18:対話
『……本当にケガはしていないんだな?』
「大丈夫だよ。本当に無事着いたから」
話し合いが終わってからしばらくして。
僕はいま基地の電話回線で叔父さんに到着の連絡をしている。
今の状況で個人用の携帯電話はさすがに使うわけにもいかなくて、こうして軍の回線を使わせてもらってるってわけ。
まあただ借りれるわけでもなく、この通話はマークされてるんだろうけれど。
襲撃してきた連中が盗み聞きしてるかもわからない。
おまけに軍事機密を見て、触れた状態な民間人が失言しないとも限らない。
お互いのためだし仕方ない、仕方ない。
そもそも僕にはやましいことを話すつもりはないんだから、堂々とうかつな発言にだけ気をつけて家族の会話をしてればいいわけだしね。
『それならいいが、帰ってくるのは何時になるんだ? 明日か?』
「いや、それが……一日二日じゃ帰れそうにないんだ。僕の扱いとか、色々キチンと決めないといけないことがあるからさ」
『なんだとッ!? さては何のかんのと理由をこじつけて拘束し続けようという魂胆かッ!?』
「……怒鳴らないでよ。それに人聞き悪いよ?」
『だがなあッ!?』
「落ち着いてってば。軍事施設じゃなくて、民間人の居住区を躊躇なくLBでテロする連中がいるのは間違いないじゃない。安全を考えたら仕方ないって」
鼓膜を殴るような声を届けてくれた受話器を左右入れ替えながら、僕はカッとなったパカル叔父さんに普段通りのトーンで返す。
『ぐぬぬ……しかし、しかしだぞ? それならそれでやりようはあるだろうに、なぜお前が長々と……!』
ぶつける相手が違うと思い直したのか、受話器から届いてくる声は強引に抑え込んだ風になる。
「心配させてごめん、叔父さん。あと、ありがとう」
『……何を言うか。子を心配しない親がどこにいる? 少なくとも俺は直に会ったことはないぞ?』
「うん。そうだよね」
僕は電話越しに叔父さんの言葉にうなづいて、それから深呼吸をする。
「……でもさ、それは僕だって同じだよ。家族と、町にいる人たちを危ない目にあわせたくない。そうしないでいい方法があるなら、そうするよ」
『イチカ……! だが、お前が背負うことでは……ッ!』
「ありがとう。でも、必ず無事に戻るよ。約束するから」
『分かった……お前を信じて待つことにする』
叔父さんからの了解の言葉。
声を聴くだけでも苦々しい表情が見えるような声。
それに僕の胸は、また嫌な決断をさせてしまったと、うずく様な痛みを感じる。
「いっそ、僕が帰るまでに家族を増やすのを決めてもいいんじゃない? 候補はいるんだしさ」
そのうずきをごまかすように、僕は軽口を言う。
『お前は何を言ってるんだ』
「照れることないじゃない。僕だってお世話になった相手だし、いいと思うよ」
『……切るぞ。言っておくが、お前の家はここだからな。いつでも、どうなってでも帰ってこい』
「ありがとう。パカル叔父さん。じゃあおやすみ」
『ああ、おやすみ』
照れからムスッとなった叔父さんの声。
僕はそれに電話越しにうなづいて通話を終える。
叔父さん相手に、からかってはぐらかした形になったのは、正直気分は良くない。
でもうかつな事を言えば、叔父さんたちが危ない。 はぐらかすような手しか思いつかなかった自分が情けない。
「ありがとうございました」
そんな罪悪感と自己嫌悪を抱えながら、僕は通話料金を支払って宛がわれた部屋に戻ろうと歩き出す。
固い廊下を叩く僕の足とルカの六脚。
僕はその道すがら、いま自分を取り巻く状況について考える。
アルシエルとハンス隊の皆さん。みんなと一緒に戦うのか。それとも監視はついても、みんなと離れて家族の所に帰るのか。
ざっくりと言えば、この二択が目の前にあるワケだ。
正直、戦うのは怖い。敵対し合う立場にあったって、人間を殺すのは怖いし、自分が死ぬのだって怖い。
家族に心配かけるのだってイヤだ。
だけど家族のところに帰っても安全だって保証はない。いや、どこにも絶対安全って事はないのかもしれないけれど。
だからって、家族や町の人たちをみすみす巻き込んで危険にさらす。そんなのは絶対にイヤだ。
それにアルシエルのことは放ってはおけない。
僕が乗らず、違うパイロットが見つからなかったら厳重な警備下で囚われることになる。
いくら事情があるって言ったって、あの子には、アルにはアルの意思があるのに……そんなの可哀そすぎるじゃないか!
