第56話 復讐
目が覚めると、体調は治っていた。無茶をしたから悪化したかな、なんて思っていたから安心した。
しかし、ベッドから起き、そして下に降りると、
皆が泣いていた。
愛する者の死。その辛さで。
この騒乱のせいで、人口のおおよそ七割が死に絶えた。
その三割の生存者は、彼が命を賭してリスタルに伝えたから救われただけで、本当なら全滅していてもおかしくなかった。
なんで、なんでなんでなんで、
レオンが捕われてもそんな事を思ってしまう。
レオンなんて、下っ端も下っ端だ。
こいつも悪いが、一番悪いのは人間の王だ。
そうだ、レオンもそのような事を言っていた。
「戦争だ」
リスタルは小さな声で言い放つ。
「人間どもを殲滅するんだ。戦争で一人残らず殺してやる」
その時、リスタルは自身の中の矛盾に気が付いていなかった。
それこそ、戦争を起こせば、人の、無実の人間の子らも死んでしまう事に。しかしもう、どうでもよかった。人の命の事を考えながらでは、何もできない。何も起こりえない。今、自分が出来る事は。
「人間を殲滅する」
リスタルの覚悟が決まった。
その翌日。リスタルは一国を滅ぼした。
レオンを送った国を。
国王は死にかけてもなお、助けてくれとほざくばかりだった。
また、一国を滅ぼした。レオンの生まれ故郷のある国だ。
そこから、いくつもいくつも人を殺した行った。
その時、ある日の事だ。
協約を結ばないかと、人間の王から言われたのだ。
リスタルは一瞬迷ったがその申し出を受け入れようと思った。
人の国は多い。それらすべてを滅ぼそうと思えば、きりがない。
それにその時にはすっかりと、復讐心も晴れてきていたのだ。
そういう訳で、リスタルは交渉の席に付こうと、ゆっくりと王国までやってきた。
「あなた達はここで待っていてね」
そう言って使いの者たちをその場にとどめた。
面会には一人で参れという事であった。
リスタルもそれを信用して一人で参った。
それが罠だとも知らずに。
話し合いの場、最初は平穏な雰囲気で進んでいった。しかし、その話し合いの途中。
矢が飛んできた。
その矢を受け、リスタルは頬をさする。
「どういう事?」
「こういう事だよ」
そして大量の剣士がやってきた。
「罠だったの?」
「むしろここによくのこのことやってきたな。……所詮魔王も馬鹿だという事か」
そう言って全員で襲い掛かってくる。
「あは、そうだった」
リスタルは魔力を解放する。その魔力で、襲撃者は一気に魔力の圧で吹き飛ぶ。
「私をなめるな」
そこからは圧倒的だった。
あっという間に国を亡国となって行った。
「魔王様」
「人間はだめだ」リスタルは開口一番に行った。「人間を信用すれば、あっという間に終わる」
そしてリスタルは魔力を放出する。
そして、火の球を作り出し、
「我がこの国を亡ぼす」
あっという間に、火は燃え移り、そして大規模な火災が起きた。
そこからは縦横無尽に、大量に人の国を滅ぼした。
今度は、人の命乞いにも耳を貸さなくなった。
どうせ人間は裏切るのだ。そうだ、信用安堵最初から無駄な事。どうせ裏切るようなら、最初から信用などしなければいいだけの事だ。
リスタルはいつしか魔王というくくりではなく、大魔王となった。今アマで人に裏切られ続けてきた人たちもリスタルのさんかに食わあ割り、魔族が一つになったのだ。
だけどその時だ。女神の加護を得た人間。それが現れた。
勇者ラスカル。彼はリスタルを打つために、異世界からやってきた。
その力は計り知れない物だった。
転移の際の特典やら、主人公補正やら様々な事を言われたがそれはすっかりと理解は出来なかった。
しかし、唯一分かるのはラスカルの実力がリスタルよりも勝っていたという事。
そして、リスタルは封印されることとなってしまった。
★
「これが我の今までのストーリーだ。そこから先は貴様も知っておろう。つまり人間という物は只のクズなのだ。滅ぼさなければならない。さもなければ我ら魔族が先に滅ぼされてしまうのだ」
言いたいことは何となくわかる。
だけど、私にはそれが人間を、しかも今の人間を滅ぼす理由になるとは思えなかった。
「私は、それでも人間と魔族の共存を図ります」
「今の我の言葉を訊いてもなお、そう思うか」
「私は、決めました」
今の話で確信した。
私はリスタルにはならない。私はリスリィだ。
そして――
復讐などという物には捕われたくはない。
「私は私の道を行く」
ごめん。
私は大魔王と仲良くするためにここに来たのに、これじゃあ大なしだ。
だけど、私だけの力でやって見せたいのだ。




