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17話「ファスト-師弟関係②」

「よく寝れたな」


こういった広い空間だと寝にくい筈だったんだが余程疲れていたんだな。


「まずは今日泊まる宿を探しだすか」


朝方、数件の宿を周り数泊分の部屋代を払い当分は気にしなくても良い様になった。


「よっ」

「待ったかいな?」

「それほど待ってない」

「えへへ」

「なんだ?」

「コレってデートっぽいなって」

「アホ言ってないで、行くぞ」

「うん」


キュイィ


「これで19羽目やで。そろそろ売りに行ってもえぇやろ」

「そうだな」


ホーンラビットとの戦闘にコツを掴みスムーズに倒せるようになっている。


・・・


『ホーンラビットの角が5、ホーンラビットの毛皮が6、ホーンラビットの肉が8ですね。合計で190Gとなります』

「もっと稼げるのはあらへんの?」

『薬草採取クエストを並行で行ってはいかがでしょう』


懐かしいな・・・


『並行してゴブリンの討伐も御座います。どちらとも常設クエストなので事後報告でも構いません』

「どの位稼げるん?」

『薬草の種類によりますがどの種類でも10枚で1クエスト達成になります。また品質次第で報酬上乗せもあります。対象の薬草はヨクナール草、シャッキリ草、カイドーク草、シビレナーイ草、フエール草の5種類です。全て草原を抜けた森に自生しています。また群生地を見つけたとしても根元からではなく葉の部分を切り取ってください。次回の時には元に戻っている事でしょう。基本的に1回達成毎に100Gとなります』