理解はできても、納得なんかできるわけがない。
僕に何とかできることならしてやりたいじゃないか!
やっぱり足手まとい扱いされたくらいで怯んでなんていられない。
アルシエルと、みんなと一緒に戦う。
そのために必要なら覚悟を決めよう。奪ったものを受け止めて先に進む覚悟を。
「ああ! いたいたッ!」
「キョウコさん?」
そんな風に心を決めているところで、キョウコさんが正面に現れるなり、僕を指さして駆け寄ってくる。
「どうしました? 何か僕に御用ですか?」
「用があるから探してたに決まってるだろ! いいから早く! こっち!」
「うわ、ちょ!?」
キョウコさんは僕の手を掴まえると、用件の内容を確かめる間もなく元きた方向へ走り出す。
そうして連れてこられた先は、LB用の格納庫だ。
もちろんハンス隊の使ってる、アルシエルも休ませてる場所だ。
で、そのアルシエルはと言えば、低い振動波を放ち続けている。
激しくはない。けれども警戒心に満ちた振動。それは犬が威嚇に出す唸り声に似ている。
「コックピットを開けて、開けてよ!」
威嚇するアルシエルのすぐ前、そこには声を張る金髪の女性がいた。
「ラティさん」
アルシエルにコックピットの開放を求めて拒絶されているのは、ラティさんだった。
「こんな調子で作業になんないんだよ。なんとかしてくれよ」
「わかりました。止めてみます」
経緯はともかく状況と、やるべきこと。僕に求められていることは分かった。
ではさっそくと、僕は間に入ろうと動きだす。けれどそれよりも早く、ラティさんがアルシエルに踏み込む。
「いけませんよ!」
僕は思わず制止の声を投げる。けどもう遅い。
ラティさんの動きにアルシエルは反射的に手を出してる。
僕はとっさにラティさんに後ろからタックル。
ラティさんに覆い被さる。
その直後、僕の体はふわりとした浮遊感に襲われる。
「うわ!? アル!?」
アルシエルがラティさんを摘まみ上げようとした手でそのまま、僕を摘まんだからだ。
「い、イチカくんッ!?」
ラティさんの身代わりに僕が持ち上がったことに、ラティさんもアルシエルも戸惑いの声を上げる。
「ダメだろアル。味方にこんなことしたら」
赤くて大きな目をチカチカとさせるアルシエルを、僕はたしなめる。
するとアルシエルはしゅん、と小さくなりながら、弱々しく震える。
「無理やりでビックリしたって……それでもお前が加減を間違えたら簡単に握りつぶせるんだぞ? 相手は選んで、それに短絡的に手は出しちゃダメだろ」
言い訳するアルシエルだけれど、それを一方的には受け入れずに悪いところは悪いと指摘する。
するとアルシエルはますます落ち込んでしまったようで、かすかな振動を放ちながら、うつむき顔に目をチカチカさせる。
その弱々しい様子に、僕は思わず謝ってしまいそうになる。
けれどどうにか前言撤回の言葉は飲み込んでお腹にしまう。悪い行動を悪いと言えないようじゃあ本当にアルシエルのためにはならないんだ。
「イチカくん大丈夫!? 大丈夫なの!?」
「はい。僕なら平気です。ありがとうございます。でも、ラティさんも迂闊ですよ? アルシエルに接するときにはトラウマもちの犬猫に接するぐらいに慎重でいいと思います!」
心配してくれてるラティさんには悪いとは思う。それに特例の自分が言うのも。
でも、これは言っておかなくちゃ。ラティさんとアルシエル、お互いのためだから。
「う……そう、そうよね。ごめんなさい……」
幸いにもラティさんは気を悪くした様子もなく、僕の言ったことを受け入れてくれる。
「ありがとうございます。ほら、アル、ラティさんもこう言ってくれてるんだから、ね? 落ち着いてよ」
そうして僕はこの騒動を治めにかかる。
