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19話「サード-寄り道」

ピピッ


「ソニー何をしているんだ?」


パカラパカラ


セカンドで馬を借りた俺達はサードに向けて王都街道を進む。

ソニーが何かをしていた。


「今回のエリアボスに関する事を掲示板に載せていたのですよ。AI機能の搭載があれ程だったとは思いがけませんでした。私達でさえあの攻撃には度肝を抜かれて対応が少し遅れてしまったのです」

「なるほど。反応はどうなんだ?」

「皆さん驚いていますね。これまでの認識を覆すのですから」

「通常モンスターですら戦闘しながらこちらの動きに対抗してくるそうだからな」

「これもリアルを求めるって奴なんだろうな」

「現実での死は無いとは言え、ゲームへの参加が出来なくなる以上油断はできませんね」

「あぁ」

「何人か上級者達がファストに戻って初心者達の支援に向かってくれるそうです」

「そうなのか?」

「フィフスやフォースから少数ですが」

「二次職プレイヤーが一次職プレイヤーを弟子に出来るものなのか?」

「それの検証も兼ねているようですね。恐らくはできるでしょう」

「レベル40以上のプレイヤーに教えてもらえるなんてな」

「羨ましいですね」

「どの道、俺は無理だな。俺より強い糸使いが居ないし」

「話を聞くだけでも有益ですよ」

「俺たちの知りえない情報をトップ達は持っているんだからよ」

「っと、宿場町に到着だな。一泊していくよな?」

「えぇ。夜間での行動は危険ですからね」

「どこにPKが潜んでいるか分からないからな」

「おいおい、PKK様が何を言っているんだか?」

「ですね。対人戦闘最強プレイヤーの言う言葉じゃないですよ」

「俺は、基本的に平和主義者だ」

「ってか、あの後のPKK放送はお前じゃねぇのか。あんな短時間で4人のPKが倒されたんだぞ?」

「何の事だがな?」

「あくまでもシラを切るつもりですね。それでも良いですけどね」


少し冗談交じりに会話を交わしながら俺達は宿へと入る。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「ようやく、サードか」

「2日間の旅路は長く感じますね」

「あぁ」


2日目の昼頃にサードへと到着する。


「クエストを受けに行くか」


事前に情報を集めて、クエスト開始ポイントはサードの街、魔道具屋となっている。

このゲームの中で魔道具の位置はフィールドで手に入るマジックアイテムと違い人の手で作られたマジックアイテムとなる。

エンデバーが作り出したこのジュエリーライトもその一つと言えよう。俺のガントレットもマジックアイテムとされているが魔道具に分類される武器である。

これらの事を制作級魔道具とプレイヤーの間で言われている。


ガランガランッ


『誰じゃァ?』


魔道具屋に入ると分厚いレンズのメガネを掛けたオーバーオール姿の婆さんがカウンターに座っていた。


『お客さんかねぇ』

「いや、拡張アイテムのクエストを受けたいのだが」

『ほぅ、異邦人の方は情報通なのかね。幾百の人たちがワシを尋ねるんじゃよ』


掲示板のお陰であろう。有益な情報を載せればすぐに広まるからな。プレイヤーの強みと言えよう。


『拡張アイテムに必要なのはワニの革、ワーウルフの毛皮、高品質な鉄鉱石、光の宝石を少々じゃ。受けてくれるかの?』


≪ウッデンから拡張アイテムクエストを依頼されました。受けますか?≫


YES


≪拡張アイテムクエストを受けました≫


『ワシは何時でもおるでの、素材が集まったら言うんじゃぞ』


ガランガランッ


「ワニとワーウルフが先ですね」

「腕がなるぜ!」

「鉱山都市に行かないと行けなくなったな」

「高品質な鉄鉱石と光の宝石ですね。この2つは骨が折れるんですよね」

「あぁ、全くだ。全然出てこないんだからよ!」


2人はヤレヤレといったか感じだ。


どうやら鉱山の階層については気づいていないらしい。


「光の宝石は持っているからいい。高品質な鉄鉱石は全部、武器の素材と使ったから残っていないだけだ」

「それなら、少しは楽になりますね。得に宝石は中々採掘ポイントも見つかりませんしあったとしても望む宝石の物か分かりません」

「一時期、鉱山に入るプレイヤーで溢れかえっていたよな。懐かしいぜ」


そんなにプレイヤーが出入りしていれば気づくやつ位いると思うんだがな・・・秘匿情報って奴か。


「とにかく、周辺と沼地に行くぞ」


俺達は道中、ワーウルフを狩りながらワニの生息している沼地を目指す。


グルアァ


大口を開いてワニの噛み付く攻撃。


「糸拘束術二式」


バチンッ


ワイヤーによって強制的に口を閉じて驚異を下げる。


「ナイスだぜ!三連閃!!」


グルルルゥ


「オラオラオラァ」


クルータイム中は通常攻撃で追撃を加える。


バチンッ!


