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15話「王都街道-ファストへの旅」

翌日、アップデート内容を確認していた。


ふむ・・・これが大型アップデート内容か。


リアルに近づけるために・・・か。


たしかにコーヒーの香りもちゃんと分かる。


喫茶店にて苦味は分からないがコーヒーを飲みながら香りを楽しむ。


「景色はあまり変わらないな」


ファスト、セカンド、サード、フォース・・・ここまで全て同じ景色のコピーだと飽きてくる。


何処かに空家があってソコに住めるらしいが金が足らないだろう。


ピピピッ


現在総プレイヤー:7,350名


昨日の段階でゲームオーバーしたプレイヤーが多数発生したらしい。


ゲームの感覚が抜けきらず、体力コントロールも上手く出来ずにゲームオーバーになったプレイヤーは続出した。


これからも脱落者は増え続けるだろう。


二次職プレイヤー:35名【詳細】

一次職プレイヤー:7,315名【詳細】


二次職になれたのはフィフスに到達したレベル40以上のトッププレイヤーの一部だけのようだ。


一次職、【詳細】


・剣士:2,725名

・武道家:1,216名

・魔法使い:856名

・僧侶:1,860名

・弓使い:548名

・糸使い:2名

・召喚術師:48

・吟遊詩人:60


やはり上位人気は近接戦闘系か高火力に回復補助系に集中しているか・・・


糸使いはもちろん・・・ん?


2名?


俺以外にもいるって事か?