僕の言葉を受けたアルシエルは、そっと僕を床へ下して、ハンガーに戻る。
その様はなんだか、叱られて尻尾を垂らした犬がトボトボとケージに入っていくようで、可哀そう可愛い。
「いや助かったよ、イチカくん。これで作業に戻れるわ」
「いえいえ。力になれたなら何よりです」
戻るアルシエルを見届けて、作業に戻るキョウコさん。
僕はそんな彼女を見送って、ラティさんと一緒に作業の邪魔にならない、少し離れた場所に移る。
「それで、ラティさんはどうしてあんな無茶をしたんです?」
さっきはアルシエルに吊るされた状態で、色んな意味で上から言ってしまった感じになってしまったけれど、僕の言った事なんて、ラティさんは体感済みで分かってる事だ。
それが吹き飛ぶだけの理由があるはず。
僕はそう思い直して、並んで座ったラティさんに尋ねる。
するとラティさんはうつむいて膝の上に組んだ手を握り直す。
そうして一呼吸分の間を置いてから、顔を上げる。
「私がアルシエルに乗れるなら、イチカくんをスカウトする理由の大半が消えるからよ」
これだけを聞くと、ラティさんはただ僕をアルシエルから下ろして、正パイロットに戻りたいだけのように聞こえるかもしれない。
「心配してくれてありがとうございます」
だけど僕は、ラティさんがそんな事を理由にする人じゃないって知ってる。
だから戦闘に立たせまいとする優しさにまずお礼を言う。
「……そもそもが私が原因の事だもの。責任を果たしたい、それで楽になりたいのよ」
だけれどラティさんは、苦笑混じりに首を横に振る。
「でも僕は軍事機密を知ってしまってる訳ですし、野放しにする訳にはいかないのでは?」
「それはアルシエル担当の非常勤の整備士ということで基地に通えばいいわ。少なくとも、イチカくんを戦って当たり前の身分にいきなり置くのは防げるもの」
これだけ考えてくれるなんて、本当にラティさんには頭が下がる。
「そんな、頭を下げられるような事じゃないわ。私なりに足掻いてみただけだから」
けれどその気持ちを素直に表したら、またラティさんは首を横に振って謙遜する。
「でも結局、イチカくんに余計な負担をかけただけなのよね……」
「そんな、負担だなんて! ラティさんが僕のためを思ってやってくれたのに、そんなことは!?」
「ありがとう。でも……気持ちだけで先走ってて、ダメよねこんなんじゃ」
どうしよう。何を言ってもラティさんは落ち込んでく一方だよ。どうしたらいいのさ。
すがるような思いで、足元のルカにチラリと。
でもルカは足を折りたたんで丸くなっていた。
うん。ちょっとでも当てにしかけた僕が間違ってた。
……がっかりなんてしてないよ? ホントだよ?
とにかくここは、重苦しくなった場の空気を変えないと!
「あの、ラティさんが軍人の道を選んだのって、やっぱり祖国の人を守りたい、とかそういう理由ですか? 民間人の僕が戦場に行くのを嫌がってるのからもしかして、って思ったんですけど?」
話題と空気を変えようって焦るあまり、なんか早口にまくしたてる感じになっちゃった。
スラッと出来なくてかっこ悪いなあ……。
「そういうのは後付けかな。原点の理由は、そんな立派なものじゃないわ。家庭の話よ」
でもラティさんは気にした様子もなく、微笑んで僕の無理やりな会話のハンドルにも応じてくれる。
「家庭の話、ですか?」
「ええそう。私の実家、オーランドは軍人が多くて……ただその影響で選んだだけなのよ。ね、立派なものじゃないでしょ?」
「いや、でも、きっかけはどうあれ、今どうしてるかとか、どうなろうとして行動してるかとかってことのほうが大事だと思いますけど?」
「……その今のありようが、守るべき民間人を戦闘に巻き込んだ、まさしく給料泥棒のThe無能なのよね」
地雷踏んだッ!?
