のオーガに向けて放つ。
「ストリングランス!」
ギュルンッ
両手の鋼線がより合わさって4つの尻尾が槍の穂先のように重なり真っ直ぐオーガにすっ飛ぶ。
グサァッ
グァアアアアアア
219(総攻撃力)×3.5(スキル)×2.0(飛距離)×2.0(クリティカル)の3,066が入った。
クンッ
ズブァ
「ん?」
一瞬、抵抗を感じたが穂先はオーガから抜けて戻ってくる。
カシャカシャカシャンッ
【出血(大)】
【毒(中)】
「おいおい」
「予想外でごわすな」
「ハハハッ」
「パないっすね」
「凄いな」
ストリングランスがこれ程までに強いとは思わなかった。
ミモザには感謝だな。
魔力が19削られるがコスパは良いだろう。
それから休憩を挟み山岳地帯へと入る。
ピィイイイイ
「ハーピィ出現しましたよ」
「俺にやらせて貰っていいっすか?」
「あぁ」
「じゃぁ、ファイアーボールっす!」
ボワッ
一発のファイアーボールがハーピィに向かって放たれた。
フワッ
「射程圏内攻撃じゃなかったか?」
「そうっすね」
ハーピィは魔法使いの攻撃範囲内だったにも関わらず攻撃を避けた。
「AI機能なのでしょう」
「じゃ、俺の出番だな」
シッ
グルルルッ
ピィイ!?
鋼線がハーピィに絡みつく。
「引き寄せっ」
グンッ
ズサァアア
ハーピィを地面に引きずり下ろす。
「うりゃぁああ」
「おぉおおお」
「ファイアーボール」
3人の集中攻撃を喰らってハーピィは予想以上に早く倒せた。
【鑑定】
名前:NoName
レベル:38
種族:ハーピィ
体力:0/1,500
魔力:150/150
状態:健康、アクティブ
「レベルの割に体力が極端に少ないな」
「先ほどの回避性能からすればって話ですかね」
「なるほどな」
近接攻撃や遠距離でも攻撃が当たりづらいモンスターなら体力が少なくても渡り合えるのか。
「引き寄せ!」
ピィイイ
バサッ
グンッ
ザザッ
「くっ」
ハーピィに絡みついた鋼線が弱いと逆に引っ張られる。
シュルッ
スキルを一度外してからもう一度狙いを付けて飛ばす。
「引き寄せ!」
グンッ
ズサァアアア
あとは3人に任せて倒してもらう。
「やはり、山岳地帯は難所らしいですね。遠距離攻撃でも空飛ぶハーピィには中々当たらないと言われています」
「そうか」
ソニーが掲示板から攻略情報を拾っている。
「AI機能が入ってそれは顕著になっているそうで現フォースプレイヤー達の壁になっているそうですね。こちらの攻撃は当たらないが向こうの攻撃はあたるのですから」
「糸使いのいい部分がここで目立っているな」
「それも使いこなしているからこそです。少し前まで居た初心者糸使い達は皆使いこなすこともできずに辞めていっていますからね」
「使いこなすまでが糸使いの難しいところだろう。俺も最初は訳も分からずデスしまくったからな」
「やはりアオイさんでも苦戦したのですね」
「あぁ。今頃弟子だったラカンは何をしているのだろうか」
「私達の弟子たちと一緒に元気にやっているみたいですよ」
「そうなのか?」
「えぇ。たまにメールで質問とか来ていますからね」
「あぁ、メールについて教えてねぇな」
「なるほど・・・私からも教えるように言っておきますね」
「助かる」
全くラカンからメールが来ないと思っていたら教えてすらいなかったな。
本人は直接合わないとダメだと思っているのかもな・・・。
俺達は順調にハーピィ退治をしつつ進む。
「結構登ってきたなぁ」
景色の位置が高くなり、遠くに見えるのはフォースの街だ。
「絶景でごわすなぁ」
「あぁ」
「草原がこんなにも広いんですね」
フォースの街が小さくポツンとある変わりに周囲の草原はかなりと言っていい程広い。微かに森や荒野が見えている。
ピィイイイ
「またっすか」
「エンカウント率が半端ないな」
「うっす」
「少し試してもいいか?」
「えぇ」
「何するんだ?」
「引き寄せ以外でも落とせると思う。斬糸!」
ギュィンッ
1本の斬糸がハーピィに襲いかかる。
フワッ
だが、避けられた。
「甘い!」
ヒュンッ
ピィイイ!!
