第58話 襲撃
レイアと私はそこから出て行った。結局私はリスタルの心情を理解することが出来なかった。仲良くした方がいいという事は分かっていた。だけど、私とリスタルとでは目指す世界、理想の世界が違うのだ。
リスタルは人間を壊滅させることを目指している。ただ私は、人間と魔族の共存を目指している。目指す場所が違うのだ。
「ねえ、レイア」
「なに?」
「怒ってる?」
「なんで、何でボクが怒る必要があるの?」
「リスタルの理想にわたしが従わなかったから……」
レイアは大魔王の事を盲信している。そんな節がある。そんな中で、私がこんなことを言ってしまったらよくないのではないか、なんて思う。
それにラヌアス自身も人との共存はしたくないと言っている。私の思想はそう、理想論過ぎて周りから受け入れられないのではないか、なんていう恐怖がある。
理想論というのは、夢見がちな馬鹿と意味合いとしてはほとんど変わらないのだから。
「大丈夫。ボクはリスリィの選択に従うよ」
そう言って彼女は笑顔を見せる。
「何を恐れてるのさ。ボクが怒るとでも思ってたの? まさか」
「まさかなの?」
そんな感じなのは正直意外だ。
「ボクは大魔王リスタルを宿りしリスリィの事を信じるよ。ボクはリーダーよりも君についていきたいし、何より」
レイアは私にムギュッと抱き着く。
「ボクが君のこと好きだから」
「もう」
レイアの事はいまだに分からない部分がある。だけど、
そこそこ信用してもいいのだろう。
「でも、襲撃はもうすぐだよね」
わたしは言った。この国を奪うための作戦の決行日が間もなくなのだ。それまでに、覚醒させなければならなかった。
なのに私はリスタルの理想を拒否した。
「大丈夫。ボクたちなら勝てるさ」
レイアはそう言い切った。だけど、私の中にはやはり、一抹の不安があった。
それはもちろんこれからの事に関係する不安だ。
とりあえず、国を奪うということ自体はラヌアスと思考は変わらない。
そこから、何度か話し合いをし、当日の流れを確認し合う。
奇襲攻撃で城を奪い、その流れで国王を捕らえ脅すという事らしい。というのも、城相手という物は時間をかければかけるほどややこしい事になってくる。
城というのは耐久力に優れている。だからこそ、国王を人質にし、周りを脅し、今度は城を本拠地としてそこから国の中核を奪うという作戦だ。
国の権力を掌握した後、私たちは魔王討伐に動く。
そして、教育を変え、国を変えていく。決して簡単な話ではないと思う。だけど、不可能ではないと思っている。
「ボクは、大魔王の力があれば余裕だと思うな」
レイアは言う。
「ボクたちの運命はリスリィにかかってるんだから」
そう言った。
そして、その決行日がやってきた。
今日私たちは平穏のために一刻を取る。それが本当に正しい選択になるのかは分からない。けど、
だけど、戦えるはずという自覚があった。そして、リスタルのような酷い真似はしないという自信もあった。
今回の作戦は奇襲あるのみだ素早く肩をつける。それで終わりだ。人と魔族がいがみ合う世界なんて終わらせて見せる。
私は人間の事が嫌いかなんて、もはや分からない。
ただ、荒れだけの成果を上げたはずなのに、結局敵として認識されているのが今の現状だ。
だけど、私はあくまでもあの三人を信じている。
彼ら彼女らが、私の事をまだ、仲間だと思ってくれているのなら。私にも戦う理由はちゃんとある。
彼らとの共存の道を模索しなければならない。
「行くぞ」
そう、ラヌアスが言った。その言葉に従いわたしたちも出陣する。
集団でなだれ込んだ。
★
「何者だ」
「貴様らが指名手配している者だ」
ラヌアスは剣を引き抜くとすぐに見張りの衛視の首をいきなり刎ねる。
「さあ、続け」
そして、王城へと入り込んでくる。
その瞬間、門戸が閉められた。
「なるほどなあ」
ラヌアスは笑う。これはおそらく、挟み撃ちを狙っているのだろう。
「そんなもので、俺たちがやられると思っているのか」
ラヌアスは吠える。そして、迅速に進んでいく。
上から魔法の矢が鼻垂れていく。火を纏った弓矢だ。それは地面に着弾した時点で、破裂した。その衝撃波が押し寄せていく。しかし、真に厄介なのは毒のようなものがさらに押し寄せてくるという事だ。
それはたやすく、思考能力を奪っていく非常に厄介だ。
「なるほどね」
そう、リスリィは呟いた。
長居していたら、すぐさまやられてしまう。
「リスリィどうする?」
レイアが言った。その言葉に、「前進あるのみでしょ」
リスリィは、魔力を溜めた。
遠いけど、今のわたしならいける。
リスリィは、一気に魔力を抽出して、遠くの敵目掛けて放った。
「寝てて」
リスリィのその言葉に合わせて、敵兵が眠っていく。
今回、あまり的の命を奪いたくない。奪っては交渉の時に不利になる。恐らくラヌアスはそのような事、一切考えずに敵を殺していくだろう。だけど、私は違う。
リスリィはその勢いのまま、ラヌアスの前に立ちながら進んでいく。




