第4話 風雲急を告げる
──エンケラド王国王城
「「「⋯⋯」」」
「姉上⋯引越しが落ち着いたら、王城へ一旦戻るといった約束はどうなったのですか!?」
「だから、謝っているでしょ⋯忘れていたんだからしょうがないじゃない」
「2年ですよ!?2年!忘れるにしても長すぎるでしょ!?」
「だから⋯ごめんって!」
「姉上は、知識を司る神様なんでしょ!?やっぱり姉上は『知』神ではなくて、本当は『恥』神でしょ『恥部』や『恥を掻く神』か『恥ずかしい神様』の方がお似合いですよ!」
「「ブフォッ!? ち、『恥神』⋯」」
「メイル!!?言って良いことと、悪いことがあることを教えてあ・げ・る♪」
───メキョッ
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?姉上!!死ぬぅぅぅ!?死んじゃう!?セバス!?助けて───!?」
「それに、私たちのこと、勝手に暴露したでしょう!?」
「それは、突然、大陸中の国の上層部の奴らの記憶が戻ったから、仕方なく⋯⋯ぎゃぁぁぁあああああ⋯頭が割れる⋯姉上、参った!参った!⋯⋯」
「おいたわしや⋯メイル国王。いつも、いつも、ミモラ様に余計なことをしないようにご注意いたしておりますのに⋯」
アイアンクロウをくらい、メイルのこめかみは、メキメキと頭蓋骨から悲鳴をあげている。
「2年ぶりの再会だから、姉弟のスキンシップと思って放っておきましょうね」
メイル国王とミモラは久々の交流?を騒がしくも《《ミモラは》》満喫していた。その隣では、穏やかなピーチュおばあちゃまとマリオおじいちゃまがニコニコと佇んでいた。
「エリスちゃんもジュリアスちゃんも大きくなったわね!お母さんに似てとっても綺麗になったわ。去年のエリスちゃんの降臨も素敵だったわ!ミモラもテティアも凄く綺麗になったわね!!」
「ピーチュおばあちゃまもマリオおじいちゃまも元気そうで何よりですわ。それに、エバとルルアも大きくなったわね!」
「おねえちゃん、酷いですぅ!妾を放っておいて許さいですぅ!」
「エリスお姉様!去年の降臨素敵だったのじゃ!妾も神様になりたいのじゃ!?」
「ふふっ、エバもルルアも変わらず元気ね。すっかり私の言葉遣いが板についたようね」
頬を膨らませたルルアが、エリスとジュリアスに突撃し、久しぶりの再会に喜ぶエバが駆け寄った。
こうして、久しぶりの再会を楽しんでいたサリウスー家にいつもの如く風雲急を告げた。
―バッッシィィィ――
11年前にエリスが埋め込んだ大陸の『理の楔』が何かに弾かれた。それも、かなり強力な力で⋯…
「これは⋯⋯⋯⋯、私が11年前に各国に設置した『理の楔』ね。異界の者がこの大陸に境界跳躍術式を実行したところ弾かれたようね⋯⋯⋯場所は⋯⋯⋯⋯ドラン帝国みたいね」
「エリスお姉様、見に行きますか?」
「そうね、これだけ強力に弾かれたのなら、只事じゃないわ。ジュリアスも来てくれる」
「はい、お姉様。ご一緒しますわ」
──ドラン帝国某所
「反応はこの辺りのようですわ⋯、特に何もないようですわね」
「お姉様、あそこの岩の後ろから、微弱ですが、何か感じますわ」
エリスとジュリアスは岩の後ろを俯瞰術式で確認すると、かなり薄くはなっているが、異界との接続した痕跡を見つけた。
二人は、その痕跡の元へ赴き、更に詳しく神眼で確認した。
「どうも、魔界から何者かが、この地上世界に入り込もうとしたようね。それを、私がこの大陸に施した楔により弾かれたようね」
「魔界ですか。そう言えば、おばあちゃまとお母様がドラン帝国の宰相を誑かしたのが、魔王とか言ってましたわ」
「ああ、そうでしたわね。お母様が、何やら滅ぼすとか言ってましたわね……あっ!……(忘れていたわ…)」
「だけど、ビャクがいつも言っていますわ。この星の調整機構は滅ぼしたらダメって」
「な、なら、ビャク達を召喚して聞いてみたら?…」
「お姉様、さっきから挙動不審よ?どうしたの」
「な、何でもないわ……続けてね…」
ジュリアスはビャクとその眷属達を呼び出した。
「お呼びでしょうか、主よ。」
