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異世界決算 経理係長の財政再建  作者: しがないリーマン
1/8

異世界経済が財政危機?

社畜が異世界で、経済を立て直す。

経理係長の財務パワーで財政危機の国を救えるか!

異世界を舞台にしたマネーウォーズでは無いかな?

気が付くと、目の前には、自分の無精髭(ぶしょうひげ)の伸びた顔が写っていた。


モニターに映る自分の顔を見て、



「寝落ちしちまったか・・・」



と小さく独り言を言う。


だが、良く見るとディスプレイに波紋が広がっていく。


目をパチパチとした瞬間、ぼんやりとした視界が急に明るくなり、ハッとして


顔を上げる、そこには、小さな泉の向こうに一面の森が広がっていた。



俺:「えっ!? ここ何処?」



会社で決算業務の最終確認の為に、徹夜覚悟で、会議室にこもって資料整理を


していたはずなのに、何故か森の中?


会社は?俺のパソコンは?決算資料は?夜食のカップ麺は?


お~いお茶のペットボトルは?頭の中がパニックになり、


意味のないペットボトルまで探してします。


どう考えても、会社の中ではない。



俺:「そうか!夢だ!ここ最近ずっと残業続きで疲れていたから、


寝ちまったのか!」



と誰に言うでもなく呟いてみる。



俺:「まるで少し前に読んだ異世界転生モノの漫画の


   オープニングみたいな夢だな~」



夢だと思うとパニックも収まり、どうせなら楽しもうなんて考えが


チラリと頭をよぎる。


だが、そんな考えも、ふと頭の片隅で、気になっていた、


伝票の確認作業の事が思い出され、早く起きて、確認作業を進めないと、


明日の朝までに完了して、税理士の先生に資料を送らないと・・・。


と社畜の本能で自然と仕事の事が最優先される。



俺:「自分の意思で夢から覚めるのって どうしたらいいんだろう?」



と小さくつぶやく。


どんな健康方の本にも、安眠グッズの説明書にも、ましてや、


ビジネス教本にも夢からの強制的な目覚め方は、見たことが無い!


起きるには、(1)誰かに起こしてもらう


(2)目覚まし等で機械的に起こされる


(3)十分な睡眠が取れて、体もリフレッシュして、


自然と目が覚める少なくとも(3)は絶対に無い・・・。


(1)も、会議室に入ったのが、夜の10時過ぎだったから、


もう会社には誰もいないはず。


(2)も、寝るつもりは無かったので、用意はしていない。


せめて寝落ち対策でスマホのアラームぐらい


セットしておけば良かった。


試しに自分の腕をつねってみたが、結構普通に痛い!


それに他の感覚もやけに鮮明だ。


すると、目の前の小さな泉の真ん中あたりが突然光りはじめ、


あっという間に周りが光に包まれる。


するとその光の中心にうっすらと、人影が浮かび上がり、


美しい女性が宙に浮いている状態でこちらに話しかけてきた。



精霊:「ようこそモンデフェロンへ!私は、精霊【フィナシア】」


俺:「ようこそじゃね~よ!精霊でも何でもいいから、


   この俺を起こしてくれ!」



自分の夢なので相手が誰だろうとお構いなしだ。



俺:「急ぎの仕事が残ってるんだ、さっさと起こせ!!」


精霊:「残念ながら、あなたを元の世界へ帰す訳にはいきません。」


俺:「なんだと!俺の夢なんだから、どこで終了しようが、


   俺の勝手だろう!とにかく時間が無いんだ! 


   早く起こしてくれ!!」


精霊:「あなたには、この世界の救世主になってもらいます!」


俺:「はっ?救世主?ケン〇ロウとかロ〇の勇者みたいな?」



とっさに出た妄想のキャラがいささか古い事に自分の中で、


少し恥ずかしくなった。



精霊:「あなたのその経理能力で、この国を、このモンデフェロンの


    財政危機を救って欲しいのです」


俺:「財政危機?」



最近、不景気だなんだで、世界的にあちこちが財政危機だの


財政破綻だのと騒いでいたが、異世界で財政危機?