2本目の斬糸がハーピィの視覚外から襲い掛かる。
ザシュゥ
2本目の鋼線がハーピィの右翼を根元から切り離す。
ピィイイ
翼を失ったハーピィは墜落し崖下へと落ちていった。
パァアアア
途中で消滅する結果となった。
「地面に落ちる以前の話っすね」
「俺たちの居る意味とは・・・」
「うっす」
そして戦闘は加速度的に飛躍していく。
デメリットとして俺の魔力消費量が大きくなりすぎて休憩時間が多くなった所だろう。
「分かれ道?」
一つは山頂へ向かうであろう登り坂、もう一つは向こう側の麓へ向かう降り坂であった。
「山岳地帯にはユニークボスとエリアボスがいます。上はユニークボス、下はエリアボスとなりますね」
「ユニークは何なんだ?」
「ハーピィの上位種にあたる怪鳥ですね」
「エリアは?」
「今までの傾向からしたらゴーレム系なのですが、今回は連戦だそうです」
「連戦?」
「森、砂漠、荒野、山岳のユニークボスとの連戦になります」
「あぁ、だから。ユニークとの戦いは無視しようとしていたのか」
「えぇ。ここで全てと戦う事になるからですね」
「連戦って1体ずつなのか?」
「時間経過毎に1体ずつ増える連戦ですね。モタモタしていると4体同時になったりするらしいです」
「そういうタイプか・・・」
「どうするっすか?」
「一旦、引き返すか」
「だな」
「ですね」
あくまでも様子見の為に来ただけでありボス戦は後回しにする。
「斬糸の使用は控えておく」
「消費が激しいですからね」
「俺たちの出番が無くなっちまうしな」
「そうっすね」
「うっす」
基本的には引き寄せでハーピィを引きずり下ろして戦うパターンとした。
・・・
「あったか?」
「雑草ばかりだと思うんですけどね」
「これは、上ヨクナール草で上フエール草に上ドクニナール草だな」
「毒草が混じってったすか!」
「これもお願いするでごわす」
俺達は森の中で様々な薬草を採取しにやって来た。
エリアボス戦に向けてポーション類を揃えるためだ。
「ダークエルフ視認、各自戦いの準備を」
ザザッ
・・・
「これらの調薬を頼むぞ」
「沢山・・・」
「それと依頼料だ」
1日丸々使った薬草と依頼料をイロハに渡す。
「そういえば、レベル上げもしているのか?」
ここの所、組むことは無かったからイロハと差が出来てしまっているかもしれない。
「レベルは36になったばかり」
「そうか、一人でか?」
「ううん。生産職仲間でPTを組んで採取しているよ。ミモザもその一人」
「アイツ、フィフスに行けるレベルの筈なんだがな」
「うん、だから平均化してくれる」
「リスク背負うな」
「優しいから」
「そっか・・・じゃ、頼んだぞ」
「ん」
別れて俺はギルドで待っているメンバーと合流する。
「そっちはどうだ?」
「貼っては置いたが、連携が崩れないか心配だ」
「そもそも1人だけ来てくれるような人が居るのか」
「1人でも火力が増えれば良いだろう」
--------------------PTメンバー募集------------------
募集要項:火力職募集
現PT構成:盾職、直剣使い、糸使い、魔法使い、僧侶
平均レベル:39
要件:フィフスへ行くために火力職を1人募集している。連携力の優れた人は連絡求む
PTリーダー:ゴウキ
-------------------------------------------------------------
「できれば後衛職、魔法使いのが良いか?」
「何故です?」
「最後には怪鳥で出てくるんだろう?俺が引きずり下ろせるとは限らないしな。良くてソコに留める事くらいだろう」
パチンッ
「留めてくれるなら俺達(魔法使い)の出番っすね」
「ま、そういう事だ」
・・・
「募集に応じてくれたのは1人だけだった」
「よろしく」
ゴウキに連れられてきたのはイロハだった。
「うわぁ、荊棘姫っすよ」
「よく、顔を合わせているだろう」
「初めてPTを組むんっすよ」
「レベルは俺たちより3つ程低いが火力は申し分ねぇし。欲しがっていた魔法使いだしな」
「まぁ、調薬師でもあるしポーション類は任せられるか」
「同じ魔法使い同士よろしくっす」
「ん」
「それでは、連携の再確認という事で森にでも行きますか」
「山岳地帯じゃなくて良いのか?」
「いきなり山岳地帯に向かっても仕方ないでしょう。慣れる為には森の方が安全です。それに薬草を取りに行くついてです」
「なるほど」
「じゃ、行くぜ」
オーガやダークエルフ相手に薬草を採取しながら連携できるか確認を取る。
「これ、違う」
「これは、大丈夫だな」
鑑定持ちの俺とイロハがいるから薬草類の仕分けが効率化された。
