いつか君の傍
死ぬことは怖い。
そうさ。どれだけ強かろうと、金を持っていようと、人々に好かれていようと、誰しも死は訪れる。
その避けられない死というものが、怖くてならないのだ。
強がることすら無駄に終わるだろう。
誤魔化すことすら許されないほどに、近付いた死を僕は恐れていた。
遠くにあるうちこそ怖いものであるが、目の前にしてみたらば、案外怖くなどないものなどとは、それほど僕は悟れていない。
本の中の、いかにかご立派なのであろうその人たちが語るところまで、僕はとても辿り着けていないのだ。
その事実は認めざるを得ないことだろう。
否定することに意味もなければ、許されないほどに強いものでもある。
しかしそんな僕が最も恐れているのは死ではなかった。
臆病な僕は、これほど死を恐れているというように、その”死”以上に恐れているものがあるのであった。
それは君も同じであっただろうこと。
僕が君に対して、共感すると感じられること。
こうして同じ場所に立ってみて、確かに、僕にも間違えなく感じ取れた君の気持ち。
怖いんだ。
死ぬことよりも、忘れられてしまうことが、怖いんだ。
忘れられないように、消えてしまわないように、遺り続けるものが作りたいんだ。
それは権力の証でもあり、存在の証でもある。
ここで生きたという証が欲しかった……。
そうだよね。そうなんだよね。
死んでしまった後で、誰も君を知っている人がいなくなってしまっても、生きた記録が伝説と化すほどに古びてしまっても、完全に消えてしまうのだけは嫌だった。
必要とされていなくても、認識されたかった。
ずっとそうしていたい。
生前、輝いていた君だから、その想いは僕よりも大きいことだろう。
死んで神になれたなら。
神と崇められていようとも、所詮、人は人でしかなかった。
それが、死ぬことにより、本当の神になれたなら。
だったらば、こんなものを残す必要もないのだろう。
残さなくても、遺っていくのだ。
神としての姿が、それこそ伝説のようにな形で。