さすがに詳細は出してくれないか・・・


掲示板の噂を信じて糸使いになった挙句、半デスゲームに突入なんだから最悪な気分だろうな。


「まずは確認だな」


フォースの転移ポイントへと移動して転移できるか確認してみる。


≪転移可能の街:なし≫


出来なくなっているか・・・王都街道とやらがあるならサードやセカンドの街に行きたければ徒歩で向かえって事になるな。


その前に・・・


・乗馬スキルのスクロール

 馬に乗る事のできるスキルが手に入るスクロール

 ランク:マジック

 品質:5


初めてスキルスクロールというのを見たな。


ピピッ


≪スキル:乗馬スキルを取得しました≫


これで馬に乗ることができるのか・・・


門近くに馬を借りられる場所があるそうだ。


『らっしゃい!馬を借りに来たいのかい?』

「あぁ、どんなのが居るんだ?」

『ウチは普通の馬から踏破力の高い馬も扱ってますぜ』

「見せてくれ」


≪フォース:レンタルホース≫

・茶馬、移動速度25%、スタミナ60。料金 5,000G

・白馬、移動速度35%、スタミナ30。料金10,000G

・黒馬、移動速度45%、スタミナ10。料金15,000G


「移動速度というはの分かるがスタミナはなんだ?」

『馬自身のスタミナでさぁ。スタミナ60ですと1時間に1度の休憩を挟むだけで20キロは走りますぜ』

「スタミナ10だと?」

『10分の1度の休憩が必要ですね。ただし、24キロ先に進めますぜ』

「4キロ差か・・・」

『もちろん、黒馬の場合は早い分モンスターを引き剥がすのに優れてますぜ』

「なるほど、一々降りて戦わなくても済むという事か」

『その分料金は高いですぜ』

「日数ごとのレンタルになるのか?」

『次の街に着くまでのレンタルですわ。馬が死んじまったら元も子もないですからな。フィフスかサードの馬屋にこの子達を預けて別の馬に乗り変えてくだせぇ。

 ただし、何時でも馬が借りられるかわかりやせん。その場合は商人達の商隊を護衛するクエストでも徒歩より早く着くと思いますぜ』

「わかった。茶馬を借りよう」

『毎度!』


店主に連れられて茶馬がやって来た。


サラブレット並みにデカイな。


ブルルルゥン


「サードに向かいたいんだが、方角はどうなっているんだ?」

『門を出たら道なりに進み左折すればサードへ続く道が繋がっていますぜ。逆がフィフスの街でさぁ』


店主は巨大マップを指差しながら説明してくれる。


この大陸にある各街は山脈と山脈の間に街が作られている事が分かった。マップ機能でもここまで縮小された地図は無い。


「この山脈は何なんだ?」

『この王国は山脈の間に街を作り上げているんですわ。この山脈を通称【肋骨山脈】と言われてますぜ。動物にある肋骨の様に山脈が伸びていてその間に街が出来ているですわ』

「王都街道はこの太い線を指すんだな?」

『そうですわぁ。肋骨山脈に引っかからない場所に街道を敷いておりますぜ。ただし、肋骨山脈を避ける為に街道は湾曲していて隣街の距離は200キロ位離れていやす』

「馬は1日どれくらい走れるんだ?」

『1日5時間分は走れるよ』

「馬に水は必要なのか?」

『もちろん、1セット1,000Gで売っているさ』

「2日間掛かるという計算になるが、途中には村とかあるのか?」

『宿場町が経営されているよ』

「馬はそこで休息をとるという事か」

『そういう事になるね。ただし注意点として客室も限界があるから早めに到着するように行った方がいい』

「という事は黒馬の方が」

『そういう事だね。今からでも遅くないね?』

「いや、止めておく」

『まぁ良いよ』

「世話になった」

『また、使っておくれよ』

「あぁ」


よっと!


「視線が高いな」


馬に乗った事で何時もより視線が高いのに新鮮さを感じる。

遠視スキルは遠くを見るだけではなく視線を高い位置に上げて周囲を見る事もできる。高ければ高いほど見える範囲は狭まるデメリット付きだ。


前へ・・・


パカラパカラ


おぉ!


前に進むように思っただけで馬が進み始めた。


右に旋回


パカッパカッ


左に旋回


パカッパカッ


「すげぇ」


リアルで乗馬なんかした事が無いから余計に感動する。


走れ!


パッカラパッカラ


移動速度25%だとプレイヤーが走る速度の1.5倍早いって所だな。


ブゥゥウウウ


視界に移るゲージが減少していく。


馬のスタミナゲージでコレが0になると馬は休憩を必要とする。

途中で歩いていけば少しは回復するらしいが微々たる程らしい。


パッカラパッカラ


俺は馬を走らせサードの街へと目指す。


「風も感じるようになったのか」


馬の走る速度にあわせて空気が頬を通り過ぎる事を認識する。


フワッ


青臭い草の匂いも実装されている。


ザァアアアアアア


時折、風が草原の草を撫でて通り過ぎていく。


「これがゲームとは思えないな」


音、匂い、風景、感覚がリアルに近づいてゲームをやっていると考えられなくなりそうだ。


ギャギャギャッ!!


「ホブゴブリンか」


ゴブリンより一回り大きいホブゴブリンが3匹ほど現れた。


タッ


パッカラパッカラ


馬から降りてホブゴブリンと戦闘状態に突入する。

その前に馬は安全地帯へと避難して行った。


「糸拘束術二式」


右のワイヤー2本で近いホブゴブリンを拘束する。


「斬糸!」


通常版斬糸を発動する。


ザザンッ


左のワイヤー2本が束縛されたホブゴブリンを通り過ぎる。


ズズッ


ギャァアア


斬糸によってホブゴブリンの両腕が切断してその場で暴れだす。


ギャギャッ!?


残りの2匹がその光景を見て警戒を強くする。


「無駄だ!」


ザザンッ


右の2本と左の2本で残ったホブゴブリンの腕を切断する。


「トドメだ」


ドスッ!


