23.風の国の暴食王
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【前回(22話)のあらすじ】
デモを率いたメブスタと国王殺害未遂を起こしたルクバトを、王直兵メリディアナが拷問した。その結果、メブスタは精神的に、ルクバトは肉体的に死亡した。残酷な性格が要因で、メリディアナが仲間から人間扱いされていないということが分かった。
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疎らに点在する人々。昨日までの行進とは打って変わって、デモの勢いが弱まっていた。
それもそうだろう。リーダー格の人間が一夜にして消えたのだから。指揮が取られなくなった群れは散り散りになり瓦解していくだけだ。
フウライボウへの規制も昨日、撤回することはないと宣言した。もはや国民は受け入れるしかないのだ。
変わりゆく人並みを高くから眺めた後、空を見上げた。雲の形がトマトの形だ。トマトは嫌いだから、別の食べ物に変えたいと思ったが、どうしようもできない。至極当然のことだった。
物音が凄い。
上の方から大きな物音がしてくる。三階、そこは王の間だ。急いでそこへと向かう。
王の間、階段前に陣取る巨大な王直兵ウヌク・アルハイ。右側の壁の方を向いている。視線の先には王様とカストラ、アンタレスがいた。
少し進むと階段を登った所から近い場所にある柱に打ち付けられている男を見つけたしまった。王直兵であるイクリールだった。口から血を出してダウンしている。今、口から血が吐き出されていた。
俺と同様に異変に気付いたリベルとルグニテが到着する。
「忠告は二度もしたど。それを無視して強行したのは王様だと。もう殺すしかなくなったどん。」
城の高さよりほんの少し小さいぐらいの巨体。さらに、その殆どを占める口から、彼らに向かって岩の塊が吐き出された。
三発程度は宙に浮かぶ骨の盾でガード。四発目は骨が砕けてしまった。
《風の重力》
岩は重い重力によって真下へと落下した。
リベルが王様の元へと行く、俺もそれに着いていった。
「何が起きている?」
「アイツはフウライボウの人間だったんだとよ。んで、後は分かんだろ?」
「なるほど。フウライボウの刺客か。」
大きな口を開いていた。口の中は真っ暗闇でまさにブラックホールみたいになっている。大きすぎる口へと引っ張られていく感覚がする。
「これはマズイ。《風の重力》――。」
何故か、その攻撃は相手ではなく、俺らへとかけられた。俺らは重い重力によって床にへばりつく。身動きが取れない。
一方で、ウヌク・アルハイは巨大な口で吸い込み攻撃を行っていた。床の破損部位、屑共が吸い込まれていく。強烈な吸い込みが風の動きが見えることで可視化されている。今、彼に吸い込まれていないのは風の重力のお陰だった。
ひび割れた支柱が吸い込みに耐えきれなくなり崩壊した。巨大な支柱の塊も吸い込まれるが、彼にとっては何ともないようだった。
眩い光が入ってくる。支柱が壊れたことによる天井の崩落だった。それらの瓦礫も全て相手の口の中に入った。
「全員でそこにいたら何もできないだろ。」
ルグニテは彼の背後へと回っていた。吸い込みの影響を全く受けていない。
突然現れた雨雲が王宮内に大雨を降らせる。
しかし、雨もまた吸い込まれていく。
無駄か、と思ったが、そんなこと無さそうだ。取り出された傘。そな先端がビリビリと電気を発している。
バリバリバリ。
彼を襲う電撃。それによって吸い込みが終わった。これで決まったかと思った。
《風の重力・横方向》
ぐはっ。突然放たれた攻撃によって俺は入り口側の壁にぶつけられた。まあ、アンタレスに至っては同じくぶつかった上にカストラが突撃し、王様がさらに突撃し、余分な痛みを負ったため、彼よりかはマシだ。