「ラビットより稼げそうやねぇ・・・師匠?」

「森の入口付近なら薬草採取もいい。ゴブリンの露払いは俺がやっておく。一応受けておくか」

「やった!」

「ラビット狩りは飽きたか?」

「そんな事あらへんで~」


目がキョロキョロして分かりやすいな。


「とりあえず、森へ行くぞ」

『畏まりました、G-ランクのラカン様は薬草採取クエスト。Eランクのアオイ様はゴブリン討伐クエストを受注いたしました。お気をつけて』


クエストを受けて俺達は森へと向かう。


キュイィ


道中のラビットを倒しながら進む。


「まだ着かへんの~」

「もう30分は歩き出す。森は見え始めているからな」

「あんな、遠いやねぇ」

「このゲームは広大な土地での旅も楽しませる事も含まれている。数時間の距離を歩く事もザラだ。セカンドの街へ行くのにも6時間以上掛かったんだぞ?」

「げっ、6時間も掛かったん?」

「移動だけで4~5時間、戦闘は全部で1時間位だったん。もちろんPTでの話だ」

「今は王都街道が使える様になったから2日掛ければセカンドの街に行く道もある。俺はそっちから戻ってきた」

「2日間も掛かったん?」

「NPC達はソッチを普段使うんだ」

「エヌピーシーってなんや?」

「ノンプレイヤーキャラ・・・プレイヤーの操作していないキャラクター達だな。ギルドの受付嬢、街の出入りを監視している兵士とかな」

「ほぇ~。あんまり考えてなかったんやから普通の人たちかと思ってたわ」

「まぁ、あんな表情で話すのはココだけだから錯覚してもおかしく無いがな。そのウチ名前まで覚えられて人間性を感じるようになるぞ」

「そうなんか?」

「各キャラクターにもAI機能が搭載している。女性NPCにセクハラ紛いな事しただけで衛兵に突き出されるとかな」

「どうやって見分けてるん?」

「頭の上に色の付いたマークが・・・ないなそう言えば」


今まではそうやって見分けていたんだがな・・・


「この前のアップデートで変わったのか」

「じゃぁ、見分けるのは難しいんちゃう?」

「そうだな」


もしかしたら、あの時のワン、ツー、スリーはNPC冒険者だったのかもしれないし。ハンスや婆さんはプレイヤーだったのかも知れないという事になる。


「深く考えなくてもいいだろ。プレイヤーを匂わす言葉を発して、同調するようならプレイヤーだろう」

「怪訝な顔されたらNPCってことかいな?」

「そう単純じゃないだろう。プレイヤーの中にも通じなくて怪訝な顔するやつもいるだろうしな。さっきのお前みたいな反応でも俺からしたらNPCだったかと錯覚するからな」

「たしかに、ワイも同じ考えに行き着きそうや・・・」

「そういう所を含めて楽しめって事なんだろうな」

「奥が深そうやねぇ」


話している内に森の入口に付いた。


「森は見た目以上に深い。浅い場所なら薬草しか見つからないがゴブリンが居て、奥にはコボルトの領域になっている。薬草に夢中で奥へ行き過ぎるなよ?」

「はいな!」


俺達は森へと入り薬草探しをし始める。


「全然わからへん。雑草ちゃうん?」

「俺もその壁にブチ当たったな」

「師匠は分かるん?」

「記憶しているからな。葉っぱの形や色に線で分かれているんだ。ちなみにお前の持っているのはドクニナールという毒草だ」

「ひぇええ!」


ポイッ


「おいおい、捨てるなよ。勿体無い」

「毒草なんやで!」

「毒草は調薬すると毒薬になる」

「結局毒やないか!」

「それを矢に塗れば、毒矢に変わるんだ。どういう意味かわかるか」

「使い道はあるんやね。人に向けて射ったらどうなるんや?」

「毒状態になるな。フレンドリィファイアが通用し始めたからな」

「じゃぁプレイヤーキラーに狙われたら・・・」

「ひと溜まりもないな」

「怖いこと言わんとーてよ」

「ハハハッ」


ガサッ


俺達の背後の茂みから葉の揺れた音が聞こえた。


バッ


ラカンと俺が同時に視線を其方に向ける。


『ちょ、待ってくれ』


茂みから軽装備で黒いマントの男が飛び出てきた。


「あんたは?」

『俺ぁ、薬草を摂りに来ただけだよ』

「薬草を取りに来てて、短弓を手に持つというのはおかしな事じゃないか?」

『警戒しながら採ってんだよ』

「で、薬草採取に気配遮断スキルは必要なのか?イザっていう時に魔力不足で困るだろ?」


常時発動型の気配遮断は常時魔力を消費する。


『それは』

「何時まで矢に手を掛けている?」

『お前たちを倒すためさ!』


ヒュッ


「きゃっ!」


シュルンッ


ビィイイイン


矢はラカンに向けられていたがワイヤーで絡め取る。


『馬鹿な!?』

「PKか?」

『くっ』


男は踵を返して逃げようと走る。


「糸拘束術二式」


シュォオオ

シュルルルッ


『んなっ!?』


ドタンッ


男が逃げようとした両足にワイヤーを巻きつけてコケさせる。


≪スキル:転倒が会得されました≫


こういうのでもスキルとして認識するのか。


「魔力強化一段階、斬糸!」


ヒュッ


ズバンッ


2本のワイヤーがPKプレイヤーを一刀両断する。


シュゥウウウウウ


≪プレイヤーキラー:ハザマの討伐に成功しました≫

≪ハザマの持ち物から1つだけランクの高い物を手に入れました≫


「師匠?」

「あれから数日と経っていないのにプレイヤーキラーが出てきたか。掲示板に載せないとな」

「どうするん?」


≪プレイヤーキラーがファスト近くの森で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫


なんと、全体アナウンスが発信された。


「他にも居るかもしれないし戻るか」


一旦、ファストへと戻る。


ラカンには薬草クエストの報告に向かい、俺はマーケットに向かう。


「聞いたかしらぁ、ついにプレイヤーキラーが出たらしいわぁ」

「あぁ。遭遇した」

「って、倒したのアナタだったのねぇ」

「どんな奴だった?」

「黒に染色したマントで武装していた。気配を殺して接近してからの毒矢を打ち込む予定だったんだろう」


ハザマを倒した時に手に入れたのは毒属性を付与できるマジックアイテムの短弓だった。


・ポイズンショートボウ

 相手に毒(小)を与えることのできる。

 耐久値:300/300

 装備可能職業:弓使い

 ランク:マジック

品質:3


「こんなアイテム持っているって事は結構強かったんだな」

「よく倒せたわね」

「魔力強化の斬糸二撃で一刀両断した」

「あらまぁ」

「鉄装備だったら。やばかったな」

「ゲームならではだが、一刀両断したぐらいで体力全損するのか?」

「う~ん。分からないわぁ?検証班なら分かるかもねぇ。さっきの全体放送についてスレも盛り上がっているみたいだし、そこで聞いてみたらぁ?」

「そうだな」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【もう】ファスト付近の森でPKが居た件について【現れたのかよ】その1

001:ルールは以下の通り

   ・次スレは>>950を踏んだ人が立てる事

   ・荒らしに触らない、NG推奨

   ・荒らしが自作自演する場合があるので、触ってる人もNG推奨


002:1乙

003:乙

004:とりあえず、誰がPKKしたんだ?

