極悪非道の星間逃避行 0話
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「もしも圧倒的な理不尽と、底知れぬ世界観の裏で、泥臭く悪足引きをする悪党がいたらどうなるか」
というロマンを詰め込んで書き下ろした作品です。
一見するとどこにでもある「MMORPGの疑似世界転移もの」ですが、その実態は……?
冷徹な世界設定と、倫理観の欠落した主人公の暴れっぷりを楽しんでいただければ幸いです。
それでは、狂騒と暴力の星『ブリテン星』へようこそ。
お気に召しましたら、ブックマークや評価・感想をよろしくお願いいたします!
時は遠未来。
人類が星霜を重ねた結末は、残酷なまでの二極化であった。富裕層は膨大な財力をもって「不老不死」という神の領域を買い上げ、有限であるはずの肉体に永遠の枷を嵌めた。
結果として何が起きたか。
星という限られた器に、増え続ける人類は八十億の壁を容易く突破したのである。
金を持つ者はより高くへ、金なき者はより深くへ。
不老不死の恩恵に浴せぬ下層の民は、赤く錆びついた火星へと強制的に移民させられた。
対して、世界の頂点に臨む上位富裕層は、冥王星を贅沢の極みたるリゾート星へと仕立て上げ、悠々自適な楽園を謳歌している。
地球から冥王星へ。最新鋭のスペースシャトルが時速六千キロの速度で虚空を駆けてなお、片道にして百二年という途方もない歳月を必要とする大航海であった。
星間飛行という果てしない退屈を紛らわせるため、人間は「MMORPG」に縋った。
仮想空間への接続機器は完全に肉体から意識を切り離し、完璧なまでのバーチャルリアリティを構築する。
ひとたび死ねば、育て上げたキャラクターデータは文字通り消滅するという、悪趣味なまでのリアルさを伴って。
もっとも、人類の総数が増え、どれほど高度なテクノロジーが開発されようとも、歴史から「犯罪」という澱が消えることはなかった。
不老不死の身となった重犯罪者どもは、もはや処刑すら生ぬるいとばかりに、ある「星」へと流刑に処された。
愚か者とは救い難い生き物らしい。鉄格子の代わりに宇宙の孤絶を与えられた彼らは、その不毛な大地の上で、飽くことなく殺し合いの群雄割拠を繰り広げたという。
その星には、いかなる国の権力も届かず、近寄るすらなかった。
付近の宇宙を遊弋するいかなる飛行物も、星を護る最新鋭の設備によって一瞬で撃滅される。
つまり、地表への資材搬入など一切存在しない。
許されているのは、ただ一方向――新たな犯罪者を送り込むための、専用の移送装置のみであった。
しかもその装置すらも、地上へと着陸した瞬間からわずか十分で溶解し、跡形もなく水へと変異する。
戻る術なき、犯罪者どもの死闘の荒野。
――『バッカニアーズ・ダイ』
元より国籍も組織もバラバラな流れ者たちは、それぞれの権益を求めて派閥を作り、やがてそれが擬似的な「国家」の形を成して果てしない抗争の泥沼に浸かっていた。
数多ある救いようのない組織の一つに
過激武力組織――『BOF』が存在する。
その組織の深部に、悪逆非道の限りを尽くし、絶対的な恐怖をもって君臨した男がいた。
名前はない。ただ、卑しさと老獪さを煮詰めたような響きとして、周囲からは「狸」と呼ばれていた。
男はある狂気的な方法を用いて、絶対に脱出不可能なはずのその星から、手勢を引き連れて遁走することに成功したのだ。
未だ、その狸は網にかかっていない。
ずる賢く、常に陽気な笑みを貼り付けながら、その裏では氷のように冷徹な計算を巡らせる大柄な男。
戦場においては自ら先陣を切る狂気的な武勇を見せつけ、己と仲間の生存と利益のためならば、どんな卑劣な手段をも躊躇なく選択する。何よりも、その独自の思考回路と、蛇のように絡め取る口の巧みさが、彼の地位を揺るぎないものにしていた。