「ええ、よく来てくれたわ。この薄くなった穴の先に魔界があるみたいなの。お母様が以前滅ぼすと言っててね。この星の調整者だから、滅ぼすのもどうかと思ったのよ。それでビャクに聞けば分かると思って呼んだのよ」
ビャクと眷属達は、薄く歪んだん空間の残渣を囲み調べた。
「主の言うとおり、魔界からの来訪者が『楔』に弾かれたようですね」
「そう。なら過去視で確認してみるわ」
ジュリアスは思考を共有して、過去視で空間の歪みを見つめた。
そこに現れたのは、魔王とその部下達が、強引に理を歪め、地上世界に顕現しようとしていた。
「以前、私が、テティア様に命じられて、ドラン帝国の宰相の記憶を覗いた時の魔王と違うようです」
「本当ね。じゃぁ、宰相は誰を魔王と勘違いしたのでしょうね」
「500年前の魔王も、魔界じゃなくて別の大陸から来たって、お姉様が言ってたじゃない」
「そ、そうね。ならジュリアスが調べてみて。世界の記憶で分かると思うわ…」
思考共有はそのまま保ち、世界の記憶から宰相が会っていたとされる魔王の痕跡を辿る……。
──大陸全土の闇組織の浄化、神隠し直後
ユーリリア大陸 メフィスト城 謁見の間
「ガリレア大陸から僅かな神力を感知した。もしかしたらこの星の管理者が降臨したのかもしれないな」
「メフィスト様、いかがなさいますか」
「そうだな、突然ガリレア大陸に行くことが出来なくなったから、何らかの理に干渉できる存在が現れたのは確実だな」
「メフィスト様の呪術を使えば、分体を造り送り出してはいかがでしょうか」
「そうだな、それが一番確実だな」
メフィストは、分体を作り出し、ガレリア大陸の近海まで転移呪術で飛ばし、そこから海の上を歩いて行かせ、ガリレア大陸に無事上陸できた。
魔の森は海に面しており、魔獣を探し出すのは簡単だったが、強力な魔獣が激減していて、弱い魔獣しか見つからなかったのだ。
そのため、弱い魔獣への干渉を試みた。
「面倒な⋯分体がようやく、魔獣に憑依することに成功したようだ。力は弱いが、何匹かは使役することができたな」
メフィストは、憑依した魔獣に、遠隔で呪術を施し、姿かたちをメフィストそっくりに作り変え、ガリレア大陸に潜入することができた。
弱い魔獣に入り込んだメフィストは、奇跡的に楔の網を潜り抜け、大陸各地に潜入することができた。
それから、本体のメフィストへ様々な情報を送り続けた。
そして、確信に迫る情報が届いた。それが大陸全土の闇組織の浄化、神隠しの原因だった。
そして、神隠しには、サリウス領主が関わっていることを知る。
さすがメフィストも星の管理者が顕現したと思っていたら、まさかの「別の神」が降臨した可能性に至り、ガリレア大陸から脱出することも考えた。
潜入して暫くしても、神らしき力の奔流が喪失したことから、「実は神ではない?」と疑問に思い、ドラン帝国に改めて潜入し、宰相を呪術で傀儡にして情報をかき集めた。
隣国ミレニアム共和国のサリウス領に神と崇められる、サリウス領の領主とその娘、侍女長、娘の侍女の4名が『紅堕天使の4姫』と呼ばれ、領民から神聖視されていると判明したのだ。また、神の子と噂される、もうすぐ3歳になる幼子もいることを知った。
ドラン帝国宰相を操り、更に情報を集め、宰相代理など数多の人員を使い、サリウス領殲滅作戦を計画していたところ、リレトス聖教法国が密かにサリウス領を襲撃する計画を立てていることを知ることになる。
その襲撃に便乗し、宰相代理を操り、帝国軍2万と暗殺部隊を送り込んだ。決行はサリウス領主の娘の子供が3歳のお披露目パーティーを行う日だった。
しかし、結果は散々で、リレトス聖教法国が白銀の焔で国ごと焼かれ、帝国軍も敗走を余儀なくされ、操っていた宰相代理や暗殺部隊など、複数の駒を失うこととなった。
「こ、これは…この神力は!管理者が降臨したということなのか!?俺の力を遥かに凌駕している…だと……」
ところが、エリスが放った「大規模記記憶改変術式」の影響により、メフィストの認識からサリウス領の「神」に関わる記憶が改ざんされたのだった。
