表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機巧のギルフェンセィア 天使の子守歌  作者: 胡桃リリス
第一章 ワンダー診療所へようこそ!
19/91

エピローグ②

 しばらく呆然としていた二人だったが、ふと何かに気付いたように顔を、怪異が向けていた方向へ向けた。


 民家の屋根の上に、何者かが立っていた。

 太陽のように輝く襟巻と、それに照らされた紅の鎧が黄昏の空を思い起こさせる、奇妙な出で立ちの騎士らしき人物だった。

 謎の騎士は二人が見ていることを気にした様子もなく、屋根の向こうへ身を翻した。


 我に返ったライカがすぐさまその後を追おうとしたが、先に動けるようになっていたミスロがそれを止めた。


「まずは周囲の安全の確認と、それから報告だ」

「そ、そうね……」


 今までの出来事を中々受け入れられず浮き足立つライカを尻目に、ミスロはため息をついた。


「ねぇミスロ、私、夢でも見ていたのかしら?」

「そんな訳ないだろう。ほら、さっさと行くぞ」


 ライカへ現実を突きつけ、ミスロは騎士が去っていた方向を一瞥すると、仕事を全うするべく行動を開始した。




                ααααα




 アルファが目を覚ますと、まだ夜中だった。

 よくわからないが、誰かに呼ばれたような気がしたのだ。もう一度眠ろうとして、ふと何かに思い至ったようにベッドを抜け出して部屋を出た。

 そして、向かい側の部屋の前に立つと、中で動く気配があるのを確認してから、ドアを軽く叩いた。


「……アルファか?」

「うん」


 アルファは小さな声で返事をする。時々、まだ明るい階下へ気を配りながら、期待のこもった声でドアの向こうへ質問した。


「ねぇ、呼んだ?」

「……いや、呼んでいない」

「そうなんだ」


 少しだけ残念そうにしながら、しかしすぐに苦笑を浮かべる。


「ごめんね。おやすみなさい」

「待て」


 そっと離れる様子が寂しそうで。

 あぁそう言えば、まだ言っていない事を思い出して、

 ドアを開けると、寝間着姿のアルファが、嬉しそうに見上げてきた。


「誕生日、おめでとう、アルファ」


 そう言ってやると、アルファの顔が華やいだ。これから眠るというのに、そんなに興奮して大丈夫かとも思うが……まぁ、問題はないか。


「さぁ、もう寝るんだ。そろそろゼットが上がってくるぞ」

「うん、わかった」


 アルファは部屋へと入る直前に振り返り、小さく手を振ってきた。


「おやすみなさい、ヴァンドラお姉ちゃん」

「あぁ、おやすみ」


 ドアが閉じてしばらくもしないうちに、自室に入ったアルファは健やかな寝息を立てて眠りに入った。

 しばらくして階段を上がってきたゼットパパが、アルファの部屋を一瞥して微笑みを浮かべた。そして、向かいの部屋へ視線を向ける。


「大丈夫か?」


 珍しく気遣うような様子のゼットだが、問題ない事は知っているだろう。

 だから、私もこう返した。


「問題ない。それより、奴らが現れたということは……」

「あぁ、これから忙しくなりそうだ」


 ゼットは背伸びをすると、踵を返した。


「いざと言うときは、アルファたちを頼む」

「あぁ」


 まぁ、そのいざと言うとき、という事態は限りなく起こりえないだろうが。


「なぁ」

「なんだ?」

「その、パパはやめてくれ……お前の友人たちに報告するなら、俺の名前でだな」

「娘に褒められて調子に乗る輩には丁度いい紹介の仕方だろう?」


 さて、半分冗談の話はこれくらいにしておいて、私はとっとと自分の研究に戻るとしようか。


「おやすみ、ヴァンドラ」

「おやすみ、ギルフェンセィア」


 ギルフェンセィア。

 そう呼ばれたゼットは肩を竦め、手を軽く振りながら階段を降りて行った。


 こうして、平穏の裏側で闇が蠢いた夜が過ぎて行った。

 止まっていた何かが動きだし、世界が、全てが闇に包まれようとしている。


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