――だが、その老練な狸とて、今まさに未曽有の断崖絶壁に立たされていた。
手駒の半分はすでに敵の牙にかかり、宇宙国連特殊警察部隊の尖兵どもがその首を狙って群がっている。
背後には最新鋭の制圧戦艦が十隻。
男はただ一機、ステルス全振りに改造された高速小型宇宙船を駆って死線の中を逃げ回っていた。
近隣の星々からも次々と追撃の艦隊が湧き出し、包囲網は寸分の隙もなく完成しつつあった。
視界を埋め尽くすレーザー砲の雨。紙一重の軌道を描く華麗な宇宙船の操舵術。
ロックオンの警告音が脳髄を焼くように響くたび、デコイが放たれ、身代わりとなった金属片が虚空に散る。
――もう、デコイの備蓄が底を突く。
それが尽きれば、どれほど神業的な操縦の腕を持っていようとも
待っているのは分子レベルへの分解という名の死のみであった。
「っち、今回はやべーかもしれねえな」
苦虫を噛み潰したような髭面を歪め、男――「狸」は吐き捨てるように呟いた。
国連軍の基地から秘匿データを強奪する際の名残か、その身体には純白の国連軍制服が纏われている。隆起した筋肉のせいで胸元のジッパーは痛々しく引き裂かれ、露出した胸毛がむさ苦しいまでの野趣を醸し出していた。
それもそのはずだ。この男の正体は、崩壊した国家の軍人から身を持ち崩し、マフィアの頂点に君臨する国際的犯罪者――要するに、紛うことなき「悪党」であった。
船内のあちこちで警告のサイレンが鳴り響き、満身創痍の機体が悲鳴を上げる。
その視線の先、暗黒の宇宙のなかに青く輝く巨大な惑星が姿を現した。
ナビゲーションシステムが中立惑星『ブリテン星』の存在を捉え、容赦なく武装解除の警告音を叩きつける。
極めて厄介な癖を持つ星だった。いかなる武装をもったまま接近しようものなら、星そのもののセキュリティ意思が放つ極太のレーザーによって、塵ひとつ残さず消し飛ばされる。
つまり俺の未来だ。
後ろがないなら前に出るしかない。
迎撃されるといっても、追っ手の宇宙特殊国連警察の艦隊は別だ。
警察も領空に侵入はできないが、迎撃されることもない可能性がある。
賭けだったが、星の極太迎撃セキュリティが解除される反応が出る。
男の唇の端が、歪んだ弧を描いて緩んだ。
「――ほう。俺の勝負運は、まだ枯れてはいないらしい」
男は決断した。
残されていた最後のソーラーレーザーとミサイルを
すべて「デコイ」として全弾発射し、機体から強制的に切り離す。
ブリテン星は、善悪の概念を超越した独自の理法によって統治された星だった。
いかに国連軍とて、この星の領域内での強硬な交渉や武力行使は一切が通じない。
冥王星を目指す富裕層や上層部VIPたちとの深遠なパイプラインを持つ、聖域にして監獄。
地上降下ステーションへと機首を急接近させ、鳴り響く警告音を背に、男は強引に着陸場へと滑り込んだ。
背後を追っていた警察のレーザー砲の光芒が、ピタリと止む。どうやら、追撃はここまでらしい。
駐船場からステーション内の無機質な白い廊下へと飛び出し、男は駆け抜けた。
すでに国連軍から通達がいっていたのか。
待ち構えていた警備員たちが単発電磁パルス麻酔銃を構え、一斉に銃口を向ける。
「そこまでだ! 一般フロアへの侵入を阻止しろ!」
「雑魚はどけやぁ!」
怒号とともに分厚い金属扉を蹴り破り、俺はそれを盾代わりにしながら純白の廊下を突き進む。
肉体強化ナノテクノロジーが体を駆け巡る。
実戦の場数を踏んでいない警備兵どもは、安全な障害物の陰にしがみつき、腰を引いたまま単発の牽制射撃を繰り返すのみであった。
数名の兵士の懐に踏み込み、顔面を容赦なく叩き潰す。
砕けた顎を押さえて崩れ落ちる同僚の惨状を見た瞬間、残りの衛兵たちは恐怖に気圧され、蜘蛛の子を散らすように奥へと逃げ去っていった。
「背中見せて逃げたら的だぜ」
拾った銃で逃げる全員を撃ち、とどめを刺す。
入り口の防壁を突破した男の視界に、天井の抜けた広大な宇宙空港ステーションが飛び込んでくる。