005:ファストの森近くだと、結構遠くなったな。

006:テレポート出来た時代が懐かしいぜ。

007:今は徒歩だもんなぁ

008:レンタル馬か相乗り馬車に護衛する商人なんかも選択肢にあるぞ。

009:アップデートに関することは他でして

010:つか、ファストに居るプレイヤーの大半って初心者だろ?

011:いや、何人か戻った連中が居たはず

012:ラブリン・ミカじゃね?

013:それは思った。一番初心者に優しいもんな

014:残念、アタシじゃないわぁ

015:本人のご登場かよw

016:でも、ファストにいるんだよなぁ

017:数日前にフォースに居た所を目撃したから、態々ファストに戻ったってことか。

018:マジ、パネェ

019:何人か、フォースに行ける人がファストには居るわよぉ

020:ミカじゃなければ誰だよ?

021:テレポートできれば即PKK出来そうな奴をリストアップするが行くまでの時間が勿体無いな

022:誰か、ファストに居ないのか?

023:さっき、PKKしたんだが不可解な現象があったんだか質問していいか?

024:って、本人登場したしw

025:慌てるな本人かは現時点では分からん。とりあえず、話してくれ。

026:とりあえずPKの特徴を言うとだな、男プレイヤー、装備は黒マントに中は革防具(何のかまでは分からん)、武器はポイズンショートボウというマジックアイテム戦法は気配遮断スキルで近づいて物陰から毒矢を打ち込んで奇襲する気だったようだ。勝てないと悟って即逃げたが背後から頭から一刀両断を二連撃叩き込んだら倒せた。俺の物理攻撃力はステータス込みで175だ。

027:一刀両断を二連撃ってなんだ?

028:一刀両断の太刀筋を同じ軌道で二連続で行ったという意味だ。

029:なるほど、分からん!

030:二刀流剣士がまったく同じ軌道で左右の剣で切ったっていう事でOK?

031:そんな感じだ。

032:どんなプレイヤースキルだよw

033:相手の装備とかにもよるが、頭から一刀両断できる物なのか?

034:検証班の一員として発言しよう

035:おぉ、検証班が来てくれた。それで?

036:物理的に一刀両断できる事は希にではあるが可能だ。ただし、攻撃力と対象の守備力の差が100以上離れている場合に起こりうる。

037:そいつの防御力が0でも、出来ない理論になるじゃん

038:普通はな。だが、例外もあるにはある。斬属性、アレであれば一刀両断もできると言われている。

039:ハハハッ、斬属性?まさかなw

040:目撃者によると、斬属性による攻撃でロックゴーレムを一刀両断されたと書かれていた時があった。

041:ハ?じゃぁ、俺たちも余裕で一撃死じゃん

042:ちょっかい出さなければ攻撃してこないだろ?

043:事実上の最強職業じゃねぇかw不遇職つったの誰だよw

044:まぁ、あの糸使い様がファストに行ってればな。数日前にフォースで見かけたぞ

045:あれ、4日前にサードに居たところ見かけたぞ

046:いやいや2日前にセカンドに居たぞ?

047:残念♥今はファストに居るわぁ

048:PKKしたの糸使い様確定じゃね?

049:正解よぉ、おバカなPKが糸使いに手を出して返り討ちされたようよ。さっきもその事で話し合っていたわぁw

050:なんと!

051:おそロシア

052:てか、糸使い様はなんでファストに?

052:うふふ、なんでかしらねぇ?