武器も持てず無防備のホブゴブリンにトドメを刺して戦闘を終了させる。


「いくか」


馬に再び乗ってサードの街を目指す。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


「ふぅ、ここが宿場町か」


数回の戦闘と馬の休憩を挟んでようやく宿場町へと到着した。

規模は小さく、数件の宿屋が軒を連ねている程度である。


幾つか、荷馬車がある事を考えると商人達も立ち寄っていると考えていいだろう。


『らっしゃい』

「宿泊を希望したいんだが?」

『生憎、満室でさー。馬小屋なら空きがあるんですがね』

「そうか、他に空いている宿はあるのか?」

『この時間だと空いていないと思いますぜ。時間が時間ですからね』


既に夕日が落ちて夜へと入り始めたときに俺が此処へやって来たのが悪かったようだ。


『野宿する冒険者さんも居ますが何が起こるか分からない以上は部屋に泊ったほうが安全だと忠告だけはしますぜ』

「馬小屋に泊れるのか?」

『止めたほうがいいと思いますよ。匂いがね』

「野宿よりも安全は確保されるんだろう?」

『気休め程度ですがね。一度入って鍵を掛けちまうんで出てこれませんよ?それでもってぇなら100Gになりやす』

「普通は幾らなんだ?」

『平均的に朝食付きで500Gは取りやす。馬の世話付で600Gですぜ』

「馬料金だけなんだな?」

『へい。ただ、朝食も食べたい場合は近くの井戸で水を被ってもらって匂いを落としてからなら追加料金でお出ししますぜ』

「そうか。そんなに臭いのか?」

『それはもう・・・100G取るくらいにはとしか言いません』

「わかった。今回はそれで良い」

『なら、100Gですぜ。馬と一緒に案内しやす』


馬屋の忠告を受けずに言った代償が馬小屋での一泊か・・・


『ここが馬小屋ですぜ』


ムワッ


「臭いな」

『清掃タイミングを決めていますからね。その間の掃除はしないのでこういった具合ですわ』

「客が出て行った後か?」

『どこも同じタイミングですよ』

「そうか。次からは早く着くようにしよう」

『懸命な判断で・・・。朝に鍵を開けますので井戸に案内しやす』

「わかった」

『夕食が食べたい場合は別途料金を頂やすが?』

「それもそうだな」


空腹ゲージが殆ど残っていない事を確認し一度宿へと入る。


『一食50Gですわ』

「あぁ」


特に変り栄えしない夕食を食べて寝る事に徹する。

夜になれば暗くなりまともに動けない。

今は報告に無いがプレイヤーキラーが現れたっておかしくない状況である。


翌日、朝一番に朝食を摂って宿場町を後にしようとする。


『もし、旅人の方』

「ん?」


袖を引っ張られながら声を掛けられて振り向くと1人の男性が立っていた。


『アナタは何処へ向かうおつもりで?』

「サードだが」

『サードですかな。これは偶然ですね。私どももサードに向かう途中でして』

「それで?」

『護衛を雇いたいと思いまして声を掛けた次第です。どうですか?』

「他を当たってくれ」

『それが、他の冒険者の方々にも声を掛けましたが受けて下さらないのです』

「冒険者は基本的にギルドを通して護衛を行う筈だ。直接的な方法で護衛を雇うなんて聞いた事が無いぞ」

『たしかに私共もギルドを通して冒険者を護衛として雇い此処まで着ました。しかし今朝方護衛の冒険者方が居なくなっており困っていた次第で』

「クエスト放棄という奴か?信用問題に関わってくるな」

『フォースのギルドで雇ったんですが昨日もギリギリな戦いをしておりましたので心配はしていたのですが案の定です』

「道中はホブゴブリン3匹と戦っていたと思うがそいつ等はギリギリの戦いだったのか?」

『いえ、護衛は1人だけです』


つまり、ソロプレイに慣れていないプレイヤーが護衛をして逃げ出したと?