せっかく話の流れを変えたのに、言葉選びをミスった爆発で元のコースに戻しちゃった!
なんてドジだよ僕はもう!
「いや、その! そういうことを言いたかったわけじゃなくてですね!?」
「ごめんなさい。イチカくんにそんなつもりはないって分かってるのに……また暗くしちゃったわね。情けないわ」
そう言ってラティさんはため息をついて頭を振る。
その顔はどこか弱々しいけれど微笑みに戻っていたし、沈みかけた気持ちを切り替え直してはくれたんだと思う。
「それで、私も話したんだから、今度はイチカくんの話も聞きたいわね」
「僕の、ですか? 家族の?」
「そう。でも別に家族の話に限らないでなんでもいいのよ?」
なんでもいいと言われても、逆に難しいな。
そんなに面白くなりそうな話のタネは持ってないんだけれど。
黙って頭をひねっててもしょうがないし、とにかくやってみよう。
「家族って言っても、僕には叔父さんと自分で改造したルカくらいで。まあパカル叔父さんがフロンティア都市のリサイクルセンターでそれなりの立場にあったおかげで経済的な負担としては軽かったのは救いでしょうか。機械いじりで日銭稼ぎくらいは出来る腕を持たせてもらえましたし」
「……ずいぶんシビアな物の見方をするのね」
「まあ、安定した居住区があるって言ったって、一歩外に出れば水も空気もない開拓地で暮らしてるわけですし。片親どころか両親がいないのなんてそんなに珍しくもないですから」
ラティさんの表情筋がどう動いたものか迷ってる風だけど、そんなにおかしなこと言ったかな?
親と別れた子の話なんてよくあるものだ。
その中で、叔父が男で一つでちゃんと父親をやってくれた僕なんて、とんでもなく幸福な事例じゃなかろうか?
働いてる子の中には、両親が出稼ぎに行ったきり揃って蒸発。妹と二人暮らししてるなんてのもいるわけだし。
うん。やっぱり僕の境遇は恵まれてる。
「まあ、そんなこんなで僕は機械の修理や改造にはちょっと自信がありまして。作れるなら自分専用の作業用LBとか作ろうかなんて図面引いたりもしてたんですよ」
そこで突然に振動波が上から降ってくる。
見上げてみれば、アルシエルが僕を見下ろしてる。
睨むように爛々と輝く赤い目は燃えているよう。
その火種は嫉妬なのかな?
「分かった分かった。アルがいるなら僕には新しいLBはいらないもんな?」
そう言えばアルシエルは震えと目の輝きを弱める。
どうやら矛を収めてくれみたいだ。
これは他のLBに乗るどころか、アルシエル以外の清掃整備もできないかもしれないな。
いや、アルシエルに乗った状態でならできるかな?