「アースホールっすよ!」
「ウィンドボム!」
シュバルツの落とし穴からイロハの風爆弾でモンスターを強制的に落とすコンボが有効だという事が分かった。
「俺等、結構いいコンビじゃないっすか!」
「ん」
イロハも満更じゃない感じだ。
「おいおい、あんなチャラ男に姫様取られちゃうぞ」
「うるせ」
でも心は開いていない感じだな。
「彼女、可愛いですもんね」
「お前までか」
「うっす」
男だけのPTだったからイロハが入ったことで賑やかになったな。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
数日間、様々なパターンの連携を試して攻略に万全を期す。
「各種ポーションは全員持ったな?」
「無くなっても道中で調薬するから」
上級体力回復ポーションや上級魔力回復ポーションを全員に配り、各種武具の耐久値を戻して俺たちは再度山岳を目指す。
「引き寄せ」
ピィイイイ
ドサァア
「三連閃」
「シールドバッシュ」
「「ファイアーボール」」
ハーピィはこれまで通り俺が引きずり下ろして4人で叩くという戦法でサクサクと進んでいく。
「ふぅ」
「順調ですねぇ」
「火力が一人増えたからな」
「ぶい」
「ポーション系も補充出来るのは有難いな」
休憩時間を使ってイロハには消費した数々のポーションを調薬して貰っている。
ピィイイイイイ
シュワアァアアア
「ようやっと分かれ道だな」
「前回より速いっすね」
「うっす」
「綺麗」
初めて山岳から眼下を眺めたイロハは広がる景色に呟く。
「ここからの眺めは最高ですからねぇ」
「フォースがあんなに小さい」
「結構距離はあるからな」
「さて、もう一息だぜ」
俺達は下りの道を進む。
「ここからは全然モンスターが出てこないんだな」
明らかにエンカウント率が低くなっている。
「エリアボス付近はモンスターのエンカウント率が低いようですよ」
「連戦の前に消費させないような作りなんだろう」
「そういう物か」
「っと、ついたみたいっすね」
俺たちの前にはエリアボス様のゲートが現れた。
ここから先へ進みたければエリアボスを倒して行かなければ進めない。
「全員回復は終わったか?」
「あぁ」
「ポーションも配り終わった。材料はなくなっちゃったけど」
「アレだけ用意した材料を使い切るか」
「消費率は高かったようですね」
「王虎のマントが無ければもっと消費していたっすね」
「そうだな」
「さて、行くぜ」
「「「「おう」」」」
「ん」
ゴウキを先頭にゲートへ潜っていく。
ステージは50m四方が岩で出来た円形闘技場のような場所だった。
『ワシに何用か、人族どもよ』
中央には黒いローブを着た肌の黒い老人が鎮座していた。その手には木の杖が握られている。
「森のエリアボス、エルダーダークエルフです」
【鑑定】
名前:エルダー
レベル:40
種族:ダークエルフ
体力:5,400/5,400
魔力:7,000/7,000
状態:健康、アクティブ
「体力は王虎より低いが魔力が7,000とかになってるんだが」
「それがエルダーのステータスです。魔法攻撃が得意なモンスターですから」
モンスターにしてはAI機能を伴って人間味溢れるな。
『掛かってくるが良い!』
グワアァアアアン
エルダーを中心に何かが放たれて俺達は戦闘状態になる。
『トリプルファイアーボール』
いきなり三段階目の魔法を放ってきやがった。
「トリプルファイアーボールっすよ!」
シュバルツが同時に同じ魔法を放つ。
ドガガガァン
空中で互のファイアーボールが接触し大爆発を起こす。
『むぅ、やりおるな』
「ガァアアアアアアア」
すかさず接近していたロンドが挑発を使いエルダーのターゲットを引き寄せる。
『アースランサー』
近づいてくるロンドの足元から土の槍が生えだした。
ガァアン
「ぬぅうう」
間一髪でロンドが盾で防いでエルダーとの距離を取る。
「うりゃぁああ」
回り込んでいたゴウキが気合の入った声を発しつつエルダーの背後から強襲する。
『甘いわ!ウィンドシールド!』
「糸防御術二式!!」
『ヌゥ!!』
ボボボボォンン
ゴウキに向けられた腕を90度無理矢理引っ張りあらぬ方向に捻じ曲げる。
「りゃぁあああ」
ズシャッ
ゴウキの鋼鉄の直剣がエルダーを袈裟懸けに切り裂く。
『ぐふぅ。ヒール』
「ヒールも使うんですか!?」
ようやく体力を削ったと思ったら即座に回復魔法で全回復した。
「回復の暇を与えなければいい話だってことだ!!」
『小賢しいわぁ!!アースホール!ロックランス!!ファイアーボール』
「ぬわっ!?」
アレは!?