「そいつは異邦人か?」

『えぇ。アナタと同じ異邦人の方でした』


異邦人とはこのゲームのNPCからしてみればプレイヤー達は異国の地から来た異邦人という認識らしい。


「無責任な異邦人と同じ俺を雇う気になれたな?」

『仕方が無い事です。わが国の冒険者を雇おうにもギルドを解していない依頼は受けてくれないようでして』

「異邦人として尻拭いはしたく無いが、このままにしては俺たちの印象が落ちかねん・・・」

『では!』

「条件を提示する」

『出来る限り謝礼は致します』

「この事をギルドに報告しろ。異邦人向けに無責任な行動を慎むように促してもらえ」

『それだけでよろしいので?』

「もちろん、護衛料は頂く。ここからサードまでは昼過ぎに到着すると思うが半日分は貰う」

『いえ、全ての報酬を渡します』

「商隊ではないよな?流石に俺でも護衛しきれないぞ」

『商隊ではありません。私の商馬車ともう一台馬車を守ってもらいます』

「たった一人で何処まできるか分からんぞ?」

『やって頂けるだけありがたいです』

「半日だけだか、よろしく」

『はい。私はハンス。しがない商人をやっています』

「直ぐに出発はできるだろうな?」

「はい」


ハンスは自分の荷馬車と通常の馬車を連れてやってきた。


「あの馬車には誰が乗っているんだ?」


御者席にはハンスとは違う老紳士が座って馬を操っている。


「同じ商人です」

「こういう時は挨拶くらいしないか?」

「まぁ、あの方々は商人として駆け出しでして」


ハンスが話を濁す。


何かあるんだろうが関わらないでおこう。


俺もこれ以上突っ込まないで置く。


パカラパカラ


俺はハンスの御者席の横に着く形で馬を走らせる事なく歩かせる。


「そう言えば、何を運んでいるんだ?」

「色々運んでいます。日用雑貨や調味料、香辛料に原材料となる物なんかもですね」

「調味料?」

「塩とかですね」

「塩なんて売っているのか?」

「はい。海辺で取れた塩なんで高くなるんですがね」

「すると、海から運んできたのか?」


海といえば話にでてきた海上都市の噂である、このゲーム最後の街として登場するらしい。


「いえいえ、私は海上都市から運ばれてきた塩を買い付けて更にサードやセカンドの街へ売りに行くのです」


つまり、転売目的の商売という事か・・・こういう商法もアリか。


「海上都市っていうのは此処からかなり遠いのか?」

「そう言えば異邦人の方はファストの方面から流れてくると聞きましたね・・・かなり遠いですよ。ざっと1ヶ月は掛かりますね」


海上都市まで一体いくつの街を抜けなければならないのだろうか・・・


2日で街と街の間を行商するという計算だと、ざっとで12の街を越えないと付かないという事になる。

よく考えると1ヶ月で海にいけるという事はこの国自体は狭いのかもしれない。

小説とかで辺境から王都まで2ヶ月とか余裕で掛かるという表現もある。その国は端から端まで旅をしたら4ヶ月も掛けて国をわたる事になるのだ。

それを考えれば1ヶ月で端から端まで到達できるなら早いだろう。現代文明からしてみれば遅いのは明白だがな。


ギャギャギャッ


「ホブゴブリンです」

「しばし、待て」


ッタ


馬に降りてから戦闘が始まる。


・・・


ギャァアア


シュルッ


「待たせたな」

「糸使いとは珍しいですね」

「驚いたか?」

「てっきり武道家の人かと思いました」

「よく間違えられる」

「商人として他者を見る目はまだまだって事ですね」

「気にするな」

「ハハッ」


それから幾度かの戦闘を経て、俺たちはサードの街へと到着した。

馬をサードの馬屋に預けてハンスを連れて冒険者ギルドへと向かう。


『護衛の冒険者が逃亡したのですか?』

「はい、私共がフォースの冒険者ギルドで雇ったんですがね」

『少々お待ちを・・・』


受付嬢は直ぐに問い合わせを行い始める。


『確かに、フォースの街でハンス様の依頼を受注しております。申し訳ございません我々冒険者ギルドの落ち度でございます』

「コチラとしてもこういった事が二度と無い事をお願いしたいです。今回は同じ冒険者であるアオイ様が急遽護衛をして頂いたので被害が無かった為、これ以上は言いませんが」

『アオイ様、我が冒険者ギルドの信用を取り戻してくれてありがとうございます。ハンス様は報酬の方をアオイ様に渡す事をお考えで?』

「はい。そういった約束をしております。そして二度とこういった事が無いようにこれから護衛をする冒険者の方々には忠告という形で厳重注意をしていただきたいとアオイ様からも言われております」