053:答えるなよ

054:残念。気になるならファストに来ればいいと思うわぁ


----------------------------------------------------------------


ここからは掲示板から目を離した。


「喋りすぎだ」

「あらぁ、ゴメンナサイネェ」

「とりあえず、斬属性がキーだった訳か」

「これもリアル思考なのかもしれないわねぇ。一刀両断されたら生物は生きていけるのかしらぁ?」

「致命傷ってレベルじゃないからな。即死だろ」

「でしょうね。他に気がついた事がなかったかしらァ?」

「ここまで来るときに、モンスター相手でも首を切断したら体力が吹き飛んだな。あっさりしすぎだった」

「同じ事かもしれないわぁ。首を切られて生きていける訳がないから体力が0になったのよぉ」

「リアルで即死級の攻撃が当たれば死ぬか。斬糸の使いどころを間違えたら危険だな」

「間違えてもアタシ達に向けないでねぇ?」

「俺のそうさせないように努力をしろ。うっかりがあるかもしれんぞ」

「あら、怖い」


・・・


「師匠!報告終わったで。ランクも上がったわ」


ラカンが冒険者ギルドから戻ってきた。


「そうか。金は溜まったか?」

「ギリギリって所で溜まったわぁ。ミカはん、売ってくれへんか?」

「いいわよぉ」


ピピピッ


シュンッ


「まぁ、やっぱり女の子には似合うわねぇ♥」

「えへへ」

「誰かさんと違ってねぇ」

「俺に振るな」

「これで二連脚が使えるんやなぁ。早くつこーてみたいわぁ」

「うふふ。足技専用の装備は後衛職には殆ど作れないのが難点なのよねぇ。素材があれば作れるんだけど、アタシも後衛用は2つしか知らないわぁ」

「それって、師匠が装備してる奴?」

「そうなんだけど、レアドロップアイテムも必要になってくるから大変なのよぉ」

「じゃぁ、師匠もレアドロップを手に入れたんやなぁ?」

「まぁな」

「このゲームのレアアイテムのドロップ率って結構厳しいと聞きますねん」

「そうねぇ、極僅かのプレイヤーしか手に入れられないと聞くわぁ。何度でも挑戦できるならイイんだけどねぇ。その装備は1回限りの相手なのよぉ」

「そら、厳しいなぁ」

「だから、ラカンちゃんもしっかりと調べて挑戦するのよぉ」

「心得ておくわ。教えてくれてありがとな!」

「うふふ。アタシはアドバイザーとしてもいるんからね」

「にしても俺には厳しいよな?」

「初心者に対するアドバイザーよ。ヒントを出してもらっているだけありがたいと思いなさいな」

「それには助かってる」

「時間もあるが、森に行くか?」

「今日はえぇで、PKにあったさかい」

「じゃぁ、解散な」

「師匠はどこへ行くん?」

「野暮用だな」

「そか」

「お暇ならアタシ達と喋ってましょうよ」

「ん。女子会」

「分かったわぁ。師匠、また明日なぁ」

「あぁ」


俺は3人と別れて一人単独行動する。


『ひっ、待ってくれ。ギャァアアアア』


≪プレイヤーキラーがファスト近くの森で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫


『くそっ、なんで居るんだよ』


≪プレイヤーキラーがファスト近くの森で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫


『ひぃいいい、来るなぁ』


≪プレイヤーキラーがファスト近くの草原で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫


『なんで見つかったんだよ!ギャァアアア』


≪プレイヤーキラーがファスト近くの森で討伐されました。プレイヤーの皆様はご注意ください≫


短時間のうちに全体アナウンスが4回発信された。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「昨日はお疲れ様ぁ」

「なんの事だ?」

「うふふ。初心者狩り撲滅運動に対するね」

「さぁな」

「ファストに居る高レベルプレイヤー達が徒党を組んでPKを撲滅する動きの話が来ていたわ。初心者狩りを目的としたPKが許せないみたいよぉ」

「そうなのか?」

「中には師弟の関係を結んでいるプレイヤーも居るのよぉ」

「なるほどな」

「まぁ、昨日のアナウンスで向こうも大人しくなる筈よぉ。うまく抑止力になってる感じだもの」

「そうか」


「師匠~」

「じゃ、またねぇ」

「あれ?ミカはん、どうしたん?」

「世間話だ。クエストは受けてきたのか?」


俺のゴブリン討伐クエストは継続中だから受けなおす必要はない。


「薬草がなんなのか教えてくれたで。違いが分からんって」

「スキルで区別する事も可能らしいが、かなり時間を要する。俺もその域にたどり着いていないからな」

「そない便利なスキルがあるんや」

「でも、取っておいても損はないか。最初は観察→注視→鑑定となる。この鑑定が便利だそうだ。昨日のPKも鑑定で分かるらしいからな」

「確かに」


ピピピッ


「観察を取ったで」

「また、お前は・・・」

「おかしかったん?」

「人の話を鵜呑みにしすぎだ・・・便利そうなスキルというのは組み合わせて「使える」と話す奴もいる。もっと考えてから取得しろよ」

「師匠が嘘言う訳あらへんよ」

「自分で最終的には判断するんだ。俺がいつまでも居るとは限らない」

「う~ん。頑張ってみるわ」

「まぁいい。行くぞ」

「あいさ」


ホーンラビットを狩りながら森へと到着する。


「コレか?いや、コレちゃう?」


ラカンは目の前の薬草採取に夢中で周辺の警戒を怠っている。


ガサガサ


自分の草を掻き分ける音で周囲の別の音も混じっていることに気がついていない。


ヒタッ


「んあ?」


ラカンの目の前にゴブリンが立っている。


ギャギャギャギャっ!