シュバルツの魔法コンボだと・・・!
ドガガガガガガァン
落とし穴の中で岩の槍が爆裂によって粉々に砕かれてゴウキを襲う。
「ハイヒール!」
ゴウキの装備をもってしても一気に5割削り取られてソニーが上級回復魔法を使う。
『そこかぁあ、フラッシュオーバー』
ドガガガガガガガァアアアン
「引き寄せ!?」
エルダーの攻撃がソニーに向けて放たれた。
間一髪でソニーを引き寄せて炎から引き摺り離す。
「ぬぅ、オイどんの挑発が効いていないでごわすか?」
『フォッフォッフォッ、主等のスキルが我に効くと本気で思うておるか?』
ヤバイ、AI機能を甘く見ていた。
『では、往くぞ小童共!!フィフスファイアー』
マズイ
「ストリングランス!」
俺のスキルの中で最速最大の攻撃をエルダーに向けて放つ。
『ボール』
ギュンッ
ズガッ
五つのファイアーボールが完成するのと同時に俺のストリングランスがエルダーの右腕を吹き飛ばした。
『クックック』
「「トリプルファイアーボール」」
後ろで構えていたシュバルツとイロハが計6つのファイアーボールで迎え撃つ。
ガガアアアアアアアアアアン
俺たちの上空で熱風が吹き荒れる。
ボンッ
爆煙の中から一つだけファイアーボールが飛び出てエルダーに直進する。
『ファイアーボール』
ガァアアアアアン
数で優っていたが対処された。
『リジェネーションヒール。カアアアアア』
ズリュゥ
右腕の根元から真新しい腕が生え変わった。
「また、振り出しか!」
「ウガァアアアアア」
ゴウキとロンドが果敢にも挑むが尽くエルダーに阻害され、被弾する。
「上級魔力回復ポーションがもう底を尽きました」
度重なる回復魔法の連発でソニーが声を荒げる。
シュルッ
「これを使え」
俺の魔力回復ポーションを3つ程渡す。
「有難うございます!」
「魔力消費が激しい」
「決定打が見えなっす!」
「くそっ!このままじゃ時間が」
「うぉおおおお」
そう、俺達には一刻でも早く目の前のエルダーを倒さなければならない。
カタタタタタタ
『来おったか』
目の前のエルダーがニィと笑う。
カササササササ
エルダーの背後より、人よりも大きい巨体を持ち上げ機敏に動く黒い大蠍が現れた。
【鑑定】
名前:蠍王
レベル:40
種族:スコーピオン
体力:9,780/9,780
魔力:350/350
状態:健康、アクティブ
「荒野のユニークが現れやがった!!」
「どちらを」
「先にエルダーです!!」
『クククッ』
俺達がエルダーに集中攻撃を仕掛けようと身構えた瞬間、フワリとその体を浮かして後方へと下がっていく。
「行かせるか!引き寄せ」
『その技は見切ったわぁ!ウィンドシールド』
ボハァア
風の盾で鋼線が弾き返された。
カシィンカシィン
俺達の前には人の数倍はあるであろう蠍の王が迫っていた。
「目的変更です!蠍をやるしかありません」
「エルダーはどうするんだ」
「倒さなければ後方に移動したエルダーは倒せません!」
「くそぅ!」
ヒィイイイン
エルダーは安全な後方に移動した途端に削れていた体力を回復し始める。
「くそっ!」
「今は、目の前の蠍っすよ!」
「基本攻撃は荒野の蠍と同じです。尻尾には猛毒があってポイズンヒールでも若干残ります。気をつけてください!」
「斬糸!」
ズガガガガガァン
4本の斬糸でその根元から切断しようと試みるが鋼鉄並みに固いのか傷一つ付いていない。
『ヒール』
パァアアアア
「くそっ!回復までされちまうのか!!」
「魔法、届くか!」
「ここからじゃ届かないっすよ!!」
「相手も私達に届かないけどね」
互いに届かない場所に居るようだ。
鉄壁に近い蠍王とエルダーの連携に俺達は歯がゆい思いをする。
攻撃してもエルダーの回復魔法や欠損回復魔法によって回復されてしまう。
ガィンガァアン
蠍王はエルダー並に頭はよくないらしく、ロンドに釘付けのようだ。
それでも徐々に体力は削られるほど攻撃力は高いという事か・・・
いや、待て・・・あいつの後ろ・・・空中。
この50m四方の闘技場は高い位置にあるらしくエルダーの後ろには壁のような膜があるがうっすらと外が空中になっている事が伺える。
もちろん、シュバルツ達の後ろも空中になっていて落ちれば即死だろう。
ならば、行けるか?