前を見た。光に反射する水。水の塊がリベルに向かって放たれていたのだ。その塊もまた、電気を帯びているようでビリビリと黄色い線が見え隠れしていた。
リベルの能力がなければ直撃していた。
放たれた水の波動はリベルを巻き込み、壁へと到達すると、壁を破壊していった。巻き込まれたリベルはそのまま外へと飛ばされてしまった。
その巨体がこちらを向く。
彼の付近へとカストラが向かっていった。
白い装束に、背中には鉄の箱を背負っている。箱から二本のドレンホースがそれぞれの手袋に繋がっている。
「下民が少し調子に乗りすぎだ。恥を知れ。」
手袋から稲妻が見えた気がした。手から黄色い電気が空中放出されていく。
その間、相手もまた何もしない訳でもない。彼は大きな口を閉じて前転し始めた。ぐるぐると回転していく。
《雷砲――ライトニングレーザー》
真っ直ぐ放たれる電気の波動。それが空中で留まっている。
「カストラさんは、風で技を空中に留める能力。止まねぇ攻撃がこりゃ凄いんだぜ。」
アンタレスの解説が有難い。電気のジクザクレーザーがずっと同じ位置に留まり、攻撃が止む気配がない。迫り来る回転に辛うじて止めている。
ぐるん。
ぐるん。
攻撃は虚しく力技で突破され、回転に巻き込まれたカストラは床の下へと落とされていった。
「カストラさんでも勝てねぇのかよ。」
結構近くに来た。
ウヌク・アルハイによる砲射。瓦礫の塊だった。先程の吸い込みで得たそれらを固めたものだろう。
落ちている骨が列を成して盾となる。
瓦礫の砲撃を受け止めようとするが虚しく突破されて、アンタレス諸共壁へと突撃していった。
壁にひびが入り割れた。
攻撃を直撃したアンタレスは死に絶えだ。ただ、盾のお陰が分からないが、動けはせずとも死ぬ気配はしない。
「吾輩を追い詰めたつもりか。」
王様が戦うようだ。周りに骨が浮いていく。
「無理だと。勝てないど。おでは知ってる。王はアンタレスと同じ骨を操る能力。強さはアンタレスと同じか、少し強いか。そんなんではおでには勝てないんだと!」
口を広げた。直感が言っている、吸い込み攻撃が来る、と。
「大雨を降らして!」
援軍だ。カシェルの声が聞こえた。
「さっきやったがな、無意味だった。まあいいや、仕方ない、従ってやるよ。」
大雨が再び襲う。
吸い込むための準備をしている間にも水溜まりができ始めていた。
突然、目の前の景色がパッと変わった。
下へ下へと落ちていく雨は突如その場に留まるや否や、近くの雨粒と合流してシャボン玉みたいな雨の玉を作る。
壊れた天井から降り注ぎ、雲の隙間から顔を出す太陽の光が、ほんの少し上昇気味の浮かぶ雨玉を鮮やかにライトアップしている。それは梅雨の後の晴天で見られる木漏れ日のような、目を見開いてしまう程の幻想的な景色だった。
床の水溜まりも、浮く水も全てが合わさりウヌク・アルハイを包み込んでいく。彼は水のベールで包まれた。
パキッ。
包んでいる水が氷へと変わる。凍結された彼から出ていた喧騒的な雰囲気が現れなくなる。残されたのは氷による幻想的な雰囲気だった。
「本当はじっくり攻めたい所だけど、ここまで大きいとそんなことも言ってられませんわね♪」
カシェルの他にも助っ人が来ていたようだ。
彼女の能力で水は操られ、壁に空いた穴に向けて一直線の水溜まりが作られた。それが凍ることでアイスロードが完成した。
凍らされた彼がその凍る道を滑っていく。
スゥッと進んだ先には壁はなく、もちろん床もない。そのまま外へと落ちていった。
ここは王の間、三階である。彼は地上に向かって落下していった。
落ちていった抜け穴から下を見る。無事に地面に衝突したようだ。