物珍しげに闊歩していた一般の乗客たちが、銃を片手に血走った目を剥く男の姿を見て、悲鳴を上げて四散した。
電光掲示板を一瞥し、最も出港時刻の早い降下船のゲートを探し当てる。
――あと五分で、次の船が出発する。
「しめた、ちょうどいい!」
通りすがりの容姿端麗な男を銃の柄で脅し上げ、強引に降下チケットを奪い取る。
跳ね上がるように通路を駆け抜け、乗り込む直前、手にしていた銃からレーザー電池を引き抜くと、床へと投げ捨てた。
気配を殺してハッチを潜り抜けた瞬間、重い金属扉が閉ざされ。
船は静寂と共に離岸のプロセスへと移行する。
――ふと、視線を感じた。
淡いピンク色のショートヘアを揺らしながら。
洗練された制服を纏ったスチュワーデスが、驚愕に瞳を揺らしながらこちらを振り返っていた。
ブリテン星の圏内において、通信機やPCといった電子機器の類いは一切の機能を停止する。
出発の直前には艦内のシステムも例外なくオフラインに切り替えられるはずだ。
ゆえに、自分が追われているという情報はまだ伝播していないはず――だが。
悪党面を隠そうともしない髭面の男が、出港のまさに土壇場で滑り込んできたとなれば。
警戒を抱かせるには十分だった。
(……やむをえん。人質にとらせてもらうか)
男は獰猛な笑みを貼り付けたまま、歩み寄る少女へと視線を固定した。
歳は十八歳前後といったところか。
愛らしい笑みを浮かべた彼女が、トコトコとこちらへ近づいてくる。
「お客様! もう間もなく出発いたしますので、速やかにシートベルトをお締め……」
愛想笑いを浮かべた少女が、ふと男の身なりを見て動きを止めた。
……あぁ、なるほど。自分がまだ「国連軍の白い制服」を纏ったままであったと思い至る。
恐怖ではなく、軍人に対する恭しさ。勘違いが生んだ幸運の迷彩。
男は作り物の笑みを深く刻み込み、先ほど奪い取ったチケットを突きつけた。
「おう、悪かったなお嬢ちゃん。席が、えーと……」
少女はチケットの券面を一瞥し、一瞬だけ怪訝な表情を浮かべた。
だが、すぐにプロとしての営業スマイルへと顔を戻す。
「失礼いたしました! ファーストクラスの――『冒険者様』ですね。ブリテンへようこそお越しくださいました」
恭しく頭を垂れる案内人に従い、男は奥の個室へと足を踏み入れた。
室内には、贅を尽くしたウォーターベッド仕様のソファが据え付けられている。
その傍らに無造作に置かれたパンフレットに目を落とし、男は眉をひそめた。
どうやらこのチケットの持ち主は、すでに肉体を捨て。
疑似体へと意識を完全移行させた上級の人間――いわゆる「プレイヤー」と呼ばれる存在らしい。
だからこそ、あんな場違いな髭面の悪党が乗り込んできたところで、「そういう奇抜なロールプレイの人間か」と誤認したわけだ。
――『中世ヨーロッパが舞台の剣と魔法の世界。世界最高峰ゲームタイトル:ブリテン物語』。
パンフレットには、吐き気がするほど甘美な謳い文句が踊っていた。
その世界ですべての町を支配し、真の「王」となった者には、星一つ分の領有権と、お気に入りの人間を最大百名まで地上から連れ出す移住権が与えられる。全宇宙人類連盟が公認する、犯罪者の戸籍すらも白紙に戻すほどの莫大な恩赦。
だが、この百年というもの、その「統一」を成し遂げた者は一人として存在しない。
選ばれた富裕層だけが、生身の肉体を離れ、ゲームという免罪符を纏って遊興に耽るための星。
――生身のまま踏み入れた者に待つのは、ただの「死」のみであるにもかかわらず。
数千万人を超える富裕層が熱狂する、モンスタータイトル『ブリテン物語』。
夢と剣、魔法と冒険に満ちた世界。彼らはそれを、どこまでもリアルな「仮想空間」だと信じ込んでいる。
現実の物理法則と寸分違わぬその世界は、無限の退屈を持て余した富裕層の心を狂喜乱舞させるに十分だった。