「シュバルツ、アオイ。耳を貸せ!」
俺は咄嗟に思いついた方法を2人に教える。
「分かったっすよ」
「機を待つ」
「ソニー、回復は任せた!」
ダッ
俺はそう言うと前線に向かって駆け出す。
「おい!こっちに来るんじゃねぇ」
「ぬぐぉおおお」
俺の接近にロンドが唸り声を上げる。
スゥ
俺は前線での戦いを無視を決め込んでエルダーに向かって突っ込む。
『ぬぅ、気でも狂いおったか。だが、死ねぃ。ツインファイアーボール』
「ストリングランス!」
ドガガァン
2つのファイアーボールをストリングランスで消滅させる。
『グボォ』
ベチャッ
ストリングランスはエルダーの胸に大穴を開け、黒い血を口から吐き出す。
『グボッ、油断』
スゥ
「三連脚!」
『ゴハッ!』
「二連脚!」
『ゴフゥ』
「三連脚!」
左右の足を交互に入れ替え、二連脚と三連脚を連続で発動させる。
エルダー自身には大したダメージは与えていないが徐々にだが後方に押し出す。
魔力がガリガリと削られていくのを感じながらスキルを発動させ続ける。
「三連脚!」
ズサァアア
「ハァハァハァ」
『ゴホッ、調子に乗るではないわぁ』
パチンッ
俺が右手で音を鳴らす。
『ぬぅ!?』
ゴォオオオオ
俺の背後から6つのファイアーボールが飛来する。
『血迷ったかぁ!!』
「そんな訳ねぇだろ」
スゥ
後ろへ下がってエルダーと俺は間合いを開ける。
ゴォオオオ
ドガァアアアアアンン
『グハァア』
6発分の爆風に巻き込まれてエルダーが後方へ吹き飛ばされる。
シュルルルルルルッ
俺も吹き飛ばされながら5本の鋼線を蠍王の尻尾に絡ませる。
体力も一割しか残っていない大ダメージだ。
「アンカー」
ザシュッ
俺も次なる準備を整える。
「ハイヒール!」
グンッ
ソニーの上位回復魔法が俺を回復する。
『ぬぁめぇるなぁあああああ!』
エルダーが空中に落ちたと思ったが飛翔魔法なのか飛び上がってきた。
「そのまま落ちておけよ」
パチンッ
左手で合図を送る。
ブワッ
6本の鋼線を上空に舞わせる。
ゴォオオオオ
トリプルファイアーボールが再度飛来してくる。
『バカがァ、ソチの武器が邪魔しておるわぁ』
ガッ
グンッ
ファイアーボール5本の鋼線に絡みつき、勢いそのまま前進をする。
ガッガッガッ
「くぅうううううう」
鋼線がファイアーボールに引っ張られるのを必死に耐える。
ギリギリギリギリ
・鋼線
鋼のみで作られた金属線。
耐久値:250/300
ランク:ノーマル
品質:1
・鋼線
鋼のみで作られた金属線。
耐久値:200/300
ランク:ノーマル
品質:1
・鋼線
鋼のみで作られた金属線。
耐久値:150/300
ランク:ノーマル
品質:1
・鋼線
鋼のみで作られた金属線。
耐久値:100/300
ランク:ノーマル
品質:1
鑑定するたびに耐久値がガリガリと削れて行く。
「くぅうううう」
ビシンビシンッ
両腕が引っ張られて痛みが走る。
「アオイさん!」
「アオイ!」
「アオイさん!!」
グワッ
ファイアーボールの勢いに引っ張られて鋼線が絡みつかれている方が浮かび上がった。
「喰らいやがれ」
ブォオオオオン
キシャアアアアア
ロンドにターゲットしていた蠍王が空中を翔ける。
『んなぁ!?』
ドゴゥ
【鑑定】
名前:エルダー
レベル:40
種族:ダークエルフ
体力:0/5,400
魔力:4,600/7,000
状態:健康、アクティブ
【鑑定】
名前:蠍王
レベル:40
種族:スコーピオン
体力:7,400/9,780
魔力:350/350
状態:健康、アクティブ
サァアアアアアア
蠍王自体を使った殴打にエルダーの体力が全損するのを見る。
キャシャアアアアアア
蠍王もまた空中へ投げ出され落ちていき消滅する。
「・・・・ゼェハァ、ゼェハァ」
「アオイさん、大丈夫ですか!今すぐ回復を!!!」
「いい、上級体力回復ポーションで回復する。それよりロンドとゴウキを優先して回復してくれ」