互いにエンカウントし戦闘状態が始まる。


「ひぇ!?」


ドタっ


ラカンは驚き、尻餅を付いた。


「斬糸」


ブシャッ


ギャギャ~


シュゥウウウウ


ゴブリンを両断して霧散する。


「油断しすぎだ」

「そないな事言われても、薬草採取で手一杯や」

「ソロの時でも同じこと言えるのか?」

「うっ」

「アイツを見習ってみろ」


俺たちの居る場所より30m位離れた場所に人影がチラチラと見えている。


イロハであった。時折キョロキョロとしながら移動している。


「ソロだからこそ周囲警戒も怠らずに薬草採取をしている。レベルも高いからと言って奢ったりしてない」

「イロハたん、レベルが高いん?」

「俺と同じ位かちょい下だろう。そもそも同じ後衛職でも装備が違うだろ」

「見たことあらへん装備やなぁ」

「さ、続けるぞ」

「そやな」


一日を掛けて森の中の薬草採取へと勤しむ。



『ライカ様はヨクナール草は30枚、シャッキリ草は8枚、カイドーク草は12枚、シビレナーイ草は20枚、フエール草は5枚の合計75枚なので薬草類納品は7回分なので700Gとなります』

『アオイ様はゴブリンの耳が54個と10回分なので600Gとなります』

「明日はゴブリン退治でいいか」

「わかった、ゴブリンやな」

『ちょっといいか』


ギルド内に話しかけてきたプレイヤーが居た。


『俺はゴウキって者だ。話を聞いてもらえないか?』

「ここでか?」

『あっちのテーブルでいいか?』

「わかった」

「ええん?」

「プレイヤー同士の会話も必要だろ」


ギギッ


机にはゴウキを含めて4人の男達が座っていた。


「話を聞いてくれて助かる。改めてゴウキだ。コイツは弟子で剣士のドッチ」

『よろしく』

「そっちがソニー。司祭だ」

『初めまして』

「最後に同じくソニーの弟子で司祭のヤハン」

『よろしくです』

「で、話とは?」

「わかっている通り、俺達はフォースまでは行けるプレイヤーでファストで弟子を取りに来た。アンタもそうだろ?」

「まぁな」

「それで、PT戦をコイツ等に学ばせたいと思っていたんだが、人数が揃わなくてな」

「初心者同士でPTを組ませるだけならば人は集めやすいだろ?ギルドでの斡旋もできるしな」

「それが、師弟の絆を結んだら思わぬ落とし穴があった。PTプレイ中も俺達も一緒に行くことになる。後はわかるな?」

「召喚術師と同じような物か?」

「あぁ。俺達が相手のプレイヤーにとって枷になる。5分の1しか経験値が入らなくなるんだからな。それだった3人の初心者PTに入ったほうが良いと考えるだろう」

「だから、師弟関係のプレイヤーを探していたのか?」

「そういう事だ。ある程度の手施しをこいつ等に教えた。あとはPTプレイの雰囲気を掴んでもらいたいんだ。頼めないだろうか?」

「俺というより、コイツの意見を聞くべきだと思う」

「え?ワイの意見??えぇんちゃう?」

「判断早いな。ま、いいんじゃないか?」

「それは助かる。それでソッチの・・・」

「あぁ。自己紹介が遅れたな、俺はアオイ、糸使い」

「ワイはラカンやで。同じく糸使い」

「糸使い。じゃぁ、アンタが」

「対人戦最強プレイヤー」

「スゲェ」

「こんなにも早く会えるなんて」


各々が反応を示す。


「たしか俺達が教えられるのはレベル10までなんだよな?」

「あぁ。レベル10を超えると師弟関係は解消される。そうなると俺達がコイツ等から経験値を全部奪っちまう」

「何か思い当たる節でもありますか?」

「逆の発想として俺達がエリアボスであるウッドゴーレムを倒したら、経験値の6分の2が弟子達に入ると考えられるんだよな?」

「そうなりますね」

「パワーレベリングによる即戦力強化システムでもあるってわけか?」

「確かにそう考えられますが、このゲームは協力プレイを重きとして推奨しています。協力戦闘経験がなければセカンドからは通用しないでしょう」

「平均化は意味あるか?」

「今は意味がないと思うぜ」

「ただステータスを大幅に下げても経験値は弟子達に注がれるだけですからね。良くても私達が戦闘に参加出来る事位かと」

「でも、スキルとかはそのまんまだから弟子たちの見本にはなれても即実践につながるわけじゃねぇ」

「そうか」

「あの、平均化って何なんや?」

「分からないんだけど」

「なんの事ですか?」


弟子たちから素朴な疑問が出てくる。