コンティニューには数千万の巨額なコストがかかり、キャラクター作成からやり直しになるにもかかわらず、プレイヤーの数は増える一方である。
……それも、無理はない話だ。なぜなら。
――この世界は、最初から「仮想空間」などではなかったのだから。
暗黙の了解。誰もが口にするのを恐れる、この世界の決定的な真実。
『ブリテン物語』とは、ブリテン星という現実の泥濘の上で、今この瞬間も血を流して起きている「現実」そのものに他ならない。
しかも、この世界で行われる殺人や略奪は、宇宙法におけるいかなる国際協定にも違反しない――国家公認の「法外の地」であった。
すべての発端は、大気を持つ未開の星を発見して私財を投じて買い取った一人の男だった。
彼はその地に巨大なDNA研究所を建造した。
天才的な、しかし倫理観を欠落させたその男は、火星から「新しい人生の保証」という甘いキャッチフレーズで人間を募り、一種の人場農場を作り上げた。
条件はただ一つ
「中世ヨーロッパの魔法の国に生きる人間になりきること」
それだけで、彼らは家と生活を得られた。
世代交代が繰り返され、二世、三世と血が受け継がれていくうちに、人々は疑うことなくこの世界を「自分たちの知る世界のすべて」だと信じ込むに至った。
その地下深くでは、DNA工学を悪用したおぞましいモンスターの製造。
人身売買の闇市が合法的に拡大していったという。
やがて事態を重く見た国際連合がその星の正体を突き止め、首謀者をバッカニアーズ星へと永久追放した――。
が、星自体の所有権はあくまで発見者の個人資産であり、国連といえども没収はできなかった。
拘束される直前、首謀者は星の深部に隠されたすべてのシステム封印を起動させた。
星の領星権の完全解放――。
条件を満たした者の脳裏に、星のすべての支配権がダウンロードされるという。
封印の枢軸は、星の中心、煮え滾るマグマの底にある。
天才が遺した、星の管理権限を持つ自律型AIを備えた電磁パルス装置――『アリス』。
それはPC、銃器、レーザー、レーダーの類いを徹底的に識別し、使用を拒絶する。軍事的な行動や意図を感知すれば、対空対地を問わず、星を囲む宇宙宙域を極見たレーザーによって一網打尽に消滅させる。
地上においてはいかに兵士の姿をしていようとも、この世界内で瞬間移動を自在に操る「最強のサイボーグ衛兵」たちが現れ、秩序を乱す者を容赦なく叩き潰す。そのサイボーグの装甲はアダマンタイトすら凌駕し、いかなる強力なモンスターの牙も、人類の銃弾も傷ひとつ付けることはできない。
現在は、そうした冷徹なシステム群に護られたまま、様々な人間、亜人、そして異形のモンスターたちが混ざり合う狂騒の星と化していた。
つまり、この世界で息をしている人間は。
データで作られたNPCなどではない。
血肉を持ち、痛みを感じ、その世界観のなかで生まれ育った「本物の人間」なのだ。
思想も倫理も、すべてはその過酷な世界の理に則っている。
この「領星開放」の甘い蜜に目を付けたのが、発見者の親戚である
宇宙の最大規模を誇るゲーム企業であった。
彼らはこれを商機と見た。仮想空間という表向きの看板を掲げ。
そこで生み出された無数の赤ん坊の遺伝子因子をかき集めたのだ。
プレイヤーが端末で選んだ外見や情報の数々をそのDNAへと書き込み。
急速成長テクノロジーを用いて、希望通りの容姿を持つクローンを作り上げる。
もちろん、望むならば赤ん坊の状態から育てることすら可能だった。
その肉体にプレイヤーの意識を転写し。
苦痛の感覚だけを減衰させた上で、星へと送り込む。
生体としての肉体を持つ以上。
宇宙港での正規のダウンロード手続きさえ踏んでしまえば、法に触れることなく星の内部へと侵入できる。
もっとも、登録外の生物を宇宙から持ち込もうものなら。
即座にAIの防衛システムによって滅却される。人ならざる存在は、星に入った瞬間に塵へと還る定めにあった。