「はい」
タッタッタッ
「無茶をするっすねぇ」
「もう二度としないで」
バシャァ、バシャァ
シュバルツとイロハによって上級体力回復ポーションを掛けられ、体力の殆どが回復する。
ゴクゴクゴク
最後に俺が飲む事により全快になる。
「フゥ」
「こんな攻略法があるとはなぁ」
「開発の思惑をちゃぶ台返しをしたでごわすなぁ」
回復したロンドとゴウキが俺たちに近づき俺の突拍子もない動きについて感想を述べてくる。
「あの、白いモヤは壁だと思っていたが違ったのかよ」
「誰もが勘違いするっすよねぇ」
「うん」
「一か八かの賭けだったんだがな」
「リスクが高すぎですよ」
「結果オーライだろ・・・さて、次のがやって来たぞ」
グルルルゥ
【鑑定】
名前:王虎
レベル:40
種族:タイガー
体力:8,450/8,450
魔力:150/150
状態:健康、アクティブ
「うっしゃ、次こそ活躍してみせるぜ!」
「うーっす!」
気合を入れてロンドやゴウキが前進する。
「魔力回復をする」
「俺たちに任せるっすよ!」
「アオイは後ろで見てて」
「やれやれ、今回で二度目ですね。ですが、油断は大敵ですよ!」
「「おう!」」
俺は暫く後方で魔力回復に専念しつつ前の戦況を見据える。
流石に二度目の戦いにロンド、ゴウキ、シュバルツ、ソニーの動きは連携を上手く使う。
「イロハ、無理に合わせなくてもいい」
「でも」
「イロハさん、後は頼むっす!」
シュバルツの魔力が尽きかけて後退してくる。
「頑張る」
「シュバルツの動きを見てただろ、ソレを真似るだけでいい」
「ん」
・・・
ガォオオオン
ドドォン
シュォオオオオ
シュバルツ、イロハ、俺がローテーションで立ち位置を変えて前衛を支えあい王虎を前よりも早く倒せた。
「回復ポーション類が心許なくなりました」
「アオイ、頼んだぜ」
「頼んだでごわす」
バサッバサッ
ブワァ
羽ばたく音が聞こえフィールド内に最後のハピネスが姿を表す。
キェエエエエエエエ
「なるほど、怪鳥というのは納得だ」
ベースはハーピィのようだが全くの別物である。
胴体は巨大な人の顔のようなフォルム。頭の部分に当たる場所には2対のハーピィの上半身。
胴体の両側から巨大な翼が生え空中を滞空している。巨木のような鳥の足。
【ステータス】
名前:ハピネス
レベル:40
種族:ハーピィ
体力:4,250/4,250
魔力:2,500/2,500
状態:健康、アクティブ
「体力、魔力は他の3体に比べれば低いな」
「その分、空中にいますからね」
「とりあえず、斬糸!」
キィイイイイ
ハーピィを引きずり下ろす為に斬糸で翼に攻撃を仕掛ける。
バサッ
「早っ」
巨体に見合わない機敏さで斬糸が避けられた。
「まだだ」
ヒィイイイン
キィイン
「硬いな」
通常版の斬糸が翼に弾かれた。
「お願いします」
「全力で引きずり下ろす、魔法の用意を頼むぞ」
「任せるっす」
「ん!」
ヒュンヒュンヒュンッ
ハピネスの巨木のような足に6本の鋼線を絡ませる。
「引き寄せ!」
グンッ
魔力が一気に消費しハピネスを引きずり下す。
キィイイイヤアアアア
バサバサバサッ
俺のスキルに対抗しハピネスが俺を引き上げようとする。
「やれ!」
「「トリプルファイアーボール」」
ドガガガガガガァアアアン
6つのファイアーボールがハピネスに集中攻撃を浴びせる。
モワァ
ギィイイイイ
ドスゥン
全身黒焦げになったハピネスがフィールド中央に落ちてきた。
「うぉっしゃぁああ」
「ふんがぁああ」
落ちてきた所にロンドとゴウキが駆け寄りハピネスへ攻撃を開始する。
ギィイイイイ
バサバサバサッ
再び羽ばたこうとするハピネス。
「させるか!ストリングランス!!」
ギュンッ
グサァア
ギュワアァアアアア
ハピネスの胴体にストリングランスが突き刺さる。
「アースホールっすよ!」
「ツインファイアーボール」
【反撃可能、スタック10秒】