「俺は実際にしたことがないから本当に理解している訳じゃない。人伝に教えて貰っただけでよければ教える」

「俺は一度やった事があるから、俺からの方がいいだろう」

「私もないのでよろしくお願いします」


ゴウキが平均化をやった経験者だった為説明を任せる。


「平均化っていうのはレベルの高いプレイヤーがレベルの低いプレイヤーに合わせる事を平均化システムと言うんだ」

「俺たちのレベルに合わせる」

「つまり、レベルが下がるって事やな?」

「ステータスも?」

「話が早くて助かるぜ。その通り、デメリットはレベルを下げることによるステータス低下だ」

「それって危険じゃ」

「少しの油断がプレイ続行できなくなるって言ってましたよ」

「そやそや。ワイ等に合わせてプレイしてたら師匠たちが危険ちゃうん?」

「お、そう思ってくれてるんなら有難い事だな。今となってはデメリットの他に擬似デスゲーム化して死んじまったら終わりだからな。あまり平均化したくないのが本音だな」

「つまり、平均化する事で俺たちに合わせたプレイが楽しめるシステムだった訳ですか?」

「ま、そういう事になる。俺達も戦闘に参加できるようになるシステムだ。師弟関係が外れてもこのシステムを活用すればPTプレイが出来る仕組みだな。前まではそうやって次の街に行くために高レベルプレイヤーを引き入れて連れて行ってもらう事もあった程だ」

「何度でも生き返る事ができるからですね?」

「デスペナルティがあった時代やからなぁ」

「確かに」

「恐らく師弟システムは救済処置として作られたんだと俺は思った。だからお前を選んだ訳だ」

「えへへ、光栄だぜ」

「私もそうですよ」

「有難うございます」

「ワイもそうなん?」

「糸使いはお前しかいなかったからだが?」

「そこはワイもっちゅー話にしてや!」

「事実だろ」

「師匠は手厳しいなぁ」

「ハッハッハッ!そういう訳で俺達の助力なしで3人でのPTプレイに慣れてもらう。エリアボス時は少しくらい俺たちも戦わないと6人の意味が無くなるからなソコだけは手助けする」

「それまでは3人でPTプレイに必要な知識等を蓄えてください。それと糸使いについて学べるチャンスですよ私達もアナタ達も」

「なぁなぁ、師匠。PTプレイって事で「糸拘束術」取ってもえぇか?」

「お前が欲しいと思えば取ればいい。俺からの意見としてはPTプレイには必要なスキルだという事だな」


ピピッ


「取ったで。でもSPが無うなってもーたわ」

「簡単に決めすぎなんだよ」

「そら、仕方がないわ」

「糸拘束術ってなんなんです?」

「えーと、説明には『対象の足に絡みつき動きを阻害する。拘束時間2秒』って書いてあるわ」

「2秒は大きいですね」

「つまり、2秒間に大ダメージのスキルを打ち込めるって事か」

「2秒って短いんじゃないですか?」

「まだ、プレイ間もないからの意見でしょうが、1秒2秒とはこのゲームプレイでは大切な物なのです」

「1秒の差で助かったり死んだりする。2秒も拘束できるって事は回復に2秒の余裕ができるって事だろ?」

「な、なるほど!」

「確かに凄いスキルだ」

「あとファーストアタックはワイに任せてーな。開けた草原なら20m先の対象に攻撃できるんやで」

「ほぅ、20mとは射程が長いな」

「飛距離ボーナスが付きますね」


ほぅ


「飛距離ボーナスってなんだ?」

「最近発見された攻撃時に発生するボーナスです。20m以上での攻撃で1.5倍、30m以上で2.0倍といった具合にですね」

「50mで3.0倍にもなるんやで」

「3倍かぁ、そりゃ大きいな」

「さすがに20m超えが限界らしいですが、遠距離職業の方達はソコを目指していますよ」

「師匠なら50m行けるんよ」

「50m・・・たしか前にそれで騒ぎになりましたね」

「あの時はバカバカしくて見るのを止めたぜ」

「なるほど、飛距離ボーナスによるダメージ換算・・・さらにクリティカルダメージ1.5倍のダブル効果」

「クリティカルって致命傷のですか?」

「今となっては致命傷もまたクリティカルに入ります。ですが気づかれていない状態からの攻撃もクリティカル判定としてされています。20m先からの攻撃に反応できる人は少ないでしょう?敵MOBにも視認範囲というのがありますが後衛職の平均攻撃範囲になる17mだと言われています。それ以上からの攻撃は全てクリティカル扱いなんです」