グルアァ


拘束が解かれワニは大口を開けてゴウキに突進する。


「ぐあっ!」

「グレータヒール!」

「掛かってこいや!」


ソニーが中級回復魔法を使い、ゴウキはタゲが飛ばないように挑発で維持する。


「しゃぁ!」

「斬糸」


ズシャジュシャ


2本の斬れるワイヤーがワニの太い胴体を切りつける。


石以下の体には魔力強化は不要である。


「糸防御術二式!」


グワンッ


ワニの体を回転させる尻尾攻撃だがあらぬ方向にワイヤーで誘導しゴウキにヒットすらさせない。


「本当、糸使い様々だぜ!戦闘が楽で仕方がねぇ」

「えぇ!私も回復に専念できていいですねぇ」


ザンッ!


最後にゴウキの一撃でワニは消滅した。


≪ワニの皮を入手しました≫


「手に入った。次は鉱山だ」

「分かったぜ」

「一旦、サードで補給をします。魔力回復薬が心もとなくなりました」

「分かった」


サードの街へ戻り消耗品の補給をし今度は鉱山都市へと移動する。


「ここも久しぶりだぜ」

「そうですね。最初の頃はロックゴーレムが厄介で中々到達できませんでしたよ」

「エリアボスのアイアンゴーレムが本当にウザかったな」

「えぇ」

「2人は最初から組んでいたのか?」


話しぶりからすると長い付き合いというのを感じた。


「あぁ。β時代からの付き合いだ」

「あとは、野良パーティを組んでフォースへたどり着きました」

「そうか」

「お前は新規参戦組か?」

「いや」

「同じβ組か!」

「上手くやっていけそうですね」


言える雰囲気じゃねぇな。

特別種族をやっていたなんて・・・


現時点でもそうだが種族選択の時に基本種族の他に特別種族が希に現れるそうだ。俺はβ時代の時にソレを選んだ。

β時代は散々な目にあったから今回からは無難にヒューマンを選んだ訳である。

極小数だが特別種族を選んだプレイヤーも居て、俺達が冒険をしている大陸から海を挟んだ先に魔大陸で冒険をしている。

だから、テスター時代の話では盛り上がれない、唯一あの話以外では・・・


「β時代といえばアレだよな」

「ですね。【悪夢の3時間】」


やっぱり出たか。


「βテスト終了間際のスケルトンキングによる【悪夢の3時間】だな」


妙に厨二臭いネームだが誰かが呼称し定着したそうだ。


「アレは酷かったぜ」

「テストプレイヤーの殆どが殺られましたからねぇ」

「万が一、ヤツが現れたら俺たちが一方的に殺られてゲーム自体が終わるぞ」

「ソレは無いと思うぞ」

「何故だ?」

「基本的に特別種族は海を渡る手段がないんだ。それこそ海を渡る事のできる船でも作らなければ無理というものだ」

「じゃあ、なんで。β時代は奴が現れたんだ?」

「一説によればバグだったとか、瞬間移動してきたとか、様々な憶測が飛びまくっていたな」

「諸説がありすぎて、どれが本物だったかは定かじゃないでしたからね。結局は不明のまま事実だけ残してβ時代は終了しました」

「運営や開発がそういったものを残すとは思わない」

「ですね。開発責任者が態々私達を全滅させるようなプレイヤーを現時点で招き入れるような事はしないでしょう?彼の目的に反しますよ」

「『このゲームの世界を楽しんでもらいたい』か」

「GM権限でソレは阻止するだろ?」

「それはそうと、開発責任者は捕まったりしないのか?これだけの騒ぎをしでかしたんだぞ?」

「VRMMOによるデスゲームの元となった小説を知っているか?」

「数十年前の小説ですね。タイトルまでは覚えてませんが・・・」

「その小説のネタバレすると、開発責任者もゲームの中に居たという事なんだ」

「ゲームの中にいた?」

「仮想世界であるゲームの中、警察が手を出せない領域にいたとしたら?」

「例え、身柄を確保したとしても意識はゲームの中の為、手出しができないと」

「つまり、開発責任者である『柊勤』もゲームの中にいると?」

「おそらくな、ゲームの微調整なんかもゲーム内に端末を作り出せばできるだろ」

「それだとプレイヤー全滅という事は無いんじゃないか?」

「柊勤自身もプレイヤーとは限らない・・・それこそ俺達ですら到達できない場所から覗いている可能性だってある」

「なるほど。まぁこの話はここまでだな、これ以上はついて行けん」

「安心しろ、俺が言える憶測はここまでしか用意されてない」

「それなら安心だ」

「ハハハッ、さてと着きましたよ」


鉱山入口に到着した。


道中のロックゴーレムはどうしたかって?