記憶が改ざんされたことで、「真実」が「噂」に変わり、躊躇うことなく、メフィストは次の計画に着手してしまったのだ…。
時間をかけ、ドラン帝国宰相を操り、ミレニアム共和国の軍務卿と手を組み内乱を起こさせるため、慎重に計画が進められた。
また、メフィストは、密かに他の大陸から集めた魔獣軍団を悪魔の力で改造し、異形の魔獣へと変貌させた。
その圧倒的な力で、ミレニアム共和国を蹂躙し、そのまま、ドラン帝国へ侵攻を行い、死者の魂を使って分体の力を強め、ユーリリア大陸のような暗黒大陸にする計画をメフィストは模作していた。
そのため、星中の大陸から魔獣を分体で集め、暗黒大陸へ送り、異形の魔獣に改造することに5年の歳月を要していたある日…。
ドラン帝国の宰相から、ドラン帝国に入り込んでいる分体に急報が入る。
「なに!ミレニアム共和国で内乱の兆しがあるだと!?俺の計画ではまだ先のはず…」
こうして、計画を前倒しに、ミレニアム共和国、ドラン帝国、メフィストの異形の魔獣軍団が動きだしたのだった。
しかし、計画が実行されて直ぐに、魔獣軍団を転移呪術で送りつけた瞬間『楔』が反応し、全ての魔獣が白銀の焔に焼き尽くされた。
メフィストは、神力の奔流を感じ、サリウス領に神の力を持つものが少なくとも10人以上は存在することを知ることとなった。慌てて、ドラン帝国を捨てユーリリア大陸へ分体を帰還させたのだった。
それに反応したのが、サリウス一家だった、すぐさまエリスとテティアはその場所に赴き、過去視で魔王が魔獣を暗黒大陸や他の大陸から集めて来た事を知った。
そこで、ドラン帝国の宰相が魔王と共に企んでいる事を知り、報復に赴こうとしたところ、魔王らしき者の力が、ガリレア大陸から消えたことで、女神の台本のストーリーに従い、宰相を問い詰める事にし、改めて魔王を滅しようとテティアとエリスが話し合ったのだった。
しかし、ガリレア大陸に赴いたことで、改めて、魂の狩場が多くあることを知ったメフィストは、神の目をくぐり抜けてでも、ガリレア大陸を暗黒大陸にしようと、欲深く再び策謀を測り、ガリレア大陸を我がものとしようとしていた。
────
ジュリアスは、ミモラおばあちゃまと母テティアや領民の命、この大陸全土の命が間接的にも狙われていたことを知り、怒り心頭となった。
「ねえ、お姉様。こんな大切な事を忘れていたのかしらぁ?」
「そ、そうねぇ、あの時は、ほら皆女神の台本の終幕で浮かれていたでしょ。それに、私は本当の女神の台本の最終幕に向けて暗躍していたから大変だったのよ…、既に頭の片隅にも無かったわね……」
「もぅ!お姉様ったらぁ…『メッ!』ですわよ!」
「ご、ごめんって。メフィスト……ねぇ…先に、魔界が先かしらね…」
しかし、目の前の魔界からの来訪者の意図が全く分からなくなったエリス達は、魔界へ直接顕現し、事と場合によっては、滅ぼす覚悟で、魔界へ赴くことに決めた。
だが、母テティアに告げないわけにはいかず。神獣達を全員を連れて一旦、エンケラド王国の王城へ帰還したのであった。
戻った一行は、早速、祖母ミモラと母テティアに事情を説明した。
「エリスちゃん行くなら、皆で行きましょう。魔界ってどんな所か一度見て見たかったの」
「そうね、シルビアもミツルギもメアリーもカレンも連れて行った方が良い社会勉強になると思うわ。どうせ、この世界をエリスちゃんと一緒に管理して行かないといけないのでしょ?なら、皆一緒に見学に行きましょ!」
「ねえ、お母様、さっきから体から闘気が滲み出ているけど、戦いに行きたいだけじゃないの?」
「テ、テティア、な、何てことを言うの!私は、皆のためを思って…」
「おばあちゃまは最近、脳筋過ぎて、知神の加護が働いていないのよ」
それから、ミモラから全員に事情を説明し、全員が見学(と言う名の戦闘)を楽しみにしていたのだった。
「私とジュリアスは元の姿に戻って行くわよ、皆は前に渡した神装備に着替えて、それぞれ、装備に神力を注ぐのを忘れないでね」
こうして、サリウス一家は、魔界行を決意したのであった。