『わかりました。サードの冒険者ギルド並びに各街に点在する冒険者ギルドから情報を共有し発信していきます』

「よろしくお願いします。私はこれにてお暇させてもらいます」


ハンスは踵を返してギルドを出て行った。


『それでは、アオイ様。緊急クエストという形で処理を行います』

「あぁ」

『おや?ランクEなのですか』

「何か問題が?」

『護衛依頼はランクDからとなっています。今回は仕方が無いのですがあまりお勧めは致しません。護衛依頼の最低人数は4人からなるのが普通です。今回はハンスさんが1人以上をご希望されている見たいですが特別とお考えください』

「なるほど、今後からは気をつける」

『はい、では報酬として150,000Gになります』

「結構割がいいと思うが」


2日間の護衛で150,000Gになるとは。


『それだけ、護衛任務というのは危険を伴うのです。それに本来なら一人当たり37,500Gが取り分となります』

「宿場町で泊れるとは限らないしな」

『はい。それと盗賊の類が街道に現れているらしくモンスター以外にも気をつけなければなりません。王都から派遣されている巡廻兵の方々が王都街道の治安を守っていただいていますが隅々まで行き届いているとはかぎりません』


盗賊・・・PKプレイヤーか?


「わかった。気をつけることにする」

『この度は誠にありがとうございました』

「あぁ」


冒険者ギルドを後にし今日の宿を決めて寝る事にする。


「馬が無い?」

『はい、申し訳ありませんが全て出払ってお貸しできる馬は1頭もおりません』

「そうか」

『お急ぎでしたら日に2本出ている相乗り馬車をお勧めいたします』

「そんな物まであるのか?」

『はい。ただし、料金が高いのですがモンスターに襲われた場合等については各自で防衛する鉄則となっています』

「一般人はどうするんだ?」

『諦めるか、逃げるかします』

「なるほど。ソコをあたってみる事にする」


・・・


『相乗り馬車はここであっている。セカンドの街までなら20,000Gだぜ』


確かに高いな。


「中継地点の宿場町は通り過ぎるのか」

『宿場町で1泊する2日間を掛けていくぜ。ただし、何があっても保障はできない。俺も馬に乗って逃げるかもしれねぇ』

「わかった。20,000Gだそう」

『へい、毎度!』


ガタゴトガタゴト


『お兄さんはどちらから来たのかのぅ?』


乗合馬車では80過ぎの婆さんが話しかけてきた。


「サードからだが?」

『そうかのぅ。ワシはセカンドの街から半日ほど離れた所にある村に住む倅に会いにいくところじゃぁ』


おや?


