0-1. アイラ・シーン
———大衆が見守る中、1人の少女が断頭台に立たされていた。
その視線は死を目前としながらも覇気を失うことなく、目の前の敵に注がれている。
「アイラ・シーン。最後に言い残すことはあるか?」
「私の魂は不滅です。そしてこの崇高な目的もまた同様に」
「宮司らしい言葉だな。しかし国への反逆が崇高とは、愚かにもほどがあろう」
否定か肯定か。
民衆は言葉を呑み、静かにその時を待った。
少女は臆することなく、言葉を鋭利に固めてつき返す。
「五郎臣、あなた達には必ずや報いが訪れるでしょう。我が雷が届かぬとも、革命の灯火は必ずやあなた達を焼き尽くす」
「そうかそうか、では早めに頼むぞ? なんせ儂らは老い先の短い老人だからな。ふっ、ふははははは!」
絶対的不利の中、しかし少女は不敵に笑う。
「笑っていられるのは今の内です。国の重役といえど、その地位はいずれ脅かされる。革命が成就する、その時に」
「ふぅ⋯⋯もうよい、やれ。死刑執行だ」
「はっ!」
うつ伏せにされ、髪をのけると、少女の命の繋ぎ目があらわになった。
彼女は血の臭いが染み付いた黒い床板に押し付けられている。
だがしかし、強い意思を宿した瞳はそれでもこの国の未来を見据えていた。
執行人の太い腕が、重い斧を持ち上げる。
息を呑む民衆。
冷ややかな権力者。
そして、少女の首を断つ斧が力強く振り下ろされる。
その瞬間、少女の意思は雷鳴の如く弾け、天空へと舞い散った。
その頃。
宇宙の片隅を進む船があった。
1人の少年と、そのサポートAIが管理する船である。
船の外は幾千幾万の星が世界を彩り、進路の脇には大きな惑星が佇んでいた。
突然、AIの肩張った声が響き、座席で本を読む少年の意識を中断した。
「ピピッ、ピピピッ⋯⋯マスター、報告です」
「なに? 今いいとこなんだけど」
「ピポポ、ピピッ、未知のエネルギーを感知しました」
「危険なの?」
「ピッ、ピッ、ピッ⋯⋯ガガガ、ガ、ガガガ⋯⋯」
賑やかにしばらく騒いだ後、AIはそのまま黙してしまった。
「ちょっと? はぁ、また調子悪いのかな。まいいや。危なそうならいつも通りやってくれるでしょ」
「⋯⋯わかりました」
「あ、直った? じゃあボクはスリープに入るから。目的地に着いたらちゃんと起こしてよ」
「はい。お休みなさい、アルファ」
少年は知らない。
この船が因果の糸に巻き取られ、戦乱の惑星へと導かれていることを———