きっちり倒しながら進んで、休憩の合間に話をしていたさ。


「基本、戦闘は変わらずだ。俺が先行する」

「狭い洞窟内で何かあっても大丈夫なのか?」

「糸使いは狭い空間内の方が強いんだぜ?」

「「?」」


俺の言葉に今ひとつ納得が言っていない2人。


「まぁ、戦えばわかる」


俺達は鉱山の中へと入る。


相変わらず暗い洞穴である。


「ライトボールを使いますね」


ライトボールは魔法職の共通で僧侶でも使えるスキルだ。


「光源はコレで大丈夫だ」

「ソレは?」

「ジュエリーライト。ライトボールと同等の光量を放つことのできる魔道具だ」

「聞いたことのない魔道具ですね」

「エンデバー作品の一つだ」

「付与師エンデバーかよ!凄い大物と知り合いだな」

「コストもそれなりにかかっている。見てわかるとおり全種類の宝石を使ったライトだ」


光る部分はダイアモンドなんだが、周囲にルビー、サファイア、エメラルド、シトリン、最後に下部分にオニキスが嵌っている。

原理は説明されたファンタジー要素の塊だった。オニキスが魔力を吸い上げ、4種の宝石が各種属性に魔力を変換、光属性に限りなく近づけて、最後にダイアモンドで光属性に完全に変換し光として放出する仕組みらしいがよく分かっていない。