ともかくこの場は納まったことに息を吐きながら、改めてラティさんへ目を向ける。
「というわけで半分仕事ですけど、機械いじりが僕の特技というか趣味でして。ラティさんはそういうのってどうなんですか? 操縦以外の特技というか、趣味みたいなのって」
「そうねえ……」
この質問にラティさんは口元を抑えた思考する姿勢に入る。
「……料理もスポーツもそこそこ自信はあるし好きだけど、趣味って言えるほどかっていうと弱いかな? となるとやっぱり……ダンスかな?」
「ダンスですか?」
「うん。って言っても、こんな感じのペアでやるのだけど」
そう言ってラティさんは背筋を伸ばすと、右手を立てて左腕を肩の高さで横に寝かすような形にする。
「ああ、シャルウィな感じの」
「そうそう。シャルウィなヤツ。って言っても配属されてからは練習も全然出来てないんだけどね。相方はいないし」
ピンときた僕にラティさんは笑顔を深くしてうなづく。
「そうだ、良かったらイチカくんもやってみない? 私と一緒に」
「え? 僕にできますか? 身長も僕の方が低いですし」
男女ペアのって、基本的に男の方が大きくないと、ってイメージなんだけど。
実際本当に170以上のラティさんに対して、僕は自称四捨五入して170だし。
「大丈夫大丈夫。やりようはあるから。それに競技会に出るつもりもないし」
「そうですね。ラティさんがそう言うなら……あ、やりようがあるって、まさか男女の衣装を逆にするなんて言いませんよね?」
「なんと! それは盲点だったわ……目から鱗ね」
「しまった! いらない発想を目覚めさせてしまったッ!」
そんなやり取りの後、僕らはどちらからともなく笑い出す。
そうして湧いた笑いが落ち着くと、ラティさんはじっと僕の顔を見つめてくる。
向けられたラティさんの真剣な眼差しを、僕は正面から受け止めるしかできない。
こんな風に綺麗なお姉さんに見つめられると、ドキドキしてしょうがない。
「やっぱりイチカくんは戦場に出るべきじゃないわ」
そんなラティさんの口から出た言葉は、僕が戦闘に出るのにストップをかけるものだった。
「……いえ、私が出て欲しくないのね。イチカくんの手は人の力となる機械を作り、直すためにあるものだわ。戦いで血に汚して、失わせるべきじゃないわ」
ラティさんが僕を高く評価して、大切に思ってくれてるのは嬉しい。
でも、僕はそんなに綺麗なモノじゃありませんよ。
「血ならもう浴びてます。戦いから遠ざかっても、僕が命を奪ったことが無くなるワケじゃありません」
そうだ。僕はもう敵を撃ち落としてる。
僕の手が金槌やレンチ、鋸って工具みたいなモノだとして、それが血に染まったということはもう変わらない。
だけどラティさんはそんな僕の手を包むように握って、首を横に振る。
「だからって、これからも汚し続ける必要は無いじゃない。ちゃんと正しい、ふさわしい形で使うべきだわ」
「それは、分かります……分かりますけれど……」
ラティさんの言うことには一理ある。真摯に説得してくれることもありがたい。
けれど、本当にそれでいいんだろうか。
アルシエルが今のところ一緒に戦うことを受け入れてくれるのは僕だけ。
言ってみれば僕にはアルシエルっていう大きな力がついていることになる。
その力に伴う責任を果たさないで、本当にいいんだろうか?
それにおおよそのことを聞いただけでも、どう転んでもハンス隊の皆さんには大なり小なり余計な負担を強いることになる。
ラティさんも隊長さんも、ピッコロさんも気にすることはないって言うだろう。けれど、それに甘えて僕とアルシエルで安全な場所に籠っていてもいいんだろうか?
確かに今のままでは力になるどころか、邪魔になるかもしれない。けれど、ではお任せってなっちゃいけないと思う。
責任を果たせるようになるべきなんだ。
でも僕が続きの言葉を口に出すよりも前に、もう一度首を左右に。
「そこで私たちを気遣って迷えるイチカくんの心意気は立派だと思う。でも私たちはプロなの。ここは気兼ねなく頼って、ね?」
そしてさらに優しく僕が責任を負う必要はないのだと言葉を重ねる。
だけどそこで不意に鳴り響いたサイレンが僕らの間をかき乱す。
「なにッ!?」
けたたましい警報を受けて、ラティさんは瞬く間に戦士の顔に変わる。
『武装した正体不明機が接近中。待機中のLB部隊は直ちに迎撃態勢を。繰り返す、直ちに迎撃態勢を……』
「敵襲ッ!?」
『敵、敵ダッ!?』
警報とともに格納庫内に響くアナウンス。それを受けて僕は腰を浮かせてアルシエルの方へ。
だけれどそんな僕を、ラティさんの腕と視線が遮る。
「ラティさん!?」
「アルシエル! お前に心があり、イチカくんが大切だというのなら、意地でも守って見せなさい! いいわねッ!?」
僕を止めたラティさんは、アルシエルに向けて叫ぶだけ叫ぶと、自分の機体へ向けて走り出していた。