「婆さん、村ってどの辺りだ?」

『セカンドの街、東北に位置する小さな村じゃぁ』

「セカンドの街の他にも村はあるって事なんだな?」

『なんだぁ、異邦人の冒険者さんならぁ分からんでもないなぁ。ワシ等は街に住んでおるだけじゃなかぁ、ちゃんと生きとる場所も違かぁ』

「なるほど。勉強になった」

『いいんだぁべ』


『モンスターだぁ!』


御者の方から叫び声が聞こえてくる。


チラッと相乗り馬車の隙間から外を伺うと、ワーウルフが3頭囲んでいた。


グルルルルゥ


『すまねぇ、俺ァ逃げるぜ!!』


ヒヒィン


パッカラパッカラ


御者は馬と馬車を切り離し単独でサードの街へと引き返していく。


ギャオォン


ワーウルフの1頭がその御者めがけて走っていった。


『おやおや、命運付きたかのぉ。若いのワシを置いて逃げることはできるじゃろうて』

「婆さんはここに居てくれ」


シュルッ


御者が1頭を引きつけてくれたから残り2頭・・・不意をつければいけるだろう。


ヒュンッ


「斬糸」


バキバキバキッ


馬車の影から馬車の一部を切断しつつワーウルフの不意をつく。


ズバッ


ワイヤーにワーウルフは反応できず微動だにしなかった。


ズズズッ


ズルゥ


上半身を斜めに切り裂かれたワーウルフはなすすべ無く粒子へと帰る。


グルルルゥ


「斬糸」


ヒュォッ


ズバッ


俺に視線を向けているワーウルフの死角、馬車の影から他のワイヤーで襲いかかる。


パァアン


クリティカルのエフェクトが目の前に発生する。


気づかれている状態でのクリティカルとは珍しいな。


シュウウウウ


ワーウルフはあっという間に消滅する。


「ちっ」


グルルゥ


俺の背後、3頭目のワーウルフが帰って来た。


その口には御者NPCが銜えられていて、右手にはガッチリと馬が引きずられていた。


「斬糸!」


シュバッ


さすがに避けられるか・・・


『若けぇの』


ピクッ


「糸拘束術二式!」


婆さんの存在に若干気を向けたワーウルフに拘束が成功する。


「斬糸!」


パァン


今度は不意もついていない状態でのクリティカルが発生した。


恐らく首を切断したからだろう。


「もう大丈夫だ」

『しかし、馬がのうなってしもぅた』

「背負ってやる」

『えぇんか?』

「構うな」


婆さんの脚に合わせていたら俺も野宿してしまうからな。


グルルゥ


『おやまぁ』


この婆さんモンスターには動じないなぁ。


タッ


婆さんを背中から降ろして、臨戦態勢に入る。


『ファイアーボール』


ヒュオッ!


へ?


バコォン!!


1頭が今ので沈んだ、だと?