「ジュエリーライト、オン」


カッ


光が俺たちの周囲をあっという間に光で満たし、暗闇に包まれていた洞穴を照らす。


「おぉ、スゲェな」

「こんな便利なものがあるんですね」

「行くぞ」


俺達は高品質な鉄鉱石を求めて潜る。


カァンカァン


「ダメだ、鉄鉱石しか出てこねぇ」


交代でピッケルを振って採掘するが普通のしか出てこない。


今は上層の下、ホブゴブリンが出てくる階層だから当たり前だ。

最低でも中層の下以降じゃないと多くは望めない。


「こっちだ」

「下りですよ?」

「下るのか?」

「鉱石は下にもあるだろ?」

「態々下らなくたって一杯あるだろし、その内出てくるだろう」


やっぱり、階層自体には気づいていないようだ。


「まぁ、下っても問題ありませんがね。それに天下の糸使い様の所望ですよ」

「そりゃそうか」


たまに糸使い様と会話に挟んでくるな。それで説明せずに済むなら使わせてもらうが。


「おいおい、また下るのかよ」


中層の上に行くには上層の下から2階層下に降りなきゃならんからな。


「この下からは別モンスターが出てくる。ホブゴブリンとの戦闘も飽きてきたんだろ?」


道中、ゴウキはそんな事つぶやいていた。


「ホブゴブリンの他にもいたんですね。稀にオーガが出てくるのは知っていますが」

「ビックバットっていう大きなコウモリモンスターだ。中空を舞ってすごいスピードで襲いかかってくるから頭上には注意だな」

「おうよ!」

「分かりました」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「ワイヤーネット」


ガガガガガガガガッ


キュイィイ


「今の内に攻撃してくれ。俺は出来ん」

「お、おうよ!」

「これが狭い空間内の方が強いという事ですか」

「と言っても、俺の攻撃手段がないからパーティメンバだよりだがな」

「攻撃される心配がないなら構わねぇよ!」


ゴウキがワイヤーに絡まったビックバットに攻撃を加えて倒す。


カァンカァン


「おっ、高品質の鉄鉱石だぜ」

「これで目的達成だ。帰るか」

「そうですね」



俺達はすべての素材を集め終わり鉱山を抜けサードへと戻る。


『よもやこんなに早く持ってくるとわなぁ』


と言っても2日を掛けたんだがな。


『少し待ちぃな』


魔道具屋の婆さんは受け取ったアイテムを奥に持って行きすぐに戻ってきた。


『拡張アイテム、ワーポーチだよ』


・ワーポーチ

 ワーウルフの毛皮を主に使い、ワニの革でそれを補強。

 高品質の鉄鉱石を使い、ポーチからアイテムが落ちないようにしている。

 インベントリの枠が5つ増える。

 耐久値:∞

 ランク:マジック

 品質:3


カチャッ


「おぉ、本当に増えているな」


インベントリの枠数が10から15に増えていた。


『王都にはワシの親戚がおるでのぉ。尋ねてみるとえぇで』


王都・・・


『ほれ、用が済んだのなら行くが良い』


ガランガラン


「なぁ、前はあんな事言ったか?」

「言わなかったですね・・・」

「AI機能の開放の影響なんだろ?」

「という事は王都に拡張アイテムが手に入るという事になりそうですね」

「つっても、王都が何処にあるのか分からんが」

「王都ならフィフスの隣に位置するぞ」

「なんで知っているんですか?」

「馬屋の巨大地図に載っているだろ?」

「アレが地図だったんですね」

「てっきり絵だと思ってたぜ」


王都街道が出来てから情報が殆ど出回っていないようだな。


「用事も住んだし、フォースへ行くか」

「そうだな」

「えぇ」


馬屋で馬を借りてフォースへと向かう。


・・・


・・・・・・


「やはり、王都街道を辿っていくのは適正レベルを超えなくてはならないようです」

「どういう事だ?」

「アップデート情報にも書いてあったとおり、王都街道で先の街へ進むことは出来ますが適正レベルを超えていないプレイヤーにとっては出てくるモンスターの質が変わってきているそうです。無理矢理行こうとしたプレイヤーが泣く泣く引き返してきた感じですね」

「だったら、レベルの高いプレイヤーを探せばいいんじゃないか?」

「フィフスの二次職パーティでボコボコにされたようなので無理かと」

「となると、地道にレベルを上げてエリアボスを倒さないとダメなのかよ」

「そうなりますね」

「なぁ、この新装備ってなんだ?」

「どれです?」

「獣耳カチューシャってやつについてスレが立っているんだが?」

「あぁ、毛皮とカチューシャを組み合わせた装備ですね。いままで、なんで頭装備が無かったのかと思っていましたが察しのとおりですよ」

「オシャレ枠かなんかか?」

「えぇ。アップデート後、女性プレイヤーを中心に爆発的に売れているそうですね。種類は兎、狼のどちらかになるそうですが」

「対して防御力は上がんねぇんだろ?」

「防御力は無いそうですね。見た目を変えるだけのアイテムだそうです」

「カチューシャだけが装備できるのか?」

「食いつきますね。調べた限りではカチューシャが現在装備できるアイテムらしいですよ」

「そうか」

「何か妙案でもあるんですか?」

「防御力のないヘルメットを作り出して、俺のジュエリーライトと組み合わせれば」

「懐中電灯付きヘルメットですか・・・一考の余地がありそうですね。提案という形で出してみましょう」

「頼んだ」

「かなりのコストに成りそうですが、物好きな生産職の誰かが作ってくれるでしょう」


・・・


・・・・・・


「あらら、凄い反響ですねぇ」

「どうなった?」

「まず懐中電灯のつくり方から教えて欲しいそうです」

「エンデバーに聞け」

「で、付与師エンデバーが懐中電灯のつくり方を説明した所で宝石不足で頓挫って感じですね」

「誰か頭にかぶるものには手をつけていない感じか?」

「ヘルメットという観点を置いた木工師が挑戦すると発言していますね。木でヘルメットなんて作れるんでしょうか?」

「鍛冶師でも作れるだろうが、それは兜になるしな」

「他にも頭に装着する目的で服飾師の幾人かが挑戦を始めたようですね。ラブリン・ミカもその一人のようで」

「っと、宿場町に到着したぜ」


幾度かの戦闘の合間を使って掲示板で暇を潰しながら俺達の旅は続く。


「んん~!ようやっとフォースか」

「長かったですねぇ」


初心者達の訓練に寄り道をしてフォースまでの道のりを考えるに12日以上の日数を経過させた。


「俺達はフィフスを目指すがお前はどうする?」

「目的はフィフスを目指したいが、何があるか分からないし。そこから調査する」

「なら、俺達と来ないか?」

「いいのか?」

「俺達は2人しか居ない。お前が加わってくれるだけで助かるってもんだ」

「えぇ。この1週間近くでアナタの強さは分かりました。頼もしい限りです」

「まだフォースについて何も知らんぞ?」

「大丈夫だ。復習がてら、案内してやる」

「リハビリも含めてですがね」

「わかった。これからよろしく頼む」


ガシッ

ガシッ


握手を2人に改めてする。

お疲れ様でした。

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