夢見ていた
いつかの君もまた、今の僕と同じ気持ちだったに違いない。
きっと同じ景色を見ていたに違いないのだ。
憧れていた。目指していた。
もういない君は僕に遺してくれた。
君は僕など意識するはずもないし、僕に向けて遺してくれたものであるはずはないのだが、君が見ていた大勢の中に僕が含まれていたことも紛いなく事実なのだ。
大勢の中の一人、君にとってはそんなものだったとしても、受け継ぎたいのだ。
それに、君と同じことをするだとか、君の願うところを叶えるだとか、そういったことをしたなら、この中で君も笑ってくれるかもしれない。
もういない君も笑ってくれるかもしれない。
君の権威の証は、高く高く聳え立っている。
誰も目を逸らせないほど、大きく強く、君というものの存在を象徴して、輝いている。
この世に君がいないのだとしても、君がいたことを、誰もが知ることだろう。
追い掛けて追い駆けて、いつの間にか、ここまで来てしまっていた。
死も近いであろう今の僕になら、君ほど堂々と立派な威厳などは持っていないけれど、権威ともなる力は十分に持っていると言える今の僕になら、わかるんだ。
憧れでしかなかった君の気持ちが痛いほどにわかるんだ。
消えてしまうのが怖かった。
言ってしまえば単純で、どうだっていいようなことだけれど、人はみなこの想いを抱えているはずなのだ。
消えたくない。けれど、その究極の願いを叶える方法を持っていないのだ。
それを持っていた君はこの大きな墓を残したというわけか。
ならば、方法を持ち、かつ君へと敬意を払う僕は、真似て同じ道を通らない理由があるだろうか。
僕が消えてしまうのだとしても、僕の存在は遺ることになる。
そして所詮は真似でしかない僕は、遺ったとしても君の邪魔になるようなことだってない。
完璧であり、最高の選択であるように思えた。
我ながら、最良の選択だ。
そう言いきれた。きっと。