「糸拘束術一式、斬糸!」


怯んでいる残ったワーウルフを拘束し斬糸で首を切断する。


「婆さん、あんた」

『フォッフォッフォッ。ワシもまだまだ現役じゃのぉ。ゴッホゴホッ!』

「その杖は魔法使いの杖だったのか。なんの変哲もない老人が使う杖だと思っていた」

『ワシ専用の杖じゃぁ。若いの』

「変わった婆さんだ。乗れ」

『フォッフォッフォッ』


婆さんを背負い宿場町へと幾度かの戦闘を経てたどり着く。


『2名様ですね。夕朝付きで1,200Gになります』

「あぁ」

『ここはワシの奢りじゃぁ』

「いや」

『若けぇのにはワシを守ってもらったぁ礼じゃぁ』


婆さんは懐から金を出して支払う。


『相部屋じゃけぇ、スマンのぉ』

「気にするな」


馬小屋じゃなければ構わない。


【不明】


注視では婆さんについては分からないか。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「さてと」


婆さんが寝ている間に起き上がり、顔を洗って出発の準備をする。


『お客さん、出発するのですか?』

「朝食は不要だ」

『はぁ』


ひと時、店員に止められはしたが直ぐに仕事へ戻っていく。


『ホレ、行くぞい』

「婆さん」

『フォッフォッフォッ、ワシを謀れると思うてか?』

「まったく、セカンドまでは送ろう」

『ありがとうな!』


パッカラパッカラ


「おや、アオイさん」


婆さんを背負ってセカンドの街へ進もうとしたら隣から荷馬車が追い抜こうとしている時に話しかけられた。


「これは奇遇ですな」

「ハンス」

「そちらの方は?」

「相乗り馬車の生き残りだ」

「昨日、途中で馬車が打ち捨てられていましたが・・・なるほど」

「セカンドに向かうのか?」

「えぇ。今回はちゃんと護衛を雇っていますよ」


コクッ


ハンスと馬車の影になって見えなかったが冒険者3人が現れて頭を少し下げてきた。


コクッ


反射的に俺も頭を少し下げる。


「異邦人の方は変わっていますね、異邦人の文化という奴ですか?」


日本人の性なのだろう・・・


「もしかして徒歩で向かう所ですか?」

「まぁな」

「宜しければ」

『ちょっと待ってくれ、俺達はアンタを護衛する為に雇われたんだ』

『さすがに護衛対象が増えるのは契約違反ですよ』

『料金を増やす事になりますよ?』


3人の冒険者達がハンスに突っかかる。

当たり前の反応であろう。


「いいじゃないですか、旅は道連れといいますし」

『だったら、護衛依頼を破棄させてもらうぞ』

『金額の上乗せを要求いたします』

『どうしますか?』


なお食い下がる3人。


「俺は単独でも構わない。が、婆さんはセカンドまで連れて行ってくれないだろうか?」

『ギルド規定違反を見過ごすわけにもいかん』

『アンタが連れているのであれば責任を持つのはアンタだろ』

『巻き込まないでください』


だろうな。


「わかった、俺も護衛に入る。だが、俺は依頼を受けていないから報酬は3人の物だ。婆さんを乗せてくれる代わりにアンタ等の負担を減らそう」

『それなら』

『ちょっと』

『まずは疑ってください』

『だがよ』

『あいては未知数のプレイヤーなんですよ?』

『PKと繋がっていない保証はないんですからね?』


おいおい。


『ゴホンッ、あーお前の実力が分からなければこの話は無い』

『アナタ、レベルはいくつですか?』

『低レベルの冒険者でしたら受けるわけには行かないです』

「レベル32だが」

『『『えっ!?』』』


驚くところか?


『レベル32って俺たちより高いぜ』

『いや、嘘かも』

『即答だったですよ?』

『もしかして俺ら楽に護衛できるかもしれねぇだろ?』

『ワーウルフ3頭は正直危険ですからね』

『確かに』


「相談中、悪いがこれ以上揉めるなら互いに不利益だろ。婆さんは責任もって運ぶさ」

『ちょ、ちょっと待ってくれ!』

『わかりました。アナタの言った条件で護衛しましょう』

『ちゃんと働いて頂きますよ』


はぁ


決断力が鈍いと危なっかしいな。


『改めて、俺はタンカーのワン』

『アタッカーのツー』

『ヒーラーのスリーです』

「アオイだよろしく」

『フォッフォッフォ、スマンのぉ』

「これも何かの縁ですからね」


こうして偶然とも思えないがハンスと護衛3人の中に入れてもらいセカンドへと向かうこととなった。


基本陣形としてタンカーとアタッカーを馬車の数歩前を歩き俺とヒーラーが後方を警戒している。


「あの、アオイさんは後衛職なのですか?」

「あぁ」

「しかし、武道家に見えますが」

「それは戦いになって分かるだろう」

「来たぞ!」

「やっぱ早いですね」


遠くから3頭のワーウルフ達が猛スピードで俺達に急接近してくる。



シュルッ


「引き寄せ、斬糸」


ギャウッ!?


ズバッ


ドサァアア


先頭を走ってくるワーウルフが無理矢理引き寄せでバランスを崩した所を斬糸の一撃で首を切断する。


「「へ?」」


突然の出来事にワンとツーが呆ける。


「糸拘束術二式。お前ら、ちゃんと戦え」


ギギッ


4本のワイヤーがワーウルフを拘束し動けなくさせてから声を掛ける。


「2人とも動いてください!!」


スリーの声でワンとツーは動き出した。


ワンの防御力を生かしたタゲコントロールでワーウルフ2体を引き寄せてアタッカーであるツーの攻撃で体力を削っていく。


時折、俺のサポートで攻撃を逸らしたりする。


「流石ですね」

「フォッフォッフォッ」


物の数分でワーウルフは消え去っていった。


「アオイさん、糸使いだったんですね」

「糸使いっつーと」

「あ、掲示板の糸使い様ですよ!」

「糸使い・・様?」

「アナタの事は掲示板で色々聞いています」

「アンタ有名人だぜ」

「握手してください」


ワン、ツー、スリーはそれぞれの反応を示す。


パッカラパッカラ


ワーウルフとの遭遇も数度だけで俺達はセカンドの街へと到着した。


「それでは」

「糸使いが不遇なのかが不思議だぜ」

「サポート力が凄かったですね」

「あぁ、そうだな」


門前でハンス達と別れる。


『フォッフォッフォ』

「婆さん、ここまででいいよな?」

『ありがとうなぁ。コレは礼じゃ』


≪ロザリオを入手しました≫


『これは持っているだけで縁を結ぶ由緒正しきロザリオじゃ。大切にするんじゃよ』


≪ロザリオを大事な物ボックスに送られました≫

≪天地改変クエストに挑める資格を有しました≫


天地改変クエスト・・・かなり重要なイベントだったようだな。あの婆さん何者なんだ?


頼りない背中が小さくなっていくのを見送りながら馬屋へと足を向ける。

お疲れ様でした。

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