「チャンスだ!」
「三連閃」
「スマッシュ」
「「トリプルファイアーボール」」
「ストリングランス!」
10秒の内に全員で一斉攻撃を放つ。
【鑑定】
名前:ハピネス
レベル:40
種族:ハーピィ
体力:2,840/4,250
魔力:2,500/2,500
状態:健康、アクティブ
キィヤァアアアア
唐突にハーピィの上半身部分が奇声を上げた。
ピィイイ
ピィヤアア
周囲からハーピィが5匹現れた。
【眷属召喚】
「眷属を召喚するスキルのようだ」
「イロハさん、上級魔力回復ポーションは大丈夫ですか!?」
「もう、上級は無い。魔力回復ポーションだけしか無い」
「そうですか。これ以上の魔力消費は抑えないとダメみたいですね」
「斬糸!」
ズバァ
キィイヤァアア
俺の斬糸でハーピィ1匹が地上に落下する。
「前2人のサポートが間に合わない。2人は周りのハーピィを任せてもいいか」
「わかったっすよ」
「ん」
シュバルツとイロハに召喚されたハーピィの相手を任せ、俺は前衛のサポートに回る。
「糸防御術二式!」
魔力温存もしつつ、2人に向かう危険な攻撃に対してスキルを発動する。
キィイイイイイ
取り巻きのハーピィ1匹が俺に向かって強襲を仕掛けてきた。
「ファイアーボール」
ドゴォオン
俺に集中して攻撃を仕掛けようとしていた所にイロハがファイアーボールを浴びせてハーピィは黒焦げになりながら落下する。
「ロックランス!」
グサァア
落下する位置に合わせてシュバルツが岩の槍で串刺しにする。
見事な連携プレーだ。
「くっ、回復が間に合わなくなって来ました!誰か魔力回復ポーションを」
「ん!」
パリンっ
いくら俺のサポート圏内でもスキルの発動タイミング等によって前衛2人のダメージ量が相当発生していた。
キィイヤァアアアア
【眷属召喚】
「またですか!!」
更にハーピィが5匹が追加され、計8匹の取り巻きハーピィになってしまった。
「少しの間時間を稼いでくれ」
「分かったっす」
「ん」
俺はインベントリから前に使っていた武器と装備している武器を取り替える。
「一時的に俺のサポートが無くなるが耐えてくれよ!魔力強化三段階、斬糸」
残っていた魔力を注ぎ込み、一本のワイヤーに斬属性を乗せて放つ。
ザシュゥウウウ
ピィイイヤァアアア
シュゥウウウ
横一線になぎ払った斬糸はハーピィ7匹とハピネスの上に乗っかっているハーピィ上半身部分の片割れを纏めて刈りとった。
「スッゲェな」
「うっす」
目の前で起きたことにロンドとゴウキが感嘆の声を上げる。
バキャァアン
元々耐久値が減っていたのもあったが、今ので武器が崩れ去った。
「アオイさん・・・」
「気にするな、それより前のサポートを頼む。魔力を使い切っちまった」
「任せてくださいっす!」
「ん!」
ハピネスだけとなり攻撃が一点に集中する。
【鑑定】
名前:ハピネス
レベル:40
種族:ハーピィ
体力:1,200/4,250
魔力:1,450/2,500
状態:流血(中)、火傷(大)、欠損(中)、アクティブ
だいぶ、体力を削ったな。
キュピィン
「怒りモード来るぞ!」
ハピネスの怒りモードは初見だ。
ガバァ
【広範囲ブレス】
俺の鑑定が奴のスキルを告げる。
視界上に映っているミニマップでは後衛を巻き込むような範囲が映し出されている。
「広範囲ブレス来るぞ!!全員下がれ!!」
「「「え」」」
3人は既に魔法の詠唱を開始していた。
魔法職の魔法発動には詠唱は始まったら発動するまでモーションが続く。邪魔が入らない限り・・・
シュルルゥ
「くっ。引き寄せ」
鋼線をソニー、シュバルツ、イロハに巻きつけ別の鋼線を飛ばし俺を含めた4人をブレス範囲外に引きずり込む。
当然魔法発動モーションはキャンセルされる。
ズサァアアア
ブハァアアアアア
ハピネスの大口から高熱を有するブレスが吐き出された。
シュゥウウウウ
直撃をくらったロンドとゴウキの体力が4割も削り取られた。
