表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機巧のギルフェンセィア 天使の子守歌  作者: 胡桃リリス
プロローグ
1/91

流星の夜

新作です。よろしくお願いします。

 最初に見たのは、お日様のように眩しいけれど温かい光の襟巻と、夕焼けのように綺麗な赤い鎧を纏った誰かの姿だった。


 その人は騎士なのかもしれないと思うけれど、この瞬間の私(・・・・・・)はそれが人の形をしていること以外わからなくて、掲げられた光輝く剣にも恐怖を覚えず、ただ優しい光にそわそわしていた。

 騎士は剣を掲げ、私を見下ろしている。振り下ろそうとしているようだけれど、その姿勢のまま動かない。何かを迷っているような、躊躇っているような気がした。

 少しだけ視線を上へと向ければ、どうやらここは洞窟のようで、柔らかい燐光が壁面を照らしている。

 天井にぽっかりと空いた穴から、空の海と雨のように降り注いでいる流れ星が見えた。

 綺麗だなぁと思っていると、


「そこのお前、何をしている?!」


 その時、戸惑いと怒りの感情を乗せた女の子の声が耳に届く。首を動かしても、角度や位置の問題からその姿は見えなかったけれど、その声にはどこか聞き覚えがあった。

 赤い騎士は少しだけ首を後ろに回し、剣をそっと下ろした。まるでちょっとだけ安心していて、悔やんでいるような気がした。


「貴様、その赤子から離れろ!!」


 怒声と共に固い地面を蹴って駆け寄ってくる靴音が聞こえる。


「はぁぁぁッーなっ…ぐわぁぁぁっ?!!」


 でも、私たちに近づいてきたところで、声がまた遠ざかる。地面に体が擦られ、転げる音と共に、カラン……と剣も転がり落ちたらしい。


「けほっ、けほっ……やめろ……」


 苦しそうに咳き込みながらも、声の人は騎士へと怒りをぶつけている。

 けれど、騎士はそれを無視して私へと向き直り、再び剣を掲げる。


 あぁ、この騎士様も剣も綺麗だな。この瞬間、殺されかけている状況にも関わらず、私は暖かな気持ちでそれを見上げていた。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 悲鳴が木霊して、何かを振り切ろうとするように騎士が微かに動いた時―


―笑って。


 どこからか、女の人の声が聞こえてきた。それが目の前の光のように温かくて、優しくて、ずっと聞いていたくなる。心がさっきまでとはまた違う穏やかさに包まれていく。


―笑って。


 愛しい誰かの声に、私はきゃっきゃっと笑った。

 その時、騎士は声にならない苦悶を漏らし、振り上げていた腕から剣が零れ落ちて、まるで解けるように光の粒になって消えた。


『できねぇ……』


 苦しそうで、悲しそうな男の子の声。

 笑いかける私を見下ろし、騎士は腕をがくんと降ろす。


『できねぇよ……ちくしょぅ……俺がやらねぇとダメなのに』


 今にも泣き出しそうな声に、今の私(・・・)はとても悲しい気持ちになって声をかけたくなったけれど、彼には絶対に届かない。その時の私(・・・・・)は何も知らずに騎士へと笑いかけ、手を伸ばそうとしている始末だ。

 そんな状況を破ったのは、さっき騎士へと駆け寄ってきた女の子の声だった。


「……貴方が、その子を育ててみてはどうだろうか」

『…………え?』


 騎士が振り返る。


「何を迷っているのかは知らない。聞きもしない。だが、もし貴方さえ覚悟があるのなら、その子を育て、見守るのだ」


 さっきまでの怒りと敵意が消えて、どこか戸惑いと警戒を織り交ぜながらも、気遣うような声は、あぁ、そうだ。これから先、私のことをずっと見守ってくれる人のものだ。


『俺が……この子を? 育てる……?』


 そして、私を再び見下ろす男の子の声は、もっと身近で私の事を見守ってくれて、大切にしてくれる大好きな人のもので。

 燐光の中で、騎士の兜がすぅっと消える。

 現れたのは、今も昔も変わらない顔立ちで、泣き出しそうな表情をした―




『あぁ、決めた。こいつの名前は―』


お読みいただきありがとうございます!


これから少しばかり、彼女たちのお話に付き合っていただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