カシェルは透明な翼で降りていった。
俺も降りるとしよう。まず棘を一つ落として、そこから磁力を含ませた棘を一つずつ落とす。棘と棘が反発しあって空中に留まる。後は、空中に浮く棘を使って、宙で軽く跳ぶ、降りるを繰り返すだけで高いところからでも降りられることができるのだ。
ちょっと斜め下方向にある棘を踏んで磁力で反発させる。今度は二階と三階の間程度の高さにある棘を踏む。
そこで変な声が聞こえた。「ギゴゴガガギゴゴググギュガガギュガ」という人間から出せるはずのない声だった。「また倒せてないっ!」ようだ。
なら――。
四つの棘を俺の手元に集める。これでニードルアームの完成だ。それを両手で持ってスタンバイ完了。
相手の狙う位置は頭。
狙う位置への下降経路は順調に落下している。
喰らえ。思いっきり、頭に向かって打ち付ける。
言うなれば、ニードルダンク。脳天直撃だ。これで倒したはずだ。
今度は違う問題がやってきた。やばい。バランスを崩してしまった。死にはしないだろうが重症になりそうな高さだ。段々と地面が近づいてくる。
《風の重力・上方向》
地面付近でふわりと浮いた気がした。体がゆっくりと降りていく。
目の前には凍結し、故障したウヌク・アルハイが堂々と居座っていた。「ギギガガゴゴ」みたいな音を絶えず出していた。
「落下するものは重ければ重い程、落下時の威力が増す。例を挙げるならば、虫は軽く空気抵抗を受けることで高い所から落ちても平気なのだが、それよりも重い人間は空気抵抗があったとて特定の高さから落ちれば一溜りもない。そんな普通の人間の倍以上体重があるウヌク・アルハイならばさらに一溜りがないだろう。そこに、アトラ君のトドメもあったからな。」
ボン。突然、頭の部分が爆発した。
煙が上がると同時に変な音もなくなった。
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「まさか機械人間だったとはな。普通の人間かと思ってたぜ。」
全身がほぼ口で構成された一頭身みたいな存在のどこに純粋な人間だと思う要素があるのだろうか。
「しっかし、普通の人間と見間違うぐらいの技術力に驚くぜ。」
アンタレスの目は節穴か。
ただ、技術力に関しては俺も目を見張る者があると思う。
「アトラ。王様から任務について話があるそうだ。」
呼び出された俺とカシェル。
移動の合間に彼はデモの件について「一部の人間はデモに参加しようとは思っていなかったみたいだ」と教えてくれた。
どう言う意味だろうか。聞くと「操られていた……と言うに近いだろう」そして、「偶然かも知れぬが、その者達は等しく機械化整形を受けていた」と言った。
人間への機械化。そして、それを操る技術。まさに魚の家での一件を思い出させていく。
もしや、と思った。
もしかしたら全て裏で一つに繋がっているのかもしれない。その全てが「フウライボウの仕業?」ではないかと推測された。
「察しが良いな。デモの一件も、ウヌク・アルハイの王様襲撃の一件も、どちらもフウライボウが関わっていると考えられているのだ。」
王の間に到着した。
一人、先着がいた。特攻服の男だった。
まだ壁は修復中で、外の日差しが直接降り注いでいる。そんな中で俺らは頭を垂れた。
「イクリール、カシェル、アトラ。これよりフウライボウ本拠地へと赴き、代表ベラトリクスを捕まえろ。もしもの場合に置いては、殺害許可も与えようぞ。」
直接与えられた任務だ。
ベラトリクスの捕獲、もしくは殺害。
一方で、俺には秘密裏に遂行している任務がある。雷の国からの任務だ。それはベラトリクスの殺害であった。
つまり、ベラトリクスを殺害する、またとないチャンスが俺の元にやってきたのである。このチャンスを逃す訳にはいかなかった。