後衛職である俺達も巻き込まれたらマズイ状況になった。
「ソニー、回復を・・・また魔力切れだ」
「助かりました!」
「ありがと」
「後は任せてくださいっす!」
ソニーが前衛2人を癒し、シュバルツとイロハのサポートによって戦況は有利に変わっていく。
キィァイアアアア
【鑑定】
名前:ハピネス
レベル:40
種族:ハーピィ
体力:0/4250
魔力:750/2500
状態:流血(中)、火傷(大)、欠損(中)、アクティブ
シュワァアアアア
そして遂にハピネスは地に倒れふした。
≪エリアボス:エルダー、蠍王、王虎、ハピネスの討伐に成功しました。フィフスの街へ行ける様になりました≫
≪アオイはレベル43に上がりました≫
≪糸使いのレベルが38になりました≫
≪SPが2増えます≫
≪スキル:遠視のレベルがMaxになりました≫
≪SPが2増えます≫
≪アオイはエルダーから太古の杖を手に入れました≫
≪アオイは蠍王から毒蠍のスコーピオンの尻尾を手に入れました≫
≪アオイは王虎から虎皮を手に入れました≫
≪アオイはハピネスから怪鳥の羽根を手に入れました≫
「レアドロップが2つも入りましたね」
「俺もだぜ」
「オイもですたい」
「俺もっすね」
「私も」
「俺もだな」
「どうやら、何かしらのレアドロップがランダムで手に入る仕様の様ですね。王虎の毛皮はもう要りませんが・・・」
俺のレアドロップは太古の杖と怪鳥の羽根か・・・
・太古の杖
太古から伝わる杖。
何で出来ているかは不明。
攻撃力:530
土属性効果上昇(中)
耐久値:500/500
装備可能職業:僧侶、魔法使い
ランク:ユニーク
品質:4
おい・・・
初めてユニークとか見たぞ。
「俺はエルダーからの闇ローブのレアドロップすね」
ん?
俺とは違うレアドロップって奴か?
「性能は虎装備とドッコイドッコイっすねぇ」
・闇ローブ
エリアボス:エルダーからのレアドロップ
防御力:25
闇属性耐性UP(中)
耐久値:200/200
装備可能職業:糸使い、司祭、魔法使い
ランク:マジック
品質:3
「美味しくはありませんね」
「装備系のレアドロップは中々落ねぇからな」
「高くは売れるとは思いますがね」
「ん、アオイどうした?」
ゴウキが俺の異変に気づき声を掛けてくる。
「シュバルツ、イロハ。お前たちの攻撃力はいくつだ?」
「俺っすか?全部なら270っすね」
「私、240・・・」
俺より最初から高いのは分かっている。
「武器だけの攻撃力は?」
「俺のは硬木の杖だから、115っすね」
「高品質の鉄杖は105」
あぁ、コレが異常なのが分かった。
「マジか・・・マズイ代物が出てきたな」
「どういう事だ?」
「教えてください」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
長い沈黙が続いた。
「おい、ユニーク情報なんて聞いた事あるか?」
「現時点ではありませんよ。私は掲示板でよくその手の情報を見ているつもりですが初めて見ました」
「攻撃力530って反則じゃないっすか」
「チート級アイテム」
「うっす」
それぞれが顔色を悪くしている。
「さて、魔法職じゃないからコレは」
「嫌っす!こんな代物を持っているなんてしれたらPKに狙われるっすよ!!」
「同じく」
「だよなぁ。売るか?」
「売るという手もありますが、おそらく現時点で誰も手に入れたくないアイテムですよ」
そりゃそうだ。
購入者が出たとしてもPK対象にされかねないアイテムなのだから。
「仕方がない、なんかの為に取っておくか。誰にも言うなよ」
コクリ
全員が頷き、俺達は改めてフィフスの街へと足を向けた。
【鑑定】
名前:NoName
レベル:42
種族:タイガー
体力:4,200/4,200
魔力:35/35
状態:健康、アクティブ
フィフス周辺の草原にはタイガーが生息しているようだ。
お疲れ様でした。