「なるほど、ワイの12(総攻撃力)×1.5(飛距離)×2.0(クリティカル)で攻撃力は36になるんやな?」

「俺の攻撃力と大差ないな」

「ファーストアタックのみ、前衛と同じ攻撃力にまで跳ね上がるって事か。ヤバイな」

「えぇ。12という総攻撃力が低いのも驚きですが、補正力が高いですね。これが糸使いの見え隠れしていた部分という事ですね?」

「まぁ、そういう事だな」

「とりあえず、お前たち3人にはセカンドの街に行ける位までには連携を覚えてもらう。明日の朝、門前で集合するか」

「ですね。解散しましょう」


こうして俺達6人は師弟関係PTとして動き出す。


「待たせたな」

「これで全員か」

「PTを組むぞ」


≪ゴウキからPT申請が送られてきました。受けますか?≫


YES


≪ゴウキのPTに加わりました≫


6人分のレベルと体力に魔力のゲージが視界に映り出される。


「レベル33か」

「そういうお前こそ32だろ」

「俺たちのようなプレイヤーはいるのか?」

「少数ですが居ますよ」

「そうか」

「とりあえず、PTにはリーダーが必要だ。俺達が引っ張っていっても意味がないから3人の誰がリーダーとなるのか話し合え」

「やっぱり、前衛である俺が適任だよな?」

「前衛だと全体が見渡せないから大変じゃないですか?」

「後衛のお前もPT全体の体力管理が大変だろ?」

「なら、ワイならどうや?後衛で全体を見渡せるし前衛のサポート職なんやし」

「とりあえずそれで行きましょう」

「わかった。指示頼む」

「PT戦闘は初めてさかい、アドバイスが有れば言ってぇな」

「分かった」

「分かりました」

「草原みたいな場所のファーストアタックはワイの任せてぇな。そんでドッチと入れ替わるわ」

「後は前衛の俺の出番だな」

「前衛が死んだらダメだからワイよりドッチに回復優先してぇな」

「分かりました。回復頻度とかどうするんですか?」

「ん?減ったらでエェんちゃうの?」

「それだとタゲがこっちに移っちゃいそうですよ」

「タゲ?」

「敵モブのヘイトが俺に集まっちゃうから控えないとダメですよ」

「ヘイト?」

「ヘイトを知らないのか?」

「あぁ、そういう事ですか。アオイさんからは習っていないって訳ですね」

「今までラビットを基本ソロで倒させていた。森に行ったことあるがゴブリンは俺が倒していたから教えていない」

「じゃぁ、まずはラビットでヘイトについておさらいしましょう」

「だな!」

「頼むわぁ」


・・・


・・・・・・


「まず、ヘイトについてですね。ヘイトつまり憎悪値になります」

「憎悪?」

「敵にとって誰が一番厄介なのかを数値に表しています。まずファーストアタックをした人物に憎悪値が一番高くなるので他のメンバーには目もくれず攻撃してきます」

「たしかに、師匠には一度も向かったことないなぁ」

「次に自分に攻撃したプレイヤーからのダメージ量等によってヘイト値が変わってきますね。例えばラカンさんがFAを決めたあとにドッチさんがスキルで大ダメージを与えたとします。自力的にドッチさんの方が強いのでヘイト値はドッチさんに移るでしょう。攻撃もドッチさんに向かいダメージを貰います。その後に俺が回復するとドッチさんよりもヘイトが溜まり安いでしょう」