自分の夢ながら、設定が無茶苦茶すぎて泣けてくる。


夢の中まで、現実の危機感がにじみ出てしまったかと情けなくなる。



精霊:「このモンデフェロンは、かつては、安定した気候と、


    豊かな大地に恵まれ、国民達も幸せに暮らしていました。


    しかし1年前からの異常気象により、大地は荒れ、


    作物も育たなくなり、皆苦しんでいます。


    あなたの力で、このモンデフェロンの財政を


    立て直して頂きたいのです!」


俺:「えっ?財政を立て直す?


   救世主って、魔王倒したり、悪いドラゴン退治したり


   するんじゃないの?」



せっかく異世界モノの夢なのに、もう少しロマンが欲しいと


思ってしまう。



精霊:「今、この国は、財政は切迫しています。


    しかし国王の【ニアス】は、自分の保身の為に、


    民に重税を掛け、城に閉じこもって贅沢三昧!


    このままでは、国民は飢え、国は滅んでしまいます!


    無駄な支出を減らし、新たな財源を確保して、


    この国を建て直して欲しいのです!」


俺:「何か、急に話が、水戸〇門みたいになってきたな。


   悪代官的な?まあ、大変なのはどこも同じだよ。


   それにただのサラリーマンにそんな大層な事は無理だよ!


   どうでもいいから、とにかく早く夢から出してくれ!!」


精霊:「これは、夢ではありません。あなたは、選ばれたのです!


    転生者として、救世主として、この国を救う運命なのです!」


俺:「はっ?転生?ちょっと待って!これ夢じゃないの?


   どういう事なの?最初から説明してよ!」


精霊:「そうですね。突然の事であなたも驚いている事でしょう。


    順を追ってご説明しましょう。


    ここは、あなたの住む地球とは異なった次元に存在する


    モンデフェロンの、パーヨッロ大陸のケランチ王国です」


俺:「モンデフェロン?パーヨッロ大陸?ケランチ王国?」


精霊:「先程も言った様に、この国は、異常気象による飢饉で


    国民は皆、疲弊し、国内経済は大混乱を起こしています。


    それなのに国王は、民衆を守るどころか、


    自分の事だけを考え城にこもったまま。


    このままでは、国は崩壊し、国民は皆、飢えで


    死んでしまします。


    国の財政を立て直し、国民達の豊かな生活を


    取り戻さなければなりません。


    その為に、異次元から救世主を召喚したのです」


俺:「えっ?それで俺?何で?」


精霊:「適任者を探している時に、あなたの凄まじい


    経理パワーを感じたのです!」


俺:「期限が迫ってて鬼気迫ってただけだと思うけど・・・」


精霊:「あなたのその経理パワーでこの国を救って下さい!」


俺:「無理、無理!ちんけなリーマンに国家財政の


   再建なんて出来るわけないでしょ!


   何か話が急展開すぎて、訳分からなくなってきたけど、


   夢でも転生でも何でもいいから、元に戻してくれ~!


   仕事が!業務が残ってるんだよ!!」



社畜感丸出しで、目の前の非現実的な光景に向かって思わず叫ぶ。



精霊:「この国を救わなければ、あなたは帰れません!」


俺:「はっ?何で、呼んだんだから戻せるでしょ!


   勝手に救世主だなんだ言われてもね、


   俺は今、1年で一番忙しいんだよ!それどころじゃないの!!」


精霊:「あなたを召喚するのに、莫大な資金を投入して、


    魔力の宝玉を集めたのです。あなたを元の世界に送り返すには、


    その魔力の宝玉が、倍の量必要です。


    その為には、300万フラエが必要です。」


俺:「300万フラエ?」


精霊:「あたなの世界のお金で、約3億円です」


俺:「3億!? えっじゃあ、1億5,000万かけて、


   俺をこの世界に呼んだっていうのか?」


精霊:「そうですね。さすが経理!計算早いですね。


    正確には152万9,000フラエです」


俺:「端数とかどうでもいいんだよ!そんな経費かけて


   何で、俺なの?もっと呼ぶべき人いるでしょ!