死ねば元のプレイヤーの肉体に戻るだけ。
とはいえ、到着した瞬間にシステムに炙り出されて消滅させられたのでは、コンティニューにかかる莫大な費用がまるごと無駄になる。一秒もプレイできずに金を失うほど愚かなマネはない。
パルス圏内に突入するため、船内のテレビジョン機能などはすべて沈黙している。
この船もまた、緻密に計算された引力計算のみに従って降下を続ける旧式の代物らしかった。
半重力すら搭載されていないアナログな船内。
片道切符の客を乗せ、先ほどまで笑顔を振りまいていたスチュワーデスすらも
意識を転移させただけの「疑似体」にすぎない。
――あのピンク色の髪がやけに鮮やかに見えたのは、そのためか。
もちろん、追っ手の警察どもがこの星の内部まで踏み込んでくることはない。
仮に追いついたところで、逮捕したところで、彼らはこの星の呪縛から逃れることはできないのだから。
簡単に言うと入れるが死ぬまで出れないのだ。
特定もできず。仮に逮捕しようが、移送できない。
「……上等じゃねえか。これほどおあつらえ向きの舞台が他にあるかよ」
女を犯そうが、人を惨殺しようが、この星の法廷に引きずり出されることはない。
ただ一つ、町の中には絶対的な死を司る「衛兵」が巡回しており。
この世界の法を犯した瞬間に転送され、その生命を奪い去るという例外を除いては。
男は分厚いマニュアル本を乱暴に放り投げ、下品な笑い声を響かせた。
聞けば、この世界には「二つの同じ世界」がゲートで繋がっているという。
地表の地理も地形も瓜二つでありながら、片方は「トラメル世界」、もう片方は「カオス世界」と呼ばれている。
カオスの領域には、町を護るあの忌々しい「衛兵」の姿がない。
その代わり、他のプレイヤーや人間からの略奪殺戮が常に背中合わせにつきまとうリスクの高い世界でもあった。
そのため、大半の温いプレイヤーや一般人は、好んでカオスでの活動を避ける傾向が顕著である。
トラメルに比べて人口は稀薄であり、大地そのものも荒れ果てていた。
枯れ果てた樹木、あちこちに散らばる白骨死体、血痕、そして剥き出しの墓石が泥濘のなかに点在する不気味な死の世界。
一方で、戦闘狂のプレイヤーや殺人鬼どもは、あえてそのファルッカを拠点として活動している。
自らの腕を磨くため、あるいは殺人ギルドやPKKの自警団に身を投じ、独学では到底得られない対人戦闘の極意をそこで貪り食っているのだという。
「まぁいい。富裕層のボンボンどもなんてのは、総じてチョろいもんだ。……にしても、命拾いしたぜ」
ソファの背に深く体重を預け、男は用意されていた一際高そうなワイングラスを傾け、一息に飲み干した。
椅子の脇に転がっていた、この世界では贅沢品の高級煙草に火をつけ、紫煙をくゆらせながらニヤリと笑う。
――到着までのわずかな静寂。
深い睡魔が、満身創痍の悪党の意識を緩やかに包み込んでいった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
国連軍の追手から逃れ、満身創痍で「ゲーム」の皮を被った現実の地獄へ降り立った“狸”こと主人公。
富裕層が遊園地気分で浸る世界に、本物の修羅が放り込まれたらどうなるか――ここから先の展開も、容赦なく理不尽で泥臭いものになっていきます。
トラメルとカオス(ファルッカ)の二つの世界、そして星を統べるAI「アリス」の存在など、掘り下げれば掘り下げほど面倒くさい(最高な)設定が絡み合っていく予定です。
「続きが気になる!」「この悪党の行く末を見てみたい!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや温かい感想、評価をポチッとお願いいたします。執筆の凄まじい励みになります!
それでは、次回の更新でお会いしましょう。