「へ?攻撃してへんのにヘイトは溜まるん?」

「後衛職の回復や魔法攻撃はヘイトがより多く溜まる設定なのです。それはどのゲームでも同じ考えですね」

「それをさせない為に剣士職にはヘイトコントロールする為の挑発スキルがある。コレは周囲のヘイトを俺に向ける為で溜まりやすい」

「つまり、ヘイトがヤハンやワイに向かってきたら挑発で前衛に戻すんやな?」

「そういう事だ」

「モンスターが前衛の壁を無視し始めると場が乱戦状態になって誰を回復するべきかが問題になります。今となっては死なせてはいけませんからね」

「俺とヤハンはみっちり師匠たちにしごかれたからなぁ」

「言うようになったぁドッチ」

「私たちの教えが伝わっていて何よりですね」

「敵が複数の時はどないすればエェん?」

「前衛が全員を引きつけている間にサブ前衛等が周りを牽制するのですが、今回は3人だけの限定PTを前提としていますからね」

「スキルを発動するとクールタイムが長いからなぁ。一撃必殺とは行かないし」

「ワイは元々攻撃力が低いから、戦力としては期待しない方がえぇで。サポートは出来るだけやるさかい」

「俺も回復系スキルのみで攻撃は杖での打撃位ですかね」

「師匠らは手伝ってくれへんもな?」

「エリアボスまではお前たち3人だけで考えるべきだ」

「いざという時以外は離れてみていますよ」

「そういう事だ」

「圧倒的攻撃力不足になりそうですね」

「師匠、糸にも耐久値があるんやけどなまじ糸で雁字搦めに出来ん?」

「麻の糸じゃ、生物をスキル以外で留めるのは無理だ。ワイヤーじゃないとな」

「師匠ならスキル以外の事で出来るん?」

「スキルを使ったワイヤーアクション位だな」

「ワイヤーアクション出来るん?」

「数十年前にワイヤーアクション型のアニメが流行ったろ」

「あぁ、巨人の」

「アレ出来んのか?」

「さすがにあんな機敏な動きはできないが、人を高所に持ち上げたり、俺自身を高所に持ち上げたりはできるぞ。実践してみせようか?」

「是非やってみてくれ」

「話が脱線していますが見てみたいですね」


シュッ

ザシュッ


右の1本を街を囲う壁にワイヤーを突き刺す。


「引き寄せ」


グンッ


壁を引き寄せられない為に俺が引き寄せられる。


スタッ


引っ張り上げられる力で身体を持ち上げて壁に乗り上がる。

5mの壁だがそれなりに高い。


「おぉ!スゲェな」

「なるほど、スキルの力で巻き取られる力を利用しているのですね」


スタッ


「ま、こんな物だ。それまでは敵をスキル無しには絡め取れない。直ぐに耐久値が0になって切れる」

「分かったで」

「後は足技で補助だな」

「コレじゃ、弱いで?」

「まだ攻撃手段を持っているんですね」

「一応、足技で二連脚をもっているんや。でも足装備の攻撃力が低くて使い物にならへんで」

「それでも、攻撃できるなら他の牽制になるだろ?」

「ですね。敵自体も考えるような素振りを見せてるので警戒位はするでしょう」

「そうなんやね?」

「あぁ。ゴブリンですら、警戒して動きを鈍らせたり森での戦闘時に攻撃のタイミング遅かったりしている。恐らく敵にもAIが搭載され始めたんだろう」

「AIの搭載された敵って戦闘中に強くなっていくっちゅーこっちゃな?」

「長引けば長引くほど俺たちの攻撃パターンなんかを読み取ってい避けたりする。気をつけろよ」

「それは有益な情報だ。助かる」

「糸使いの情報を出してくれてるしな」

「とりあえず、ヘイトに関しては以上で実践してみましょう」

「分かったで」

「ラビットの体力は低いから、FAは俺がやるぜ」

「ですね」


一同はラビットの居る草原へと移動する。


「適当に挑発します」


タッタッタッ


ドッチが挑発スキルでホーンラビットとの戦闘状態に入る。


「ぐあぁ」


ホーンラビットの攻撃を幾度か受けてダメージを貰う。


「ヒール」


シュアアアアア


ヒールを受けたドッチに総体力30%分の回復が施される。


キュイィ


ダッ


今までドッチに攻撃していたホーンラビットが方向転換してヤハンに向かい始める。


「コレがヘイトです。俺にタゲが移ったのです」


「糸拘束術一式や!」


シュルッ


ホーンラビットの足に糸が絡みつく。


キュキュ!?


急激に動けなくなったホーンラビットは驚き藻掻く。


「ナイス!二連閃!!」


シャシャッ


動きが取れない状態で直剣の二連擊が叩き込まれ粒子となる。


「アレがヘイトでタゲがうつるっちゅーこっちゃな。分かったで」

「今のはいい連携でしたね」

「そうですねぇ」

「先へ進むで」

お疲れ様でした。

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