   異常気象を治す呪術師とか悪い王様倒す正義の勇者とか!」


精霊:「この異常気象は、国王の無理な開発による自然破壊が


    原因です。大地を元の姿に戻せば、異常気象も収まるはずです」


俺:「自然破壊って、環境破壊の事まで俺にはどうしようも無いよ!


   せいぜいペットボトルをリサイクルするのが精いっぱいだよ!」


精霊:「いいえ、生活も環境破壊も全ては、経済活動から


    成り立っているのです!人間が生活するには、


    経済活動が必要です。しかし無理な経済活動は、


    自然破壊や様々な歪を生みます。


    このモンデフェロンは、そのバランスが


    大きく傾いています。あなたの力で、


    そのバランスを取り戻してもらいたいのです!」


俺:「何だか、話が凄い事になって来たな」


精霊:「あなたなら、必ずこの国の財政を立て直し、


    国民を救ってくれると信じています」


俺:「勝手に信じないでよ!!っていったい俺に


   どうしろっての?」


精霊:「やる気になってくれましたか!さすが救世主!!」


俺:「無理やり引きづり込んでおいて、さすがもやる気も


   救世主もあったもんじゃないな」


精霊:「まあ、まあ、国が豊かになれば、あなたを送り帰す魔力の


    宝玉もきっと集められるはずです。


    そうすれば、元いた次元の、元いた時間に戻れるはずです」


俺:「元いた時間なんだ、もう少し前の時間に戻れないかな・・・。


   そうすれば、確認作業も、もう少し余裕を


   持って出来るんだけど・・・」


精霊:「分かりました、送り帰す時には、少しだけ時を


    巻き戻して差し上げます。


    ですから、この国を助けて下さい!」


俺:「何かよく分からないけど、戻る為には、やるしか無いんでしょ?」


精霊:「まあ、そうですけど」


俺:「分かったよ、上司の無茶ぶり以上の無茶ぶりだけど、


   やるだけの事はやりますよ!」


精霊:「ありがとうございます。


    改めて、私は、この森の精霊【フィナシア】


    この森を守護する者です」


俺:「俺は、ライトグレー商事 経理係長 外内 賢一郎(とない けんいちろう)だ。


   それで、フィナシアでいいのかな?


   とりあえず何から始めたらいいんだ?


   俺はまだ、この国の事が何も分からないんだが?」


フィナシア:「この森を抜けた先に赤い屋根の洋館があります。


       そこに【エファルト】という青年がが住んでいます。


       彼に、精霊のお告げとして、


       [今日、この国を救う救世主が降臨する]と


       伝えてあります。あなたが私の名を告げれば、


       きっと協力してくれるでしょう。


       彼と力を合わせて、現国王の悪政と浪費を


       食い止めて、国民の豊かな生活を取り戻して下さい!」


外内:「何か設定が強引な気もするが、分かった。エファルトさんだな。


    まずは、この国の事を色々教えてもらわないとな」


フィナシア:「外内さん、この国をよろしくお願いします。


       何か、困った事があれば、この場所に来て下さい。


       私は、この静寂の泉にずっといますので」


外内:「まあ、どこまでやれるか分からないけど、頑張ってみるよ!」


俺は、エファルトさんの洋館を目指して森の歩きはじめた。


ふと、自分の様子を確認してみた。


服装は、会社にいたそのままで、Yシャツにスーツのズボンのままで、


ズボンのポケットには、サイフとハンカチだけが入っていた。


スマホでもあればと思ったが、どうせ圏外だし、充電も無理そうだと思った。


ネット社会に慣れ過ぎて、つい何でもスマホやPCで検索してしまうが、


いきなり何も無い世界に放り込まれても、意外と焦りは無かった。

まだまだ、ド素人が試行錯誤中です。

色々勉強と調査をして、ワクワクする様な展開を考えていきたいです!

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